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転生奇跡に祝福あれ  作者: ルミネリアス
第二章 崩壊へ
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第二十七話 王女、閃く

 朝日が部屋の窓から差し込み、私に朝の訪れを伝える。

 異世界に転生してからも、この朝の訪れの嫌な感じは変わらない。

 私は仕方なく身体を起こし、伸びをした。


 えーっと、昨日は確かエクラを抱き締めたまま眠ったんだっけ。ってあれ?エクラは?

 今日もエクラは先に起きたのかな?と思いながらベッドから降りる。

 そのままカーテンを開けると、朝日と共に街の風景も目に入ってきた。

 今日から私は、この街の復旧作業を指揮していくのかと改めて思う。


 先日の大反乱の影響で、城下町には大被害が出ている。しかし、他の街はもっと酷い状況らしく、滅んだ街さえもある。

 そしてこの街で今行われているのは、瓦礫の撤去作業だ。

 人族が、手当り次第建物に火を放っていったせいで、城下町は今、焼け野原のようになっている。

 どうしたものか…。




 そんな事を街を眺めながら考えていると、エクラが、脱衣所から(今度はちゃんと服を着て)出てきた。

「あ、テラス様!おはようございます。今日も、良いお天気ですね。」

と言うとエクラは、ソファに座ってのんびりとし始めた。

 うん、良かった。どうやら、元気になったらしい。

「そうだねー。……あ、そういえばエクラ?今日の街の復旧作業に参加するの?」

 そういえば昨日聞きそびれてたな、と今思い出したので、聞いてみた。

『無理強いするつもりは無いけど、出来れば参加してほしいな〜』みたいな雰囲気やノリが、私は前世から大嫌いなので、決してそんな雰囲気は出さない。

 でも出来れば参加してほしいのも事実なので、正直困っている。前世の私に言ってきた奴らもこんな気持ちだったのかな。



 そんな、複雑な感情を抱いている私の事など知る由もないエクラは、さも当然かのように、

「え?参加します。」

と、言ってくれた。良かった。

「分かった。ならエクラにして欲しい事がいくつかあるの。えーっと、どこ…あ、あった。この紙に書き出しとくね。」

と、この前魔術符作りで余った紙を取り出す。

 あ、棚からですよ。異空間収納じゃないです。


 そして、紙とペンを持ってエクラの左に移動、つまりソファに座って、ソファの前の机に紙を置いた私は早速、紙に書こうとペンを持った。

 すると何という事でしょう。エクラが腕を絡めてきたではありませんか。

 私は前世からずっと左利きなので、右腕に腕を絡められても特に影響は無い…のだが、これは文字が書ける書けないの問題では無い。

 え?お風呂あがりエクラは、いい匂い+暖かいの超破壊力なのに、そんな事までされたら死んじゃうよ?

 と、困惑して手が止まった私にエクラは、

「昨日、テラス様が望んだ事、それに答えて何が出来るか私なりに考えてみた結果です。それに、テラス様のお気持ちも、しっかりとお聞きいたしましたし♪」


 え。




 ぎゃぁぁ!!起きてたのかぁぁ!!

 …ま、まあ?別に嘘言った訳じゃないし?本当にあ、愛し…うわぁぁ!恥ずいぃぃ!!

 するとエクラは、私の右腕をギュッと抱き寄せそして…

「テラス様…♡」

 あぁぁ!!可愛いぃぃ!

 ぁ…死ぬ…。

(我が生涯に、一片の悔い無し………。)







 えー、お騒がせ致しました。

 現在私は、当初の目的であった紙に書き出すという作業をしっかりとこなしております。

 …エクラが、腕を絡ませたまま、ですが。

 自身を落ち着かせ仕事に集中する為に、今の私の脳内はお姫様モードに切り替わっております故、右腕から伝わってくる柔らかき感触には動揺しておりま……す、ごめんなさい。

 なんて、いつもの誰かさんに脳内で話しかける遊びをしながらもしっかりと、書き出している。

 そして、書き出しながら一つ一つ丁寧にエクラに説明をしていく。


「まずはこれ。上がってくる報告の取捨選択をするっていうのはまだ難しいと思うから、最初は情報の整理をお願い。これは、現場に設置されている臨時の司令室テント内に居るときにする事。取捨選択は私が隣でするから、私を見て学んでいってね。」

 エクラは腕を絡めながらも、真剣に私の話を聞いてくれている。この調子なら大丈夫だろう。


「次はこれね。実際に現場を視察する際は、私と一緒に来る事。私自らが行って現場の声を聞く事に意味があるの。正直、それで上がってくる問題よりもこっちのほうが大事。エクラは、最初は私にひたすら付いてきて、私の立ち回りを見て覚えていって。あ、あと笑顔を絶対に絶やさない!手を振られたら振り返す!これ大事!」

 まあ本当は、エクラのお披露目の為何だけれど黙っておこう。


「これが取り敢えず今は最後かな。私はきっと、よく突然呼び出しを受けて外に飛び出していく事が多いと思う。そんな時は司令室内で仕事でもして待ってて。そして私が不在の時に私を訪ねてきた魔族が居たら、基本は追い返して。でも、緊急でどうしても今すぐでないと駄目ってときは、これを使って。」

 そう言って私はおもむろに異空間収納を発動させると、中から二つの同じ形のイヤリングを出す。

 見た目はごく普通のイヤリングだが、違う点は、装飾に使われている赤い宝石…ではなくその縁に使われている金属が魔金鉱石と呼ばれている、魔力を宿した金の鉱石な点だ。


 エクラはとても興味深そうにイヤリングを眺めていた。

「これは、えーっとね、説明が難しいんだけど、遠く離れていても話ができるようになる魔法が込められているの。だけど、十分までしか使えないから、絶対に九分までしか使ってはいけないからね。本当に大変な事があった時、使い切っていて使えませーん、なんて事になったら大変だからね。」

 と言って、私はエクラに使い方を教える。

 使い方は簡単で、宝石の部分に指をおいて、通話開始と唱えるだけだ。

 それで勝手に相手に繋がる。そして通話を止めるときは、通話終了と言うだけ。

 まあ、要は通話アプリ+ワイヤレスイヤホン的な感じだ。

 十分しか使えないと言うのは、それだけしか魔力が込められないから。より上質な魔鉱石だったら、きっとより長く通話できるんだけれど。

 ちなみに赤い宝石は、ただの宝石です。



 説明を終えると、何だかエクラが期待の目で見つめていた。

「えっと…、エクラ?どうしたの?」

と言うと今度は、何だか少しガッカリとした目になる。

(え?何か間違えた?)

と、私が心配していると、エクラは私の右腕を離し、イヤリングを片方だけ手に取ると、私に近付きそして私の耳にイヤリングを付けた。

 耳タブを挟むタイプなので、イヤリングはとても簡単に私の耳に付いた。

 そしてエクラは微笑み、

「よく、お似合いですよ。テラス様。」

と言う。

 なるほど、そういう事か。

 私も、同じようにもう片方のイヤリングを取ると、エクラの耳に優しく付けた。

 そして私も微笑み、

「エクラも良く似合ってるよ。」

と言うと、何だかおかしくなって二人で笑った。






 いろいろあったがこれで説明は大丈夫だろう。イヤリングの動作確認も終えたし、いよいよ仕事を始める…じゃなくて、まずは着替えなくては。

 私はいつものようにソフィを呼ぶと、昨日用意させた着替えを、エクラに着させるように言って、私は朝風呂に向かった。

 と言っても、昼なのだが。




「あぁ〜今日も極楽だった〜。」

 入浴を終えると、既にエクラの着替えを済ましたのであろうソフィが、私の着替えとタオルを用意して待っていた。

 私はいつものようにソフィに身を委ねる。

 ここで変に、ありがとうとかを言うと少し叱られるので、普通に世間話をする。

「そういえば、結構前に料理長と作ったスイーツ食べた?」

「ああ、あのキナコモチ…でしたっけ。とても美味しかったですよ。他のメイド達もとても喜んで食べておりました。」

「良かった!あれはね……」

といった感じで。





 さて、着替えも済んだし、そろそろ仕事に向かおうか。

 昨日の現場の人たちとの会議中、特に時間の指定などは出されなかった。

 まあ、当たり前か。自国の姫に、何時に来てくださいなんて言えないよね。



 あ、そういえば昔と違って今は時計がこの街には普及しているのですよ?

 おかげで、詳しい時間が知れてとても便利になったんです。

 時計、誰が作ったと思います?


  わ  た  し  だ  。


 …なんてね。

 昔、詳しい時刻が分からないのが余りにももどかしくなって、そのままの勢いで作っちゃっただけ。




 まあ、こんなどうでもいい話はさておき、着替え終えた私は脱衣所から出る。

 するとそこには、とても美しいドレスに身を包んだエクラの姿が。

 おぉ…!私が選んだのでどんな服かは知ってはいたが、実際に着ているところを見てみるとこうも違うのか。

 蒼色のドレスに、エクラの綺麗な真っ白の翼がとてもよく合っていた。

 これなら、民たちの度肝を抜くことができる!

「綺麗だよエクラ!とっっても良く似合ってる!」

 私が思ったままの事を口にすると、エクラは少し照れながらも嬉しそうに、

「あ、ありがとうございます。私よりも、テラス様のほうがとても良くお似合いです!純白のドレス、とても美しいですね。」

と、私の事を褒めてくれた。

 この服は、王女の正装みたいなものなので特になんとも思っていなかったが、エクラに褒められると何だか誇らしく感じられた。


「ありがとー!エクラー!」

 そう言って、エクラをナデナデしようと近づく私を、ソフィが止める。

「姫様、それにエクラ様。イチャイチャはそれぐらいにして早くお仕事に向かってください。きっと、皆様が待たれておりますよ。」








 ソフィの注意を受けた私は、はーいと返事をしてエクラと共に部屋を出た。

 そして現在、私達は司令室テント近くまで来ているのだが、

「姫様!?とてもお早いご到着ですね!!」

「姫様!おはようございます!!」

「姫様の隣の方はどなたですか?」

「お隣の方もお美しいわ〜!」

と、民たちの大歓迎を受けていた。



 城を囲む塀の正面門の周りに設置されたテント群が、臨時城下町復旧作戦拠点だ。

 ここには臨時の生活環境が整えられており、既に上下水道に繋がる台所やトイレなどは完成してある。

 というのも、今回の人族の大反乱で上下水道に被害は殆ど出なかったのだ。

 だから、結構すぐに水関係のインフラは復旧の目処が立っていた。

 だが問題はやはり、全焼した家屋が多すぎて、街の一部が焼け野原のようになってしまっている点だろう。

 私がすぐに人族を引きつけたため、街のすべてが焼け野原と言う訳ではないが、私が人族を引きつけ、そして魔法をぶっぱしたエリア周辺の被害が尋常では無かった。

 あ、私が魔法で生み出した巨大な牢屋は、既に私が消していますよ。



 そんなわけで、さっさと街を復旧しなければならないのだが、

「姫様のご友人なのかしら?」

「ええ!きっと、高貴な方なのよ!」

「姫様もだが、姫様のご友人も美しい…。」

「立派でとても美しい翼ね…。鷹人族の方なのかしら。」

と、先程よりも多くの民たちに囲まれていた。

 どうやら私達は、思っていた以上に民達の注目を集めてしまっているらしい。

 エクラは、突然の事に驚いて視線が泳ぎまくっている。ここは私が何とかせねば。

「皆様!!私達が必ず、この街を復旧させて見せます!どうぞ私、テラス・テオフィルス・シュトラールと、私の親愛なるエクラをよろしくお願いします!……そして!私達は早速、復旧作業に尽力してまいります故、道を開けてくださいますか?」

 前世の選挙カーから響いてきていた言葉を思い浮かべながら、そんな事を言ってみる。

 すると、

「うおおおおおおおおおお!!!!」

「姫様最高!!!!!!」

「テラス姫様、マジかわええ…。」

「お隣の方はエクラ様と言うのね!親愛なるって、姫様とどの様な関係なのかしら!?」

と、大歓声が上がった。

 そして、司令室テントまでの道が開く。

 まるで、モーセにでもなった気分だ。

 そんなモーセ気分を味わいながら、私はエクラと共にその道を歩く。

 大歓声を受けながら。

 …うーん。有難いんだけれど、これ毎日されたら流石に面倒だな。動きづらくもなるし。

 何か対策を考えねば…。






 と言う訳で、なんとか司令室に入る事が出来た私達。

 そんな私達を待っていたのは、五人の魔族。

 五人とも我が国トップクラスの近衛兵で、今回私達を補佐してくれる方たちだ。


 我が国の近衛兵は、一概に近衛兵と言っても様々な役職に分かれている。

 まず近衛兵とは、兵士や魔法兵士、研究者から司書等々様々な役職から王、つまりお父様に認められて始めて名乗る事を許される特別な称号のようなもの。

 胸には、特別なワッペンのようなものを付けている。

 そんな近衛兵達には勿論、戦闘に秀でた者だけで無く、知略に優れた者も沢山居る為、今回の様な時に派遣される者も居る。

 そしてそんな近衛兵の中でも更に上位の、五つ星を胸のワッペンに付けた近衛兵こそ、彼らだ。

 とてつもない武勲をあげたり、魔法、魔導具の研究や開発において、素晴らしい何かを成し遂げたりなど、要は凄い事をして王にそれが認められたら、星を一つ貰えるというシステムがこの国にはあるのだ。

 一つ星を持つだけでも尊敬の眼差しを集める星を、五つ持つという事はつまり、この国の最高峰の人物というわけだ。




 そんな五つ星近衛兵さん達は、私達に自己紹介をしてくれた。

 五つ星近衛兵さん達のうち、三人は武を極めし者らしく、私達を守ってくれるそうだ。

 そして残り二人、猫耳族のカリンさんと兎耳族のセリーヌさんは、私達の仕事の補佐をしてくれるそうだ。

 …というか、カリンさんとセリーヌさんは私の顔馴染みで、小さい頃から仲良しだ。

 流石お母様、良い采配だね。




 さて早速だが、自称武を極めし近衛兵さん達には護衛の任務に付いてもらった。

 と言っても、ひたすらこのテントの前に立っているだけだが。

 基本二人がテント前に張り付いて、あと一人は休憩というサイクルをひたすら回してずーっとこのテントを守るらしい。凄いな。


 そんで肝心の私達だが、早速難航していた。

 エクラは現在、カリンさんに仕事の仕方を教えてもらっている。

 カリンさんに、エクラに仕事を教えてあげてほしいとお願いした時、

「分かりました姫様。…妹が出来たみたいで嬉しい…ハァハァ…。」

と言っていたので大丈夫だろう…多分。



 それはさておき、今私とセリーヌさんがブチ当たっている問題が、再発防止策と言う奴だ。

 今回街が壊滅した一番の原因は、やはり火事だ。

 前と同じ街を作り直すのは実は割と簡単だ。

 でもそれでは、いつかまた同じ様な事態になりかねない。

 だから、街に火災対策の何かを作らなければならない訳で。

 セリーヌさんが頭のウサ耳を垂らして、

「火災対策なんて、如何すればいいのよ…。何か新しい火災対策をしないと街を復旧する作業に移れないのは分かるけれど、だからって…」

と、不満を漏らし続けている。


 うーん。何か無いものか…。

 …あ、そうだ。前世に頼ろう!


 火災報知器?いやいや、あんなのそう簡単に作れないし、万が一作れたとしても、全家屋に配置なんて到底出来っこない。

 なら消化器は?…いや駄目だ。消化器の仕組みなんて知らないし。


 私は目を瞑り、前世の記憶を辿りながら考える。

 何か無いものか…。



 するとふと頭に、中学生の時に受けた社会の授業が浮かぶ。

 急に何故?と思いながら授業の内容を思い出してみる。


 それは、江戸時代のお話で。


 そして、授業内容の中に、遂に目的によく合うものを発見する。




 ああ、名前も忘れてしまった社会の先生。まさかの異世界で、貴方の授業が役に立つよ。

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