第五幕
この幕で完結です。
第五幕
久しぶりに会った彼女はとても元気そうだった。人形の動かし方もさらに人間味を帯びて、物語の中に引き込まれる様だった。控室でもかつての様に憂いを帯びた表情ではなく、自信に満ち溢れた様子であった。彼女は未だに家族とは会えていない様だ。それでも時たま舞台から控室に戻ると
「今回も良い舞台でしたよ
母より」
と言うメッセージカードの挟まった花束が置いてある事がある、と彼女は言っていた。
蓮子もこの前の様に取り繕う様な違和感は感じられない様で、安心していた。
アリスさんは順調に歩を進めていると実感させられた。それと同時に時の流れを感じた。私たち秘封倶楽部も大学を出ればサークルではいられなくなる。蓮子はすでに大学院の教授からスカウトを受けているそうだ。彼女は「研究なんかより秘封倶楽部で探検した方がよっぽど楽しいし有意義だわ」とか言って全てを蹴ったそうだ。私としてはとても嬉しかった、研究者としてその台詞はどうかとも思ったけど。
「時間の流れを感じるわねぇ」
「そうね、時間が流れるのがやけに早いわね」
「なにババ臭いこと言ってんのよ」
「蓮子が言い始めたんじゃない」
蓮子も同じことを考えていたのだろうか。
「メリー、油断してると大学なんてあっという間よ?」
「何に対する油断よ、それ」
「時間に決まってるじゃない」
「だったら遅刻を減らしたら?」
「あと10年ぐらいしたら治るわよ。だから気長に待つことね」
「自信げに言わないでよ」
どうやら秘封倶楽部は10年後も健在だと思っているようだ。いま思えばもともと秘封倶楽部はサークルとして認可されてない訳だし、大学を出ても変わりはないのかもしれない。
「つまり後10年は定期的に蓮子にランチを奢ってもらえる訳ね」
「…ねぇ、メリー。せめて2時間に一回にしてくれない?」
「遅刻を直すっていう考えはないの?」
「無理ね、これは不可抗力なんだから」
私と蓮子の関係はこれからもきっと、ゆるゆると続いていきそうである。そう実感した4/15だった。
Fin
すいませんでした。
アリスさんが動かせなんだです。
今後作者が成長したら出てくるかもです。