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四大精霊の契約者  作者: 橙矢雛都
第2章『カル王国』
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23.その毒

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。




~*~



ものすごい勢いのとんぼ返りになってしまうが、屋敷の人たちに何も言わずに来てしまったのだからそろそろ帰らないといけない。

でも来ていることを知られているのに、国王様に挨拶していかないのは少しマズい。…かもしれない。

後々何か言われないように一言ぐらいはと思い、セトに謁見の許可を求めた。

そのついでに、聞きたいこともあったし。

さっきは緊急事態だったし、その人が誰であるか気にする余裕もなかったからちらっとしか見ていないんだけれど…


あの感じは。治せなくもない、と思う。

第一王子に使ったポーションよりかは質は下だが、高い品質のポーションはまだいくつか持っている。私の自作のものなので使用してもらうのはかまわないが、まぁその辺は本人がどうしたいかにもよる。



「…ねぇ、セト。王様、体調がすぐれないって聞いたんだけど」

「……どんな薬やポーションを処方してもなんの改善も見られなかった。何が原因なのか、病気だとしても何なのかが全く分からない。幸い、安静にしてさえいれば問題なさそうなんだけど…」



国王という立場では、完全な安静というのはまぁ無理だろう。

だからこその、現国王の退位と新国王の即位。この話が出ているのだと思われる。

セトは、どう思っているんだろう。



「父上、母上。入ります」



とある部屋の前まで来てセトがそう言った。どうやら考え事をしている間に到着したみたい。

連れて来られた部屋は、通常の謁見の場とは異なるようだ。正式な訪問ではないから秘密裏に、そしてこじんまりとしているのは私としてはありがたい。

あんなことがあった後だから、というのがあったりするかも。


…あれ? ネールとフィーラがいない。どこ行ったんだ…?



「お連れしました」



セトの両親、この国の国王と王妃が目の前にいる。失礼な印象だが、威厳があまり感じられなかった。

いや、良い意味でだけど。

一国のトップなら威厳というのは必要だろうが、それだけあっても意味がないと体現しているかのような人たちという意味だ。

だってセトもそうだ。セトは威厳というよりもカリスマ性があるって感じだし。

そんなことはさておいて。



「そう畏まらずに楽にしてくれ。そなたたちには迷惑をかけた」



他国の王と王妃だ。それ相応の所作と態度を示さねばならない。

所作云々はラティの(おこな)った動作を真似させてもらった。寸分狂わずほぼ同時にやったので、真似してるとは思われてないはず。

だって、基本的なマナーなら学び直したからできるけど、国王への謁見での所作なんてそんなもの分からなかった。だから開き直って真似しようと思ったのだ。

その方が確実だし。

助けてもらった恩義なのか、迷惑をかけた後ろめたさなのかは分からないが… なんにせよ、そこらの貴族よりも言葉を交わしやすかった。


いいのだろうか、それで… 本人方がよしとするのなら別にいいのだけど。

お互いに聞かれたことを答えるをしあっていて、そこには緊張のような堅さがあった。私は話している相手が国のトップだから。相手方はたぶん、私の腕に抱かれているレーダスが理由。

セトが、レーダスがどういう存在かを伝えたと言っていたし。

レーダスのことを聞きたいけれど、聞けない。お2人の心境はそんな感じだろうか。



「何故、レーダス様はずっとリルフィの腕の中に?」

「普段の姿に戻れないのはもちろんなんだけど、契約者である私が触れていた方が大きく消耗した精霊の回復が早いんだって」



とはいうが、元の姿といえど6歳くらいの子供の体格。今は力を失っているので少し小さくなったみたいだけど…

…ずっと抱っこし続けるのはちょっと辛いけどね。


私とセトが友好的な感じで話していることから、国王様たちの私への堅さがほんのちょっと和らいだ気がした。レーダスのことも聞いていいのだと思い、口を開きかけては閉じ、開きかけては閉じを繰り返している。国王(たちば)云々は除いて人として見れば可愛い人だと思った。

その辺りセトと似ている。親子だなぁ。



「……近くで見ても、良いだろうか?」

「…かまいません。どうぞ」



そっと近づいてきて、レーダスの目線に合わせるように腰を折った。触れることはレーダスが許していないのでできないが、見つめるその眼差しはとても優しかった。

国王様も、レーダスにとっては“グラシエの血の者”になる。当然、レーダスのことを探し求めていたはずだ。

…それにしても。



「(本当に… 顔色が悪い…)」



国王様がレーダスを見に近くまで来ているから、必然的に国王様の顔を間近で見ることになる。

ここまで近づいて分かるレベルではあるが、体調が優れないというのは真実であることはよく分かる。

立って歩くのも辛いのではないだろうか。それならば先程すぐに駆けつけられなかったのも仕方がないのかもしれない。

治せる、と思ったのは本当だが、こんな状態とは思わなかった。あれ、でも、この状態… どこかで…

見たことがある。そう思った時にはすでに手は動いていた。



「…すみません、失礼します」



私は国王様の首筋に手を当て、ほんの少しの魔力を流した。私の突然の行動にそこにいた誰もが驚いていた。

相手は一国の王だ。自分が何者であれ無礼な態度を取れないのが普通だが、意外なことに制止や咎める声は聞こえてこなかった。

こういう時こそラティが真っ先に止めてくれるのだけど、私のいつもと違う表情から察してくれて見守ってくれている。


私は医者でもないし薬師でもないけど、多種多様なポーションも作るし、治癒魔法も使えるからそれなりの診察はできる。

最初は見たことがある、というだけの違和感だった。でもその違和感が確信に変わる。



「……あの、体調不良は、いつからでしょうか」



声が震えた。これには私も驚いた。

そんなつもりではないのに。怖い、どうして、と感情がぐるぐるしている。



「貴方はまだ、間に合います。私が専用のポーション作るし、なんなら治癒もかけます。だから、お願い… 治して… 治ってください。母と同じ末路を… 辿らないでください…」

『なっ…!!』

『まさか~…』



私の言葉で気づいたサーラとアースが国王様に近づきじっと見た。

彼らも、私や母様とずっと一緒にいたのだ。見れば、分かる。だが、()()の入手経路がとか、誰がとか分かるわけがないし同じなわけもないので、だから驚いているのだけども。


正直、この国にも、この人にも思い入れなどない。全てのことに私が首を突っ込むのもあまりよくないことだと分かっている。

でもこのままでは母様と同じ末路を辿ると分かっているのに、見て見ぬふりもできなかったのだ。
















~*~




『アンタか―――!!!』

「ごふっ…」



フィーラの一撃が見事にクリーンヒットしたわね。意識飛ばしてないわよね? 大丈夫かしら…

途中からフィーラがずっと難しい顔してたのは気づいていた。というか私も嫌な感じがずっとしていたのを分かっているし、あの場にいた他のみんなも分かっているでしょう。

気づかないのであれば相当の愚鈍さよ。



『アンタ、何であの“種”を持ってたワケ?』



フィーラがその男、チギハム侯爵…だったかしら? ガン飛ばしながらそう問い詰めている。

フィーラと、私と… いつのまにか姿を見せているツェリが今この独房にいる。ツェリが特殊な空間を展開してくれたから、どれだけ騒いでも大丈夫だわ。

端から見たら美女に囲まれているような構図。少し鼻の下が伸びている顔にイラッときてしまって、私も3発ほど手が出てしまったわ。でもどれだけ騒いでも大丈夫。


そんなコトより、今問題にすべきはフィーラの言った種。

そう、あの“極小の種”は自然界にはないモノ。

あれはただでさえ存在する数が少ない花属性の妖精か、あるいは()()しか造り出せないモノ。

花のは私たち精霊の中でも、配下の妖精の管理を徹底して(おこな)っている。もしも奪われたってことであればすぐに分かるし、他にも知らせてくるはず。


花の自身に、何も起きていなければ、だけれど。

でもこの前念話が来たから無事だし元気であるのは確か。とすると配下の妖精()たち絡みだけど、何が原因なのやら。



『アンタが造ったのか、他から仕入れたのかどっち!? 仕入れたならどっから!? 誰から!? 全部吐きなさいよ――!』



もう… フィーラったら相変わらずねぇ…

私としても同情心なんて全くないから止める気はないけど。むしろもっとやってしまえと思ってる方かしら。

どうしたってこの男の自業自得じゃないの。

ツェリも私と同じで止める気はなく『あらぁ~…』と困った風に言ってるけど、実際はとても楽しんでるわね。


でも、ツェリだって、怒ってるわ。

大切な仲間を傷つけられたのだから。



「あの種は、とある商人から…」

『どこの国!?』

「ひっ! えと、メセチナ、からの…」



メセチナねぇ… 目立った問題はないはずなのに、どうしてこうも名前が上がるのかしら。

何かがある理由があるとすれば、多種族の国になりつつあることかもしれない。でもそれは良いこと、のはずなんだけど…



『じゃあ毒はどこから?』

「え、毒…?」

『国王サマに盛ってた毒よ!』

「ししししし知らない知らない! 確かに陛下は憎いが、でも殺そうなんて!」



嘘、ではなさそうね。コイツはただの妹に対する偏愛者なだけだわ。

毒に関しては別の誰かが犯人と考えた方が正解かもしれないわね。この男が起こす事にまぎれて王に危害を加えようとして… 要するに別の罪を背負わされかけたってところかしら。

別にコイツを助けるわけじゃないけども、その毒に関しては私たちにとっても不快でしかないのよね。


だって、ファルフォネを殺したのも“毒”なんだもの。

…リルフィ、大丈夫かしら。泣いてないわよね…?

向こうにはサーラたちも、ラーティだっている。泣いたとしても大丈夫だと今は信じましょう。



「種、は… メセチナにいる“少女”が造り出したと言っておりました」



あら、興味深い情報ね。

その少女がどのくらいの少女なのか知らないけど、調べてみるには十分価値のある内容だわ。



『フィーラ、今の情報。()()()に伝達しなきゃね』

『そうね! 了解!』




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