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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

クリスマスの夜

作者: 海帆

 12月25日──クリスマス

 街はたくさんのカップルで溢れている。

 そして、今この街中で歩いている俺らも、そのカップルの中の1つである。

 

 付き合い始めて初めてのクリスマス。

 去年まで「クリスマスはキリスト教のお祝いだぞ。なんでデートする日みたいになっているんだ」と言っていたのに、今年はしっかりデートを楽しんでいるのだろう。

 ずいぶん勝手だな、と思いつつも仕方ないか、とも思う。

 ……やっぱり“恋人”として“デート”できるのはうれしいことである。

 ただ、周りからは“恋人”だとは思われていないだろう。

 “友達同士”や“クリスマスなのに相手がいなくて可愛そうなやつ”なのだろう。

祥悟しょうご黙ってどうした」

「なんでもないよ」

 隣から聞こえる恋人の声に応える。

 俺にとっては大事な大事な恋人。

 勝手だとは分かっていながらもクリスマスのデートを楽しんでいる相手でもある。

 ただ、周りからはそうは思われていないだろうけど。

 “男同士”

 これから、俺らに一生付きまといそうな問題。

「なんでもないって、さっきから黙ってるだけじゃないか」

「別に」

 ふと顔を上げると、目の前でいちゃつく男女のカップル。

 自分も、クリスマスの夜、街中にいるカップルの中の1人ではある。

 しかし、男同士なのでいちゃいちゃなど決してできない。

 だから、こうも目の前でいちゃつかれるといらっとするわけである。

「……キスする?」

「おまえは何言ってるかわかってるのか!?」

 恋人である慎司しんじの提案に思わず叫ぶ。

 少し前を歩くカップルが驚いたように振り返ったが、慎司の提案に対してなのか俺のバカでかい声に対してなのかはわからない。

「おまえ、街中で何言ってんだ。人に聞かれたらどうするんだよ」

「だって、祥悟がキスしてほしそうだったから」

「なっ! バカなこと言うなよ」

 そう? などと本当にバカなことを言う恋人。

 でも、少し驚いた。

 なぜなら、俺らも堂々といちゃつきたい、などとバカなことを考えていたからである。

 畜生、女々しいな……。

 慎司と付き合いだしてからたびたびあるこのような考えに、自分でもイライラする。

「そう怒るなって。本当は俺だっていちゃつきたいんだよ」

「……なんで考えてることわかるんだよ」

「祥悟が好きだから、かな」

 ニコニコと笑いながら、俺の心にストンとあいつは入ってくる。

 俺だけすごくガキみたいでむかつく。

 だから、少しだけ仕返しのつもりで、冷え切った俺の手をあいつの手に近付ける。

 すると、やっぱりニコニコしながら俺の顔を見てくる。

「祥悟かわいい」

「……あっそう」

 男にかわいいって言われても嬉しくない、そういうつもりが。

 ……嬉しいとか俺らしくないことを!

「耳まで赤い」

「うざい」

「祥悟から手つないでくれるとはなー」

 相変わらずニコニコと笑う恋人。

「……慎司が、好きだから」

「俺も祥悟のこと好き」

 

 12月25日──クリスマス

 楽しそうにいちゃつくカップルの中に、俺たちの姿もあった。

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