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   第七十九話  マスター、大事なコトを忘れています





 上級悪魔ですらチェーンガンに耐えたモノがいた。

 メフィストフェレスは、その上級悪魔よりも、遥かに格上の悪魔だ。

 チェーンガンくらい、楽々と跳ね返すだろう。


 とは考えていたが。

 チェーンガンを躱す程のスピードを持っているとは、思ってもみなかった。


「ど、どうしよカズト、チェーンガンを躱すなんて! こんなに早いんじゃ戦車砲でも狙えないよ! 空を飛んでるからマローダー改をぶつけられないし、F15を警戒して、高く飛ばないようにしてるし、どうしよ……」


 とリムリアが焦った声を漏らした所で。


「おらぁ!」


 メフィストフェレスが攻撃してきた。

 といっても、単純に殴りつけてきただけ。

 神霊力を纏ったマローダー改に通用する攻撃ではない。

 まあ通用する以前に、メフィストフェレスの拳の方がもたない。


「ぎゃひ!」


 メフィストフェレスがは、拳を抱えて悲鳴を上げた。


「何だ、こりゃ! オレの拳は山脈さえ砕く威力があるのに!」


 山脈を砕く程度の攻撃で、マローダー改を破壊できるワケがない。

 いや、揺らす事すら出来ない。


「くそ、なら地獄の業火を食らえ!」


 メフィストフェレスが叫ぶが。


「地獄の業火だろうが、稲妻だろうがマローダー改には通用しないだろうな。けど無駄なコトに付き合う気はない」


 和斗そう口にすると、レーザー砲のコントローラーに手を伸ばす。

 確かにメフィストフェレスは、チェーンガンを躱した。

 すさまじい反応速度だ。

 しかしレーザー砲の攻撃は、光の速度。

 躱せる生物など存在する訳がない。


「じゃあな、メフィストフェレス」


 和斗は小さく呟くと、レーザー砲を発射した。

 もちろん神霊力でメフィストフェレスを包囲している。

 この世界には害が及ぶ事はないように。

 そして1兆℃のレーザーで、メフィストフェレスを縦に一薙ぎすると。


「!」


 メフィストフェレスは、カッと目を見開いた。

 そしてピタリと動きが止まった後。

 ズルリとメフィストフェレスの体が真ん中からズレ、そして。


 ドスン! ドスン!


 2つになったメフィストフェレスの体が、地面に落下した。

 べリアル同様、声を発する間もない、呆気ない最後だった。


――上級悪魔3000

  べリアル

  メフィストフェレス

  を倒しました


  経験値          21億7000万

  スキルポイント      21億7000万

  オプションポイント    21億7000万

  を獲得しました。


  累計経験値が7890687700になりました。

 

 パラパパッパッパパ――! 

 パラパパッパッパパ――! 



――累計経験値が73億を超えました。

  装甲車レベルが102になりました。

 

  最高速度が8万キロになりました。

  最高速度到達までの加速時間が0・5秒になりました。

  質量が140万トンになりました。

  装甲レベルが鋼鉄70万キロメートル級になりました。

  ⅯPが7万になりました。

  装鎧のⅯP消費効率がアップしました。

  1ⅯPで45秒間、装鎧状態を維持できます。

  サポートシステムが操作できるバトルドローン数が200になりました。

  ドローンのレベルアップが第11段階まで可能となりました。

  神霊力が恒星1000個級になりました。


  武器強化が400万倍まで可能となりました。

  耐熱温度が3兆℃まで強化可能になりました。

  耐雷が10京ボルトまで強化可能になりました。

  オプションポイントとスキルポイントのリセットが可能となりました。


  マスターのステータスがマローダー改の30%になりました。


 いつも通りのサポートシステムの声が響いた。

 やっぱりレベルアップした事は、素直に嬉しい。

 が、ここまで数字が大きいと。


「どれほど強くなったのか、もう実感が湧かないな」


 和斗は素直な感想を口にした。

 確かにこうなると、数字の羅列と変わらない。

 とはいえ理解出来ないながらも、強くなったコト自体は嬉しい。

 他にも気になる事はあるのだが、今はやるべき事は他にある。


「まずはレパードを助け出して、治療するか」

「フィオやジュンやルアーブルも助け出してあげないと。もちろん他の人達も」


 和斗の言葉にリムリアが頷いた、その時だった。


「動くんじゃねぇ! コイツ等の命が惜しかったらな!」


 メイルファイト場に、怒鳴り声が響き渡ったのは。


 観客席は、メイルファイト場を取り囲むように設置されている。

 けれども、会場は広い。

 1番後ろの席から見るメイルファイターは、豆粒サイズ。

 だから10個の巨大なスクリーンが設置されている。

 最後部の観客は、このスクリーンに映し出される試合を愉しむワケだ。


 しかし今。

 10個のスクリーンには、それぞれ10人の人物が映し出されていた。

 全員が口を塞がれ、椅子に拘束されている。

 そしてその傍らには、剣を手にした男の姿があった。


「カズト! フィオ、ジュン、ルアーブル、レパードの他に、オーギュやシュッツガルド、警備隊長まで人質にされてるよ! けど、あの女の人と、2人の女の子は誰なんだろ? ドラクルの一族みたいだけど」


 リムリアの呟きに、再びメイルファイト場に声が響く。


「キサマ等の仲間を人質にとった! オーギュの妻と娘はついでだが、シュッツガルドを捕まえる役に立ったぜ!」


 なるほど、シュッツガルドほどの実力者が人質になっている理由が分かった。

 オーギュの娘という事は、シュッツガルドにとって孫にあたる。

 その可愛い孫を人質に取られたので、抵抗できなかったのだろう。

 

 しかし、この事態はマズい。

 10人も人質を取られてしまった。

 しかも、どこに囚われているのかさえ分からない。

 せめて人質の居場所が分かったら。

 そう考えた和斗は、リムリアにそっと囁く。


「なあリム。サーチの魔法で、ミンナが捕まってる場所を捜せないかな?」

「う~~ん、上手くいくか分からないけど、とにかくやってみる」


 そしてリムリアはサーチの魔法を発動させると。


「カズト、ヤツ等はスクリーンの裏にいるよ」


 そう和斗に、耳打ちした。


「おいおい、こんなに近くに隠れてるのかよ」


 もっと遠くに隠れていると思っていた。

 なのに、目の前にいたとは驚きだ。


 というか、こんな近くで人質を取っているなんて、馬鹿なのだろうか?

 いきなり書類を奪われたので、逃げる猶予が無かったのかも?

 あるいは人質がいるので、逃げ出す必要は無いと考えているのか。

 

 とにかく、敵が近くにいるのは有難い。

 どこにいるのか分からない敵と戦うより、遥かにやり易いから。

 とはいうものの。

 どれほど近くても、1度に10人を救出するのは不可能だ。

 マローダー改の搭載武器なら、スクリーンを撃ち抜くくらい簡単だろう。


 しかし犯罪者だけを狙撃する事など出来ない。

 なにしろスクリーンの後ろに隠れているのだから。

 仮に敵だけを狙撃出来たとしても。

 武器が巻き起こす衝撃波に、人質も巻き込まれてしまう。

 どう考えても、打つ手がない。

 と、そこに。


「武装解除して、その鉄の箱から出て来い!」


 またしても、どこからともなく声が響いた。

 おそらくメイルファイト場に設置された魔法装置を使っているのだろう。


「早くしろ! 人質がどうなってもいいのか!」


 その決まり切ったセリフを聞きながら、和斗は必死に考える。

 和斗とリムリアなら、攻撃されても傷つくコトはないだろう。

 言う通り、マローダー改から降りても問題ない。


 しかし。

 敵の言う通りにしても、人質が無事に返ってくる事はないだろう。

 では、どうする?

 人質を傷つける事なく、1度に10人の敵を葬り去る方法はないか?

 マローダー改の武器で、それを可能にするモノはない。

 

 F15は?

 やはり無理だ。

 敵を倒せるかもしれないが、人質も巻き添えになってしまう。

 なら……なら……なら……。

 頭から煙が出そうなほど考え込む和斗に。


――マスター。大事なコトを忘れています。


 サポートシステムが声を上げた。


――マスターが自分で気が付くのを待っていましたが、時間切れです。解決策を提案します


 その言葉に、和斗は文句を口にする。


「分かってたんなら、早く教えてくれよ!」


――マスターの成長を邪魔しないよう、考慮した結果です。何でもサポートシステムがやってしまった   

  ら、マスターが成長しません。


「は、その、おっしゃる通りでゴザイマス」


 ぐうの音も出ない和斗にサポートシステムが続ける。


――では、提案します。まず……


 その説明を聞き。


「なるほど、その手があったか!」


 和斗は飛び上がって喜んだ。


「たしかにコレなら1度に10人を倒せるぜ!」


 歓声を上げる和斗に、サポートシステムが続ける。


――しかし、今の状態では作戦遂行は難しいでしょう。

  M2重機関銃の購入が必要と思われます。


「そっか、そうだよな。分かった。じゃあM2重機関銃を購入するから、後は任せ

ていいかな?」


――はい。


 そして。


「さっさとしろ! 1分だけ待ってやる! 1分以内に出てこないと、まず、コイ

ツを殺す!」


 フィオを首に剣が押し付けられたトコロで準備が完了した。

 後は計画を実行に移すだけだ。


「よし! ポジショニング!」


 和斗は、そう口にした。

 その直後。


 ドン!!!!!!!!!!


 同時に10の銃声が響き渡り。


「「「「「「「「「「ぐわ!」」」」」」」」」」


 人質を取っていた犯罪者は全員、頭を撃ち抜かれて倒れたのだった。


「い、一体ナニが起こったの!?」


 キョトキョトしているリムリアに、和斗は空を指差す。


「アレさ」

「アレ?」


 空を仰ぎ見たリムリアが、声を弾ませる。


「そっか、アパッチかぁ!」


 そう。

 ワラキア領を襲ったクーロン軍を全滅させた、アパッチ10機だ。

 その10機により、人質を取っている敵10人を同時に狙撃したのだ。


 しかし、この作戦の実行には問題があった。

 アパッチの武装はチェーンガンとミサイルとロケット砲しかない事だ。

 つまりアパッチの武器は、爆発する武器ばかり。

 しかも200倍に強化されている。

 どれを使用しても、人質の命は無い。

 

 だから人質に危害を与える事なく敵を倒す為、M2重機関銃を搭載。

 そしてポジショニングでアパッチを上空に呼び寄せ、敵を狙撃する。

 これがサポートシステムの提案だ。


 なにしろⅯ2重機関銃の弾丸到達距離は6770メートル。

 つまり6・7キロもの上空からの狙撃が可能だ。

 もちろん普通なら、こんな精密射撃は不可能。

 しかし進化したサポートシステムにとって、難しい狙撃ではない。

 これにより、敵に気付かれる事なく、狙撃に成功したワケだ。


「リム、他に隠れている敵はいるか?」

「ううん、もういないよ」


 リムリアに確認してから、和斗はマローダー改から飛び出す。


「じゃあ早くミンナを助けようぜ」

「うん!」


 こうして和斗とリムリアは、人質全員を助け出したのだった。








2021 オオネ サクヤⒸ

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