第六十二話 破壊神は倒されました
「至高神と通話が可能!?」
「なにソレ! ってか、至高神ってナニ!!」
和斗とリムリアが混乱する中。
――どうしますか? 至高神との通話を開始しますか?
サポートシステムの問いに、和斗は慌てて質問を返す。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 通話を開始する前に、至高神って何なのか、説明してもらえるかな?」
――至高神とは、この宙域に存在する神の中で最上位の神です。
「宙域?」
オウム返しで尋ねる和斗に、サポートシステムが続ける。
――この星系を含む、47の星系を統治する神です。
そしてサポートシステムの説明によると神にはランクがあるらしい。
それぞれの土地を治める土地神。
国を治める護国神。
大陸を治める大神。
星全体を治める惑星神。
太陽とそれに付随する惑星を治める星系神。
複数の星系を治めるのが星系群神。
そして星系の集りである星雲を治めるのが星雲神らしい。
――至高神とは、この星雲神以上の位の神の事です。
「ムチャクチャ凄い神様じゃない!!」
絶叫するリムリアに、サポートシステムが淡々と告げる。
――はい。普通なら通話など出来る筈がないレベルの上位神です。
「その至高神と、何で通話できるんだ!?」
――それほど例外的な状況だ、という事のようです。
サポートシステムの言葉に、和斗は考えを巡らせる。
神と人間の違いは?
神は不死だが、人間はいつか死ぬ。
神は全能だが、人間に出来る事には限りがある。
神は全てを知っているが、人間には分からない事だらけ。
神は無限だが、人間は有限。
そんな人間に、神の考えを全て理解出来る筈がない。
なら余計な事を考えず、とにかく至高神が語る事を聞いてみよう。
そう和斗は心を決めると。
「サポートシステム。至高神と通話を開始してくれるかな?」
神との対話に突入したのだった。
と、ある意味、悲壮な覚悟で通話に挑んだ和斗だったが。
《やあ、ボク至高神。よろしくね》
ものすごく軽いセリフが帰ってきた。
星雲を治める程の神、それが至高神。
和斗はその単語から、もっと威厳のある声を想像していた。
だが現実は、常に想像を超えるモノらしい。
……色々な意味で。
「あ、あの、至高神様ですよね?」
反射的に質問してしまった和斗に、軽い口調が帰ってくる。
《そうだよー。ま、信じる、信じないはキミの勝手なんだけどね》
「そんなモンでイイんですか!?」
思わずツッコむ和斗に、軽い口調が続く。
《上位の神なんて、そんなモンさ。キミに直接的に関与できるコトなんて、殆ど無いのだから。いや、やろうと思ったら出来るけど、ちょっとしたミスで億単位の星が消滅しちゃうんだよ。だから万が一を考えると、ボクを含めて上位の神は迂闊に動けないのさ》
「は、はぁ……」
何と言えばイイのか分からない和斗に至高神は続ける。
《あ、これは言っておかないといけないかな? 惑星神も星系神も星系群神もボクも破壊神だから》
「「破壊神!?」」
和斗とリムリアは、サラリと語られた単語に声を揃えた。
「なあリム。俺の世界じゃ破壊神っていうのは、世界の破滅を企む邪神のコトなんだけど、この世界じゃどうなんだ?」
「さ、さあ? ボクも破壊神って言葉くらいは聞いたコトあるけど……」
などとヒソヒソと話す和斗とリムリアに、至高神が明るく語る。
《何かカン違いしてるみたいだけど、破壊神の役目は、人間が救いようもないくらい星を汚染した場合、その星ごと消滅させて新しく作り直す事なんだ。人類を導く事もあれば、見込みのある者に力を貸す事もある。しかしボク達が直接力を振るうのは、救いようのない世界を消滅させる時なんだ》
至高神の説明によると、消滅には段階があるらしい。
第1段階。
王や神官などの権力者にお告げをして、行いを改めさせる。
第2段階。
モンスターに力を与えて世界を混乱させる。
その混乱を有望な者(勇者)に解決させ、有害な文明をリセットさせる。
第3段階。
自分の力を与えた眷属に、人間の文明を破壊させる。
第4段階。
破壊神が力を振るって、星を消滅させて造り直す。
「ってコトは、いきなりこの星を消滅させる、なんてコトしないんですね?」
ホウ、と息を吐くリムリアに、またもや想像を超える答えが。
《もちろん、そんなコトはしないよ。まあ、キミ達の世界の破壊神は倒されてしまってるけど》
「「ええ!?」」
大声を出す和斗とリムリアに、至高神の声が少しだけ重たいものになる。
《実はキミたちの世界に、異世界から召喚されたチート能力者がいてね。ソイツが世界征服なんて馬鹿なコトを企んだんで、惑星神が眷属を作り出して退治しようとしたら、逆に眷属ごと返り討ちに遭っちゃったんだ》
異世界から召喚されたチート能力者。
ラノベではありふれた話だ。
しかしこの世界では、大変な出来事だったに違いない。
《惑星神は、いざという時に惑星を破壊して造り直すんだから、当然ながら惑星を破壊する力を持ってる。その惑星神を倒したんだ、そのチート能力者の強さはハンパない》
「で、でしょうね」
ゴクリと喉を鳴らす和斗に、至高神は明るく告げる。
《だからカズトくん、キミにそのチート能力者を倒して欲しいんだ》
「……ええええええええええ!!!!」
絶叫する和斗に、至高神は意外そうな声を上げる。
《それほど驚く事かな? キミだって考えてた筈だよ。何でマローダー改のステータスは、こんなにブッ飛んでるんだろうって》
「そ、それは……」
口ごもる和斗に、至高神は更に畳み掛ける。
《今のマローダー改を破壊するのは惑星を破壊するより困難だよね? 惑星に存在してるモンスターを倒したら、そのモンスターが生息する惑星を超えるステータスを得る事ができた。ありえない事だろ?》
例えるなら、10グラムの肉を食べて10キロの筋肉をつけるようなもの。
そんなコト、ありえる訳がない。
《まあ説明すると神霊力によるものなんだけどね。ええと、キミの世界ではダークエネルギーなんて呼ばれてたっけ? それが神霊力なのさ》
観測できるエネルギー以外の力が働いている。
それ以外に説明できない現象が、宇宙で見られていた。
その説明できないエネルギーはダークエネルギーと呼ばれる。
全宇宙に存在すると計算されるエネルギーの9割以上を占めるエネルギーだ。
まあ5割くらいだとか、色々な説があるみたいだが。
《神霊力は、宇宙に存在する全エネルギーの99・999%を占めるんだ。それに比べたら核のエネルギーなんて誤差みたいなモノさ。その莫大な神霊力を、カズトくんを受信機にしてマローダー改に注ぎ込んだ。カズトくんは神霊力との親和性が異常なほど高かったからね。実際、リムリアちゃんがカズトくんを召喚してくれて助かったよ》
そして至高神の口調が、真剣なモノに変わった。
《ではカズトくん、リムリアちゃん。チート能力者を倒してくれたまえ》
が、すぐに軽い口調に戻る。
《ま、その破壊神を倒したチート能力者は今すぐには動けない状態だから、焦る必要はないさ。今まで通り、長老に認められる為の旅を続けながら、レベルを上げていけばイイからね~~。おっと5分だ。じゃあね~~》
こうして至高神との通話は一方的に終わったのだった。
と思ったら。
《大事なコト忘れてた。ヒヒイロカネゴーレムの神の涙とオリハルコンゴーレムの賢者の石は、売ったらダメだよ》
という言葉と共に、沢山の魔石がマローダー改の床に現れた。
神の雫20個と、賢者の石200個だ。
《どっちも神霊力の結晶だから、大事に保管しとくようにね。じゃあ、今度こそホントに、バイバイ~~》
そして沈黙が訪れた。
和斗もリムリアも、まだ現実が掴めないでいた。
言葉は分かる。
しかし理解が付いていかない。
心はもっと置き去りだ。
破壊神を倒したチート能力者?
そのチート能力者を倒す?
色々なコトが、頭の中をグルグル回っているが。
「とにかくカズト。とりあえずギルドに戻らない?」
「そうだな」
リムリアの言葉に和斗は頷いた。
このままでは、ダンジョンを先に進んでも、集中できない。
それは、思いもしない危機を招く事になるかも。
まあマローダー改に乗っていれば、危険などないだろう。
が、油断大敵だ。
「とにかく戻って、落ち着いてこれからのコトを考えた方がイイだろな」
という事で和斗とリムリアは。
気絶しているジェノスを乗せて、ギルドに戻ったのだった。
ついでに言うと。
ジェノスが気絶したままなのは、至高神の所為だったと思う。
和斗とリムリア以外の者には聞かれたくない内容だったに違いないから。
ボルドー冒険者ギルドに戻ると。
サンドゴーレム 40000体
ロックゴーレム 40000体
アイアンゴーレム 20000体
ミスリルゴーレム 5000体
アダマンタイトゴーレム 2000体
の魔石を買い取りいたしました。
合計 14兆6200億ユル。手数料は7310億ユルとなりますので、13兆8890億ユルのお支払です」
別の衝撃的な言葉が和斗とリムリアを出迎えた。
13兆8890万ユル。
現在の持ち金と合わせると、18兆8072万ユル。
そのとんでもない金額に、リムリアが魂の抜けたような声を漏らす。
「ボクに実家ならもっと沢山のお金があるけど、個人が持ってるお金としては、この世界でもトップランクだろうね」
「どうやって使ったらイイのか分からない金額だな」
溜め息交じりのカズトにリムリアが声を潜める。
「もし賢者の石と神の雫も売ってたら、とんでもないコトになってたね」
賢者の石200個の売値は10兆ユル。
神の雫20個の売値も10兆ユル。
もしも売却していたら、持ち金は今の2倍になっていたトコロだ。
というリムリアの言葉が聞こえたのか。
「カズトさん、リムリアさん、お願いですから賢者の石と神の雫を売ってくださいよ~~」
ジェノスがにじり寄って来た。
「少しでイイんです~~、前回の神の雫は直ぐに売れてしまったんです~~。だから今度こそ研究したいんですよ~~。カズトさん、リムリアさん、1つでもイイですから売ってください~~」
ズシン!
「ほぉおおお~~」
肝臓を拳で撃ち抜かれて崩れ落ちるジェノスに。
「副ギルド長」
エリが冷たい声で告げる。
「個人の情報を軽々しく口にされては困ります。たしかに今、ここにいるのはギルド職員しかいません。ですが、ここは誰でも入れる冒険者ギルドの受付です。どこで誰が聞いているか分かりません。そんな状況でカズトさんが所持する貴重なアイテムの情報を、軽々しく口にされては困ります」
「そ、そうでした、すみません……」
床にうずくまったまま、弱々しく答えたジェノスに変わり。
「ですが、もしも気が変わったら、売却は、ぜひボルドー冒険者ギルドにお願いしますね」
エリが、見事な営業スマイルを浮かべた。
「ではカズトさん、リムリアさん。いつでもボルドー冒険者ギルドを利用してくださいね」
という事で。
和斗とリムリアはエリに見送られて、冒険者ギルドを後にしたのだった。
そしてマローダー改に乗り込んで。
「「………………」」
しばらくの沈黙の後。
「至高神様、言ってたよな。とりあえずは長老に認められる為の旅を、続けたらイイって」
和斗はポツリと漏らした。
「チート能力者について殆ど教えてもらえなかったけど、あまり心配しないでイイって至高神様が言ってたんだから、今まで通りに旅を続ける、ってコトでイイかな?」
和斗の言葉に、リムリアは苦笑しながら頷く。
「うん。結局それ以外、やるコトないしね」
という事で。
和斗とリムリアは、開き直って旅を続けるコトにしたのだった。
2021 オオネ サクヤⒸ




