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   第五十五話  モンターニュと申します

80話まで、毎日投稿する予定です。

ここからが第3章となります

]





 マローダー改の耐熱と耐雷を、1兆℃と1京ボルトにアップさせた後。


「さて、これからどうするかな?」


 和斗は瓦礫の山と化したノルマンドを眺めながら呟いた。


「まずマクロンさんに報告にいかなきゃダメないんじゃない?」


 リムリアの言葉に、和斗はふと思い出す。


『クーロンのクズ共に、ノルマンドの怒りを思い知らせてやってくれ』


 というマクロンからの依頼を。


「そうだな。依頼を達成したコトを、依頼人に報告しないといけないよな。俺達は冒険者なんだから」

「うん」


 というコトで。

 和斗とリムリアは、さっそくドンレミの街へと向かうことにする。

 そしてドンレミ冒険者ギルドの入り口を潜るなり。


「マクロンさん! 依頼、達成してきたよ!」


 リムリアは、大声を上げた。

 その、たった一声で。


「ええ!?」

「まだ昼の3時だぞ!」

「出発したのは朝方だった筈だぞ!」

「たった半日ほどでクーロンの侵略者共を倒したってのか!?」

「ウソでしょ……」

「誰か確認してこい!」

「ノルマンドに早馬を飛ばせ!」


 ドンレミ冒険者ギルドは大騒ぎになってしまった。

 そんな中。


「静かにしろぃ!」


 マクロンの怒鳴り声が轟く。

 さすが冒険者ギルドのギルドマスター。

 それだけで騒ぎはピタリと収まった。

 シンと静まり返ったなか、マクロンは和斗に笑顔を向ける。


「ご苦労さん。さすがSSS超級、たった半日でクーロンのクズ共をブッ倒すとは規格外の強さだぜ。ところで……ノルマンドの街は、どうなってた? 生存者はいたのか?」


 笑顔から表情を一変させたマクロンに、和斗は辛い報告をする。


「生き残った者は1人もいない。そして戦士と思われる人達は、最後の最後までクーロンと戦ったようだった。誰1人、逃げ出す事なく」

「そうか。命が尽きるまで、民を護ったのか……。ミシェル、カルヴァドス、そして戦士達よ。お前等、誇り高い最期を迎えたんだな」


 そしてマクロンは、無理やり笑顔を作った。


「色々思う事はあるが、とにかくクーロンの侵略者を皆殺しにしたんだ! 見事にノルマンドの仇を討てた事を喜ぼう! ノルマンドから避難してきた民達に教えてやれ! 仇はSSS超級の冒険者が討ってくれたとな!」

「はい!」


 マクロンの言葉に、ギルド職員の1人が駆け出す。

 その後ろ姿を見送ってから、マクロンは和斗に向き直る。


「そういや突然の事だったんで依頼料の話をするのを忘れてたな。依頼料は50億ユル。俺の全財産だ」

『50億ユル!!』


 一斉に叫ぶギルド職員達に目もくれず、マクロンは続ける。


「クーロンの侵略軍を壊滅させた報酬としちゃ、少な過ぎる額だが、これからノルマンドの復興の為に多額の資金が必要となる。だからギルドの金から依頼料は出せないんだ。だから少な過ぎるとは思うが、ここはオレの全財産で我慢してくれねぇか?」


 マクロンの説明に、リムリアが疑問を口にする。


「ノルマンドの復興を、何でドンレミ冒険者ギルドがやるの? ノルマンドの街はランス領なんだから、ランス領主に任せときゃイイんじゃない?」

「そりゃあ、その通りだ。でもなあ、ドラクルの一族が領主を務める土地では、議会の承認を受けないと予算を使う事が出来ないんだ」


 どうやら、このランス領では民主的な政治が行われているようだ。

 各地の代表が意見を出し合って物事を決める議会という制度。

 それ自体は悪い事ではないと思う。

 

 しかし、逆に決定に時間がかかる場合も多い。

 和斗が暮らしていた日本でも、そんなコトが多かったような気がする。


「そして議会で復興予算が承認されても、直ぐにノルマンドが再建されて元の生活に戻れるワケじゃあねぇ。しかしノルマンドから逃げてきた者には、今すぐ衣食住が必要だ。そして、できればノルマンド復興まで手伝いてぇと思ってる」


 ノルマンドからの難民の数は1500人。

 その人々の為に、まず仮設住宅を建設しなければならない。

 同時に食料や衣服、生活必需品を確保。

 その程度ならマクロンの個人資産でも何とかなるだろう。


 しかしノルマンド復興までとなれば、費用は膨大な額になるだろう。

 なにしろ1つの都市を作り上げるのだから。


「ドンレミ冒険者ギルドの金庫にある金は全額、ノルマンド支援に回す。だからドンレミ冒険者ギルドの金から報酬を出すワケにはいかない。というワケで、渡せるのはオレの個人資産くらいってワケよ」


 そう口にしたマクロンに、リムリアが不思議そうな目を向ける。


「冒険者ギルドの金庫になら、1500人の生活を支えるくらい楽勝なんじゃないの? ボルドーの冒険者ギルドなんて、ダンジョンで手に入れた魔石に、凄い金額を支払ってくれたよ?」


 リムリアの質問に、マクロンは苦笑する。


「ボルドーには世界最大級のダンジョン、ランス地下大迷宮があるだろ? その世界最大級のダンジョンで得られる魔石を買い取るには、世界最大級の予算が必要なのは当たり前だ。しかしそんな予算を持ってるのはボルドーだけ。他のギルドの経済力は、ボルドーの足元にも及ばないのが現実だ」


 そしてマクロンは、真剣な目を向けて来た。


「というワケで、ドンレミ冒険者ギルドの金は、ノルマンドからの難民支援に全額をつぎ込む。だから依頼料は、オレの個人資産で我慢してくれ」


 頭を下げるマクロンに、和斗はリムリアと視線を交わすと。


「報酬はいりません」


 そう答えるコトにした。


「ええ!?」

「50億がいらない!?」

「マジかよ!?」

「普通の人間なら死ぬまで楽に暮らせる額だぞ!」


 ギルド職員が大騒ぎするなか、マクロンも目を丸くする。


「いや、クーロンの侵略者を全滅させたんだぞ! そういうワケにゃあ、いかないだろ!」


 その言葉に一斉に頷くギルド職員に苦笑しながら、和斗は続ける。


「さっきマクロンさんが言った事じゃないですか。ノルマンドの人達は、今直ぐに助けて欲しいんだって。俺達は、生活に困ってません。だから俺達に出す報酬があるのなら、ノルマンドの復興の為に使ってください」


 何の躊躇いもなく言い切る和斗に、リムリアがコショコショと囁く。


「ねえカズト。いっそのコト、ボルドーで稼いだお金も寄付しない?」

「そりゃあいいな」


 和斗は冒険者認識票を取り出すと、マクロンに手渡す。


「4兆9000億ユルあります。これもノルマンド復興の為に使いましょう」

『4兆9000億ユルぅ!!!』


 ギルド職員とマクロンの絶叫が重なった。


「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ……」

「それって、ちょっとした国家予算並みの金額だぞ!」

「個人が持てる金額じゃねェ……」

「一体、何をしたら、そんな天文学的金額が……」

「本当に、そんな金額が?」


 正気を失っている、といっても過言ではないギルド職員達が注目する中。

 マクロンは和斗の認識票を確認して、掠れた声で呟く。


「間違いない。本当に4兆9000億ユルを超える預金がある」

『……!!!!』


 ドンレミ冒険者ギルド全員が声にならない絶叫を上げた。

 そんな中、マクロンは真剣な目を和斗に向ける。


「いいのか? こんだけあればノルマンドの復興も十分可能だが、これ程の額になると、ランス領主でも返せないかもしれないぞ」


 震える手で認識票を握り締めるマクロンに、和斗は微笑む。


「寄付するって言ったでしょ? 返してもらう必要なんてないですよ」


 と、そこに。


「いや、そういうワケにはいきません」 


 綺麗な、しかし強靭な意志を感じさせる女性の声が響いた。


「ア、アンタは!」


 驚くマクロンの視線の先にいたのは、豪華な鎧を装備した美女だった。

 その美女が、和斗とリムリアにビシッと敬礼する。


「ワタシはランス領の将軍、モンターニュと申します。まずはカズト殿、そしてリムリア様。我が領土に進攻してきたクーロンの侵略者を排除して頂いた事、ランス領主に変わり御礼致します」


 そしてモンターニュは、深々と頭を下げた。


「そして貴殿の莫大な額を寄付するという申し出にランス領民として、そして1個人として、心から感謝いたします。しかし、その申し出を受ける訳にはいかないのです。申し訳ありません」


 そう口にしてからモンターニュは、リムリアに向き直る。


「そちらの御方は、ワラキア領の姫とお見受けしました。ランス領として力を尽くした上で、それでも力が及ばなかった場合は援助を求める事もあるでしょう。しかしランス領主が、まだ何もしていないのに、ワラキア領の姫から国家予算に匹敵する援助を受けワケにはいかないのです」


 そしてモンターニュは床に膝を突くと、頭を床にこすり付けた。


「つまらぬ見栄だと分かっています。しかしランス領民に1番に手を差し伸べる役目は、我らにお譲りいただけないでしょうか」


 真摯な目で懇願するモンターニュに、リムリアが頷く。


「うん、ランス領主の立場は理解してる。今すぐモンターニュさん達がノルマンド支援に取りかかれるのなら、それが1番だとボクも思うよ」

「有り難うございます」


 再び頭を下げるモンターニュに、和斗は尋ねてみる。


「せっかくだから聞いておきますが、具体的には、どうする予定なんですか?」

「ノルマンドには30名のドラクルの一族と、30名のワーウルフロード。そして900名のハイ・ワーウルフと15000名のワーウルフが常駐していました。それと同数の軍をランス領主は派遣しました」


 加えて1000名の冒険者も派遣された、との事。

 つまり16960名の戦闘要員が、ノルマンドに常駐するらしい。


「ノルマンドの地に全員が生活できる軍用テントを設置し、宿舎、食堂、浴場、生活必需品配給場とします。そしてノルマンド要塞都市の再建に取りかかります。そしてノルマンドから避難にてきた者にも手伝ってもらいたいと思います」


 ただし、侵略された恐怖を忘れられない者もいる筈。

 そういった人々には、他の地で生活できるように手配するらしい。

 そこまで説明すると、モンターニュはマクロンに向き直る。


「マクロン殿。アナタはドンレミの冒険者ギルド長であり、かつドンレミの街の統治者でもありましたね。ノルマンドから避難してきた人々の当座の生活の場を、ドンレミのすぐそばに設営したいのですが、許可いただけますか?」

「「ええ!?」」


 荒くれ男にしか見えないマクロンが、ドンレミの街の統治者。

 和斗とリムリアは、この衝撃の事実に驚愕の声を上げた。

 そんな2人に。


「おっと、言ってなかったか?」


 マクロンは男臭い笑みを向けてから、モンターニュに視線を向ける。


「もちろん許可するぜ。しかし本当にアンタ達だけでやる気かい? オレ達も可能限り、手伝うつもりだぜ?」

「ありがとうございます。しかしドンレミの街には、他の事で援助頂きたい」

「他の事?」


 首を傾げるマクロンに、モンターニュは説明を始める。




 他の大陸の軍隊が、この大陸に上陸しようとした場合。

 ノルマンドは戦略上、最高の条件の場所らしい。

 という土地の特性から、侵略に対する備えは必須。

 だからノルマンドには、絶対に軍事基地を築かねばならない。


 しかし要塞だけを作ればいい、というものではない。

 要塞を護る兵士達と、兵士達の生活を支えてくれる人々。

 その両方が快適に日々を送れる街が必要だ。

 なにしろ殆どの者は、ノルマンドで一生を終えるのだから。


 それには街として機能する為の、様々な整備が不可欠だ。

 具体的には商業地区、工業地区、農業地区などを、どう配置するか。

 もちろん居住地区の事も考えなければならない。

 それに従って道を作り、上下水道の整備、建物の建設。

 加えて、経済的に自立できて、初めて復興は完了する。


 これに必要なのは、大量の人手と物資。

 そしてそれを賄うための、とんでもない額の金だ。


「当座の資金は持参しました。その資金で物資と人手を手配する。その手配をマクロン殿にお願いしたいのです」

 

 そう締めくくったモンターニュに、マクロンは頷く。


「なるほどな。いくら優秀な将軍でも、知らない土地じゃあ勝手が違う。質の良い物資と人材を手配するにゃあ、この地を良く知る者の方がイイってわけか。分かったぜ、オレの人脈とツテをフルに使って、最高のモンを適正価格で集めてやる」

「感謝いたします」


 一礼するモンターニュに、マクロンはピッと指を立てる。


「ただし」

「ただし?」


 キョトンとするモンターニュに、マクロンはニィッと笑う。


「志願者を集めて素材集めを行う。集まった素材の売り上げは、全額ノルマンド支援にあてるチャリティーだ。この金なら受け取ってもらえるだろ?」


 マクロンが提案すると同時にリムリアが大声を上げる。


「はいはいはい! ボクも参加する!」


 言うと同時にリムリアは、和斗にしがみ付く。


「ねえカズト、いいよね?」


 リムリアに言われるまでもなく、和斗もそのつもりだった。


「ああ。思いっ切り稼いで、復興を応援しようぜ」

「やった! ありがとカズト!」


 リムリアは最高の笑顔を和斗に向けてから、モンターニュに視線を移す。


「これなら問題ないよね?」 

「もちろんです。かたじけない」


 リムリアの言葉に、モンターニュは顔を輝かせたのだった。



 





なんとか7月に投稿できました。

2021 オオネ サクヤⒸ

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