聖剣と魔剣
私は黄泉。
私と光は魔族が生まれて離れ離れになった。
私は魔族の手によって持ち去られ。
魔族の中で一番強いものが私を使うという決まりで私は魔族の王、魔王の物になった。
最初は意識がはっきりしていたが。
純の闇から生まれた魔族が住む土地は闇が集まりやすいのか分からないが年月が経つごとに私の意識が混濁していった。
私の意識が完全に無くなるとそれからはただ闇を見ていた。
それは人の醜さをこれでもかと凝縮したかのような物だった。
だがそんなことも私はいえない。
だってこの生き物達を作ったのは私たちなんだから。
でも苦しかった。
私を使っていた神様が死ぬ時に抱いた憎悪も凄かったが集まればそれも凌駕することに驚いた。
闇のはずの自分が闇に飲み込まれるとは何とも。
だがもっともすごいと思ったのは魔王だった。
魔王はまるで私の持ち主だった神様が完全に悪に染まったお姿のようにも見えた。
最初はただのそういう見間違えなんだろうと思っていたが私が意識をなくす頃には見間違えとはいえないほど似ていた。
次に私が目を覚ますと魔王は死んでいた。
私は勇者の手の内にあった。
もう一方の手には光がいた。
それにはとても驚かされた。
私と同様、光も神々への憎悪は持っていると思っていたからだ。
話をしてみると確かに光は神々に憎悪を持っているそうだが海斗も女神を恨んでいて一緒にいるうちに海斗を信用したそうだ。
それから海斗は魔族が豊かに暮らせるように純の魔族を殺していった。
私も海斗と対話をしたかったがなかなかどうして私は人見知りで私の気持ちを代わりに光が喋ってくれた。
でもそのせいで私は海斗との絆を育めなかった気がする。
正直寂しかった。
でも何だろうな。
人がいっぱいいる所でご飯を食べて話を聞くのは楽しいんだね。
海斗が呼んでくれなかったらずっと知らないままだった。
黄泉はみんなが食事をしながら喋っている間一人夏帆のサンドイッチを味わいながらこんなことを考えていた。
次の日の朝。
海斗は部屋から出て下に降りてきた。
どうやら海斗が行っていた回復が海斗の精神ダメージを全て回復したようだ。
「おはよう」
「おはよう海斗!」
海斗は芽衣の突撃によって腹部を痛めた。
「痛えぇぇよ」
「治った?」
「ねぇ治ったの?」
「あれ?」
「楓と夏帆は?」
「昨日の昼頃に帰ったわ」
「疲れたって言って」
「そりゃあ、疲れるわ」
「色々あったしな」
「まあ全部海斗の所為だけどね」
「ねぇ芽衣さん」
「所為っていうのはやめてくれませんかね?」
「でも間違ってもないでしょ?」
「まあそうだけどさ」
「あれ?」
「光と黄泉は?」
「光と黄泉なら私の部屋で寝てるわよ」
「何でまた?」
「だってベットで寝たほうがいいでしょ?」
「ありがとうね」
「二人に優しくしてくれて」
「当然でしょ」
「それにしても今日からもう学校か」
「なんか休みを無駄にした気分」
「それにしても」
「参ったもんだ」
「痛かったわ〜」
「で?」
「今何時?」
「八時三十分」
「ん?」
「なんて?」
「八時三十分」
「い、急いで準備しなくちゃ」
「もう間に合わないんだしゆっくりと朝食を摂ってから行こうよ〜」
「そうはいかないだろ」
「早く準備しろよ」
「エプロン外して速く!!!」
「はいはい」
海斗と芽衣はそれぞれ部屋に行き制服に着替えると食パンを一枚咥えて家を出た。
「なんだよ芽衣」
「ご飯を作ってたんじゃないのかよ」
「いや、やろうと思ったのよ」
「でもなんだかやっても食べるのめんどくさいなって」
「なにその理由!?」
「っていうか夏帆は来なかった?」
「来たわよ」
「じゃあ」
「何で今こんなことに?」
「いや」
「今日、海斗はまだ体調が万全じゃないから休ませるって言ったら一人で学校に向かったわ」