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   第八十五話  チャレンジ・シティー





 これからの和斗の活躍に期待している。

 そう口にして和斗と握手を交わすザクセンに、ウィルヘルムが苦笑する。


「それは私のセリフなんですけどね」

「まあイイじゃないですか。ギルドマスターの影が薄いのはいつもの事ですし」


 手厳しいセリフを口にするニーダに、ウィルヘルムは苦笑を深めた。


「相変わらずの、口の悪さですね」

「口が悪いのではありません。手加減せずに事実を口にしているだけです」

「本当に手加減が無いですね」


 ブレないニーダに、ウィルヘルムは肩をすくめると。


「では冒険者ギルドに戻りましょうか」


 和斗には、本物の笑みを向けたのだった。






 こうしてギルドに戻ったところで。


「カズトさん、これからどうするツモリですか?」


 ウィルヘルムが、和斗とリムリアに尋ねた。


「ワラキアの姫との事を長老に認めてもらう為に旅している、とシュッツガルドから聞きましたが、ジャーマニア領の長老に会いに行くのですか?」


 その質問に、和斗より早くリムリアが答える。


「もちろん! さっさとカズトのコトを認めさせて、次の長老のトコに向かうんだい!」

「という事は……」

「そ。次の目的地は、ジャーマニア領の首都、チャレンジ・シティーだよ」

「言っておきますが、ジャーマニアの長老は手強いですよ」

「知ってる。ついでに今の領主もね。だから、思いっ切りカズトの力を見せつけてやるんだい!」

「……あまり無茶はしないでくださいね」


 再び苦笑するウィルヘルムに見送られて。

 和斗とリムリアは、チャレンジ・シティーへと旅立ったのだった。







 こうして道幅の広い街道を旅する事3日。


「あれがチャレンジ・シティーか。想像していた以上に凄いな」


 和斗は、そびえ立つ5つの塔を目にして呟いたのだった。


「どうカズト、驚いた? あれが試練の塔、チャレンジタワー。ジャーマニアの首都がチャレンジ・シティーって呼ばれる理由だよ」


 チャレンジ・シティーは、同心円状に広がる街だった。

 その中心にそびえ立つのは、5つのチャレンジタワー。

 高さ1キロはあろうかという、巨大な塔だ。

 その塔を指差しながら、リムリアが和斗に説明する。


「どのタワーも、10のフロアで構成されてて、迷路になってるの。どのフロアにもクリーチャーが配置されてて、最後に待ち構えるフロアボスを倒したら、そのフロアをクリア。右手の甲に星が輝くってワケ」

「星?」


 和斗の呟きに、リムリアが頷く。


「そ、星。チャレンジタワーのフロアは、クリアする為に必要な戦闘力が決まってるの。第一の塔なら、1階は10人に相当する戦闘力、2階なら20人に相当する戦闘力、3階なら30人に相当する戦闘力ってね」


 なるほど。

 フロアの階層の10倍の戦闘力が必要という事らしい。


「そして1階をクリアしたら、右手には白く輝く、小さな星が現れるの。10人に相当する戦闘力を持っている証拠としてね。これをミンナはリトルホワイトって呼んでるの」


 2階をクリアしたら白い星が2つ。

 3階をクリアしたら、白い星が3つ。

 それぞれ、ツーホワイト、スリーホワイトと呼ばれる、とのコト。


「で、10階をクリアしたら、星10個じゃなくて、白い大きな星に変わるの。通称ビッグホワイト。100人に相当する戦闘力を持ってる証だよ。手に現れる星の色も白だし、塔自体も白く輝いている事から、第一の塔はホワイトタワーって呼ばれてるんだ」


 そしてリムリアの説明によると。


 第2の塔はブルータワーと呼ばれるらしい。

 1階をクリアするには、100人相当の戦闘力が必要。

 2階をクリアするには、200人相当の戦闘力が必要。

 10階なら、1000人相当の戦闘力が必要だ。 

 もちろん塔は、青く輝いている。


 第3の塔はイエロータワーと呼ばれ、1千人から1万人に相当する戦闘力。

 第4の塔はパープルタワーと呼ばれ、1万人から10万人相当。

 第5の塔はブラックタワーと呼ばれ、10万人から100万人相当。


「しかしクリアしたら右手に星が現れるなんて、変わったダンジョンだな」


 素直な感想をもらした和斗に、リムリアが首を横に振る。


「違うよ。チャレンジタワーは自然に発生したダンジョンじゃなくて、ジャーマニア領の長老が1人で作り上げた建築物だよ」

「ええ!?」


 和斗は驚きの声を漏らしてから、改めて塔を見つめる。


「こんな巨大なモンを、たった1人で? どうやって?」

「分かんない」


 悔しそうに口にしてから、リムリアは塔へと視線を向けた。


「こんな大きな塔を5つも作り上げるなんて、しかもモンスターに加えてボスモンスターまで配置するなんて、ボクでも無理だよ。なのに、それを1人でやり遂げるなんて、どうやってんだろ?」


 リムリアの魔力は、ドラクルの一族の中でも最強と言われていた筈。

 そのリムリアでも不可能な事を、ジャーマニアの長老は成し遂げたらしい。

 どうやったのだろうか?

 いや、それよりも。


「そんな凄い塔、何の為に作ったんだ?」

「個人の戦闘力を、細かに区分けする為らしいよ」


 和斗の疑問に、リムリアが即答した。


「例えば冒険者の強さは級で表わされるよね? でも級が同じとしても、その強さはまちまちだよね」


 リムリアの言葉に、和斗は級による区分を思い出す。



 F  級……一般人並み

 E  級……1分隊(10人) に匹敵する戦闘力

 D  級……1小隊(50人) に匹敵する戦闘力 

 C  級……1中隊(250人)に匹敵する戦闘力 

 B  級……1大隊(1千人) に匹敵する戦闘力 

 A  級……1連隊(3千人) に匹敵する戦闘力

 S  級……1師団(1万人) に匹敵する戦闘力 

 SS 級……1軍(5万人)  に匹敵する戦闘力 



 しかし、この区分では、かなり幅がでてしまう。


 例えば、D級冒険者を呼ばれる者について考えてみよう。

 限りなくC級に近いD級もいれば、ギリギリD級という者もいる筈。

 つまり50人相当もいれば、249人相当もいるだろう。

 戦闘力に5倍の差が生じる可能性があるワケだ。


「だから仕事を依頼する目安になる程度に戦闘力を区分する為に、強さを計る塔を建設したんだって」


 なるほど。

 第1の塔で、10人単位。

 第2の塔で、百人単位。

 第3の塔で、千人単位。

 第4の塔で、万人単位。

 そして第5の塔で、10万人単位で強さを区分するワケか。

 これなら、戦力を計算しやすい。


 例えば、敵の戦力と味方の戦力を比較する時。

 味方の星の色と数により、かなり正確な戦況分析が出来るだろう。


「しかしリム。そんな塔を作るくらいだから、ジャーマニア領の戦力はかなりのモノなんだよな?」


 千人単位、万人単位、10万人単位で戦闘力が測定する塔がある。

 それは万単位、10万単位の強さを持つ者がいる、という事だ。

 まあ、第5の塔に挑める者はいないという可能性もあるかもしれない。

 それでも万単位の戦闘力を持つ者くらいなら、存在する筈だ。


 つまり、何が言いたいのか、というと。


「ならゾンビ騒動の時、それほどの戦闘力を持っていながら、なんでジャーマニアはリムを助けてくれなかったんだ?」


 そう。

 リムリアを助ける事が出来たのではないか、という事だ。

 そんな和斗の質問に、リムリアは寂しそうな笑みを浮かべる。


「ジャーマニア領は、ドラクルの一族の中でも頭一つ飛び抜けた戦力を保持してるんだけど、その高い戦力の所為で、ジャーマニア領だけの判断では、ジャーマニア領の外への戦力派遣は出来ないんだ」

「それは、ジャーマニア領だけじゃなかったら派遣できるって事だよな?」


 和斗の声が、一気に不機嫌になった。

 リムリアを助ける事が出来る戦力が、この世界にはあったのだ。

 なのにリムリアは、たった1人で絶望的な戦いに挑んでいた。

 つまりジャーマニアは、リムリアを見殺しにしたようなもの。

 そんなヤツを、許せるワケがない。


「ドラクルの一族ってのは、俺が思ってたよりクズだったのか?」


 声に怒りを滲ませる和斗の手に、リムリアがそっと手を重ねる。


「違うよ。あの時、数人の長老と連絡がつかなくなってたんだ。そしてジャーマニア軍を動かすには、長老全員の承認が必要なんだ。これは世界の国々に、ドラクルの一族が脅威と認識されない為に、絶対に必要な事なんだ」


 そしてリムリアは、和斗の目を覗き込む。


「これはドラクルの一族の、いってみれば心意気みたいなモンかな? 1度決めた事は、自分がどうなろうと守り抜く。自分の都合で約束を破ったりしない。それがドラクルの一族の誇りなんだ」

「ぐ」


 和斗は言葉を失った。

 怒りで目が眩んでいたが、自分の考えは甘すぎた事を痛感する。

 クーロン帝国はクズだった。

 しかし、その戦力は、世界にとって脅威だ。


 そしてドラクルの一族の戦闘力も、この世界にとって驚異となりうる。

 だが、リムリアによると、世界からは驚異とみなされていないらしい。

 それは大きな戦力を安易に動かさないと表明しているからだ。

 ドラクルの一族は、世界に表明した事は絶対に守る。

 だからドラクルの一族は、世界から信頼されているのだ。

 世界中で嫌われている、クーロン帝国と違って。


「そうか」


 短く告げた和斗に、リムリアが頷く。


「うん。だからボクは長老会にもドラクルの一族にも、何の恨みもないよ。まあ長老と連絡が取れなかったのは、クーロンの陰謀だと思うから、そこは一刻も早く改善してもらいたいケドね」


 リムリアの実年齢は分からない。

 しかしドラクルの一族の基準では、まだ幼いらしい。

 だが、その誇りの高さと自覚は、ワラキアの姫に相応しいものだと言えよう。

 そんなリムリアが無性に誇らしく、そして愛おしく感じた。


 だから和斗は。


「よし、長老に、その事も進言してやろうぜ」


 そう言いながら、リムリアの肩を抱き寄せたのだった。





 チャレンジ・シティーの街は、タワーを中心に同心円状に広がっていた。

 大きさは直径30キロメートル。

 街全体を、高さ30メートルもある城壁が囲む。

 そして都市の中も城壁が築かれている。


 半径10キロの城壁で囲まれた区画が、第2都市区域。

 さらに、その内側。

 半径5キロの城壁に取り囲まれた区画が、中心都市部だ。

 その中心都市部に向かいながら。


「賑やかな街だな。活気に溢れてる」


 和斗は、そう呟いた。

 今、マローダー改はメインストリートを進んでいる。

 そのメインストリートの両側に並ぶのは、様々な店だ。


 宿屋、酒場、食堂、カフェ。

 武器、防具、道具などを売る店。

 衣料品、食料品、医療品、生活用品を扱う店。

 本屋に劇場、カジノに娯楽施設。

 高級品を扱う店、薄利多売の店、庶民的な値段の店。

 多種多様の屋台。


 どれも人で溢れ返っている。


「これが、この星の文明ですか」


 キャスも興味津々という様子だ。

 まあ、無理もない。

 20万年ぶりに目にする、外の世界なのだから。

 そんなメインストリートを抜けて向かうのはジャーマニア冒険者ギルドだ。


「これが冒険者ギルド?」


 冒険者ギルドに到着するなり、和斗は目を見張る。


「デカ過ぎだろ……まさか中心都市部が全部、冒険者ギルドなんて」


 そう。

 直径5キロもある中心都市全てがジャーマニア冒険者ギルドだった。


「チャレンジタワーに挑戦する冒険者なら、誰でも無料で利用できる訓練施設、宿泊施設、浴場に浴場まであるからだよ」


 リムリアの説明に和斗は驚く。


「誰でも無料で!?」

「そう。まあ条件があるけど、真面目にチャレンジタワーに挑戦する者なら、全面的にバックアップしてくれるんだよ」


 などと話していると。


「あ、到着したよ」


 リムリアが、前方を指差した。


 メインストリートを進んだ行き止まり。

 そこがジャーマニア冒険者ギルド本部らしい。


「さ、カズト。さっさと長老に会いに行こ!」


 というコトで、リムリアはマローダー改から飛び降りると。


「こんちわ!」


 冒険者ギルド本部の入り口を潜ったのだった。

 そして受付カウンターに向かうと。


「ねえ、ギルドマスターに会いたいんだけど」


 受付の男に声をかけた。

 が、返ってきたのは。


「あ? 無星ごときがギルドマスターに会えるワケないだろ。さっさと失せろ」 


 ゴミを見る目と、軽蔑を隠さない言葉だった。

 さすがにこれには、和斗もムッとなる。


「なんだ、無星ってのは?」

「あぁ? 言葉通り、右手に星が無いヤツのトコだよ。リトルホワイト、つまりたった10人に相当する戦闘力もない弱者の事さ。分かったら、さっさと帰れ」


 受付の男が、3個の青い星を得意げに見せた。


 通称スリーブルー。

 300人に相当する戦闘力を待っている証拠だ。

 そんなスリーブルー男に。


「マスターに対する敵意を確認。排除します」


 キャスがガシャッと手から出現させた銃身を向けた。


「ま、待つんだキャス!」


 和斗は問答無用でスリーブルー男を射殺しようとするキャスを止めると。


 ダン!


 和斗は認識票をカウンターに叩き付けた。


「SSS超級で、レベル13の認識票だ。さっさと確認しろ」

「はぁ? SSS超級だ? そんなヤツ、世界に2人しかいないぞ。ハッタリかますのもいい加減に……」


 そこでスリーブルー男の動きが止まる。

 そしてたっぷり1分が経過してから。


「本物のSSS超級の冒険者ですかァ!!?」


 スリーブルー男は、真っ青になって絶叫したのだった。





2021 オオネ サクヤⒸ

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