久しぶりの学校
海斗達はそれぞれのクラスへと向かった(芽衣は駄々をこねたが夏帆がクラスへと引きずるようにして連れて行ってから自分のクラスに行った)。
海斗は自分のクラスがある階に着くと何故だか色々な考えが頭駆け巡り足を運ぶのが怖くなってクラスではなく男子トイレへと向かった。
海斗は男子トイレに着くと洗面器で手を濡らし置いてある石鹸で手を洗い始めた。
やっぱりそうだ。
最初に此処に戻ってきた時は今まで積み重ねてきたもので出来た枯れたような精神状態だった。
でも此処に戻って来てからは急速にそれが潤いを取り戻していった。
多分こういう考え方で合ってると思う。
もともとあっちでは違和感が周りにバレないように精神魔法で自分に洗脳みたいなものを掛けて考え方や口調を若者にしたり歳によってその洗脳の内容は違ったけど掛けてた。
でもそれはこんな風に緊張や恐怖は感じなかったり。
どんなに誤魔化してもそれまで培って来た経験がそれを感じさせなかった。
でも今は違う。
精神が培って来たはずの感情の抑制がなくなっていってる。
いや違う。
もともとの経験量に戻って来ているんだ。
でも記憶はしっかり有るのに精神の経験量が戻るってどういう事なんだ?
まあ、今はもうあっちに行く前の思春期の男子とほぼ同じ精神状態と言っていいだろう。
そしてこの年頃だけかはわからないが一つの集団の中に自分だけ長期間休み戻る時というのはこんなにも足を重くするものだったのか。
もともと学校に来る前からこの感情はあったし色々考えてた。
でも芽衣がいたおかげで此処まで考え込まなくても良くなっていた。
でも実際に学校に着き一人になると考えがたくさん現れぐるぐると回り心臓の音が聞こえるぐらい早く強くなりほとんど無意識のうちに足が此処を目指していた。
人の目線や人が勝手に自分に向けて来ているかもしれない考えなんて自分が考えるなんて事しなかったはずなのに。
いやよく考えたら俺は今まで学校を一番長く休んでも一週間ぐらいだった。
あれもしかしてこんなに長く休んだの初めてか俺!?
それもあるのだろうか?
海斗の手は十分過ぎるほど綺麗になっていたが考えが考えを呼びただ無心に手を洗っていると誰かが肩を叩いて来た。
「あ、すいませんずっと居てすぐ洗いますので」
海斗は肩を叩かれ並んでいるのかと思い他の洗面器が空いているのにも気づかずそう言ってしまった。
海斗は蛇口を開け手についた石鹸を落とし水を出す時に付いてしまった石鹸を手に水を溜めその水を掛け石鹸を落とすとそそくさとその場を離れようとした。