15 ボス戦 表
キリよく、カオリス視点とミカゲ視点に分けました。
力と価値を示せとは言ったが、カオリスはミカゲに対してそこまで期待していなかった。元々は説得に失敗したら、無理やり連れて帰るつもりだったのだ。最下位でキズキたちの逃避行について行くのは、不可能だと思ったからである。
ただ、思っていたよりもミカゲがあの家族たちに馴染んでいたのと、ミカゲ本人にも強い決意を感じたのでチャンスを与えようと思っただけだ。
「壊す気でせよ」
「はぁ――っ!!」
カオリスがそう言った瞬間、ミカゲが漆黒の刀を手にして、威勢よく斬りかかってくる。予想よりもスピードがかなり速かったが、それだけ。最下位でも【加速】を使えばこのくらいの速度は出せるだろう。電素の制限がないのだから使えても不思議ではない。
(これはダメだなぁ)
直線的に突っ込んでくるミガゲを見てそう断じたカオリスは、自分とミカゲを入れ替えようとして――やめる。瞬時に自分の背後の空間と、自分とミカゲの間の空間を入れ替えた。
斬りかかってきていたミカゲが見えない何かによって切り裂かれ、光の粒子を散らして霧散する。それと同時に、刀を振りぬいた状態のミカゲが現れた。【透過】が解けたのだ。
「空の絡繰で儂に挑もうとは、無謀なことじゃ」
口ではそう言いながらも、カオリスは内心で少し驚いていた。絡繰の使い方が異様に上手い。それに――
(今の戦い方、私の?いや、キズ坊が教えたんだ。しかも、属性は空と光の高位二つ持ち……)
ミカゲが空間を入れ替えたのを感知したカオリスは、目の前のミカゲが偽物だと察したのだ。
【交代】で敵の背後から攻撃するのは、カオリスの、そしてカオリスがキズキに教えた戦い方である。初手の不意討ちで決めるのが、最も勝率が高いと思っているゆえだ。戦闘経験が未熟な最下位で、よくも咄嗟にまぁと感嘆を抱く。
さらに、【交代】と【透過】を使ったことから高位属性二種を所持していることがわかる。消え去った分身は光の【投影】の応用だろうと、カオリスは目星をつけた。実際、その予想は正解で、カオリスは知らないことだが、アカリがよく行う技だ。
(潜在能力は想像以上……。だけど、限界も近いはず)
最下位で高位属性絡繰を連発すれば、あっという間にオーバーヒートを起こす。五大属性絡繰でさえ、連続使用すれば持って二分といったところだ。だからこそ、カオリスはこの戦いに制限時間を設けなかった。
「【光球】【加速】!!」
(三つ目の高位属性!?)
ミカゲがスイッチを叫んだ。ミカゲの後ろにまばゆい大きな光が現れる。さらに、自分の時間を進め、突撃してきた。
「目くらましかのう?悪くはないが、安直じゃな」
カオリスは自分の背に光がくるように、ミカゲと位置を入れ替えた。ミカゲが瞬時に振り返り、もう一度突進してカオリスに斬りかかろう――と刃が届くあと一歩で、急速に全身の力が抜けていった。刀を握っていた片方の手を、苦しそうに胸に当てる。オーバーヒートだ。
「終わりじゃ。頑張りはしたが――」
まだ足りぬなと続けようとしたところで、カオリスは聞いた。
王による空間の法則に干渉する最下位の咆哮を。
「【時間逆進】【帳】ッ!」
「えっ!?」
カオリスとミカゲの周囲を闇が囲った。カオリスはつい驚愕を口に漏らしてしまった。高位属性の全てを所持、オーバーヒートからの回復、そして――人形による魔法の発動。自分の常識がこの一瞬で三度破壊されたのだ。
(ひっさびさにびっくりしたぁ……!長生きしてみるものだなぁ)
「目くらましは通じぬぞ」
闇の特性は、吸収し飲み込むこと。それは光も例外ではなく、真っ暗な帳の中から、何事もなかったかのように装ったカオリスは外へ転移した。
帳が消え、ミカゲの設置していた【光球】が再びカオリスを照らす。あると分かっていればそれまでであり、目を少しすぼめて辺りを見渡す。
ミカゲの姿は見当たらない。周囲の空間を確認するが、【透過】しているわけでもない。まるでこの空間から存在ごと消え去ったような現象に、カオリスは首を傾げた。
「はて、どこに行ったか――」
刹那、漆黒の刀が背後から玉座を貫いていた。




