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ポーカーフェイスにゃ伽藍堂

作者: 独野ゆゑに

「お前、何考えてるか分かんないから話してもおもんないんじゃね?」

昔からの友人は「僕」を励ますつもりなのか貶す(けなす)つもりなのか分からない言葉をかけてきた。

「僕」はつい先日、半年ほど付き合っていた彼女と別れることになった。

彼女に別れ際に言われた一言は、「あなたとこのまま付き合っていても、何もなさそうだから」だった。

ただ、今の自分自身はそのことに対してもはやあまり傷ついていなかった。

それは確かに、別れを告げられた際は驚きもしたし、「わかった」と答えることしかできなかった。

しかし、別れて一週間後の今日は既に「仕方がなかった」としか思わなくなっていた。

「お前、昔から物わかり良いじゃん?親に言われたことは大体してきたし学校の勉強も俺とは違ってそれなりに出来てたじゃん。だから、おもしろくねー人間だなって思われたんだよ、きっと」

友人は「僕」の家のソファーに寝転がりながら、退屈そうにスマホを見つめてそう言った。

「親も成績も別に関係ないだろ」

「関係なくても、お前が面白くないことには変わんないだろ」

「じゃあ面白い人間ってどんな人間なんだよ」

「知らね。お前じゃないことだけはわかるけどな。YouTuber(ユーチューバー)にでもなってみれば?」

「なんだよ、それ」


友人とのくだらない会話。少し付き合ってからの失恋。よくある日常。こんなことは誰にだってよくあることなんだろう。そんなこと、17年しか生きてこなかった「僕」でさえ分かる。


でも「何もなさそう」だったり、「面白くなさそう」と自分が言われることはよく分からない。

母親からも「あんたは昔から表情筋が硬いのか、あんまり顔色が変わらないから何考えてるのか分かんなくて大変だったのよ。ポーカーフェイスってやつ?」と言われたことがある。


自分は誰かから「ない」と否定されるほど「何もない」人間なのだろうか。

そう思うと、途端に虚しさが「僕」を包み込んでくる。

だが、いざ「自分はどういう人間か」「自分は何者か」と「僕」に問うてみても答えは全く出てきそうにない。

やっぱり自分は「何もない人間」なのだろうか。


「もしもーし。大丈夫ですかー?コーヒー冷めちゃってますけど?」

そう友人に声をかけられたことで「僕」は顔を上げた。

少し前にマグカップにコーヒーを淹れたはずだが、湯気はすっかり消えてしまっていた。

「僕」はぬるくなってしまったコーヒーを一気に飲み干した。











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