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   第九十五話  『7つの大罪』の名を冠する大悪魔だよ!?





「ちょっと待ってよ! 『暴食』のベルゼブブと『怠惰』のベルフェゴールっていったら、どちらも『7つの大罪』の名を冠する大悪魔だよ!? その大悪魔が、その2人だっての!?」


 大声を上げるリムリアに、ケーコが微笑む。


「そうよ。だって考えてもみて。いくら私がドラクルの一族でも、たった1人でチャレンジタワーを建設・維持するなんて出来る筈が無いでしょ?」


 確かにリムリアも言っていた。

 ドラクル最強の自分でも不可能だと。

 しかし大悪魔2柱の力を借りていたなら、それも可能かもしれない。

『暴食』と『怠惰』の名を持つ以上、べリアル以上の力を持っているだろうから。

 だが今、1番重要な事をリムリアは質問する。


「その悪魔はボク達の敵じゃないの?」


 べリアルは言っていた。

 悪魔は負の感情を力に変える、と。

 その負の感情を糧にする悪魔は、ドラクルの一族にとっても敵の筈。

 なのになぜ、ジャーマニア領の長老は悪魔と共に?

 しかしリムリアの質問に言葉は帰ってこなかった。

 帰ってきたのは。


「ひゅ!」


 鋭い呼気と共に放たれた、ベルゼブブの拳だった。


「ちぇ!」


 そのベルゼブブの拳を、リムリアは舌打ちしながら防御した。

 しかしそれは和斗のように、技で受け流したワケではない。

 ただ受け止めただけ。

 だから。


「きゃうッ!」


 リムリアは100メートル以上も吹き飛ばされてしまった。


「ふうん、身体能力は高いみたいだけど、それだけか」


 ベルゼブブをそう呟くと、和斗へと視線を移した。

 そして。


「さて、キミはどうなのかな!?」


 ベルゼブブは一声吼えると、和斗へと拳を叩き付けてきた。

 その速度は、リムリアに放ったモノとは桁違い。

 音速を遥かに超えるモノだった。

 だが和斗は衝撃波を纏ったベルゼブブの拳を。


「まだ甘いな」


 空手の技で柔らかく受け流すと。


「しぃッ!」


 勢い余ってバランスを崩したベルゼブブをポン! と押した。

 ……和斗にとって押しただけだったが、その掌底攻撃は。


「ぐは!」


 ベルゼブブを吹き飛ばした。

 その脇腹に、クッキリと手形を残して。


「く。べリアルを瞬殺したと聞いた時は、話がいい加減に伝わって過大評価されてるだけだと思っていたが、まさか過小評価だったとは……仕方ない、ベルフェゴール、力を貸して!」


 ベルゼブブが叫ぶと同時に。


「……めんどくさい」


 やる気のない言葉を口にしながらベルフェゴールが戦いに加わる。

 が、そのやる気のなさとは裏腹に、ベルフェゴールの攻撃は鋭かった。


 ベルゼブブの戦闘力はべリアルより上なのは間違いない。

 そのベルゼブブより、ベルフェゴールの戦闘力は遥かに上だった。

 しかも悪魔は煉獄力というモノを使用できる。

 つまり神霊力に匹敵する力を持っているから油断禁物だ。


 しかも連携して攻撃してくる。

 戦闘力の高いベルフェゴールが和斗の正面から。

 その隙をつくようにしてベルゼブブが攻撃してくる。


 このコンビネーションを捌きながら、和斗は考えを巡らせる。

 戦いを長引かせるのも上策とはいえない。

 ケーコが何を考えているのか分からないからだ。


 リムリアやキャス、ヒヨを攻撃するかもしれない。

 あるいは、悪魔はベルゼブブとベルフェゴールだけなのか?

 他にも見落としている事だってあるだろう。

 ならさっさと戦いにケリを付けた方が良い。

 そう判断した和斗は。


「装鎧!」


 マローダー改を身に纏うと、レーザー砲の照準をベルフェゴールに合わせた。

 そして神霊力を纏わせ、2兆℃で薙ぎ払……おうとした瞬間。


「参った!」

「……降参」


 ベルゼブブとベルフェゴールが、揃って両手を上げた。

 と同時に、ケーコも両手を上げる。


「もうちょっとアナタ達の強さを見てみたかったけど、その武器を出されたら降伏するしかないわね」


 そう口にしたケーコに、ベルゼブブが不満そうに漏らす。


「もうちょっとイイ勝負が出来ると思っていたのだけど、私では全く歯が立たなかったわ」


 悔しそうなベルゼブブと違い、ベルフェゴールは。


「レーザーは反則」


 それだけ口にすると、ケーコの横で座り込んでしまった。

 そんな2柱の大悪魔に申し訳なさそうな顔を向けた後。


「まずは説明しますね」


 ケーコは和斗とリムリアに女神のような笑顔を向けたのだった。





 ケーコが指を鳴らすと、テーブルセットと、何故かベッドが出現した。

 そのテーブルセットに座ったところで。


「ところで、その2人。さっきの戦い、本気じゃなかっただろ?」


 和斗はベルゼブブとベルフェゴールに鋭い目を向けた。

 そんな和斗に、ケーコはにこやかに答える。


「はい。カズトさんの力を、この目で確かめる為に協力してもらったのですが、危ないところでした。もしもベルゼブブとベルフェゴールが本気で戦っていたら、カズトさんも本気を出してしまったかもしれませんので」


 そしてケーコはベルゼブブとベルフェゴールに目を向けた。

 ちなみにベルフェゴールはベッドに潜り込んでいる。

 何故ベッドが? とさっきは思ったが、ベルフェゴールの為だったらしい。

『怠惰』の名を冠するに相応しい性格のようだ。


「このベルゼブブとベルフェゴールの実力は悪魔の中でもトップクラス。本気でなかったとはいえ、その2人の攻撃に顔色すら変えないとは驚きました。やはり実物を見ないと分からないものですね。これほどの戦闘力を持っているなんて、想像もしませんでした」


 そこでケーコは言葉を切って、真剣な顔で続ける。


「でも、まだ神霊力を操れていないわね」

「へえ、そんなコトが分かるのか?」


 驚く和斗に、ケーコはニコリと笑う。


「もちろんよ。チャレンジタワーを維持しているベルゼブブとベルフェゴールの煉獄力は、神霊力と同じようなモノなのですから。ついでに言えば、今回の腕試しの本当に目的は、カズトさんが神霊力をどのくらい使いこなせているか見る事だったの。もしも神霊力の使い方が未熟なら教えてあげようと思って」


 そしてケーコは和斗の目を覗き込んだ。


「カズトさんの神霊力は強大よ。でも、あえてハッキリ言うけど、カズトさんは神霊力の初歩的な使い方すらマスターしていないわ。だからどう? ココで神霊力の使い方を学んでみない?」

「ぜひ、お願いします!」


 即答する和斗に、ケーコが微笑む。


「とはいってもカズトさんの神霊力は桁外れだし、マローダー改を身に纏って戦えるのだから、神霊力の圧縮さえ出来れば十分なのですけどね」

「「圧縮?」」


 声を揃えた和斗とリムリアの前に、ベルゼブブが進み出る。


「こうするんだよ」


 その言葉と同時に、ベルゼブブの体を光が包む。

 そしてベルゼブブは和斗に向き直ると。


「いくよ」


 和斗に手の平を叩き付けてきた。

 そのスピードは、先程と同じ。

 当然ながら和斗は楽々と受け止めるが。


「うおッ!?」


 和斗は300メートル近くも弾き飛ばされてしまった。

 今の和斗は装鎧状態。

 つまり質量は182万トンもある。

 まさか、そんな自分が300メートルも吹き飛ばされるとは思いもしなかった。


「さっきまでとは威力が違う。やっぱり手加減してたか」


 表情を引き締める和斗にベルゼブブは苦笑する。


「確かに神霊力を極限まで振り絞ってなかったから手加減してたのは間違いないケド、もし神霊力を限界まで発揮してても、やっぱり負けてたわ」

「同感」


 シンプルな言葉でベルフェゴールが頷く。


「まさか大罪の悪魔2人でも勝てないとは思わなかった」


 と、そこでケーコが、思い出したように、ポンと手を打つ。


「そういえばタワークリアの報酬を渡していませんでしたね。今渡していいでしょうか?」

「「タワークリアの報酬?」」


 またも声を揃えた和斗とリムリアに、ケーコはニッコリと笑う。


「レベルアップです。いままでクリーチャーを倒しても経験値は手に入らなかったでしょう?」

「「あ」」


 いわれて初めて気が付いた。

 射撃ゲームに夢中で気が付かなかったが、そういえば経験値を得てなかった。


「ベルゼブブとベルフェゴールに勝った今、今まで倒したクリーチャーの分も合わせてマローダー改をレベルアップさせてあげられますが、今レベルアップしますか?」


 思いもしないケーコの言葉に、和斗とリムリアは顔を見合わせるが。


「「ぜひお願いします」」


 和斗とリムリアは、またしても声を揃えた。

 その返事を耳に捨てケーコは。


「では」


 それだけ口にして瞑想する。

 その直後。


 パラパパッパッパパ――! 

 パラパパッパッパパ――! 

 パラパパッパッパパ――! 


 レベルアップのファンファーレが3回も響き。


――累計経験値が114億になりました。

  装甲車レベルが105になりました。

  最高速度が29万キロになりました。

  最高速度到達までの加速時間が0・25秒になりました。

  質量が450万トンになりました。

  装甲レベルが鋼鉄220万キロメートル級になりました。

  ⅯPが19万になりました。

  装鎧のⅯP消費効率がアップしました。

  1ⅯPで75秒間、装鎧状態を維持できます。

  サポートシステムが操作できるバトルドローン数が300になりました。

  ドローンのレベルアップが第13段階まで可能となりました。

  神霊力が恒星5万個級になりました。

  耐熱温度    10兆 ℃

  耐雷性能  1000京 ボルト

  になりました。


 と、サポートシステムがマローダー改のレベルアップを告げた。


 それを耳にして、和斗が疑問を口にする。


「あれ? 耐熱温度と耐雷性能が勝手にアップしてる?」


――レベル105になったコトにより、耐熱温度と耐雷性能は自動的にアップするようになりました。


「そ、そうなのか。そりゃ有難い。って、それじゃあF15も自動的にアップした

のかな?」


――いえ、ドローン強化には、やはりオプションポイントが必要です。


「そっか、そりゃあ残念。でもついでだからF15を全機、レベル13までアップしてくれるかな?」


――必要ポイントは、こうなっていますが、宜しいでしょうか?



 重量(t) 最高速度(時速) 強度(鋼鉄相当) 航続距離  ポイント

『12』1260     9万km  1万km   67・5万  17万

『13』1400    13万km  3万km    104万  23万


 つまりレベル11から13に強化する為に必要なポイントは40万。

 114億ポイントもある今なら、僅かなポイント数だ。


 が、そこで和斗は、ある事に気付く。


「レベル13になれば水中での活動が可能になる、って表示されてるけど、コレって水中でも飛べる(?)って事か?」


――そうです。もちろん発生する衝撃波の及ぶ範囲は神霊力で限定できます。


「そりゃあイイな。これで陸、海、空の全てで有効な武器を所持できるワケだな」


 というコトで和斗は、即座にF15を強化したのだった。



 

 と、レベルアップと共にF15強化を終えた和斗を見つめて。


「むぅ。もう絶対に勝てない」


 ベルフェゴールが無機質な、しかし悔し気な響きを含んだ漏らした。


「そうね。もう神霊力の練習なんか必要ないくらい強くなっちゃったわ」


 ベルフェゴールに続いて、呆れた声を上げるベルゼブブに。


「いや、教えてほしい」


 和斗は首を横に振った。


「この世界には、破壊神を滅ぼしたチート転生者がいると聞いた。そして、いずれそのチート転生者と戦うコトになると思う。だから少しでも戦闘力を上げておきたいんだ。なにしろ神を滅ぼせるチート転生者の強さって、どれ程のモノなのか分からないんだから」


 そう口にした和斗にケーコが微笑む。


「良い心がけだわ。なら私達に出来得る限りの訓練をしてあげる」

「お願いします」


 ケーコは素直に頭を下げる和斗から、リムリアに視線を移す。


「貴女はどうしますか?」

「もちろん訓練を受けるよ!」


 即答したリムリアに、ケーコは。


「では、さっそく始めましょう」


 満足そうな、しかし厳しい声で答えたのだった。





2021 オオネ サクヤⒸ

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