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転生奇跡に祝福あれ  作者: ルミネリアス
第一章 奇跡な幼少期
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第十七話 王女と精霊遺物

 エクラとのデートの翌朝、私はいつものように六時の鐘の音とともに目を覚ます。

 今日はシュトラール城に帰る日だ。

 なので、今日も朝から使用人達は忙しそうだ。


 コンコンっと、部屋の扉がノックされ、ソフィが入室してくる。

 そして、いつものような会話を繰り広げ、たまに怒られながら、身支度が済んでいく。

 そんな、いつもと変わらない朝だ。



 少し変わったのは、その後。

 身支度を済ました私は、ソフィと共にエクラの部屋に向かう。

 私がノックすると、中から小さな返事が帰ってくる。

 そして、入室し、ソフィがエクラの身支度を済ましていく。

 その間、私はエクラと楽しく会話する。


 これは、昨日の帰り道で話し合って決めた事だった。

 そして、今は大使館にいる為行わないが、ここがシュトラール城ならば、今からはソフィと勉強の時間である。


 その勉強の時間に、エクラの参加も決めた。

 一般教養や、礼儀作法も学ぶ為、丁度良いと思って提案したのだ。

 流石に、そこからの戦闘訓練には参加させないけれど。



 そんな時間を過ごし、エクラの身支度も済んだので、朝食の用意をソフィに任し、私は退室する。

 担当の者が居るのでは?と言われたが、ソフィのほうが信頼出来るから、と言ったら了承してくれた。

 昨日のデートで、私がいかにエクラを溺愛しているのかを察したのだろう。

 本当に、優秀なメイドだ。




 ところで私は一人、何処へ向かっているかというと、執務室だ。

 昨日は、ずっとエクラとのデートの話しかしなかったので、今日のシュトラール城への帰還について、話を聞いておかないとと思っての行動だ。

 決して、朝の挨拶のついでに昨日聞き忘れたから聞く訳ではない。




 大きな執務室の扉をノックし、名乗る。

 そして、入室許可の返事を待ち、入室する。

 部屋には、何やら難しい顔をしたお父様が居と、大使のヴェルデの姿があった。



「おはようございます。お父様、ヴェルデ様。何やら難しい顔をなされていますね。」

 その言葉に二人はおはようと返し、少し黙った後、お父様が事情を話す。

「実はな、我とロアがまだここに滞在せねばならなくなってしまってな…。」

「それは…。」

 一体なぜ、とは聞けなかった。

 聞いてはいけないかもしれないから。


「それがな、精霊国の貴族が、何やらカプリスの代表者と揉め事を起こしたらしくてな。その仲介国の代表として、事件解決までここに残らなくてはならなくなってな。」

 精霊国ムートは、問題児な人族の国で、カプリス共和国は、閉鎖的なドワーフ族の国だ。


 そしてムートは人族大陸に、カプリスは魔族大陸にある国の為、我が国の立場上、仲介として立たなければならないのだ。

 まあ、ムートは問題児なだけあって、こういった事はたまに起こす為、割と慣れっこだ。

 だが問題は別のところにあった。


 お父様がため息を漏らす。

「よりにもよって今問題を起こしよって。」


 そう、問題は時期なのだ。

 我が国はもうすぐ建国祭なのだ。なので、多くの国から使者が訪れるのだが、その際王座が空席という訳にはいかないのだ。


 だからといって、この事件を放ったらかしにすれば、ここから世界平和に亀裂が生じる可能性があるのだ。



 …詰んでる。いや、何か方法は…。


 あ、そうだ。


「お父様。ならば私だけシュトラール城へと帰還しましょう。それならば、他国からの使者への対応も出来ます。難しい判断が必要なものは、私が言って、保留にしましょう。空席で迎えるよりは幾分か良いと思われます。」

「「ふむ…。」」

 お父様とヴェルデの声は重なり、そしてやがて二人で話し合いを始めた。


 少しして、結論が出たのか、お父様が私の方を向く。

「…テラスよ。お前の案は、とても良いものである、というよりも、その方法以上に良いものは無いであろう。しかし、しかしだ。我は、お前を長い間一人にしてしまうことが心配なのだ。」

 と言いつつも、少し諦めの表情を浮かべているお父様。頭では理解しているのだろう。

 これが最善策で、逃れられぬと。


 私は、ただ真っ直ぐお父様を見つめ、強い意志を込めた笑みを浮かべる。

「私は一人ではありません。私のことを常に側で支えてくれるソフィもいます。城には、沢山の信頼出来る使用人達もいます。そして、エクラもいます。そんな彼ら、彼女ら、そして私を信じてはいただけないでしょうか。」



 長い沈黙の後、お父様がただ一言、

「強くなったな、テラス。」

と、言って笑ったのだった。



 お父様は近衛兵に命令し、お母様を呼ぶ。

 しばらくして、眠そうなお母様があくびをしながら入室してきた。そして、事情を聞くと、すぐさまキリッとしたお母様になる。

 その後、私を入れて長い会議が始まった。

 それは、これからを決める大事な会議であった。


 私は真剣に会議を聞き、執務における注意事項や、外交のこと、シュトラール城での立ち回りについての事…などを沢山学んだ。




 その後、会議で正式に決まった、私の案が大使館内の使用人達に伝えられ、私だけの帰還、そして護衛兵の選別など、大仕事が始まり、大使館内は更に大騒ぎになった。


 そして私は、この決定を直接エクラと、共に居るであろうソフィに伝えに行った。




「えっとつまり、数日の間だけ、代理で国王を務めることになったの。」

「ええええ!?」

 一通り説明し終えた私に帰ってきたのは、そんな驚愕の声だった。

「まあ、私達は予定通り帰るだけだから。今から何か特別やる事とかはないから安心して。」



 エクラはお、王様…?と呟いているが、別に大したことはない。一、二週間ほど王座に座ってればそれで良いのだから。

 あとは宰相がどうにでもしてくれるから任せればいい。

 何なら訓練が無いから、午後は休みなので、むしろ私にとっては休日同様なのだ。



 そのまま、私はエクラと少し話したあと、自室へと戻り、帰還の準備をする。と言っても、荷物を片付けるだけだが。



 部屋のタンスを開けると、既に衣服の類は無く、一つの細長い革の袋が吊るされていただけだった。

 既にソフィが片付けたのだろう。

 この革の袋は、触らないでとソフィに命令している為、このまま吊るされている。

 この革の袋にも、施錠の魔法をかけているため、私以外はこの袋を開けられない。


 私は袋を開け、中身を確認する。

 ヨシッ!



 研究日記も、わざわざ異空間収納から取り出して、革のバッグに入れる。そして、お菓子も取り出す。

 これで、私の準備は完了だ。


 外には既に少量の馬車が並んでいる。

 それに対し、護衛兵は大量に並んで待機している。


 さあ、出立のときだ!



 自分の馬車に荷物を積み終えた私。

 エクラは、すでに馬車の中で待機している。

「テラス!」

 呼ばれて振り返ると、そこにはお父様とお母様、そしてヴェルデが。

「なるべく早く帰るからな!」

と、お父様。

「国の事は、任せたわ。頑張って。」

と、お母様。

「立派なお姿ですな。是非、またお会い致しましょう。」

と、ヴェルデ。

 そして、沢山の使用人達に見送られながら、私はソフィと共に馬車に乗り、馬車はゆっくりと、シュトラール城へと進み始めたのであった。






 ここに来る前はあんなに行きたくないと思っていたこの世界都市ガラッシアも、離れるとなれば寂しいもので、何だか込み上げて来るものがあった。


 来てよかったな。ガラッシア。


 嫌な事もあったけれど、それを上書きする程の沢山の良い思い出が出来たこの街。

 何より、エクラと出会えたこの街は、最高の街だと私は断言する。



 その日は、馬車に揺られながら、外の景色をエクラと一緒に眺め、先程こっそり異空間収納から出しておいたお菓子をバッグから取り出し、馬車内の机に置き、それをつまみながら旅は続く。


 そのお菓子は、昨日のデートで買った物だったが、エクラも、そしてソフィも美味しいとどんどん食べていた。



 その後、目的の中間の街へと無事に到着し、その街の領主の館で休んだ。




 次の日。

 領主の館から出立した私達は、領主の館でこっそり異空間収納から補充しておいたお菓子をつまみながら、エクラと共に景色を楽しむ。



 このまま何事もなく今日中には城に着くと、この時の私は信じて疑わなかった。





 事件は、突然発生した。

 時刻はだいたい十九時ぐらいだろうか。辺りが暗くなってきている中、私達を乗せた馬車は、森の道を通っていた。

 エクラは疲れて眠っている。

 ソフィは、お菓子を食べていた。


 そんなのんびりとした時間だった。

 

 しかし突然、私の地図の魔法が赤い点を複数表示したのだ。

 この赤い点は、私に対して敵意や害意を持った生物を検知した場合に、表示されるのだが、明らかに馬車を囲み、狙っていた。

 これは、動物や、忌物ではない。



 私は静かに馬車に防御魔法を張り、そしてエクラを起こす。

「ソフィ、警戒。」

 その言葉に、即座に反応する優秀メイド。

 馬車内ですぐに警戒態勢へと移る。

「エクラ、おはよう。そして聞いて。」

「はい…?」

「今、この馬車は何者かに狙われている。護衛の人達がいるから大丈夫だと思うけれど、一応、警戒しておいて。」

「え…!わかり、ました…。」

 明らかに怯えているエクラ。しかし相手もこちらの護衛の数にビビっているのか、動かない。



 …?いや、これは何かを待っているの?



 その時、辺りに鈴の音が鳴り響いた。

 そして次の瞬間、ソフィは倒れ、私は身体がとても重くなった。

 エクラは…無事なようだ。

 私は、必死に声を出す。

「エクラ…。そっと…外の様子…確認…して…。」

「え、え、は、はい!」

 エクラは急展開に軽くパニックに陥っていたが、私の声で、動いてくれた。

 しかしその返答は、想像していた上で一番最悪であった。


「た、倒れています…!皆、倒れています!」



 昔、本で読んだことがあった。それは、人族と魔族の戦いの歴史の本。

 その中に、人族が精霊と契約を交わし、そして作り上げた七大精霊遺物について書かれたページがあった。


 先程の鈴の音。

 そして、この今の状況。


 この二つが完璧に当てはまる、精霊遺物はたった一つしかない。


「まさか…魔封じの鈴!?」

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