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02 精霊たちの集結

 一瞬にしてテオドール様たち四人が気を失ってしまった。泡を吹いているし、失禁しているし、普通じゃないことは学の無い僕にもわかった。


 でも……。


「助かった……?」


 とりあえずのピンチを脱したみたいだ。テオドール様たちのことは心配だけど、今のうちに逃げ……。


「逃げてどこに行くんだろうね……」


 奴隷である僕には頼れる親族や逃げられる場所なんてない。奴隷の逃亡は死罪。このままここに残っても殺されてしまう。でも、逃げても死罪だ。


 僕はどうしようもないほど詰んでいた。


「あぁあ……」


 口から僕のものとは思えないほど情けない声が漏れた。


 本当にどうしよう……?


 そんな時だった。


<リュカー! 大丈夫?>

「え?」


 僕を心配する声にいつの間にか俯いていた顔を上げると、目の前に可憐な美少女がいた。


 背中に生えた蝶の羽。エメラルドグリーンの綺麗なロングヘアの下には、不安そうに揺れる緑の瞳が見えた。まるでお人形さんのように整った美少女。そのサイズもお人形さんみたいだった。


「ジル……?」

<うん! あなたのジルだよ?>


 そう言ってジルが腰に手を当てて胸を張る。


 ジルは僕と契約していた風の中級精霊だ。今はテオドール様と契約していたはずだけど……。


「ジルはテオドール様と契約してたはずじゃ……?」

<え? リュカを殺そうとしたんですもの。そんなの破棄よ! ニンゲンとの契約って面倒ね。破棄するのに少し時間がかかっちゃうし、魂まで付いてきちゃうし>

「そっか……」

<クア!>

「ん?」


 鳴き声が聞こえて足元を見ると、尻尾に火のついたトカゲや、周りに小さな水滴を浮かべた水の玉、動くハニワの姿も見えた。僕の契約していた精霊たちだ。ジルたちは僕の危険を知って、テオドール様たちとの契約を破棄して僕を助けてくれたのか。僕は嬉しくなってつい涙が……。ん? 魂?


「じ、ジル、確認だけど、魂って?」

<ああ。無理やり契約を破棄して出てきたら、テオドールの魂も引きずり出しちゃって。でも、リュカにひどいことしようとしたんだもん。当然の報いよね!>

「いやいやいやいや! じゃあ、テオドール様たちは……?」


 もしかして、死んじゃった……!?


<放っておくと死ぬんじゃないかしら?>


 え!?


「じ、ジル、ジルたちが僕を助けてくれたのはすごく嬉しいんだけど、さすがにテオドール様たちが死んじゃうのは……」

<でも、こいつらはリュカを殺そうとしたのよ? このまま死んでもらった方がよくない?>

<クア!>


 ジルの言葉に足元の初級精霊たちも頷いている。ハニワが頷いている姿は少しシュールだ。


 ジルの言葉はもっともだと思う。でも、僕にテオドール様たちを見捨てることができるだろうか。


 たしかにずっと嫌われていたし、いい扱いを受けたことはない。正直言えば、僕もテオドール様たちのことは嫌いだ。でも、死んでほしいほど嫌いかと言われると、そうじゃない。


 僕は、テオドール様たちに死んでほしくなかった。


 でも、テオドール様たちに魂を返すと、僕が殺されてしまう。


「どうしよう……」

<リュカは甘いほど優しいですね。そこがリュカの魅力でもありますが>

<ん……>

「え?」


 突然聞こえた二人の少女の声に振り向くと、僕の目線の高さに浮いたお人形サイズの美少女の姿があった。


 一人はまるでピカピカ輝いているような美少女だ。白いドレスに身を包んだ銀髪に金の瞳の少女。その顔は呆れたような顔をしながらも慈愛を感じるものだった。


 そしてもう一人は、真っ黒な毛玉だった。よく見ると毛玉ではではなく長い髪の毛だとわかる。髪の毛の隙間からは黒い瞳が僕を微笑ましそうに見ていた。その顔は長すぎる髪の毛によって隠れて見ることができない。


 彼女たちはシーネとノア。僕の契約していた光と闇の中級精霊だ。


「なんで二人がここに……?」


 ノアは旦那様と、シーネは奥様とそれぞれ契約していたはずだ。


 まさか……!


<ジルたちが契約を破棄するのを観測しましたので、わたくしたちも一緒に契約破棄をしました。これからどうするのかまではわかりませんでしたが、リュカのいる場所こそがわたくしたちの居場所ですもの>

<ん……!>


 シーネが当然のことのように言い、ノアがコクリと頷いた。


「もしかしてだけど、二人とも旦那様と奥様の魂は持ってきてないよね……?」


 僕は一縷の望みを賭けて二人に問いかけると、二人とも頷いてくれた。よかったぁ……。


<もちろん持ってきました。彼らのリュカに対する態度は度が過ぎていますもの。罰が必要です>

<ん……!>

「えぇ……!?」


 二人とも魂持ってきちゃったの!?


<それがね、二人とも。リュカはテオドールたちが死んじゃうのも反対みたいでさー>

<聞いていましたよ、ジル。優しいリュカにとって、人が死ぬのは耐えられないのでしょう。さすがわたくしのリュカです。リュカの尊い心はわたくしの誇りですわ>

<リュカはシーネのものじゃないし!>

<ん……!>

「そ、それで、どうしよう? テオドール様たちに死んでほしくはないけど、生き返っちゃったら僕は殺されちゃうんだ……」

<それでしたら、わたくしにいい考えがありますわ>

「いい考え?」


 僕は縋るようにシーネの考えを聞くのだった。

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