第四十四話 土地神
デビルスピリットが消え去った後。
リムリアはボソリと呟く。
「とにかくリッチ騒ぎはクーロン帝国の第十三皇子が黒幕だった。その黒幕を倒したから一件落着。そういう事でいいんだよね?」
「そうだろうな」
和斗もデビルスピリットが消え去った床を見つめながら、そう漏らした。
と、そこに。
――デビルスピリットを倒しました。
経験値 1憶2000万
スキルポイント 1憶2000万
オプションポイント 1憶2000万
を獲得しました。
累計経験値が742135674になりました。
サポートシステムの声が響き渡った。
更に。
パラパパッパッパパ――!
――累計経験値が6億5000万を超えました。
装甲車レベルが91になりました。
最高速度が11000キロになりました。
最高速度到達までの加速時間が4・5秒になりました。
質量が3万トンになりました。
装甲レベルが鋼鉄8000キロメートル級になりました。
ⅯPが17000になりました。
装鎧のⅯP消費効率がアップしました。
1ⅯPで4秒間、装鎧状態を維持できます。
サポートシステムが操作できるバトルドローン数が50になりました。
ドローンのレベルアップが第8段階まで可能となりました。
神霊力が10倍になりました。
マローダー改はステータスアップを果たしたのだった。
「またレベルアップしたな」
そう呟いた和斗にリムリアが首を傾げる。
「レベルアップしたのに嬉しくないの?」
「いや、数字が大き過ぎて、何だか理解が追いつかない」
「あ、実はボクも」
リムリアは苦笑するが、直ぐに真顔になると
「で、カズト。第十三皇子が消えたらリッチも消えると思ってたけど、コイツ等消えないよ」
静かに佇んでいる5体のリッチを指差した。
「ねえカズト。このリッチ達、第十三皇子を『我が主』と呼んでたよね? なのに何で十三皇子を助けようとしなかったんだろ?」
和斗達が第十三皇子と戦ったいた時。
隙をついて攻撃しようと思えば、幾らでも出来た筈。
なのに5体のリッチは、身動き一つしなかった。
なぜなのか?
というリムリアの疑問に答えたのは。
「あんなヤツを、本当に主なんて思ってなかったからだ」
リッチの1人だった。
「ついでに言えば、ワシはリッチではない。山の神。この地を治める土地神の内の1柱じゃよ」
土地神と主張するリッチに、他のリッチも続く。
「アタイは森の神さ」
「ワタクシは土の神です」
「ウチは川の神やで」
「我は雨の神である」
「はぁ!? 土地神!? どう見ても立派なリッチだけど?」
リムリアの素直な感想に、土地神(?)達が騒ぎ立てる。
「信仰されなくなって神霊力が弱まり、そこをあのイビルスピリットの邪念に捕らわれ、リッチみたいな姿になってしまったのだ」
「でもイビルスピリット、いえデビルスピリットは消滅しました。ワタクシ達を縛り付けているこの邪念も、やがて消え失せるでしょう」
山の神と土の神の言葉通り、ゾンビのような姿が変化していく。
山の神は、しわくちゃの老人の姿に。
森の神は、緑の服を着た小人に。
土の神は小さいが、貴族のような服装の女性の姿に。
川の神は、手のひらサイズの半魚人に。
雨の神は、小さなトカゲに。
そんな自称土地神の姿に、リムリアが呟く。
「神と言うワリに、しょぼい姿だね」
思わず本音を口にしたリムリアに、土地神達が詰め寄る。
「なんじゃと、この子娘が!」
山の神が怒鳴り。
「アタイだって、好きでこんなカッコしてるんじゃない!」
森の神も顔を真っ赤にして詰め寄って来た。
しかし。
「信仰されなくなって、力を失ってしまったのです」
土の神の言葉に、土地神達は急に元気をなくす。
「信仰されなくなったら、神の力の源である神霊力も失う。ウチ等は人々に忘れられるコトによって、神の力を失くしてもうたんや」
更に川の神の言葉で、一斉に肩を落としてしまった。
そして。
「なにしろ最近は魔法の力で、殆どの事は出来てしまうからな。神に頼る必要もなければ崇める必要もないというワケだ」
雨の神の言葉に、土地神達はシュンと俯いてしまう。
「口惜しいが、その通りじゃ……」
「アタイなんかを拝まなくても、狩りも採集も魔法で好き放題だもんな……」
「そうですね。魔法で収穫を増やせるので土の神など必要ないのですよね……」
「ウチもや。水なんか魔法で幾らでも手に入るさかいな……」
「その通り。雨を降らす我など人間にとって、どうでもいい存在なのだ」
『はぁ~~~~~~~~~~』
最後には溜め息をついて黙り込んでしまう土地神達。
その様子は余りにも気の毒だったので。
「いや、そこまで必要とされてないとは、俺は思わないぞ」
和斗はつい、慰めを口にする。
「人間が使える魔法なんて、タカが知れてると思うぞ。少なくとも土地神の守護を超える力を持つ魔法使いなんて、そうはいない筈だ。神はまだまだ人間にとって必要だと俺は思うぞ」
和斗に深い思いはなかった。
土地神達が余りにも気の毒だったので、励まそうとしただけだ。
土地神達の肩に、そっと手を置いて。
しかし。
和斗が土地神の肩に触れた、その瞬間。
『おお!?』
山の神は、ナイスミドルの紳士に。
森の神は、アスリート並みに鍛え上げられた美少女に。
土の神は、ゴージャスな美女に。
川の神は美しい人魚に。
雨の神は龍に、姿を変えたのだった。
『おおおおお……』
紳士と美少女と美女と人魚と龍は、暫く言葉を失っていたが。
「貴方様は何者なのですか!?」
「アタイ達が神として復活できる程の神霊力を持ってるなんて!?」
「これほど力強くて豊かで温かい神霊力など、初めてです」
「せや。ヘタしたら創造神様を超えとるで」
「一瞬で我々を神として復活させるとは、驚くべき神霊力」
大騒ぎした後。
土地神達は説明を口にした。
それによると、彼等が本来の姿を取り戻したのは、和斗が身に纏う神霊力によるものらしい。
そして土地神達は、互いに頷き合うと。
「我らを含め、この地を治める全土地神は、貴方様に忠誠を誓いましょう」
山の神の言葉と共に、全員が和斗の前に跪いたのだった。
『ええ!?』
驚く和斗とリムリアに、山の神は続ける。
「何かありましたら、いつでも我らをお呼び下さい。力を及ぶ限り、お役に立ってみせましょう」
そして土地神達は和斗に一礼すると、スウッと姿を消してしまった。
思いもかけない事態にリムリアは、暫く絶句していたが。
「ねえ、カズト。これって神サマを手下にしちゃった、ってコト?」
思い出したように、和斗をツツいた。
「いやまあ、手下じゃないと思うケド……土地神に直接出会っただけでも驚きなのに、力まで貸してくれるなんて、まだ信じられないぜ」
でも、と和斗は続ける。
「リッチ目撃問題は、これで解決したと思ってイイんだろうな」
「そうだね。じゃあカズト、報告にいこ」
というコトで。
和斗とリムリアはシャンパーニュ村へと向かったのだった。
和斗とリムリアが到着すると、さっそく村人に取り囲まれてしまう。
その村人たちをかき分けて、ドンペルニが和斗の前に立つ。
「事件は解決したのでしょうか?」
ドンペルニの質問に和斗は頷く。
「ああ。元凶だったイビルスピリットは倒した。もうリッチが出現する事はないだろう」
和斗の報告に、村人達が歓声を上げる。
「やったぁ!」
「よかった!」
「これで安心してワインを作れるぞ!」
「ありがとう!」
そんな中、和斗はフと思い付いて質問してみる。
「ところで、この地に恩恵をもたらす土地神がいたと思うけど、今は信仰してないのか?」
「土地神、ですか? この地にそんな神がいるのですか?」
キョトンとなるドンペルニに、和斗は土地神達のコトを説明すると。
「ええ!? そんなコトが! いえ、今まで土地神のコトなど耳にした事など1度もありません」
ドンペルニは首を傾げた。
が、そこに。
「そういやワシの爺さんから、そんな話を聞いた事があるぞい」
1人の老人が声を上げた。
「この村を立ち上げた初代村長は偉大な魔法使いだったらしく、その力により村は発展したと爺さんは言うとった。それ以前は神を祀っていたらしいのじゃが、初代の魔力により土地神への信仰は薄れていき、土地神を祀る習慣は廃れてしまったらしいのじゃ」
しかし和斗とリムリアが、周囲を見回してみると。
シャンパーニュ村は発展しているとは、とても思えなかった。
そこでリムリアは、ドンペルニに聞いてみる。
「今も魔法によって豊かな暮らしが出来てるの?」
「いえ、そんな優秀な魔法使いが何人もいる筈がありません。初代村長が寿命を迎えて以来、この村には優れた魔法使いはいません。我々は過酷な自然と戦いながら慎ましい生活を送っているのです」
「なら!」
リムリアは目を輝かす。
「土地神を祀り直して、この村を守ってもらったらどう? その方が土地神も喜ぶだろうし」
リムリアの言葉にドンペルニは戸惑った声を漏らす。
「しかし神を祀ると言われても、どうやったらいいのか……」
そこで和斗が口を開く。
「小さくて構わないから、祠を作るんだ。そして土地神達に日々を感謝し、今より少しだけ幸福になれるように願えばいい」
人々から信仰心が失われた結果、神としての力を無くしてしまった。
土地神達は、そう言っていた。
ならシャンパーニュ村の人々が、再び信仰するようになったら。
土地神達は、神としての力と誇りを取り戻せるだろう。
そう考えての、和斗の提案だ。
「そんな事で良いのでしょうか?」
不安げなドンペルニに、和斗は笑みを浮かべる。
「本人達に聞いてみよう。俺に力を貸してくれる土地神達よ、姿を現してくれ」
和斗がそう口にすると同時に。
「我が主よ、お呼びですかな?」
山の神を筆頭に、5柱の土地神が現れた。
「この方々が!」
「我らを守護して下さるのですか?」
「何と尊い!」
「ありがたや、ありがたやぁ」
騒ぐ村人達に。
「山の神、森の神、土の神、川の神、雨の神だ」
和斗は土地神対を順に紹介した。
そして和斗は、5柱に尋ねてみる。
「祠を作って、村人に日々の感謝を捧げさせようと思う。まあ色々な願いもすると思うけど、この村や土地を守る土地神になってくれるか?」
和斗の言葉を耳にするなり、土地神達は喜びを露わにした。
「おお、喜んで!」
「これでアタイも、胸を張って土地神と名乗れる!」
「人々に感謝を捧げられる。それこそ神としての喜びです」
「人間に必要とされるなんて久し振りや!」
「これで神霊力の心配をしなくて済む」
はしゃぐ土地神達に和斗は確認する。
「この村の土地神になる、というコトでイイんだな?」
「はい。この上ない喜びです」
代表して答えた山の神に、他の土地神達も頷く。
それに頷き返してから、和斗はドンペルニに目を向ける。
「なら、これで決まり。というコトでイイよな」
「はい。土地神様方、宜しくお願い致します」
ドンペルニが頭を下げると、村人達も一斉に頭を下げた。
「これでめでたしめでたし、だね」
ニッコリと笑うリムリアだったが、そこに。
「しかし問題が1つある」
雨の神が、重々しい声を漏らしたのだった。
2021 オオネ サクヤⒸ




