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   第六十話  作戦は大成功だ!


 



「無念……」

   

 首の骨が折れたのにアーマードラゴンはまだ生きていた。

 しかし流石に動く気配はない。

 僅かに動くのは首だけだ。

 が、その首も。


「くそ、四神さえ食っていれば……食って四神の力を手に入れていれば人間ごときに負ける事など……」


 その言葉を最後に、2度と動かなくなった。


「これでやっとドラゴンの素材が手に入ったな」


 和斗は大きく息を吐いてから、素材と化したアーマードラゴンに目をやる。

「しかしヤバかったな。クーロンと戦った時の青竜は、人間が依代になった神獣モドキだったけど、今回はホントに神へと進化した龍だもんな。神霊力を纏えるようになってなかったら殺されていたな」


 物理攻撃は、神力を纏った白虎に効果がなかった。

 おそらく青竜にも効果はなかっただろう。

 そしてアーマードラゴンは、その青竜よりも上位の龍だ。

 その証拠に神力ではなく、神霊力を纏っていると言っていた。

 もしもマローダー改が神霊力を得る前に戦っていたら、間違いなく死んでいた。


「運が良かった、ってコトか? それとも神に感謝するべきかな?」


 和斗の呟きにサポートシステムが答える。


――マスターの実力です。

  神霊力は普段、周囲に被害を与えないように働いていますが、戦いの時はマスターの意思通りに破壊                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

  力を発揮します。

  最初は、素材を傷つけないように手に入れるという考えで戦ったから本来の戦闘力を発揮できません                                    

  でした。

  しかしその後、マスターが戦う意思を示したので、神霊力は本来の破壊力を発揮したのです。


「そうか。やっぱり俺、油断してたんだな」


 油断大敵と自分を戒めたつもりだったが、心の底では楽勝だと思ってた。

 その考えが、神霊力が生み出す本来の破壊力を発揮させなかったらしい。

 まだまだ修行が足りないな。

 などと和斗が反省していると、サポートシステムがさらに続ける。


――アーマードラゴンを倒しました。


  経験値          5億

  スキルポイント      5億

  オプションポイント    5億

  を獲得しました。


 累計経験値が2258687700になりました。

 

 そして。


――パラパパッパッパパ――! 


――累計経験値が22億を超えました。

  装甲車レベルが96になりました。

 

  最高速度が23000キロになりました。

  最高速度到達までの加速時間が2秒になりました。

  質量が24万トンになりました。

  装甲レベルが鋼鉄11万キロメートル級になりました。

  ⅯPが30000になりました。

  装鎧のⅯP消費効率がアップしました。

  1ⅯPで10秒間、装鎧状態を維持できます。

  サポートシステムが操作できるバトルドローン数が100になりました。

  ドローンのレベルアップが第10段階まで可能となりました。

  神霊力が10万倍級になりました。


「相変わらず理解不能なレベルのステータスだな」


 和斗はそう呟いてから、考え込む。


『四神を食って、その力を手に入れていたら負けなかった』

 アーマードラゴンは最後にそう言った。

 もしもその言葉が本当だとすると。

 クーロンの四神を和斗が倒さなければ。

 あるいは倒す前にアーマードラゴンが四神を食っていたら。

 和斗はここで殺されていたかもしれない。


 レベルアップしたマローダー改は無敵で最強。

 そう思っていた。

 しかしそれは、考えが甘かったかもしれない。

 物理的なステータスなら、最強レベルなのは間違いないだろう。

 だが神霊力という要素が加わると、安心できない。


 事実、マローダー改の武装は白虎に通用しなかった。

 となると、もっと神霊力的に強くならないといけない。


「つまり今まで以上に、レベルアップを目指す方がイイだろうな。ふう、旅の目的が増えちまったな」

「そうだね。マローダー改のステータスの2割で苦戦する敵がいるなんて、思ってもみなかったもんね」


 いつの間にか隣に並んでいたリムリアが、真剣な顔で和斗に尋ねる。


「ねえカズト。また神と戦う事になると思う?」

「出来ればカンベンして欲しいトコだけど、戦うと思ってた方がいいだろうな」

「ってコトは、もっともっとレベルアップしないとね」


 和斗は自分と同じ結論を口にするリムリアに頷く。


「ああ。これからは経験値稼ぎを積極的にしていくぞ」

「うん! でも」

「でも?」

「経験値を稼いで強くなる事を目指すのも、何だかワクワクしてくるね」


 楽しそうに笑うリムリアに、和斗も笑みを浮かべる。


「ああ、そうだな」


 まだ神と敵対したワケではない。

 万が一に備えて、マローダー改の強化にも力を入れるだけだ。


 でも、それはそれで楽しい。

 またゲーム感覚が戻ってきた。

 油断しないように気を付けてれば、楽しむ事も悪い事ではないだろう。

 と、そこで和斗は思い出す。


「そういやF15を第10段階まで強化できるようになった、ってサポートシステムが言ってたな」


 今のマローダー改にとって、最強の飛び道具はF15だ。

 なにしろ最高速度はマッハ25超。

 しかも重量は500t、強度は鋼鉄100キロメートル級もある。

 その超重量・高強度の弾丸をレールガンよりも速い速度で撃ち込めるのだ。

 F15の威力は隕石に匹敵する。

 これ程の破壊力があれば十分な気もするが。


「アーマードラゴンの最後の言葉を考えると、出来る限りの強化しておいた方がいいな。サポートシステム、F15の強化をしたいんだけど」


――了解。F15の強化レベル一覧表です。


 バトルドローン(F15)


重量(t) 最高速度(時速) 強度    航続距離   ポイント

ノーマル       2500           3971km

「1」   30   3000   100m    6000    1千

「2」   60   4000   300m   10000    2千

「3」  100   6000   600m   18000    4千

「4」  160   9000     1km  27500    7千

「5」  240  13000     3    52000    1万

「6」  340  18000    10    81000  1万5千

「7」  460  24000    30   120000    2万

「8」  500  31000   100   170500    3万

「9」  660  39000   300   234000    5万

「10」 840  48000  1000   312000    8万


 一覧表を見ると同時に和斗は指示を出す。


「第9段階と第10段階、合わせて13万スキルポイントが必要か。じゃあF15全機を第10段階に強化してくれ」


――了解。スキルポイント65万ポイントを消費してF15型バトルドローン5機を第10段階まで強化します


 これでF15の質量は840t、速度はマッハ39になった。

 この星に激突させれば生物を絶滅させるほどの破壊力をもたらすだろう。

 そして強度は鋼鉄1000キロメートルに匹敵。

 しかも神霊力まで纏っている。

 これなら神と戦う事になっても、強力な武器になってくれる筈だ。


「取り敢えず、今出来る事はこのくらいかな」

「そうだね」


 と、和斗とリムリアが顔を見合わせたところに。


「さすがだな、アーマードラゴンを倒すとは。ホントに驚いたぜ」


 冒険者を引き連れてマクロンがやって来た。


「しかし素材を売ったら凄い額になるだろうな」


 アーマードラゴンを見上げるマクロンに冒険者達が続く。


「あたりまえだろ!」

「伝説の龍なんだぜ!」

「アーマードラゴンの鱗なら1枚1億でも売れるんじゃないか?」

「爪なら1本3億はいくだろうな」

「牙は5億ってトコか?」

「心臓、肝臓、その他の内蔵だって目が飛び出る程の額だろうな!」

「骨や頭蓋骨、皮に尻尾の先もな!」

「なにしろ捨てるトコなんか1つも無いからな」


 興奮して大騒ぎの冒険者達だったが。


「生き血だって天文学的な価値があるぞ!」


 誰かの言葉に、一同は凍りつく。


「おいおい、そういえば生き血はどうすんだよ!?」

「はやく回収しないと価値が無くなるわよ!」

「でも、こんな巨体だぞ、どうやって回収するんだよ!?」

「それに他の部分も時間と共に劣化していくぜ!」

「保存しなきゃ!」

「保存なら冷凍が1番だ!」

「誰か凍らせて!」

「おお、それなら素材は痛まないな!」

「でも完全に保存するならマイナス100度以下が望ましいわ!」

「出来るかァ!」

「それ以前に、こんな巨大なもん、凍らせれるワケねェだろ!」

「魔法を使えるヤツ全員で凍らしたらどうだ!?」

「無理に決まってるでしょ!」


 冒険者達が顔色を変えて狼狽える中。


「フロストコフィン!」


 リムリアがアーマードラゴンを、氷に閉じ込めた。

 300メートルの龍を閉じ込めた巨大な氷の塊に、冒険者達が再び騒ぎ出す。


「フロストコフィンだとォ!」

「マイナス200度の氷に相手を閉じ込めるという、あのフロストコフィン!?」

「最上級の冷魔法じゃないの!」

「しかも、このサイズ!」

「ありえねェだろ!」

「ドラクルの一族が30人集まっても不可能なサイズだ!」

「こんなの生まれて初めて見たわ」

「ドラクルの一族1番の魔力ってホントだったんだ……」

「これがワラキアの姫の実力か……」

「さすがSSS超級……」


 驚愕の視線を気にも留めず、リムリアはマクロンにアッサリと言ってのける。


「これなら素材は新鮮なままだし、フロストコフィンの氷は鋼鉄なみの強度だから魔獣に食べられるコトもない。1週間はこのままだから、その間に解体のプロを手配して、素材を回収したらイイよ」

「そうだな、ありがとよ。これでノルマンド復興に何の心配もなくなったぜ。ってか、復興資金としても多過ぎるくらいだ。これなら参加してくれた冒険者達にも報酬を渡してもいいな」


 そしてマクロンは冒険者達に向き直ると、声を張り上げる。


「アーマードラゴンはノルマンドの復興に使う。そしてそれ以外の魔獣は、全員で平等に山分けにする! 作戦は大成功だ!」


 マクロンの言葉に、冒険者達が一斉に顔をほころばせる。


「マジか?」

「やったぜ!」

「ボランティアだったんじゃないのか?」

「じゃあお前は要らない、と?」

「ば、ばか、S級モンスター1000匹だぞ、欲しいに決まってるだろ!」

「なら素直に喜べよ」

「う、うるせー!」

「で、でもよ、魔獣だって鮮度が下がると価値が下がるんじゃないか?」


 心配顔の冒険者にリムリアがニカッと笑う。


「大丈夫だよ。アイスコフィン!」


 その1言で10体の魔獣が氷に包まれる。


「この程度のサイズならアイスコフィンで十分だから楽勝だよ。全部凍らせるからユックリと運んでね」

『は、はい……』


 冒険者達は揃って頷くと。


「さあ、さっさと街にもどって素材を売り払うぞ!」

『おう!!』


 マクロンの怒鳴り声と共に、一斉に動き出したのだった。

 アイスコフィンは、長方形の氷に物体を閉じ込める魔法。

 つまり魔獣は、棺桶型をした氷の塊に閉じ込められている。

 その氷の塊に車輪を取り付けたら、後は鋼鉄馬車で牽引すればいい。


「さあ、ドンドン運んでくれ!」

『おう!』


 こうしてボランティア素材集めは大成功に終わったのだった。





2021 オオネ サクヤⒸ

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