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【SF 空想科学】

人類の末路

作者: 小雨川蛙

 

 昔。

 ある一人の人間が不老不死になりたいと考えた。

 その人は自身の体を機械に変えて事実上の不老不死を手に入れた。


 しかし、その人自身が不老不死となっても自分にとっての脅威がなくなったわけではない。

 いくら体を機械化しようとも、外から強い衝撃を受ければ体は破損してしまう。

 故にその人は。

 いや、その機械は幾人もの護衛を雇った。


 しかし、いくら護衛が居ようとも所詮は人間。

 雇っている護衛以上の数が来ればあっさりと突破されるに違いない。

 故にその機械は自分を守る幾つもの防護壁を造り上げた。


 しかし、いくら護衛や防護壁があろうとも所詮は人間が造り出した技術。

 過去から現代にかけての人間達の脅威とはならずとも、未来の世界においては大したものではなくなっている。

 故にその機械は先手を打って自身の護衛に携わる者以外を虐殺した。


 多くの命を奪った。

 しかし、機械は自分の身体を守る者達を恐れ始めた。

 何せ、彼らは皆、自分の虐殺を目の当たりにしているのだ。

 いつ裏切ってもおかしくない。

 ここにきて、機械はようやく悟った。

 自分以外を殺してしまえば、何が起ころうとも平和であると。

 故に機械は自分以外の命を全て奪い去ってしまった。


 ぽつんと世界に一つ残った機械は満足気に生きていた。

 あるいは生きるのを演じていた。

 たった一つで。


 それから数では数えられないほどの時間が過ぎて、ある日、機械の前に見たこともない命がやってきた。

 どうやら宇宙船を造れるほどの技術を持った異星人らしい。

 機械は恐れから異星人を即座に殺そうとしたが、あっさりと制圧されてしまい、身動きが取れないまま相手を無機質な目で虚しく睨んだ。

「君は何者だ?」

 相手が問うので機械は答えた。

「人類だ」

 異星人は息を飲み、そして思わず感嘆の声を漏らした。

「本当に宇宙は広いな。まさか、機械で出来た命が存在していたなんて……」

 そういうと同時に異星人は機械の体をあっさりと破壊した。

 それに伴い機械が、あるいはその前身であった人間が定義した命が失われた。

「これはサンプルとして持ち帰ろう。機械で出来た生命体なんて……きっと、皆驚くに違いない」

 異星人の興奮に満ちた声が数日後には落胆に変わることなど知る由もなく、破壊された機械の破片がコロコロと辺りに散らばっていた。

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