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転生奇跡に祝福あれ  作者: ルミネリアス
第二章 崩壊へ
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第三十四話 死地の花

「一体何事であるか!!!」

 王座の間、その入り口の大扉が激しい音を立てて開かれた。

 入ってきたのは国王スルンツェと護衛数名、そして宰相レミアとエクラだ。

 王座の間の壁には防音魔法がかけられてあり、王座の間内での会話などは一切外に漏れないようになっている。

 しかし、先程母の放った破壊魔法が王座の間の天井を貫通し、そのまま空まで轟音をたてながら打ち上がった為、この様に国王が飛び込んできたのであった。

 …多数の死傷者のおまけ付きで。

 ちなみに、レミアとエクラが何故最も早く駆け付けなかったかと言うと、姫である私が外に出るよう命じたためだ。

 勝手に中に入ったら、王族の命令に背いた事になるからね。

 玉座の間に入り、私の姿を見るや否や

「テラス様!?何をなされているのですか!?」

とエクラは叫ぶ。

 ごめんエクラ。まさか戦いになるとは思わなかったんだよ…。





 さて私は現在、王妃様の顔スレスレの玉座に鎌を刺し、そして王妃様の顔に自らの顔を近付けて居ます。

 王座の間内は荒れに荒れ、私の身はボロボロです。

 ここでクイズです!

 王様がこの状況を見た時、どう思うでしょうか。

 正解は…?

「こんの、反逆者がぁぁぁぁぁ!!!!!」

でしたー。

 って、そんな事を言っている場合じゃない!



 これは、第二回戦ですかね…。



 私は玉座から鎌を引き抜き肩に担ぐと、こちらを警戒する王様の取り巻き達と睨み合いながら、遠くに飛ばされたもう一つの鎌の元へ向かう。

 緊張が張り詰める中、私はゆっくりと移動し、鎌を回収した。

 床に転がっている鎌に優しく触れ、髪留めに戻し握り締める。

 兵士達は、突然鎌が消えたのでどよめいていた。

 そんな兵士達を無視し、私は袖の裏にある生地の縫い合わせにそっと髪留めを挟んで隠した。



 そんな様子の私に、お父様は話しかける。

「テラスよ。ここで何があったかは知らんが、今すぐ武器を捨て、大人しくするのだ。…お前のやった事は我が国に対する反逆と見なし、一先ず投獄させてもらう。良いな?」

 …良くないわ!!な〜にが投獄だ!!襲い掛かってきたのはそっちなのに!!

 そして、さっきから項垂れて一言も喋らない母は何なの!?何とか言ったらどう…って、気絶してる!?



 お父様は高圧的に、

「早く武器を捨てろ!さもなければ、武力行使に移らなくてはならなくなる。我とて、我が娘を傷付けたくはない。だから、大人しくするのだ。」

と私に告げる。

 続いてエクラは

「テラス様!お辞めください!!どうしてこの様な事を………。」

と言って、涙を流す。




 何故、私が悪者になっている。




「お父様!話を!話を聞いてください!!」

 私は必死に訴えかける。だが、

「御託はよい!話は牢の中で聞く。だからさっさと武器を起き投降するのだ!!テラス!!」

返ってくるのは怒号。

 だが、エクラは涙を流しながらもその瞳に強い意志を込めて私に叫ぶ。

「テラス様…!私は!私は信じていますから!だから…だから…!」




 何がお父様だ。何故信じない!




 その時、私の中で何かが切れたような音がした。





 もういい。

 私には、エクラだけが居ればいい。

 それ以外は要らない。





 私は、ただ、ポツリと呟いた。

「大罪魔法・憤怒。」

 私に、おぞましい絶望の黒きオーラが纏わり付く。

 憤怒の魔法、それは負の感情を力に変える魔法。

 父は気味悪そうに、

「テラス…?それは一体何だ…?」

と、問いかけてくる。

 きっと、今の私の単純なステータスは、父すら超えているだろう。



 …これなら。



 私は翼を生やし超高速低空飛行をしながら、父と取り巻きに向かって、鎌変形させた槍を、勢いに乗せ一投した。

「なにっ!?」

 その槍は凄まじい威力となり、取り巻きを吹き飛ばし、そして真正面から受け止めた父も

「ぐっ!ぐぅぅぅ!!」

と押さえ込んでいたが、

「ぐわぁぁぁぁ!!!!」

と、そのまま槍と共に壁を貫通し、吹き飛んで行った。



 そのまま、腰を抜かしているレミアと、静かにこちらを見つめているエクラの元に接近する。

 レミアは完全に怯えているが、エクラは何やら強い意志を感じる目をしていた。

 私は憤怒を解く。





 母によって開かれた天井の穴から、月光が射し込み私達を照らす。

 そして、私はエクラの手を取り、

「ごめんね、エクラ。これでもう私、お姫様じゃ無くなっちゃった。」

と、切ない笑みをこぼす。

 そんな私に、まるでエクラは全て分かっているかのように、

「私は、例えテラス様が何者となったとしても、私は貴方様のお側を離れませんよ。」

と、微笑み、私達は月日に照らされながら包容を交わした。

 父の取り巻きの血が、キラキラと月光によって輝き、幻想的な景色を作り上げていた。

 見上げると、そこにはあまりにも美しい満月が浮かんでいた。




 …へへ。終わりを迎えるには絶好の日だね。




 …でも、その前にやるべき事がある。

 これをしなければ終わりを迎える事など出来ない。




 私は、左手を背中に回すと、コッソリ異空間収納の魔法を発動させる。

 そして、エクラから少し離れる。

「テラス様…?」

 戸惑うエクラに向かい、私は突然かしづいた。

 それにより更に戸惑うエクラを気にせず、自身の背中に回していた左手を前に持ってくる。


 その手には、小さな小箱が。


 私はそのままの姿勢で、月光に照らされながら



「エクラ。私と結婚してください。」



と、二つに光る白銀の輪を見せながら静かに告げた。



 エクラは戸惑い、大粒の涙を流しながらも笑顔で、



「はい。」



と、応えてくれたのだった。





 気絶している母、腰を抜かし喋ることすら出来ていない宰相レミア、壁にぶつかりグチャッとなっている取り巻き達。

 そんな奴らを一切無視し、私はエクラの左手の薬指に指輪をはめた。

 魔銀鉱製の為、自動的にエクラの指のサイズに変化した。


「へへ、えへへ。…あ、テラス様も。」

 エクラは指輪を見つめ、だらしない笑みを浮かべていたが、我にかえり私の左手を取る。

 そしてエクラも、私の左手の薬指に指輪をはめてくれた。

「ありがとう、エクラ。…えへへ。」

 そして私達は、




 優しくて、暖かくて、そして長い長い口づけを交わした。

 組んだ手には、白く光り輝く二つの宝石が輝くのであった。




 長い長い口づけを終え、そのまま静かに見つめ合う私達。

 言葉は無くただ、お互いを伝え合うように。




 だが、そんな良い雰囲気を爆発音が破壊する。





 それは、私の終わりの始まりの合図である。





 私の槍が開けた横穴の先から、おぞましい恐怖のオーラが溢れてくる。

 そしてそれは、一歩、また一歩と近付いてくる。

 …ああ、来てしまった。でも、何とかエクラに指輪を渡す事が出来て良かった。

「エクラ。貴方は、沢山の幸せをくれたよね。初めて出会ったあの日、覚えてる?」

「はい。テラス様との大切なこの数年間、一時も忘れたことはありませんよ。」

 私はその言葉を聞き、感極まってもう一度エクラと口づけを、今度は短く交わした。

 そして…


「エクラ。愛してる。………ごめんね。」

 私はそう言うと、睡眠魔法を発動させ、エクラを強制的に眠らせる。

「そ…んな……テ……ラ………。」

 眠ったエクラを端の方に移動させ、そして四重結界を最高出力で張る。

 これで、恐らく安全だ。

 ごめんね、エクラ。きっと、優しい貴方は今から始まる事に耐えられないと思うから。





 私は、玉座の間の真ん中に移動しながら考える。

(結局、二つ目の選択肢になっちゃったな…)

 その時突然、横穴から真っ直ぐ何かが飛んでくる事を確認した。

 私は即座に後ろに飛び退くと、先程私が居た場所の一歩手前に、先程私が投げた槍が突き刺さった。

 あの槍に、主人の元に帰ってくる…なんて魔法はかけていない。つまり…

「テラス、武器を取れ。龍王たる我をなめたその態度、褒めてやろう。褒美に、我が直々に制裁を与えてやろう。」

というわけだ。





 流石は世界最強。母とは、本気は出していなかったとはいえ威圧感が違う。

 本能が叫ぶ。どんな手段を用いてでもこの場から逃げろと。

 絶対に勝てない事は分かっている。先程母に勝利したのは、母が私をなめ過ぎていたから。

 偶然に偶然が重なり手に入れた勝利。

 だが父は、そんな事絶対にしない。本気の姿ではないとはいえ、それでもその強さは計り知れないし、何度でも言うが勝てる存在ではない。




 だが、それでも、私は逃げない!!!

 もう理不尽に黙って屈するのは辞めるんだ!




 私は、震える手でしっかりと槍を握り締め、床から引き抜く。

 父は、今まで見たことの無い形相で横穴からゆらりと姿を表す。

 手には持ち手が龍の、黒い巨大なバスターソードが。

「……死ぬ覚悟は出来たか?テラス。」

 父はそう言うと、バスターソードをこちらに向ける。

「お父様こそ、話を聞く事は出来るようになりましたか?」

「……ほう。どうやら、余程死にたいようだな。」

 どうせ最後だ。煽ってやる!!

 ああもうヤケだ!!





 そして、戦いは再び始まった。

 …いや、戦いというより、蹂躙というべきであった。

 それは、あまりに一方的であった。

「くっ、ぐぁっ!」

 大罪魔法・憤怒+ブラッドブースト+その他のありとあらゆる身体強化魔法を自身にかけ、そして槍を大盾に変形させたにも関わらず。

 真正面からしっかりと父の攻撃を受け止めているのにも関わらず。


 私は、確実にダメージを負っていっていた。


 私は持ちうる全ての力を込めて、対する父は手に持つバスターソードのみだ。

 何度か私が魔法を放っても、すぐにかき消されるだけ。

 なんなら、私の魔法を無視して攻撃してきた事もあった。

 その際魔法は直撃したが、無傷であった。

 はは…ヤッバぁ……。




 逆転の一手など無い。ただただ私だけが死に近づいていくだけ。

 反撃のスキすらない、怒涛の連続重攻撃。

 ああ、本当に、エクラを寝かしていて良かった。

 こんな姿、エクラには見せられないよね。

「くぅ…!」

 父の攻撃に小細工は無い。有るのはただ力のみだが、それがあまりに強過ぎる。


 その時、ピキッと私の盾にヒビが入る音がした。


 勿論、それを見逃す父ではない。

 父はヒビの入った部分に今までで一番重い一撃を当て、そして盾ごと私を壁に打ち付けた。

 そして、盾は砕けちってしまった。

「かはぁっ…!」

 私は口から血を吐き出す。

 全身から激痛を感じる。

 視界が揺れる。

 意識が……。











 ……まだ…まだだ……。







 この身は間もなく終わりを迎える。

 だが…だがその前に…。




 私は壁から抜け出し、地面にそのまま力無く倒れ付す。

 途切れそうな意識を必死に繋ぎながら、私はゆっくり、自身の左手を顔の前に移動させる。

「もう、終わりであるか、テラスよ。」

 私は左手の薬指にある輝きを満足気に眺め。

「さらばだ、テラスよ。」

 そして輝きにキスを……………。











 しかし、いくら経っても終わりは訪れなかった。

 薄れゆく意識の中、

「あなた!もうやめてちょうだい!」

聴こえてきたのはそんな声であった……。
















 目を覚ますとそこは城の地下牢…では無く。

(知ってる天井だ……。)

 自室のベッドの上であった。

 身体を起こそうとしたら、全身に激痛が走った。私は堪らず

「いっっっ……!!」

と、声にならない叫びを上げる。

 って、あれ?

「あ"、あ"ー。」

 やっぱり声が出ない。喉も焼けるように痛い。

 てか私、こんなになってるけど生きてる…!

 え、一体どうやって…?

 まさか、私が意識を失うと何か…なんかこうものすご〜い力が覚醒して…!!…は無いか。

 意識を失う前、最後に聞こえたのはお母様の声だった…はず。

 何だか記憶が曖昧になっているな。何だこれ。



 何も出来ないし、取り敢えず記憶の整理でもするか。

 確かあの日は…ん?あれ、何でお母様と戦う事になったんだっけ…。

 そこら辺の記憶が全く無い。

 …まあそれは一先ず置いておこう。

 それで、お母様が…えーっとなんかになって今度はお父様が襲い掛かってきたんだっけ…?

 えーっと、あの時お父様なんて言ってたっけ。

 んー?何だか記憶が本当に抜け落ちているな。

 何だかそんな事よりももっと大切な何かを忘れている気がするのに…。




 その時、部屋の扉が開く音がした。

 首も動かせない為、誰が入って来たかも確認出来ないのがもどかしい。

 ……何だかチャパチャパと水の音がするな。

 水を運んできたのか?何故?てか誰!?

 そんな私の疑問達は一発で解決された。

「テラス様、お身体をお拭き致しますね。」

 ……その優しい声は!!

「エ"ク"ラ"!!」

 私のガッザガザな声に呼ばれ明らかに驚いたエクラは、隣の部屋から運んで来たであろう水を床にぶちまけた。

 だが、そんな事気にならないのか私に駆け寄って来た。

 そして、私の両頬がエクラの手に包まれた。

 その時エクラの左手に見えた白銀の輝きで、抜け落ちていた記憶が一気に蘇る!!!

「テラス様!!良かった…。ようやく目をお覚ましになったのですね!!あ、今すぐ皆様をお呼びしなければ!!!」

 そう叫び、エクラは制止する間もなく部屋を飛び出していった。

(なお相変わらず頭が動かせない為、音だけで判断しているよ!)

 じゃ無くて。

 ……そうだ。そうだよ!

 何で忘れていたんだ!私、エクラにプロポーズしたんだった!!

 こんな大事な事、どうして忘れて…ってそうか、母か。

 母がきっと、私に記憶の封印魔法をかけたんだ。

 全部思い出した。勿論ディセプションバースの事も。

 だが、それでも疑問に残るのはやはり私が今生きている理由だ。

 それは記憶が戻っても分からなかった。

 って、やばい。睡魔が………。










 薄く輝く暗き世界で、漆黒の天使はたいそう機嫌良く呟く。

『全く、あんだけ忠告したにも関わらず、馬鹿みたいに大罪魔法使いやがって。…でもまあ、最後まで私の言う事を聞いて嫉妬を使わなかった事だけは褒めてやってもいいがな……。』

 一先ずこれで落ち着き…ますかね?

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