変化
「お前には子供がいるよな?」
「ああいるとも」
「百を超えてから数えるのをやめたわ」
「それがどうした?」
「お前」
「子供がいるなら」
「世界をどうにかとか神をどうとかとかやめて」
「普通に政治して国を繁栄させても良かったんじゃないのか?」
「何を言っている?」
「我の最初は普通の生命とは生まれ方が違う」
「親の腹から生まれたわけでもなければ卵から孵化して生まれたわけでもない」
「我は世界の闇が固まりできた生命だ」
「この国に生きている者たちの元を辿れば我と同じ闇からできた生命だ」
「勇者なら知っているだろ?」
「我々、闇からできた生命は世に産み落とされた生きる全てに憎悪する」
「つまり分かるか?」
「我々、闇からできた者は自身の子にも憎悪する」
「つまりだ」
「我は子を憎悪する」
「我が真に信頼し愛するのは我と同じ闇よりできた生命の者のみ」
「そして何より」
「もし我がそれをしようとしてもあの忌まわしい囲がある限り神が常に我の当たりをチラつく」
「分かるだろ」
「我のように闇からできた第一世代の魔族は神やそれに連なる者を憎んでいる!」
「今俺はお前が憎くて仕方がない」
「そろそろ始めないか?」
「ウズウズが止まらないんだ」
「そうか」
「どんなに言ってもダメなんだな」
勇者は異空間から聖剣を取り出し魔王は椅子に座ったまま手を前に突き出し「来い」っと一言言うと床を貫き魔王の手に魔剣が握られた。
魔王はゆっくりと立ち上がった。
魔王が立ち少しの間、二人はお互いを見つめ合ったままでいた。
その時間を終わらせたのはお互いの持つ魔剣と聖剣だった。
この二本は元々、同じ一本の剣だった。
その剣は当時、神々同士の戦いで用いられた神器の一つだった。
その神器で葬られた神は数知れず。
だがその神器を持った神は戦争が終わり神の数が十分の一にまで減った状況では危険であった。
その戦争でその神器を持った神の陣営のトップは戦争が終わったことで神々のトップとなったがその神器の力を最も恐れたその神は神器を持った神の不意をつき神槍で串刺しにした。
その神が絶命した後に、神器は下界に落とされた。
決して他の神々が悪用しないように下界は大きなゴミ箱、何もなくあるとすれば神々がいらないと思った物だけそれにそこに入った物は探すことができても取り出すことができない。
それを利用したトップの神は神器を落としたのだった。
だがその神器は神器の持ち主であった神の憎悪で汚れ下界に落ちている最中に闇と光とで分離し魔剣と聖剣になった。
膨大な力を放っていた魔剣と聖剣はその力で神々が捨てた物を殆ど粉砕し聖剣は数多の星を作った。
魔剣は闇を作り何もない空間に宇宙を作った。
二本の剣は共鳴し合いながらある星に降りた。
二本の剣は共鳴し合うことで膨大なエネルギーを放出し続けた。
その膨大なエネルギーが殆ど尽きた頃には星に生命が誕生していた。
それはどれも天界と似た物だった。
だがあくまで似た物。
その生命は常に闇を作り続けた。
闇が溜まりに溜まった時、神々のトップに殺された神の憎悪が形を作りなった魔族が生まれた。
この二本の剣は今も共鳴し合いながら一本に戻ろうとしている。
剣は共鳴する時、聖剣は光放ち魔剣は闇を放ち耳に響く音を出す。
その音がなった時が二人の戦いの始まりだった。
二人の剣戟は激しかった。
それをもしただの人が見れば何が起こっているかわからないうちに聖剣と魔剣が発するエネルギーで身を滅ぼしていただろう。
勇者と魔王の剣での戦いは勇者が圧倒的だった。
最初はお互いに片手で剣を振るい攻撃していたが魔王はすぐにそれができなくなった。
魔王は力負けしたのだ。
単純に腕力で。
魔王はすぐに剣を両手で持ち勇者の攻撃を流すようにして剣戟を続けた。
それからも魔王と勇者は戦った。
時には魔法で時には体術で戦い魔王は魔王らしく一度倒すと姿を変えさらに強く更にもう一度倒すとまた姿を変え強く。
魔王は合計四回姿を変え強くなった。
一度も倒していない時は、身長が二メートルはある異形の顔をした大男だった。
一度目は先程までは纏まりがあり多少は人間に近い体をしていたのにも関わらず一度目は尻尾を生やし爪が太く伸び獣に近い体勢になった。
二度目は禍々しい角が生え大きな翼が生え体の大きさも三メートルほどになった。
三度目はもはや謁見の間に収まる大きさではなくなり部屋を自分で壊した。
見た目は骨が肉と皮を突き破り外に出てきていて全ての筋肉が肥大化していた。
四度目は打って変わって全てを凝縮したような見た目になった。
身長は二メートルほどに戻り最初とは違い細くなり顔は異形の顔では無くなり人間の美男子の顔になった。
三回目までは魔剣が体に合わせて大きさを変えていたが体が四回目はもはや魔剣と融合し神と殆ど同格の力を持っていた。
流石の勇者も無傷では倒すことはできなかった。
魔王は最初から魔法の攻撃が効きにくかったが最後はほとんどの魔法を無効化していた。
硬さも聖剣を弾くほどで攻撃は防げばその衝撃で壁にぶつかり壁を破壊するほどだった。
結果的に勇者は魔力と体力を全て使い切ったが魔法を倒せた。
魔王を倒した後の謁見の間は床と壊れた玉座を残して壁も天井も無くなり魔王の国の上空にあった広い曇り雲は魔王を倒した時に使った技によって晴れていったのだった。
魔王を倒した後は第二第三の魔王が生まれないように闇から生まれた魔族を全て殺し魔剣は聖剣があった場所に聖剣戻したあと聖剣と共鳴しないように聖剣と最も離れた土地に見つからないように祠を作り魔法で聖剣と同じように封印した。
魔王の国には魔王の長女が女王として君臨できるように勇者も助力し勇者が亡き後も魔王の国は魔王が支配していた時のような暗く殺伐とした国ではなく明るく民の笑い声が絶えず聞こえ他国の人も気兼ねなく入国できるような国へと変わった。
あれ?
そういえば。
海斗はゆっくりと目を覚ました。
「ぐっ」
海斗は目を覚ましたのに目の前が真っ暗で顔が何かで圧迫されているのに気づいた。
く、苦しい。
それをどかそうと海斗は思ったが両腕は動かないし足も何かが絡み付いて動かせない。
や、やばい死ぬ。
海斗はなんとか抜け出そうとして顔を一生懸命動かした。
「あ〜〜ん」
「そんな〜」
「ダメよ海斗」
「こんな」
「みんなが居るのよ」
そう言う言葉が聞こえると海斗の顔は更に締め付けられた。
「し、死ぬ」
<ギャスィフィケイション>
海斗がその魔法を使うと海斗はその場から消えベットの上に再び現れた。
そして先程まで顔を圧迫し動けなくなってしまっていた原因が分かった。
それは先程まで顔があった場所に芽衣がうつ伏せになって寝ていた。
そして動けなかった原因は今の夏帆と楓の寝相から見るに腕に抱きつき足を足で絡ましていたのであろうということ。
マジでか。
此処にいるのは三人に取ってまずい。
頭を冷やしてこよう。
海斗は窓を開けると外に出て空中を浮遊すると窓を閉め何処かに飛んでいった。
海斗が飛んでいって着いた場所はというと。
辺りで一番大きなビルだった。
「盲点だった」
「魔法が使えるか試した時になんで気がつかなかったんだ?」
「ふぅ〜〜〜」
「やってみるか」
「もしかして………な」
「出来るわけないよな?」