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転生奇跡に祝福あれ  作者: ルミネリアス
第二章 崩壊へ
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第四十五話 王女を裏切りし者

 私は、少数精鋭(人手不足とも言う)な親衛隊に囲まれながら屋敷に足を踏み入れる。

 屋敷内に入ると小さくてカサカサ動く茶色い虫さんが私達を歓迎してくれたので、嫌でも長い間まともに手入れされていない事が一瞬で伝わって来てしまった。

 ゴっ……茶色い虫さんの他にも、某夢の国のメインキャラ(リアル)や、あとは単純にゴミなど、まあとにかく不潔である事がわかる。



 そんな館の現状を見て、親衛隊の一人であるアッフェがこんな発言をする。

「っ…!我らが姫様を、このような場所に踏み入れさせてしまうとは何たる不覚……!姫様、我らへの処罰は是非厳格に…!」

 え?いや別に君達のせいでは無いでしょうに。

(てかちゃっかり我『ら』って言ってるし。)

 うーん。姫という立場から考えると……、受け入れるべきなのか…?


 …まあ、仲良し親衛隊さんに処罰とか与えられないよねぇ…。

 仕方無い仕方無い、と私は心の中で頷くと、

「まぁまぁ良いから。それより警戒!、てね?」

と、かるーく返した。

 すると、先程の親衛隊の方は、

「なるほど……!流石の器の広さでございます…!私、感服致しました…!!」

と、涙を流していた。

 何故泣く……と思ったが、そういえばこの方、私の行動全てに意味を作っては、口癖の「なるほど……!」からの涙、という不思議な方だった。

 周りの他の親衛隊達も、「ああいつものね。姫様ドンマイ!」と言いたげな表情でこちらを見ていた。


 今日も、私達は平和です。









 その後も警戒しつつ談笑しながら、とかいう矛盾した状態で移動したが、何事も起きず私達は無事に問題の地下室への入り口に辿り着いたのであった。

 その入り口は報告の通り、階段下の物置みたいなスペースの床にあった。

 床に作られた扉の切れ目は、木目に沿って作られていた為、きっと目を凝らさなければ分からなかっただろう。



 入り口を前にして警戒を強めた親衛隊を横目に、私は目を閉じて感覚を研ぎ澄ます。


 しかし。


「………何も、聞こえない…?何故…?」

 私の聴力だが、実は『普通の魔族と比べたらまあ強いね。』ぐらいで、別にチートでは無い。

 でもそこに私の魔法、探査魔力風・探査魔力波・探査強魔力波を合わせた合体魔法、『全把握』が合わされば、例え超難解迷路でも一瞬で『ほぼ』全ての構造を知る事も、『ほぼ』全て音が発生した場所を知る事も出来る。


 ……そう。『ほぼ』なのだ。


 今回のケースがその『ほぼ』に当てはまる。

 非常に巧妙に作られた隠し扉は風すら通さず、今の私の魔法では探知しきれ無いのだ。




 自身の至らぬ点を改めて実感しつつ、私はもう一度『全把握』を発動させた。

 ……発動させたがやはり、音が全く発生していないようであった。



 しかーし!地下室の構造は(また隠し扉が無ければ)全て把握した!

 そして今そのマップが私の目の前に生成されたから、私の『全把握』が無駄になっ……?








「皆。一旦離れるよ。付いて来て。」

 私は途端に真剣な面持ちとなる。

 そして、地下室への入り口から少し離れた個室へと入った。



 その部屋も相変わらず不潔極まりなかったが、そんな事気にせず私はこの部屋に『防音』の魔法をかける。

 親衛隊は、私の突然の行動に対して不安げな表情を浮かべていたが、気にしない。


 続いてこの部屋を選んだその目的である、部屋の中心に置かれた古い木製の作業机の前に立つ。

 そして私は目の前に表示されている地下室のマップに目をやると、

「マジック・ドローイング……」

と言った後小声で、

「……改。」

と付け加え、魔法を発動させた。



 私の思いに答えた魔法が、私の目の前に映し出されたこの地下室のマップをこの作業机に描いていく。

「おお……!」

と、その光景を目撃中の親衛隊は感嘆の声を上げた。

 だが一人。今居る親衛隊のメンバーの中で唯一の魔法特化型であるメンバーさんは、その光景を前にして疑問符を浮かべていた。

 ……流石に、怪しまれるか。



 マジック・ドローイングはこの世界の魔法で、効果は使用者が思い浮かべた線や図形や絵などを、『魔力が宿っている物体』に描くという魔法なのだ。

 では、目の前の今まさにマップが描かれているこの作業机はその『魔力が宿っている物体』なのかと言いますと……。



 実はそうでして!たまたま屋敷内を『全把握』で確認していた時に見つけたんですよ!!

 しかも、地下室への入り口とそんなに距離が離れていない部屋にあるとか、これもう運命ですよね!!!!




 …なんて、ご都合主義的展開ではない。




 この魔法、実は私がマジック・ドローイングの魔法を改造して作った魔法で、マジック・ドローイング最大の欠点である魔力物体のみという制約を取っ払っているのだ。

 つまり今のこの状況は、決して運の良さで発生したものではなく私の努力で成り立っているものという事だ。


 さて、半分私の自作魔法のようなこの魔法。

 果たして親衛隊に見せても良かったのかともし聞かれたら、その答えは「今更でしょ。」だと思う。

 それに、今は自作魔法の秘匿性よりもソフィ達地下探索組の方が大切だ。




 私はマップが描かれ終えた机に近付き、そしてチョイチョイと手招きして皆を集めた。

 皆が机に描かれた線を眺めるのを確認したところで、私は話を始める。

「それは、私達がこれから侵入しようとしている地下室の全貌。」

 それを聞いて皆が驚いた顔でこちらを見た。

「それは後で説明するから。(しない)…それより今は、私が何故この一刻を争う事態の中わざわざこの部屋まで撤退したのか、それを話したいと思う。」




「まず、私が報告を受けたのは『微かな金属音』。その報告を聞いた私達はすぐ様出撃し、先程地下室の入り口へそんなに時間も掛からずに辿り着いたよね。そして直ぐに私は音の発生を魔法で探知しようとした。……でも、全く持って音は探知出来なかったの。」


 私はひと呼吸おく。


「…その時考えた可能性は二つ。一つは、地下室が私の魔法の範囲外に出るほど複雑である可能性。もう一つは、また地下室にも隠し扉がある可能性。……じゃあ、それを踏まえた上でこの描かれた地下マップをもう一度確認して。」

 私の言葉を受け、皆素直にマップを見た。

 すると一人、また一人と次々にその表情が変わり、

「え、おかしいわよね?」「ああ。姫様のお考えを踏まえるとそうなるな。」「だよね。これって……。」「いやそれは……。」

と、親衛隊は各々で集まって意見を出し合っている。

 そのガヤガヤから視線を落とし、私は机に描かれたマップを見た。




 そこに描かれているのは、長い階段の果に存在する、ただ一つの大きな部屋。何の特徴もない、シンプルな四角形の部屋。

 ならば可能性は三つだ。

 一つは、この四角形の部屋の何処かにまた隠し扉がある可能性。

 二つ目は、金属音を聞き取ってから私が辿り着くまでのこの間に、皆が全滅した可能性。

 そして三つ目は……。




 私は最悪の可能性を押さえつつ、再びガヤガヤに視線を戻すと、手を挙げ騒ぎを収めた。

 皆が静かになった事を確認すると、静かに話を始める。

「一度撤退したのは、この不気味な事実を皆に共有したかったのと、あの場では何処で誰が聞いているか分からなかったから。本当はこれからここで話し合いだったりをしたいのだけれど…、みんな分かっている通り時間がもう残されていない可能性があるから、これから突撃するよ。」


 私は後ほど知る事となった。

 この言葉が出撃の合図であり、






 悪夢の始まりの合図であった事を。











 再び地下室の入り口へと戻ってきた私は、一途の希望にかけてもう一度『全把握』を発動させたが、残念ながら音は掴めなかった。


 私の前を行く親衛隊の二人が扉を開く。

 小さな音を立てながら開いた扉の先は、それはそれは真っ暗であった。

 夜目が効く『テラス』にとって暗いというのは大した問題ではない。

 だが、

(怖っ!?何これ絶対行きたくない…。でもな…行かないと駄目だよね……。)

『私』にとっては大問題であった。



 …いや行きますけどね!





 マップで確認していた通り長い階段が続く。

 ただ唯一幸運だったのは、階段が広いので親衛隊の皆が私を囲んだまま進める点だ。

 おかげで少しだけ恐怖が緩和される。

 やっぱり、信頼出来る仲間の存在って生きていく上で必要不可欠だ。

 これ、前世でも今世でも変わらぬ事実ってやつだね。



 私が仲間の大切さについて再実感していると、私の鼻が、一番感知したくなかった匂いを感知してしまった。


「あっ、鉄臭い……。」


 思わず声を漏らしてしまったが、つまりそれほど嫌悪感を抱いたという訳だ。

 私のその発言を受け、親衛隊にも緊張が走った。

 私は最悪を考えて震えそうになる手を抑えつつ、先を急ぐ。


(どうか、どうか無事で居て……!)







 階段を下るにつれ鉄の臭いは強まる一方で。

 それでも私達は、共に強まる不安感を抑えながら進み続けた。

 ただ仲間達の無事を祈って。



 そして、遂に。





 その部屋は、石レンガで作られた倉庫や避難所と言うには広すぎる地下室だった。

 装飾品や棚などのインテリアも一切無い単調な部屋『だった』事が伺われた。

 地下へ向かったのは、総勢五名。

 そして、そのうちの三名が






 身体を切り裂かれた無惨な姿で床に転がっていた。








 皆が、眼前に広がる血の海地獄に横たわっている仲間の死体を無言で見つめた。

 我が国の主力として最前線で戦って仲間との別れを何度も経験してきた彼女達ですら、何も、話す事は出来なかった。



 だが、

「ソフィ!!!!!」

この血の海地獄で、たった二人。

 無惨に切り裂かれていない仲間のうちの一人であり、私の母のような存在である彼女の名を叫びながら、私は地獄に飛び込んだ。



 私は震える手で、地面に伏していたソフィを抱き寄せる。

 その身体は傷だらけであったが、何とかまだ命は残っているようであった。

 それを確認した私は、周りの目など気にもせず、祖龍の加護の力である『護癒』を最大出力で放った。

 その力は絶大で、ボロボロであったこの地下室の壁ですら修復してしまったが、この力は死を拒絶するため無惨に切り裂かれた三名はそのままの姿であった。

 ただ、ソフィともう一人の生き残りである猫耳族戦士のレーヴェの身体は問題なく綺麗に癒やしを与えられたようだ。

 しかし、傷が癒えただけで直ぐに意識を取り戻すという事は起こり得る事ではない。

 つまり、ここで何があったのかをソフィに聞くのはまだかなり先になりそう、と言う事だ。




 眼前の惨劇の脳内処理を終えたのか、それとも私の祖龍の加護の力に驚いて目が覚めたのかは知らないが、ようやく親衛隊は動き出す。

 その動きは見事で、仲間に駆け寄って泣いたりはせず、直ぐに私を取り囲み警戒態勢に入った。


 ……あれ、それじゃあ私ってあまりにも迂闊だった…?


 ま、まあ?こうして無事なんだし結果オーライって事で……あっ、はい。駄目ですよね。





 ……それより私はこの部屋に入ってから、いや、階段で鉄の臭いを感じた辺りからとある疑問を浮かべていた。

 ……敵、居なくない?



 私は階段を下りながら何度も何度も索敵の魔法を使いまくった。

 そして部屋に着いて、目視で部屋に隠し扉の存在が無い事を確認してから更にもう一度索敵の魔法を発動させた。

 しかしそれでも、私の可愛い可愛い親衛隊達をこんな姿にした存在は一ミリも確認出来なかった。



 さて、そんな今の私の目の前には二つの選択肢が存在している。


 一つは、ここに残って徹底的に現場を調べ、そしてこんな舐めた事をしてくれた犯人を考察するという選択。

 この行動は、今回の事件の早期解決に繋がるだろう。

 だが、この部屋に犯人が戻って来るとか、この部屋に何かしらのトラップが仕掛けられているだとか、とにかくありとあらゆる危険が考えられるのだ。


 そしてもう一つ。

 状況的にもエクラの事を考えてもこっちの選択肢しか取れないため、私は迷わずこちらを選んだ。

 それは、安定択であり安全策である、

「皆、撤退。」

であった。








 私と共に地下へと訪れた親衛隊の内、戦士系ジョブな二人がソフィとレーヴェを抱え、残りの私達と共に先程下ってきたこの階段を駆け上がる。

 何故これほどまで急ぐのか。

 それは、敵影が見えない以上、それが地上に潜伏している可能性も考えられ、更に言うと敵は私達がこうしてエクラの元を離れる事を狙って地上に潜伏している可能性だって考えられるからだ。

 エクラに渡した指輪には私の作り出せる最硬の結界魔法が封じられている為、そう簡単にエクラに触れる事は出来ないとは思うが、以前お母様の魔法が私の結界魔法を貫通した事もあった為過信する事は出来ない。



 地上に帰ると、そこには見るも無惨な姿のエクラが……!!


……とか絶対にやめてよ……?









 道中敵の不意討ちや罠を警戒していたのだが、これまた全く持って敵の姿も存在も感知出来ずに、私達は地上の馬車群に帰ってきた。

 私はソフィとレーヴェを任せると、膨らむ不安を

「エクラっ!!!!」

という叫びに変え、馬車に飛び込んだ。

 そこには………









「うぇ!?テラス様!?」

と、私が血まみれで突然飛び込んで来た事に驚いて目を見開いている可愛いエクラの姿があった。




「そんな……!そんな事……!!」

 私が、勢いのままエクラに抱き着こうと一瞬思ったけれど血まみれなので流石に自重した後、私を心配するエクラに何があったのかを手短に話した。

 私の説明を受け、酷く辛そうな顔を浮かべるエクラ。

 私はそんなエクラを抱き締めたくなったがやはり自重し、

「こんな事をしでかした敵はまだ見つかってない。そんな危険な状況だから、エクラには絶対にこの馬車から出てほしくないの。ずっと馬車の中は辛いと思うけど、どうか許して欲しい。この前教えたこの馬車の全ての機能は自由に使っていいから。…ごめんね。」

と、ふざけた対価を提示しつつエクラに、この馬車に軟禁します、と伝えた。

 エクラは慌てて、

「あ、謝らないでください!!今の状況で私が外に出ても皆様の負担が増えるだけだと理解していますから…!」

と答えた。

 その表情からは少しだけ悲しみのような、寂しさのようなものを感じた。

 だから私はすぐ様フォローを入れようとしたが、

「姫様!!大変です!!」

という声がそれを妨げた。

 後ろ髪を引かれる思いを感じながらエクラに背を向けると、私は馬車の扉を開く。

 そこには、例の『なるほど……!!』が口癖の親衛隊、アッフェが跪いていた。

「アッフェ、何があったの?」

 私は敵の襲来を覚悟し、直ぐに守護の結界魔法を展開出来るよう身構えた。



 だがその答えは、





「それが、なんとソフィ様が目を覚まされたのです!!」

という、奇跡の発生を伝えるものであった。











「ソフィが!?」

 私の心は驚愕と歓喜に満ちる。

 瀕死の状態だった。なので正直、数カ月目を覚まさない事だって覚悟していたのだが、まさか回復させてから一時間もせずに目を覚ますとは思いもしなかった。

 流石はソフィ。略してさすソフィ。

 立場が許さないので涙は堪えたが、果たして今から意識を取り戻したソフィを実際に目撃して、それが成せるのだろうk


「あ、あのっ!!」


 私が泣かないでいられるかどうかの心配をしていたその時、馬車の扉が開かれると同時に後ろから、可愛らしいと同時に凛々しくもある声をかけられた。

 振り返るとそこには、覚悟を感じる瞳を浮かべたエクラの姿があった……。







〜視点変更『エクラ』〜



 ……私は、テラス様のように強くも無ければ誰かの役に立つことも出来ません。

 そんな私が今馬車の外に出る事は、皆様の負担が増えるだけ。

 ……分かっているのに、この心で揺れている小さな炎に動かされ、馬車の中でソフィ様が目を覚ました事を聞いた私は、テラス様の命に背き思わず馬車の扉を開けてしまいました。

 何でもない、そう言って馬車に帰る事が最善なのは分かっています。

 でも……

(弱い私はもう嫌なんだ!!!!)



「テラス様っ!ご迷惑な事は分かっています。ですがどうか、ソフィ様の元へと私も連れて行って下さいませんか。……どんな事でも構いません。ですからどうか、私を役立ててください!私を使ってください!!そして私をどうかお側に置いて、………私を置いていかないで下さい……。お願いします……。」

 私欲に塗れ汚れているこの発言。

 見放されたって文句は言えないこの発言。

 でも、テラス様は。

「……エクラは最初、言葉すら書けなかったのに、そこから沢山努力して今では王族と並んでいても恥ずかしくない知識と教養を身に着けた。私は、そんなエクラの努力も気持ちも全て無下にしていたんだね。歩み寄ろうとするエクラを突き離して。……っあぁー!!本っっ当にごめん!!!これからはなるべく一緒に行動する様にするから……ねっ?一緒に行こっ?」


 あぁ……。

 テラス様は今日も、光り輝いています。

 そしてその輝きはまたしても私に向けられます。

 闇夜を輝かせる一筋の月光のように、その真っ白な腕が私に向けて伸びているのです。

 その輝きを掴む、それにはかなりの勇気が必要となります。



 …それでも、私は弱い自分を捨てる為に。

 今から、私は変わるんです…!!











 テラス様に腕を引かれ、ソフィ様が眠るテント前へと到着しました。

 ここは、屋敷の調査が終わるまでテラス様の使用人様方が生活をする為に臨時で建てられたテントです。

 このテントに着くまでに、アッフェ様が一通り何があったのかを教えてくださりました。

 アッフェ様は、その、不思議な喋り方をするお方なので、必要な部分のみを纏めると『一瞬目を離した隙に身体を起こしていた。そして、それに釣られるようにレーヴェ様も目を覚ました』となります。

 そしてテラス様曰く、こんなにも早く目を覚ます事は奇跡らしいです…!

 流石はソフィ様です!!



 

 それはともかく、アッフェ様、そしてテラス様に続いて私はテントへと入りました。

 中は臨時で建てられたとは思えないほど立派で、簡単な家具や沢山のベッドが並んでいました。

 そしてその沢山並んだベッドの内の2つに、ソフィ様とレーヴェ様が腰掛けていました。

 アッフェ様が、

「も、もう起き上がって大丈夫なのですか!?」

と驚いていました。

 かく言う私もそしてテラス様もかなり驚いたのですが。






 ソフィ様はまだ目を覚ましたばかりで意識が朦朧としているのか、少しボーッとしている様子でしたが、私達を見て、

「あっ、姫様。それにエクラ様。……申し訳ありません。まさかあのような事態となるとは思ってもいませんでしたので……。」

と、暗い表情で話を始めました。




 ソフィ様は続けました、

「あの時、私達五人組は姫様の命を受け地下へと向かいました。地下室には無事にたどり着いたのですが……、次の瞬間、レーヴェを除く残り三名が私とレーヴェの退路を断つ様に地上への階段前に立ちはだかったのです。そして、私とレーヴェに襲い掛かって来たのです。」

と。



 その言葉が意味する事は、テラス様への叛逆でした。



 私はあまりの事態に、声を出す事すら出来ず、ただテラス様の方を向く事しか出来ませんでした。

 しかしテラス様はこのような非常事態でも、落ち着いた表情で沈黙を貫きながらソフィ様の話を聞いているようでその姿に私は改めて惚れ……今はそれどころではありませんね。



 その後も、ソフィ様はその時の様子について語り続けました。

「私達に襲い掛かった三名は戦いのさなか、姫様の専属メイドとなった私にずっと恨みを抱いていた事を明かしました。そして、その後戦いは激化し、裏切り者三名を生かしたまま捕らえる事が出来るような余裕も無く、最終的に三名を打ち負かした後、私達は力尽きて意識を失ってしまったのです。……力及ばず、申し訳ありません。」

 そこまで語り終えたソフィ様は深く頭を下げ、謝罪の言葉を放ちました。

 その表情は悔み辛みに満ちており、ソフィ様の心情を考えると、とても見ていられません。




 ですが、テラス様はそれでも冷静な表情を浮かべ、静かにソフィ様を見つめていました。







 そして少しの静寂が訪れた後、ただ一言。

 そうです。ただ一言テラス様は述べられたのです。








「あらソフィ?今日はよく喋るのねえ。」

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