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転生奇跡に祝福あれ  作者: ルミネリアス
第二章 崩壊へ
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第四十八話 超新星

 希望とはどういうものなのだろうか。

 期待か、それとも現実逃避か。 

 私は思う。

 それは、持たざる者の切なる願いであると。

 現に、今私は願ってしまうのだ。

 ソフィに幸あれ(ソフィに不幸あれ)、と。









 私は、威力を増幅された自身の魔法に身を焼かれながらその手を伸ばす。

 彼女と、私の力を信じて。



 すると、その手を温かいものが包み込み、更に私を強く引き寄せる。

(えっ、ちょっ……!)

 私はそう心の中で驚きつつ、その安堵感に戸惑いながら破壊の渦から引き出される。

 そのまま私は槍に守られている、いわゆる安地エリアに出ると、生存と再開を喜ぶ間もなく先程よりも全身で、その暖かさを感じる事となった。



 無言で私に飛びついたエクラは、

「良かった……、、良かったです……!!」

と、何度もそうつぶやく。

「エクラ……!」

 安堵のため息が混ざった声で、その名を呼んだ。

 正直、今すぐエクラを数時間かけて甘やかすモードに入りたくなったが、それは流石に状況を把握しなさ過ぎているだろう。


 なので、

「エクラ。…大丈夫。私はちゃんと生きているから。ホントはちゃんとお話したいのだけれど…、今はまず、この状況から抜け出そう?ね?」

と、手短に落ち着かせる。

 その言葉を聞き我を取り戻したエクラは、バッと私から離れ、

「ご、ごめんなさい。取り乱ししたまました。」

と、盛大に噛みながら慌てふためくのであった。



 そんな可愛い可愛い私のエクラ。

 しかしその身体が小刻みに震えているのを目視した私は、小さく微笑むと、そっと右手でエクラを抱き寄せる。

「あっ…。」

と、小さな声を上げ頬を赤らめたエクラの可愛さを少しだけ噛み締める(ホントは物凄く噛み締めている)と、私は思考を切り替え、一気に真剣な面持ちとなる。


 そして、鋭い目線で敵の居る方向を睨みつけながら、私はこう言い放つ。



「さあエクラ。反撃の時間だよ…!!」







 私は左手を悪魔の方に向けると、惜しげもなく魔法の展開を宣言した。

「大罪魔法・暴食!!!」

 その宣言とともに左手から発生した闇は、槍に込めたものとは比べられないほど濃く、大きく、強く禁忌にぶつかり、そして飲み込んで消し去っていく。

 ……禁忌の力は強大だ。

 しかしその力は、私が全力で放つ暴食には遠く及ばない!!!






「うそっ!!まさかあーんな超(つよ)反射からぁその変な娘を守りきるなんてぇ………。…凄い凄ーーい!!!!!」

 暴食が禁忌を飲み込み視界が晴れると、そこには相変わらずなファルがご満悦といった表情で私達を見下していた。

 そしてその横には今尚項垂れているソフィの姿。

 エクラは、

「ソフィ様…!」

とその危機的状況に息を呑む。

 そして、私はエクラの肩を右手でしっかり抑えつつ、ファルを睨みつけ、次の行動を考えた。





 ……ってあれ?これ、むしろ状況悪化してない?





 そんな状況に軽く絶望した私に、ファルは更に追い打ちをかけるような事を言う。

「さーてー。挑戦者のおひーめさん!今回は五回の挑戦なのに〜、それを遥かに上回る変な魔法を幾つも使ったので〜〜〜?…そう!失格で〜す!!!」


 余りにも一方的なその宣言に呆気を取られ、言葉を消化するのに少し時間がかかる。

 え?失格?…てかそもそもまだゲーム続いてたのか。……じゃなくて!!

「ちょっと!!そっちがいきなり私の魔法を反射させたんでしょ!?しかも私じゃなくて、エクラを狙うだなんて…!!……まさか、最初からずっとこれを狙っていたの!?」

と、私は怒りと疑問が混ざり合う。


 それに対しファルは、

「うん?そだよー。」

と、それはそれは軽すぎる返事をしやが……した。


 私が、軽!?…と衝撃を受けているのを他所にファル…、いや悪魔は今度はヤレヤレといった様子で、

「失敗しちゃったしもう言っちゃうけどさぁ〜、ホントはファル、そこのドロボウネコ?ちゃんを始末しに来たんだよね〜。()()命令で。」

とエクラを指差す。

 これまた軽くとんでもない事を口にしたな。



 エクラが

「ネ、ネコ…?」

と困惑しているのを見て、もしやエクラは泥棒猫という概念を知らないのか?と思ったが、それは今どうでもいい。

 それよりも気にすべきなのは、悪魔の言う上司というのが一体誰を指す言葉なのか、と言う事なのだが……。

 …まあ恐らく、ここで永遠と悪魔に質問をしても悪魔は喋らないだろうし、何より飽きて、ソフィを連れて何処かへ逃げてしまうかもしれない。


 それならば。

「ねえ。貴方の言うその上司とやらの事を詳しく聞いてみたいのは山々なんだけれど、それよりもさっさと戦わない?そろそろ、こうしてお喋りするのもクドくなってきたし。正直飽きた。」

と、半分本音なトークをぶちまけてみた。

 エクラはそんな私の発言に、

「え…!?」

と、横で小さくだが驚き、私の顔を見つめるのであった。


 だって、ねえ?

 そろそろこうして戦いを中断してお喋りも見飽きたものねえ?








 …と、私が久しぶりに誰かに話しかけていると。

「ふっ、ははっ、あははははははっ!!!」

と、悪魔は目を見開いて笑う。

 正直キモ……不気味だったが、

「あー、ハハッ!ごめんごめん!まさか、そんな面白い事言うなんて思っていなかったからさぁ。いや〜、お姫さんってぇ…、もしかして面白い?頑張ったらファル達ぃ、お友達になれるのかもねぇ〜〜〜!!!!」

と、そんな事を言われる。正直ゴメンだ。



 だがそんな余裕は、次の瞬間消し飛んだ。


「なら〜、予定変更〜〜!!お姫さんがファルを、確実かつ安全に家に返してくれるまで、このメイドちゃんを〜、、、痛めつけま〜す!!!」 





「なっ!?」

「そんな…!」

 私とエクラは、余りにも急な路線変更に驚きを隠せない。

 悪魔は続ける。

「いや〜、正直ファルもこの話し合いに飽きてきてたんだよねぇ〜。んー、長い!!だから〜……


えぃっ!!!!!!」


 小さな掛け声と友に悪魔が指を振ると、項垂れていたソフィの身体が震える。

 何をしたっ!!!と、私が叫ぼうとしたその時であった。




「ひめ……さま……?」

 …ソフィの意識が、戻ったのである。

 



「ソフィ!!」

 私は強く叫ぶ。

 ソフィはその言葉に反応しこちらを見た。そして返事を、と思った矢先、

「じゃあぁ、まずは一発ぅ!」

「っっ!!」

 悪魔は魔力を宿した拳をソフィに振るい、その魔波はソフィを突き抜けた。

 ソフィは痛みのあまり喋ることが出来ず、ただ痛みに耐え、荒い呼吸を繰り返す。


「ソフィっっ!!!…貴様ぁぁぁ!!!」



 私は怒りに爆発するが、だからといって都合よく、「私の中で何かが…!!」みたいな展開は…



「…駄目よ。私の!お姉さまから奪っては駄目。」

 そんな、小さな声が聞こえたかと思った次の瞬間、悪魔が真横に吹き飛んだ。

 ……マジか…、あるんかい……。










 エクラは、あちらはテラス様が…?と、そう言いたげな表情でコチラを見たが、私は首を横に振るという答えを返した。


 …いやいや、え?冷静になったらおかしいな。

 本当に、私、何もしてない。

 てか悪魔、何だか大きな見えないハンマーに横から強く殴打された様な…。

 だるま落としみたいな吹き飛び方してたよ?

 あの最初の方の、後先考えず全力でぶっ叩いて、超危険な飛び方をするあれみたい。

 ……あれ子供の頃、絶対誰かに当たって泣かせた、あるいは誰かに当てられて泣いたっていう記憶がある人いっぱい居るよね。

 



 …と私が故郷の昔遊びの回想に思わず浸っていると、

「ソフィ様…!!」

と、エクラが悲痛な叫びを上げた。

 その声に釣られるがままバッとソフィの方を向くと、そこには、悪魔が離れた事で支えを失い、今まさに地面へ倒れようとしているソフィの姿があった。

 私が、駆け寄りたいがエクラの元を離れるのは…という葛藤を起こすその前に、

「大丈夫ですわ、お姉さま♡。」

と言う声と共に、ソフィの倒れようとしている地面から小さな枝と大量の葉が一瞬で生え、そしてソフィを優しく包み込んだ。


 私は声のした方向(ほぼ正面)に向き直し、エクラを守る様に立ち塞がると、

「誰!?」

と叫んだ。



 すると、目の前の空間がタイルの様になって崩れ去ると共に現れたのは、一人の少女であった。








 紫色の髪をツインテールに纏め、その紫の瞳と赤く火照る頬を輝かせ、見た目から推測される年齢とはかけ離れた妖艶な笑みを浮かべる少女。

 年齢は、12歳ぐらいだろうか?

 だが普通の迷子の子供では無い事は、少女が魔法を解除するまで、存在すら全く感知できなかった事で分かるだろう。


 その為私は尚警戒し、厳格な態度を


「えっ、と、ソフィを助けてくれて、ありがとう…?」


…とれませんでした。


「…?」

と、エクラが不思議そうな顔を向ける。

 だっって、この娘何か怖いもん!

 ほら今だって、

「お姉さま…♡」

とか呟いてるし!



 と、私がビビり散らかしていると、

「お話は後で。それより今は、()()()()の邪魔者から、排除すると致しましょう?お姉さま♡」

と、謎の少女は指を指す。

 そちらを見ると、先程謎の少女に吹き飛ばされた悪魔が、怒り心頭に発した様子で立ち上がってきているようであった。

 私は意識を切り替え、悪魔に集中する。

 正直、この少女の事は信用していないが、そんな事を気にしている時間はなさそうだ。


 なので私は、

「分かった。……私は、テラス・テオフィルス・シュトラール。貴方は?」

と、せめて名前だけは聞いておこうとした。




 すると、謎の少女は名乗る。




 そしてその名は、その少女を無条件に信じる事が可能となる名前であった。





「えぇ、存じております。……私は、ルーフ・ホオヘノ・ヴェデーレ。お久しぶりですわ。…お姉さま♡!♡!♡!」


 私はそれを聞き、昔の記憶が蘇る。

 そして、安堵の笑みと共にお願いをした。

「…そっか。なら、ルーフさm……ルーフは、エクラとソフィを守ってくれる?私は、あいつに引導を渡してくる。」


「あっ、はぁい!!この命に変えても守りまぁす!!」

 ルーフは何故かトロンとした目でそう答える。

 それはよく分からなかったから無視して、悪魔の方を向いた。

 覚悟を決めた私に、私も、と伝えるようにエクラが私の手を強く握る。

 それから改めてエクラの強さを感じた私は、エクラから得た勇気を胸に、強く宣言する!

「待たせたね!ようやく、決着の時だから!!」








 

 瓦礫から出てきた悪魔はルーフを強く強く睨む。

「貴様…。一体どこから現れた……!!」

 先程までの余裕たっぷりの口調とは一変し、荒々しい事この上ない。


 その問いにルーフは答えた。

「そうですね…。強いて言うとすれば、お姉さまに対する『愛』、からですわ。…ね?お姉さま。」

 そう言い、ルーフはやはり恍惚とした表情でコチラを見つめる。


 んー、怖い!!



 それはさておき。


「ふ、ふざけるな!!馬鹿にしているのか!?」

 悪魔は遂に盾を失い、自身の安全が保証されなくなってしまった。


「やっ、やめろ!こっちに来るな…!!」

 つまり?


「簡単には、死ねないから。」

 私の気が済むまで、玩具にされるというわけだ。







 私はとある魔法を宣言する。

「絶界。」

 それは以前この街で使った、密室を作る魔法。

 私が宣言した次の瞬間には、薄い虹色の結界が、私と悪魔を包む。

 この魔法は外で使うと少し制御し辛く、例えば悪魔とソフィの間に分断するように展開とかは出来ないのだが、こうして切り離された今なら関係が無い。


 悪魔はパニックで叫ぶ。

「なっ、何これ何これぇ!!!こんな魔法知らない!!……早く逃げないと!!」

 悪魔は自身のこれからの行動を宣言するというまさかの行動の後、脇芽も振らず走り去ろうとする。

 私はそれを、無言で見つめる。

 そして高速で飛び立ったが、勿論結界にぶつかってそのまま墜落した。

 墜落先の地面に座り込んだまま結界を手で触るが、それによりここから出られない事をより鮮明に理解したのだろう。


「そんな……、お父さん助けてぇ………。」

と、泣き出す。





 だがそれが何だというのだ。

 私は、どんなに敵に味方を殺されても自分は敵は絶対に殺さない!!…みたいな愚かな考えは持っていない。

 敵は、殺す。ただ、それだけだ。



 ……ただ、今回は……、








「さぁ!持ちうる全てを使ってかかってきなさい!!私はその全てを叩き潰し、来世でも消える事の無い絶望と共に地獄へと送ってあげるから!!!!」

 ただ殺す訳にはいかないだろう。






 悪魔はその顔を涙でグチャグチャにしながら、その泣き声とも叫び声ともとれる声で宣言する。

「こんなところで死ぬ訳にはいかない…!!破壊魔法・バーニングレイジ!!」

 それは怒りの炎であり、それを表すかのように荒れ狂う炎の波が私に迫る。

 が、

「冷鎖。」

と私が宣言すると、炎の波はその形のまま氷となり、そして氷の鎖に包まれ締め付けられる。

 炎の波の氷像は、砕かれ霧散する事となった。


「そ、そんなのあり得…、っ!!破壊魔法・インシネレイトヴォイドっ!!!」

 座り込んだまま悪魔は尚魔法を求める。

 今度はより強い破壊の力。明確な破壊の意思がまるで溶岩の様に押し寄せる。

 絶望的な現状を壊す。それだけを目指して。


 だが。

「海星。」

 勿論ヒトデではなく、夜の海面に輝く星々のように光り輝くのは、水で出来た光り輝く無数の小さな星型。

 それらは私の頭上に現れ、私が手を振り下ろすと擬似溶岩に突撃し、各々が爆発を起こす。

 そして、あっという間に破壊の溶岩はその動きを止め、やがて消滅した。

 

 

 爆発による霧を私が風を起こして晴らすと、そこにはいつの間にか立ち上がっている悪魔の姿があり、両手を頭上に掲げていた。

「絶対に…生きて…帰る……!!破壊魔法・デモリションブレイド!!!」 

 そう宣言すると、頭上には自身の数倍の大きさを誇る、炎を纏った剣が現れた。

 悪魔は私に向けて振り下ろす。


「はぁぁぁぁ!!!」


 それを、私はヤレヤレといった表情で


「はぁ!?」


 魔法も使わず素手で掴んで受け止めた。





「そんな馬鹿な話があるか!!!魔法も使わないなんてあり得ない!!!」

 そう悪魔は吠える。

 あれ?実力差は分かってるって自分で言ってたのに。

 あれかな?百聞は一見に如かず的な。



 そんな事を考えていると、

「……もう許してよ……。ファル、お仕事で来ただけなの……。何でも言う事聞くからぁ……?」

と、今度は泣きながら懇願する。


 私はフム…と考えたあと、

「なら、一つ言う事聞いてくれる?」

と話す。すると

「うん…!いや、はい!!何でもしますから助けてください…!!!」

と食いつく。

 そんな姿を見て私は哀れに思ったので考えを改め、安心させるように優しく微笑みかけて、そして優しく伝えた。







「なら、私に殺されるその最後まで、必死に抵抗し続けてね。そしたら、殺して開放してあげるから。」







 悪魔はより深い絶望に染まり、声にならない叫びを上げながら、いくつもの魔法を連発する。

「ああああああああ!!!はかいまほうはかいまほうはかいまほうはかいまほうはかいまほうはかいまほうはかいまほう!!!!!!!!!」

 それ見て、私は冷静に鎌を出し、そして暴食を纏わせる。

 さながら死神の鎌となった私の鎌は、悪魔の放つ全ての魔法をかき消しながら、ゆっくりと、それはそれはゆっくりと近づいていく。

 この悪魔に魔法を直接ぶつけてもどうせ反射されるので、私はこの鎌で大罪とともに終わらせる事にしたのだ。


 悪魔は泣き叫ぶ。

「くるな!!くるなぁ!!!!」



 しかし、始めに逃走を図り自ら追い詰められた悪魔に逃げ場など無い。

 腰が抜け、震えながら仰向けの状態で後ろに手をつき失禁している悪魔。

 私はそんな悪魔の前に立ち塞がると暴食を解き、悪魔を見下しながら、


 その、剥き出しの腹に鎌を振り下ろした。









〜その距離は、0〜


 貫通し、地面に刺さった事を鎌から感じ取る。

 血は吹き出し、私はまたしても返り血に染まる。

 しかし急所を敢えて外したことに加え、その無駄に高い生命力のせいで悪魔は即死できない。


 腹に突き刺さった鎌を何とか抜こうと、悪魔は、自身の血で滑る鎌を何度も掴む。

「い"た"い"…!!し"に"…た"く"な"い"……!!!」



 私はそんな悪魔を冷酷に見つめ、更に追加で、刃先から大罪魔法・暴食を激弱で発動させる。

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ!!!!!!」 

 その感覚は恐らくだが、体内に直接タンパク質を溶かす液体を流し込まれている感覚。


 やり過ぎ?

 …私の大切な使用人達を殺し、エクラに攻撃を仕掛けたのだ。

 これでもまだ優しい方だよ。



 悪魔は鎌が抜けない事に囚われジタバタしていたが、死を間近に脳が覚醒したのだろうか、私のこの暴食が魔法であると気付き、

「きんきまほう・ぷろてうす!!!」

と、血を吐きながら宣言した。


 だがしかし。

「この力は大罪。禁忌程度で打ち勝てるものではな無い。」

 私はそう言って、プロテウスとやらを破壊した。


 悪魔は目を見開く。

「そ……んな………きんきが………おと……う……さん……………。」



 その言葉を最後に、悪魔の腕は力無く崩れ落ちた。

 真の絶望を前に、最後の糸が切れてしまったのだろう。

 こうして、長い戦いに、終止符が打たれたのであった。









〜全てを終えて〜


 私は生命魔法・リキッドサーチ改という魔法で、悪魔を見る。

 この魔法は、()()()()相手の状態や体力を測ることが出来るので、生死判定をするのに使われる。

 しかし欠点として、偽装の魔法で簡単に偽れてしまうというのがあったのだが、そこをしっかりとカバーし、なおかつある程度の部分を出来るだけ無くしたのが、この魔法だ。



「反応は……、無し。……まぁ、でも一応。」

 そう呟くと、私は結局瞳孔や呼吸を見る。

 倒したと思って油断して帰って、ページの最後の方でその手が微かに動く……みたいな展開にならない様にね。

 でもここまで確認したし、何なら暴食に身体の中全部破壊されてるから、まぁ多分大丈夫でしょ!!



 と、言う訳で。

 私は悪魔の腹から鎌を引き抜く。

 するとデロっとした赤い何かが……、グロいから見なかった事にしよう。戦闘中はともかく、戦闘後に冷静になったら結構グロく感じるな。


 それはさておき、私は

「氷結魔法・フロストエンケース。」

と唱える。

 すると、悪魔の遺体は霜に覆われ、やがてその身体はそのまま綺麗に凍り付いた。

 こうするのは別に追撃では無く、単純に後の調査に役立てる為だ。

 まあ後の事は今はどうでもいい。

 それより今は。







 私は絶界を解く。

 砕けた結界の欠片がキラキラ舞い落ちる様と、そこに佇む鎌を持った血まみれの美少女の輝く白髪も共にキラキラと光り輝く様は、あまりに幻想的な美しさを放つ。

 ただテラスの勝利を待ったエクラは、そんなテラスの姿を見て、密かに惚れ直していたのであった。

 ルーフは…、分かりやすいような、分かりにくいような……。



 そんな二人には悪いが、私には会いに行くべき相手がいる。

 なので私は、先程植物系の魔法に包まれたソフィの元に急いだ。

 未だに超越の魔法が残るその身体で、凄まじい速度でソフィの元に飛び込むと、そこには……。








「お疲れ様でした。姫様。」

と、私に微笑みかけるソフィの姿があったのであった。

 私は、ボロボロになってなお変わらないソフィの姿に、涙と同時に笑みが溢れる。

「お疲れ様って…。全くもう…。結構苦労したんだよ?………良かったぁ…、ソフィぃぃぃ…!」 

 ああっ、我慢してたのに…、涙が止まらない…。


 そうして涙腺が崩壊した私を、ソフィが優しく抱き締める。

 ソフィが暖かい。

 これが、どれだけ嬉しい事か。






 一通り泣き、落ち着いた私はソフィの胸元から顔を上げる。

 そして辺りを見渡すと、いつの間にか私の近くに集まっていたエクラとルーフの姿が。



 エクラは私が顔を上げるのを待っていたのだろう、私がエクラに話し掛けようとしたら、

「ムグっ。」

と、今度はエクラに包まれる。

 エクラは抱き締めている私の頭に涙を落としながら、

「ありがとう…ございます…!帰ってきてくださって……!ソフィ様を救っていただいて……!……やっぱり、テラス様は強くて格好良くて…。だからその…テラス様………愛しています……!」

と、改めて告白されてしまった。

 私は返事(オッケー)をしたかったが今喋ってもモゴモゴなるだけなので、強く抱き締め返すという形で答えてみた。



 その後もずっと離す気配の無いエクラ。

 私は正直そのままでも全然良かったのだが、

「あの…お姉さま…?」

と、ルーフが私の服の裾を小さく引っ張ったので、エクラに離してもらった。


 エクラからようやく離れた私を、ルーフは何だか怪しい目付きで眺めてくる。

 そして私の手を何だか妖艶に掴むと、

「改めまして、ルーフ・ホオヘノ・ヴェデーレですわ。……。」

と、名乗りだけ上げて俯いてしまった。


 その姿を見てエクラとソフィは、「?」を浮かべていたが、私の聴力だけは聞き逃さなかった。

「あぁお姉さまお姉さまお姉さまやっぱりお美しい肌綺麗髪綺麗瞳綺麗人柄綺麗もう全部綺麗下劣な血を浴びてもなおいい匂いこんな細い腕で私を守ってくださって見た目も中身も頭脳も天才あぁお姉さまお姉さまお姉さまお姉さま……………(以下無限ループ)」

 ……うん!この娘やっぱり怖い!






「えっと、ルーフ?と、とりあえず手を離してくれる?」

「あっ、えっ、ごめんなさい…!」

「え、いや、うん……。」

 別に怒ってないのに…と思いつつ、手を離してもらう。

 ただ、肝心のルーフはこれはこれで喜んでるっぽいし、まあ良いか。



 それよりも、今はこれから如何するべきなのか考えないと。

 そう考え、歩き出したその時であった。





 私の視界は急に狭まり、グラッと揺れる。

「っ…!」

 小さく声を上げつつ、その場に膝を付く。

「テラス様!!」

「お姉さま!!」

「姫様!!」 

 三人の声が重なる。

 三人から離れていた私は、駆け寄ろうとする三人を手で静止する。




 あぁ、忘れていた。

 古来から、大いなる力にはそれだけ代償が伴うのだ。




 幸いこれは、大罪の反動では無い。

 これは、超越の副作用である。

 超越は、ありとあらゆる身体強化の魔法を一気に自身にかけて、凄まじい力を得る。

 当然身体の負担は大きく、こうして一定時間が経ち超越の魔法が解除されると、身体強化で堪えていた反動が一気に身体にかかるのだ。



 私は全身に走る激痛に耐えつつ立ち上がり、

「ごめんルーフ…。私は限界みたいだから、後の事は任せる事になってしまうと思う……。この埋め合わせは……後で………っっ!!」

とルーフに託しながら、またしても膝をついてしまう。


「お姉さま…!?お、おまか、おまかせください…!」

 ルーフはパニックで、

「姫様!!しっかり!!姫様!!!」

 ソフィは珍しく取り乱している。

 だがエクラは、私の静止も無視して駆け寄る。

 そして、急いでその震える手で私を優しく地面に横たえさせると、私の頭を自身の膝に置く。



 この後、何が起こるのか分かっている私はエクラに離れてと伝えたかったが、もはや口は動かなかった。

 そんな私の頭を優しく撫でると、自分の動揺を必死に押し殺しながら、

「もう、大丈夫です。後は私達に任せて、テラス様は少し、お休みなさってください。」

と、安堵感を与えてくれた。


 そ…んなエク…ラのおか…げで……わた……し………は…………。




 そうして私は、()()苦痛を味わう事なく、夢の世界への旅行をしばらくの間許されたのであった…。







 エクラ、本当にありがとう。

 そして、ごめん。

 現実の私は多分今、







 全身から、血を吹き出しているだろうから。

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