第九話 コントローラーを使用しますか?
「属性も強化しておいた方がイイよな」
自動空気浄化機能を取得した後。
和斗は更にカーナビを操作した。
「ゾンビマンティコアと戦うのならコレで完璧だろうけど、他にも強そうなゾンビがいるのは分かってるんだから、いつどんなゾンビに襲われても対処できるようにしておくべきだな」
和斗はリムリアの言葉を思い出す。
『疾走ゾンビにビーストゾンビにデビルゾンビ、ゾンビドックやゾンビタイガーやゾンビブルやゾンビベア、ゾンビバットにゾンビイーグルといったゾンビ化アニマル。他にはゾンビグリフォンにゾンビマンティコア、ヒドラゾンビにドラゴンゾンビとかかな? とにかく危険なのはゾンビだけだよ』
つまりヒドラやドラゴンといったモンスターのゾンビと戦うコトになる、というコトだ。
ならばその準備をしておかなければならないだろう。
「ドラゴンといえばブレスだよな。ブレスかぁ……まず思いつくのは、焔と冷気と雷だよな。なら、その三つを強化しておくか」
そう呟きながら和斗は、カーナビを操作して属性強化の項目を呼び出す。
耐熱温度(火) (1000℃ = 10)
(3000℃ = 20)
1万℃ = 30
3万℃ = 50
10万℃ = 70
30万℃ = 90
100万℃ =110
300万℃ =150
耐冷温度(冷)マイナス(10℃) = 10)
(30℃) = 20)
50℃ = 30
70℃ = 50
100℃ = 70
140℃ = 90
180℃ =110
200℃ =150
耐雷 (雷) (1000ボルト) = 10)
(1万ボルト) = 20)
10万ボルト = 30
100万ボルト = 50
1000万ボルト = 70
1億ボルト = 90
10億ボルト =110
100億ボルト =150
第1段階と第2段階がカッコつきになっているのは、もう既に取得している為だろう。
「属性を全部、第3段階にアップさせるのに必要なスキルポイントは90か。第4段階までアップなら240、第5段階までなら450か」
今のスキルポイントなら、もっと上げれそうだ。
「いっその事、第8段階までアップさせるか」
耐熱温度を300万度。
耐冷温度をマイナス200度。
耐雷性能を100億ボルトにするのに必要なスキルポイントは1500。
それだけ使っても、まだ1664残る。
なら、万が一に備えて防御力を上げておくべきだろう。
今回みたいに思いもしない攻撃を受けて死にかけるのはゴメンだ。
いや、死にかけるくらいならいい。死んでしまったら元も子もない。
だから和斗は、カーナビを操作して、全部の属性耐性を第8段階までアップさせるコトにした。
マローダー改ステータス
耐久性能
耐熱温度 300万℃
耐冷温度 マイナス200 ℃
耐雷 100億 ボルト
「これで一安心ってトコかな」
表示されたマローダー改のステータスを眺めながら、そう和斗が呟いた時。
どん! ごん! がん! ずん!
鈍い音が聞こえてきた。
「おっと、そういや、ゾンビマンティコアを撃退した訳じゃなかったっけ」
防御態勢をアップさせて安心してゾンビマンティコアを完全に忘れていたコトに苦笑いしてから、和斗は考え込む。
「しかし困ったな。いくらマローダー改が100メートル防水になったといっても狙撃スペースは鉄格子のままだから、毒を吐かれたらアウトだろうな」
ひょっとしたら、狙撃スペースにも防水機能は働くのかもしれない。
しかしそうでなかったら、毒を吸い込んで死んでしまう。
そんな危険な賭けをする気などない。
「となると……車内から攻撃できるモンはないかな?」
和斗は搭載武器の項目を呼び出す。
Ⅿ2重機関銃 240
120ミリ戦車砲 8000
戦車砲塔 2万
トマホーク 9000
チェーンガン 2万
レーザー砲 80万
どうやら手持ちのオプションポイントで購入できるのはⅯ2重機関銃だけのようだ。
「ええと、Ⅿ2重機関銃ってのは、どんな武器なんだろ?」
和斗はⅯ2重機関銃にカーソルを合わせて、データを表示してみる。
ブローニングⅯ2重機関銃
使用弾薬 12・7×99ミリNATO弾
装弾数 ベルト給弾
全長 1645ミリ
重量 38.1kg
発射速度 485~635発/分 (Ⅿ2HB)
750~850発/分 (AN/Ⅿ2)
1200 発/分 (AN/Ⅿ3)
銃口初速 887・1 m/s (音速の約3倍)
射程 2000メートル (有効射程)
6770メートル (最大射程)
「え~~と、Ⅿ2重機関銃ってのは、バレットと同じ弾丸を連射できるのか。バレットと同じ弾丸を発射するのなら、ゾンビマンティコアだって簡単に撃ち倒せるだろうな」
和斗は、バレットが命中したゾンビが千切れ飛んでいったシーンを思い出して、ボソリと呟いた。
「よし、じゃあさっそくⅯ2重機関銃を購入するか」
和斗はⅯ2重機関銃購入をクリックすると、マローダー改の全体図とⅯ2重機関銃と表示された砲塔が、モニターに表示された。
どうやらⅯ2重機関銃を内蔵した砲塔を、何処に設置するか決めろというコトらしい。
「そっか……Ⅿ2重機関銃は小さな砲塔みたいなモノの中に設置されるのか。なら毒が侵入してくる事はないな。良かった」
などと和斗が呟いていると、カーナビに文字が表示される。
――どこに設置しますか?
「あ、ああ、そうだな。それじゃあマローダー改の天井部分の真ん中に設置してくれるかな?」
――了解。設置完了。コントローラーを使用しますか?
「コントローラー? 何だそりゃ?」
――Ⅿ2重機関銃を遠隔操作する為のツールです。
和斗は砲塔の中に潜り込んで重機関銃を操作しないといけないと思っていたのだが、どうやら運転席からも重機関銃を操作できるらしい。
「そりゃあイイ! ぜひ頼む!」
――了解。
モニターにそう表示されると同時にゴーグルと、コンピューターゲームのコントローラーそっくりの物体が空中に現れた。
「これってやっぱり、こういうコトだよな?」
和斗はゴーグルを装着するとコントローラーに手を伸ばす。
すると想像通り、外の光景が目に飛び込んできた。
真ん中に浮かび上がっている十字が、Ⅿ2重機関銃の着弾点なのだろう。
「なるほど。このゴーグルが外の様子を映し出して、コントローラーで狙い撃ちにするのか。射撃ゲームまんまだな」
コントローラーに付いているのは、十字キーが一つとボタンが一つ。
この十字キーで銃口の向きを操作して狙いをつけ、ボタンで発射するらしい。
「よし、さっそくやってみるか」
和斗は十字キーを操作してゾンビマンティコアに照準を合わせる。
十字キーの反応は早かったので、狙いを付けるのは簡単だ。
そして発射ボタンを押すと。
ドドド!
ボッ!
直ぐにボタンから指を放したにもかかわらず3発の弾丸が発射され、ゾンビマンティコアの頭が血煙を上げて消し飛んだ。
「こりゃあいいぜ!」
和斗は歓声を上げると、コントローラーを握り締めた。
まさに射撃ゲームを楽しんでいる感覚だ。
こうなると、的が残り3匹しかいない事が残念なくらいに感じてしまう。
「いや、さっき死にかけたばっかりだろ、和斗。油断しちゃダメだ」
和斗は自分を戒めると、Ⅿ2重機関銃のコントローラーを操作する。
ドドド!
ボシュッ!
2匹目の頭も消失した。
と、ここで自分達がⅯ2重機関銃によって撃たれている事に気が付いたらしい。
1匹のゾンビマンティコアが、大口を開けて襲いかかってきた。
が、銃口に真っ直ぐ向かって来るのは自殺同然だ。
ドド!
ドパッ!
Ⅿ2重機関銃の弾丸を口の中に食らって、ゾンビマンティコアの頭がグシャグシャに千切れ飛んだ。
「残り1匹!」
和斗が最後のゾンビマンティコアに照準を合わそうとコントローラーを操作すると、ちょうど逃げ出そうとするところだった。
「へえ、ゾンビも逃げ出すコトあるのか。でも残念だったな、逃がさないぞ」
ドドド!
グシャッ!
Ⅿ2重機関銃が3発の弾丸を吐き出し、ゾンビマンティコアの後頭部に着弾した。
もちろん頭部は跡形もなく消え失せる。
こうして簡単にゾンビを仕留める事に成功したところで。
「こりゃ何だ?」
和斗はコントローラーの両サイドのもボタンがある事に気付いた。
試しに押してみると。
「へえ、右ボタンがズームイン、左ボタンがズームアウトなのか。便利だな」
と、そこで和斗は、ズーム機能によって、思っていたよりも遠くまで見渡せるコトに気が付く。
「ひょっとして、これなら……」
和斗はズームインしたまま周囲を見渡すと、更に3匹のゾンビマンティコアを発見した。
十字キーをゾンビマンティコアに合わせると、1836メートルという文字が表示される。
おそらくゾンビマンティコアまで1836メートル離れているという事なのだろう。
ゾンビマンティコアまで約2キロ。
この距離は、和斗では狙撃など成功する筈もない、超遠距離だ。
しかしカーナビのデータによると、Ⅿ2重機関銃の最大射程距離は6770メートル。
そして有効射程距離は2000メートルだった。
なら、試してみる価値はありそうだ。
「さてと」
和斗は視界の真ん中の十字をゾンビマンティコアの頭に合わせ、チョンと発射ボタンを押す。
ガン!
こんどは1発だけ発射する事に成功し、そしてゾンビマンティコアの頭が吹き飛んだ。
「やった! これなら俺でも長距離射撃ができるぜ!」
そして和斗は残った2匹も正確に射殺する事に成功した。
と同時に。
――ゾンビマンティコア7匹を倒しました。
経験値1400
スキルポイント1400
オプションポイント1400
を獲得しました。
累計経験値が5000を超えました。
そうモニターに表示された。
「7匹で1400!? 1匹で200もポイントが稼げるのかよ、ゾンビマンティコアすげぇ!」
思わず和斗が喜びの声を上げたところで、レベルアップのファンファーレが響き渡る。
パラパパッパッパパ――!
――装甲車レベルが8になりました。
最高速度が180キロになりましました。
加速力が10%、衝撃緩和力が25%アップしました。
登坂性能が66度、車重が60トンになりましました。
装甲レベルが鋼鉄170センチ級になりました。
セキュリティーがレベル5になりました。侵入者をⅯ500レベルで排除します。
ⅯPが50になりました。
「うん、何度聞いてもレベルアップのファンファーレは嬉しいもんだな」
笑顔の和斗にリムリアが首を傾げる。
「レベルアップは分かったけど、どうやってゾンビマンティコアを倒したの?」
「あ、ああ、これだよ」
和斗はリムリアにゴーグルを被せると、コントローラーを握らせてから使い方を説明してやった。
「面白そう! ボクもやっていい?」
顔を輝かせ、目をキラキラさせながらそんな事を言われては断れる訳がない。
それ以前に、和斗がマローダー改を運転している間にリムリアが経験値を稼いでくれるのだから、文句などある筈もない。
「ああ、しっかり頼む」
「やった!」
こうして2人の旅は、和斗がマローダー改を運転し、リムリアがⅯ2重機関銃を操って経験値を稼ぐスタイルになったのだった。
2020 オオネ サクヤⒸ