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ヘタレ魔法使い 7  話の矛盾

 どうにかジャンさんの同意を頂いた(途中で自分の甘い考えに気付かされて逃げ去りたくなった)後、私たちはお店から出た。

 色々なお詫びを兼ねて代金は私が払った。……まあ、お茶だけなんだけどね。小さすぎるお返しでも積もれば大きくなると思うんです。信じます。

 そういえばお店を出るときの店員さんの「ありがとうございました!」の笑顔が凄まじかった。「またのご来店をお待ちしております」が二度と来るなと聞こえたのは気のせいと思いたい。……なんかもうごめんなさい。


 お店から出た私たちのこれからの目的地はガイアント国の城下街。

 まだ日は高いし、善は急げとも言うし、それに何より早くこの街から出たいからそのまま城下街に向かうことになった。それで今は街の街道を歩いている途中。

 ……なんだけど。


「………」


「………」


 無言で、街を歩く。

 何これ気まずい! お店を出ると本当に話すことが何もなくて、ただただ歩き続けるのみ。

 しかもジャンさんの足が長いから無駄に一歩が長い。身長が高い人は良いですね!私もその身長を是非とも分けてもらいたいものです。

 やっぱり身長が低いっていうのは色々と苦労する場面が多いと思うんだ。初対面の時の第一印象って絶対変わるしさ。私が今まで会った人って接する態度が子供に対するものだったし。

 それに今も、


「――……っ、はぁ、はぁ」


 ……何をしてるのか分からない、よね。まあ一言で言うと小走りしてるわけです、私が。ジャンさんが走ってるというわけじゃない。というかジャンさんは普通に歩いてる。

 さっきも言った通りジャンさんの一歩は長い。それにプラスして私の一歩は短い。

 私が普通に歩いてたらどう見ても置いてかれる。本当は一回かなり離れた時があったけど、ジャンさんの身長が高いおかげで見失うことはなかった。こんなところで役に立つなんて……。


 長距離とは言わない距離を走っていたはずなのに私はかなり息切れしてしまった。

 それに気付いたのか、ジャンさんが歩く速度を緩めてくれた。ありがとうございます、正直死にそうでした。


「短足は不便だな」


「たっ……!」


 ちょっ、なんか分からないけどジャンさんが酷い! 冷たい!!

 私こんなこと言われるほど悪いことしたっけ!? ……あ、した。水もぶっかけたし、唐突にお願いごともした! ごめんなさい、私が悪かったです。そりゃあ言われても仕方ないよね!

 でも結構傷つきました。心が痛いです。


 ため息を吐く暇さえ私にはない。普通の歩き方でも呼吸を整えながらだときついんだよね。……ええ、体力ありませんが何か。


 見失わないようにジャンさんの背中をひたすら追いかけていたら、いつのまにか街から出ていた。……気付かなかった、って私頭おかしくなったかな。確か村から出るとき香草を持ってきたはずだから、後でそれで癒されよう。

 街から出ればあるのは草原と少し離れたところにある森と幅が広い道。道には馬車が二つ横に並べそう。

 地図で確認したところ、ガイアント国の城下街とさっきまでいたアガリスの間には大きな森があった。今歩いている道はその森を迂回する道。まあ要するに私たちは今、遠回りをしているということになる。

 魔物とか野性の動物がいそうだから森を突っ切るということはしない。ジャンさんという心強い人はいるけど、出来ることなら面倒なことに首は突っ込みたくない。……もう既にジャンさんを面倒事に巻き込んだ私が言えることではありませんがね!


「誰もいませんね……」


「そうだな」


 ちなみに私たちが今まで歩いてきた道には人っ子一人いなかった。商人の人なら会うかなー、って思ったんだけど……。商人って移動を朝夕に頑張る人なのかな? 普通に考えて、鬱蒼と生い茂る森に自分から入ろうとは思わないし。


「……あ、そういえばジャンさんはここに来るまでに魔物を見ましたか?」


 村長の依頼を思い出して興味本位で聞いてみた。あんな武器を持っているならジャンさんは強いだろうし、ジャンさんならもしかしたら倒したりしたかなー、と勝手に想像してみた。あとあんまり見たくはないけど、時々魔法関連で使えそうな素材が魔物から取れるとも村長から聞いたし、その用途も知っているかもしれない。


「……いや、見ていない」


 だけどジャンさんから出てきた言葉は私の予想と真逆のものだった。


「……え? 事実ですか?」


「嘘を言ってどうする」


「ほ、本当の本当に見てませんか?」


「見ていない」


 しつこい。目がそう言っていた。すみません。

 でも、そうしたら村長の話はどうなるんだろう。魔物の活発化がどうのこうのっていうのは魔法使いとかの村でしか起こっていないことなのかな。いや、そんなことってある?

 前に私の村の書庫にあった書物の一つに『勇者が魔王軍を退治した』という内容のものがあった。それはかなり古いもので、本当の内容かは分からないけど魔王軍がいたというのはきっと事実なんだと思う。

 その証拠として何年か前から魔物が活動しはじめ、最近では活発化までしはじめた。魔王の復活が近いってこと……?


「でも、ここまでいないものなのかなあ……」


 思えば、私もアガリスに着くまでの間、魔物や魔獣には一体も会っていない。私の村の森にはかなりいたというにも関わらず。

 この世界に、何が起こっているんだろう。

 私は終わりが無いような地平線を見つめた。

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