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転生奇跡に祝福あれ  作者: ルミネリアス
第二章 崩壊へ
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第二十一話 王女の一ページ

 窓の外から差し込む朝日に照らされる。

 私は、朝特有のいやな感情を抱きながら、起床する。

 すると、昨日も共に眠ったはずの少女の姿が確認できず、私は辺りを見渡した。

「あ、起きられましたか。」

 なんと、今日は珍しく彼女が先に起きていたらしい。

 彼女は、『数年前』に私の案で脱衣所&浴室に改造された、元資料室から顔を覗かせていた。


 …バスタオル一枚で。


 私はすぐさま顔を背け、

「ちょ、ちょっと!服を着なさいよ!」

と、彼女に伝える。

 彼女は、まるでいたずらに成功した子供のように笑い、

「ごめんなさい♪」

 と、脱衣所へと戻っていった。



 はあ…。朝から大変な目に合った…。

 私は、ベッドに仰向けになって、そんな事を考えた。






 私の名前はテラス・テオフィルス・シュトラール。十五歳。

 シュトラール王国の奇跡の姫である!…なんて、自分で言うのは流石に恥ずかしい。



 先ほど、脱衣所から顔を覗かせたのは、エクラ。正確な年齢は分からないが、私と同じ成長スピードであったので、同じく十五歳という事にしている。

 私が、彼女に前世の推しの面影を感じて一目惚れし、路地から攫った少女である。

 そんな彼女とこの城内で、同じ部屋暮らしを始めたのも数年前。

 当時の彼女は、初めは緊張していたが、今では先程のような調子だ。



 この数年間、私は彼女が前世の推しに近づくように、様々な教育を施してきた。

 え?洗脳?…知らない言葉ですね。



 まあ、その、結果から言うと、彼女は前世の推しそのものと言っていいほどにまで成長した。背中の大きくなった白い翼以外は。

 …いや、近付き過ぎた。


 彼女の性格だけでなく、行動までもが推しがやっていても何もおかしくないようなものばかりなのだ。

 だから、私は彼女の一挙一動その全てにドキドキさせられ続けているので、心臓が過労死しそうだ。




 そんな彼女だが、今では私の秘書のような立場にいる。

 何の知識もなかった彼女にとって、私の近くに居るものとして相応しくなる為の教育はかなり辛かったと思う。

 ただの日本人だった私も、ある日突然異国の王女になり、そして王女として相応しくなる為の教育を強制されたので、その大変さは分かる。

 しかし彼女は成し遂げた。どんなに難しい問題も乗り越えた。

 その努力の甲斐があって、今では王宮の皆が認める存在となっていた。

 …皆がエクラに注目する理由は、それだけではないと思うが…。





 脱衣所からちゃんと服を着て出てきたエクラからは、とてもいいにおいがする。

「お次どうぞ~。」

 エクラは私にそう告げ、ソファに座る。

 彼女はお風呂上り特有の色気を醸し出す。

 私がそれにドキドキしているのが分かってかどうかは知らないが、私に微笑むエクラ。

 今日も、私の心臓にとって忙しい一日となりそうだ。




 私はソフィを呼ぶ。

 すると、既に待機していたのか、すぐに部屋の中に入ってきた。

「おはようございます、姫様。いつもの、でございますね?」

「ええ、お願い。」

「かしこまりました。」

 その言葉を聞いた私は、改造された隣の部屋へと入る。

 元々付いていた正面の入り口は取り外され、今は、私とエクラの部屋からのみ入ることが出来る部屋となっていた。

 そこは脱衣所。そして、奥にあるのは浴室。



 私は、前世からいわゆる朝風呂の習慣があった。

 しかし城にある王族専用の浴場は、清掃のため朝は開いていない。

 そこで、自室の隣に浴場を作ったというわけだ。

 工事にはかなりの時間と労力、そしてお金がかかったが、そこは王族パワーで何とかなった。



 服を脱ぎ、浴室へと入った私を待っているのは、一人用にしてはかなり広い浴室と浴槽。

 まるで小さな銭湯だ。というか、まんま銭湯である。

 だって、意識して作ったからね。




 夜の入浴の時間はソフィが私を洗うのだが、ここでは断固拒否した。

 なので一人で体を洗い、そして湯船に浸かった。


「ふわぁぁぁ…」

 そんな声が自然と出る。もう数年前の事だが、未だにこのミニ銭湯を作った事のすばらしさを実感している。

 これこれ。この感覚よ。朝の冷えた体に湯の温かさが染みる。

 私はしばらくこの感覚を堪能するのであった…。





 その後湯船から上がり、タオルを巻いて脱衣所へと戻ってくると、そこには今日の服を用意し待機しているソフィの姿が。

「声、聞こえてきましたよ。」

「あらら。でも、とても良い湯だったのよ。」

「さようでございますか。」

 そんな会話をしながら、私の身支度は整えられていく。




 身支度が完了し部屋に戻ると、既に身支度を済ませたエクラがソファに座って居た。

 エクラの身支度も、ソフィが担当しているのだ。

 私たちの身支度の完了を確認すると、ソフィは退室する。



 そして私は、エクラの翼のブラッシングを始める。

 体と共に大きく成長したエクラの白い翼を、こうして丁寧にブラッシングしてあげるのが、私達の日課だ。

 ちなみに、眠るときはいつもこの翼に包まれて眠っている。

 いい香りと、その温かさはどんな高級布団よりも素晴らしい。



 え?なぜこんなゆったりとした時間を過ごしているのかだって?

 だって今から正午までは、私たち二人の時間なのだから。




 昔は、ソフィによる授業の時間であった。しかし今の私達に、もはや教育の必要は無いため、自由時間となっていた。

 じゃあ何をするかというと、エクラは勉強をし、私は魔法の研究をするのだ。

 私はこの自由時間のおかげで、睡眠時間を削っての魔法研究をする必要が無くなった。

 というのも、龍の力が覚醒した時から、夜になると眠たくなるのだ。

 それに昔、徹夜で研究をしていたらエクラに怒られた事だってあったし。

 そして今では、数十個もの魔法を新たに作り出していた。



 一方のエクラは、私の秘書として恥ずかしい事のないようにと、常に何かしらの勉強をしている。

 前に一度、どんな勉強をしているのか尋ねてみたら、なんと世界各国の法律について学んでいた、なんて事もあった。

 なんて、健気で良い子なのだろうか。



 そんな事を考えながら今日も頑張っているエクラを眺めていたら、不意に顔を上げたエクラと目があった。

「どうかなさいましたか?テラス様?」

 ぐわあああ!

と、あまりの可愛さ、いや、尊さに大ダメージを受けていると、エクラは立ち上がり、そして私に近づいて来た。

「テラス様。今は、どのような魔法を研究なさっているのですか?」

 そう尋ね、私の研究日記を覗くエクラ。

 尊い。



 私は深呼吸をし、自分を落ち着かせてからエクラに答える。

「今は、私の龍の力を使った魔法の研究をしているの。すでにいくつかは完成してあるのだけれど、もっと何かほかの魔法に活かせないか色々考え中で…」

と、その後も解説を続けた。

 エクラにとって、この話はよく分からない部分が多く、正直つまらない話だと思ったのだが、意外にも彼女は楽しそうに話を聞いたのであった。



 その後エクラは自分の席に戻り、勉強を再開した。

 そして私は、エクラには話さなかった研究を再開する。

 私には、ずっと完成できていない魔法がある。それは、転移の魔法。

 ファンタジーな世界に来たのならばこれだと思い立ち、もう何年経っただろうか。

地下大図書館の二階に転移陣がある以上、不可能ではないはずなのだが、どうやっても完成しない。

 それともう一つ、これは数年前の襲撃事件から教訓を受け、今後、魔封じの鈴のような行動を封じる何かが現れる可能性を考えて、その対策魔法も数年前から研究中なのだが、これもなかなか難しい。

 だってその何かが何かである以上、無数の可能性が出てくるのだから。


 まあそんなわけで、私の研究は難航中だ。






 途中で休憩を挟みつつ研究を続け、私達は正午を迎えた。


 今からは数年前から変わらない、いつもの流れだ。

 ただ少し変わったのは、エクラが付いてくる事ぐらいだろうか。


 正午に合わせ、部屋に入ってきたソフィによって、私は動きやすい服に着替える。

 エクラはそのままの格好で、着替え終え細長い革袋を持った私と共に部屋の外に出た。


 目指すは裏庭だ。





 私達が裏庭に着くと、そこにはお父様の姿が。

 そう、いつもの戦闘訓練だ。

「お!よく来たなテラス!それにエクラ!」

 今日もお父様は元気だ。



 私とお父様は準備体操を始める。エクラは、木陰に座って見学だ。


「はは!やはり、この準備体操とやらは気持ちが良いな!」

 準備体操を終えた私に、お父様はそう話しかける。

「ええ。とても良いですね。」

と、返した私を、何かを考えながら見つめるお父様。

「ふむ、お前は成長していくにつれ、段々とロアっぽくなっていくな。」

 まあ、確かにしゃべり方とか仕草とかは、お母様を模倣したからね。

「まあよい。では早速、始めようぞ!」

 そう言い、木刀を私に向けるお父様。

 それに対し私は、革袋から刀を取り出す。勿論、鞘は付けたままだ。


 この刀の名は桜花雪月。桜色の柄と鞘、そして刀身は雪の様に白く、その儚さはまるで月のよう…なんて、恥ずかしさマックスの命名をした刀だ。

 この刀は幼い頃、防御魔法について研究していた時、鉄の壁を生み出し、敵の攻撃を防ぐガード・アイアンなる魔法を知り、硬度をより高められないのだろうかという研究を始め、鋼の壁を生み出すことに成功し、そして更なる高みを目指して頑張ってみたら、まさかの玉鋼が完成してしまった。

 玉鋼を手に入れたら、やる事は一つ!と、刀の研究を始め、数週間後この刀が完成した。



 そんな刀の誕生秘話はさておき、私はお父様に向けて刀を構えた。



 少しの静寂ののち、打ち合いが始まった。

 私は、刀に龍の力を乗せ、全力で打ちかかる。

 何度も何度も。

 体も成長し、龍の力まで乗せた私の攻撃だが、結局、お父様に私の攻撃が通る事は無かった。



 近接戦闘において、おそらく世界最強のお父様。

 そんなお父様に、私は一度も勝った事は無かった。



 訓練を終え、木陰に座っているエクラに並んで座る私達。

「強くなったな!テラスよ!だが、まだまだ我を倒すことは難しいな!」

 そう言って笑うお父様。悔しいが、同時に安心感も得る。こんなに強いお父様が、この世界の平和の王であるなら大丈夫だと。


 その後、エクラを混ぜた三人での談笑会が始まる。

 昔は緊張し、返事を返すことしかできなかったエクラだが、今ではすっかり馴染んで、お父様やお母様にも受け入れられていた。






 近接訓練が終わった私に待っているのは、魔法訓練だ。

 私達三人は、共に執務室へと向かう。

 入室すると、そこには珍しく起きているお母様の姿が。

「テラス?何か言いたいことでもあるのかしら?」

 まずいバレた!

「い、いえ何も!それより、早速訓練へと参りましょう。」

「ええ、そうね」

 笑顔が怖いです、お母様。


 エクラは王族でないため転移陣を使えないので、ここでお別れである。

「それではテラス様、頑張ってください。」

 エクラに見送られ、私はお母様と共に転移陣へと向かった。




 無事に転移は完了し、いつもの平原に到着する。

 さて、いつも通り魔法を何発か使って終わりかな、なんて考えていたら、いきなりお母様が爆弾発言をしてくる。

「さて、テラス。今日は、久しぶりに全力でかかってきなさい。…実は私、知っているのよ。貴方が自分で魔法を作っている事。」

 …え?

「そ、そんなわk」

「貴方の使っているあの剣。あんな材質見たことがないもの。」

 あ、デスヨネー。


 …仕方ないか。

「…はい。その通りです…。」

 まあ、バレるのも時間の問題だと思っていたし、何ならむしろよく隠したほうだし。

 …べ、別に、焦ってなんかいないし!



 そんな私に、優しく微笑むお母様。あれ?怒ってない?

「あら、別に怒っているわけではないの。むしろ素晴らしい事よ。後で沢山褒めてあげるわ。…でもその前に、貴方の全力を私にぶつけてごらんなさい。話はそれからよ!」

と言って、いきなり魔法の石弾を私に打ち込むお母様。

 バレット・ストーンか!

 私は即座に飛行し、避ける。

「あら凄い。翼が無くても飛べるのね!」

 そう言いながら、無数の空気の刃を飛ばしてくるお母様。

 エアーソードは対空魔法の一つ。

 だがその程度で負ける私ではない!

「龍魔法、ドラゴンレイ!」

 絶大な威力を誇る龍の力を乗せた光線が何発も飛んでいく。

 しかし全て避けられる。

「凄い力ね!もっと、もっと来なさい!!」

 そう言い、お母様は見た事のない魔法を展開した。

 お母様から、赤い光線が飛ぶ。まるで、さっきの私の魔法を真似たように。


 私、いや、私の中の何かが、激しい怒りを浮かべる。

 私は、感情のままに次の魔法を放つ。

「龍魔法、七皇龍!」

 私の後ろに、大きな魔法陣が展開され、そこから六属性の龍の形の魔法を召喚する。

 火、水、雷、土、光、闇。

 それら六体が一斉にブレスのチャージをする。

 そして、七皇龍の最後、つまり私もためる。

「凄いわ!テラス!あははははは!!!!」


 ここで不意に冷静になる。

 え、お母様怖くない?

 まあでも、期待してくれているのなら、応えないと、ね。


「お母様!いきます!龍魔法、ナインオーバーブレス!」

 私は、六属性のブレスと、純粋な龍の力を乗せた計七種のブレスを放つ。

 それは見事に着弾し、辺りに轟音が鳴り響く。

 しかし私はここで「やったか!?」とか言って油断する愚者ではない。

 お母様ならば、確実に生きてくる。

 だからすぐに次の魔法を展開する。


 そして案の定、煙の中から一本の赤い光が飛んできた。

 ちゃんと警戒していた私は、しっかりと避ける。



 …そのはずなのに。



 私の腹部に激痛が走った。見ると。さっき避けたはずの赤い槍が刺さっていた。

「な、ぜ?」

 私は困惑しながらも、すぐに迎撃態勢に移行しようとした。

 しかし、体がとても重く感じ、思うように動けなかった。

 一体何が?

 私のその問いに答えるように、煙の中から高笑いが聞こえてくる。

「あはは!テラスの血、とっても美味よ!あはははは!」


 そうか、この槍、私の血を吸っているんだ!

 私は急いで槍を抜こうとしたが、抜けない。しかし血はどんどんと吸われる。

 不味い、不味過ぎる!


 …どうやら、あれを解禁するしかないようね。


 私は、今までこの力だけは皆に隠してきた。

 あの襲撃事件以来、一度も使わなかった呪われし龍の力。

「どうしたの?もう降参かしら?」

 解禁しよう。

「なら、これでおしまいね。」

 今こそ!



 私は、白い空気の流れを纏う。

 辺りの植物は死に、空気も死ぬ。そして、腹部に刺さった槍も、新たに飛んできた槍も、その全てが溶けて死んでいく。

 辺りは異様な気配に包まれた。


「テラス、貴方…!」



 煙は散り、辺りは白い霧に包まれる。

「星海。」

 その魔法で、辺りは満面の星空になった。

 そして私は、あの時の様に風に祖龍の加護を乗せ、辺りの自然を再生させていく。私の傷も、全回復した。

 とても、幻想的な光景だった。





「素晴らしかったわ。それにこんなに素晴らしいものを見せられたら、戦いなんて、続けられないじゃない。」

 そう言いながら翼を生やし、空中の私の隣に来るお母様。

 その姿と表情は、いつもの優しいお母様だった。




 その後、お母様は楽しくてついやり過ぎてしまったと、私に謝り、またいつものように二人で並んで座り、お弁当を食べたのであった。

 私の生み出した夜空を眺めながら。






 私とお母様はのんびりとした時間を過ごした後、転移陣で城へと戻ってきた。

 そしてお母様は今から仕事なので、執務室へと戻っていった。

 私は、私の帰りを待っているあの子の元へと帰った。







 部屋に入ると、そこには勉強をする少女の姿が。

 名前はエクラ。私の、何よりも大切な存在。

 彼女は私の姿を見て、とてもうれしそうに

「おかえりなさい、テラス様。」

と、私に微笑むのであった。






 これは、いつもと変わらぬ日常の一ページ。

 そして、これからもそのページ数を増やすはずであった日常。

 しかしこの後に続いていくはずであった次からのページは、その日の夜に、人族大陸に天から降り注いだ光の柱によって、黒く塗りつぶされていく事を、まだ誰も、知る由もなかったのである。

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