第五十三話 ドローン操作
神力で護られていようが、弱点はある筈。
そう考えた和斗は、タイガの耳の穴に100倍化バルカン砲を撃ち込んだが。
バチィ!
バルカン砲の弾丸は、耳の穴に届く寸前で砕け散った。
タイガは、そこで初めてF15に気付いたのだろう。
F15へと視線を向ける。
「ほう。こんなテがあったか。飛び回るだけでなく、これほど強力なストーンバレットを放ってくるとは、驚いたぞ。しかも耳の穴を狙ってくるとは、よく考えたものだな。しかしこの体は神力で覆われている。付け入る隙も弱点もないぞ。残念だったな」
そこでタイガはドラゴ=玄武に視線を送った。
「ドラゴ。本体の鉄の箱を叩き潰す前に。あの飛び回る三角を叩き潰せ。神獣一の防御力を誇るお前の甲羅なら楽勝だろ?」
そのタイガの言葉に、ドラゴは満面の笑みを浮かべる。
「勿論だ。この体に激突して砕けない物質など、この世には存在せぬ!」
そう口にすると、ドラゴは。
「そら!」
鈍重そうな姿からは想像もできない動きでF15の前に飛び出した。
その、余りにも想定がの動きに。
「うわ!」
和斗の操作は遅れ。
ドパ!
F15はそのまま、玄武の喉羅に突っ込んだのだった。
「しまった!」
和斗は思わず目をつむる。
マッハ25で戦車砲すら跳ね返す玄武に激突したのだ。
F15は粉々になった事だろう。
例えドローンとはいえ、初めてマローダー改の一部を失ってしまった。
その喪失感は、想像以上に大きなものだった。
足元が崩れ落ちたみたいとは、こんな気分の事を言うのだろう。
と、打ちひしがれる和斗だったが、そこで。
「カズト、見て!」
リムリアが興奮した声を上げた。
「?」
その声に、和斗は恐る恐る目を開けると。
「え?」
そこには、甲羅に大穴が開いた玄武の姿があった。
「ええ!?」
自分の目が信じられない和斗の耳に、サポートシステムの声が飛び込んでくる。
――さきほど言いそびれてしまいましたが、マローダー改もF15も神霊力を纏っています。そして神霊力とは、霊力や神力よりも上位の力なのです。神力で強化された神獣ごときが、防御できるものではありません。
だからバルカン砲など使用せず、F15をぶつける方が確実だと助言しようとしたのですが。
またしても和斗は、大事なコトを聞きそびれたようだ。
リッチとの戦いで情報が大事だ、と思い知ったのに。
「はは……」
もう笑うしかない。
神霊力は、神力の下位の力だと勝手に思っていた。
しかし実は、神力より神霊力の方が上位の力。
あの絶望感は何だったんだ。
そして和斗は、ある事に気が付く。
F15をレベルアップさせた時、疑問に思った事だ。
速度や強度がアップするのは分かる。
しかし重量までアップするのはナゼだろう?
軽ければ、速度も航続距離もずっとアップできるだろうに。
しかし今、和斗は理解した。
重量までアップするのは、この為だったのだ!
F15を砲弾と考えたら、重いほど威力がアップするのだから。
そしてこれは。
戦車砲など比較にならないほど強力な武器を、手に入れた事を意味する。
勝った。
そう和斗が確信する中。
「ロン! 回復!」
タイガが叫び。
「グォウ!」
その声に応えてロン=青竜が咆哮を上げると。
「ロン、助かったぜ」
タイガ=玄武の傷が、一瞬で消え去った。
致命傷としか思えなかった傷を、一声で完治させる。
神を名乗るに相応しい力だ。
「ち! マジかよ!」
その理不尽なほどの回復能力を目にして、和斗は顔を曇らせる。
「即死させないとダメって事か? いや、即死でも生き返られる事が出来ないとは限らないか。なら回復担当の龍を狙うぞ!」
和斗は直ぐに考えをまとめると、F15を青竜へと飛ばす。
他の神獣を倒しても、青竜なら瞬時に回復させるだろう。
なら青竜を倒せばいい。
という和斗の考えを、見抜いたのだろう。
タイガ、ドラゴ=玄武、レッド=朱雀はロン=青竜のガードを固める。
「悔しいが、ヤツ等は神獣を傷つける力を持っている事を認めざるを得ない。ならば我々の生命線は、致命傷を負っても瞬時に回復させる能力を持つロンだ。ロンを護る事に専念しろ!」
タイガの命令で、タイガ達は青竜を取り囲む。
完全に護りしか考えてない構えだ。
「どうするカズト。あそこまでやられたら、青竜を倒すのは難しいよ?」
顔をしかめるリムリアに、和斗は気楽な声で答える。
「とにかくやれるだけやってみるさ」
そして和斗はF15のコントローラーを握ると。
「まずは、全力で突撃だ!」
マッハ25で青竜へと突っ込んだ。
が、その攻撃は玄武の喉羅によって、邪魔される。
「くそ、考えたな」
F15を弾かれて、和斗は唇を噛む。
直撃なら玄武の甲羅だろうと、簡単に貫ける。
しかし玄武は甲羅の丸みを上手く利用して、F15を受け流したのだった。
もちろん、玄武の喉羅も無事には済まない。
が、大きく割れた喉羅は、青竜の一吼えで元通りに戻る。
「ならコッチからだ!」
和斗はタイガと朱雀の間をすり抜けようとするが。
バチィ!
タイガが叩き付けてきた腕によって、軌道を変えられてしまった。
もちろんタイガの腕は大ダメージを受けている。
が、やはり青竜の一吼えで完治する。
「ち!」
和斗は舌打ちすると。
宙返り。
急降下。
ローリング。
など、様々なフェイントを駆使して青竜を狙う。
しかし。
「させん!」
「無駄だ!」
「通すかよ!」
タイガ、ドラゴ=玄武、レッド=朱雀が体を張って邪魔する。
F15でも神獣にダメージを与える事は可能だった。
ならマローダー改をぶつけても、神獣はダメージを与えられるだろう。
しかし青竜と朱雀は、空を飛んでいる。
体当たりしても、命中するのはタイガと玄武の脚くらい。
それでは倒す事など出来る訳がない。
装鎧なら倒せるかも。
和斗は一瞬、そう考えた。
しかし。
その為には、リムリアをマローダー改から降ろさなければならない。
だがリムリアに、そんな危険を冒させるなど問題外だ。
それに、もしダメージを与えたとしても青竜が回復するだろう。
「くそ、どうしたらイイんだ!」
叫ぶ和斗に、サポートシステムが答える。
――F15を4機購入する事を勧めます。
「4機? そんなに購入して、どうするんだ?」
――マスターが操るのです。
「1度に5機もか!?」
驚く和斗に、サポートシステムが淡々と続ける。
――コントローラーで操縦するのではなく、マスターの感覚で操るのです。
現在、サポートシステムは50のドローンを操る事ができます。
マスターはマローダー改の20%の能力を得てますから、理屈上は10機のバトルドローンを操る事が出来る筈。
5機のF15なら楽勝です。
軽く言い放つサポートシステムだったが、そんなに上手くいくだろうか?
と思う和斗だったが、他に良い方法など思いつかない。
打つ手がない以上、サポートシステムの助言を受け入れるべきだろう。
とはいえ、とりあえず本当に感覚でF15を操れるか試してみると。
「へえ。けっこう簡単にできるんだな」
和斗は簡単にF15を操作できた事に、驚きの声を漏らす。
目に見えない糸で操るヨーヨーみたいな感覚だろうか。
頭で考えた通りに、F15は飛行していた。
「これなら5機でも、何とかなりそうだな」
和斗は小さく呟くと、サポートシステムに声をかける。
「わかった。F15を4機購入してレベル8までアップしてくれ」
――分かりました。
オプションポイント400万を消費してF15を4機、購入しました。
スキルポイント35万6千を消費してレベル8に強化しました。
そのまま実戦投入しますか?
「頼む」
――了解です。
サポートシステムがそう答えると同時に、F15が上空1キロ地点に出現した。
「よし、さっそく」
和斗は5機のF15を操ってみる。
思ったより簡単だ。
左右のパンチ、左右の蹴り、頭突きの替わりにF15が飛んでいく。
というのが、1番近い表現だろうか。
とにかく。
「これなら青竜を仕留められそうだな」
和斗はニヤリと笑うと、戦闘態勢を取った。
空手の試合なら、何度もやった。
左ジャブで敵のガードを崩して、全力の右パンチを叩き込む。
それで態勢が崩れたら、直ぐに蹴りで追撃。
更に大技に繋ぎ、敵にダメージを与える。
F15での戦いも同じだった。
4機でフェイント。
それに気を取られた隙に、青竜にF15を突っ込ませた。
さすがマッハ25。
その速度で撃ち込まれた500tの機体は。
ドシュ!
見事に青竜の首を吹き飛ばしたのだった。
しかし首だけになっても、まだ死んでいない。
直ぐに青竜は、自分を回復しようとする。
しかし、それを見逃す和斗ではない。
「させるかよ!」
F15を1機、青竜の口の中へと撃ち込み。
「念の為だ!」
更に青竜の頭を、別のF15で撃ち抜いた。
マッハ25のF15による3連攻撃。
この破壊力の前に、青竜の頭は砕け散った。
ここまでやれば、もう回復できないだろう。
「よし、次だ!」
これで回復される心配はなくなった。
後は1匹ずつ、確実に仕留めていけばいい。
「くそおぉぉ! よくもロンを!」
レッド=朱雀が真焔撃槍を放とうとするが、それよりも速く。
ドン! ドン!
その体を2機のF15が貫いた。
片方の翼が引き千切れるほどの、その威力に。
「はぐぅ……」
レッド=朱雀は、ビクンと体を痙攣させると。
ズッシィン。
地面を揺らして墜落したのだった。
「レッド!」
そんなレッド=朱雀の最後を目にしてドラゴ=玄武が叫ぶが。
ギュォォォォン!
ドラゴ=玄武の体を、3機のF15が襲った。
その攻撃は。
バキン!
簡単にドラゴ=玄武の甲羅を撃ち砕き。
ドン!
2機目のF15が、もう1つ大穴を開け。
ビチャ!
3機目のF15が、玄武の頭を撃ち砕いた。
青竜が居ない今、ここまでやっておけば絶対に助からないだろう。
そして。
「おのれぇ! かくなる上は、せめて一太刀!」
タイガがマローダー改へと突進してくるが。
シュパ!
和斗はタイガの首を、2機のF15の翼によって切断した。
首を失いながらもタイガの体は走り続けるが、直ぐに勢いを失い。
ドッシィン!
マローダー改まで5メートルという所で地面に崩れ落ちたのだった。
2021 オオネ サクヤⒸ




