表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/211

   第四十話  上位修正


 



 サポートシステムが、マローダー改のレベルアップを告げた。

 が、今回は、そこで終わらない。


――レベル90を超えましたので、ステータスが上位修正されます。

  最高速度が9000キロになりました。

  加速力表示が変わります。

  最高速度到達までの加速時間が5秒になりました。

  衝撃緩和力がカンストしました。

  以後、常に最高速度衝撃の2倍を無効化します。

  登坂性能が180度になりカンストしました。

  以後、どのような地形も走破が可能です。

  質量が20000トンになりました。

  装甲レベルが鋼鉄6000キロメートル級になりました。

  ⅯPが15000になりました。

  サポートシステムによる、マローダー改の自動運転が可能となりました。

 

  購入できるバトルドローンの種類が増えました。

  バトルドローンのレベルアップが可能となりました。


  マスターの能力を表示します。

  マローダー改とのシンクロ率が20パーセントになりました。

  質量調整が可能となりました。

  眷属のシンクロ率が3パーセントになりました。



  隠しステータスが公開されます。

  ステルス性能がアップしました。

  神霊力が惑星級になりました。



「ちょっと待ってくれ!」


 新しく表示された内容に、和斗は声を上げる。


「情報が多過ぎて理解できない! もうすこし分かり易く説明してくれないか?」


――了解です。

  分かると思われる事は省略して、新しく表示された事柄の説明を始めます。

  衝撃緩和力とは、マローダー改が激突した時、車内に発生する衝撃を緩和する能力ですが、この能力がカンストしました。

  以後、どのような衝撃だろうと、車内に伝わる事はありません。



 なるほど。

 今までマローダー改で体当たりをする事は、何度もあった。

 しかし改めて考えてみると。

 マローダー改で体当たりしたら、最高速度でハンドルに叩き付けられていた筈。

 そうならなかったのは、衝撃緩和力もアップしていたからだ。

 

 そしてレベル90になった今。

 マローダー改が生み出す2倍の衝撃を無効化するに至ったらしい。

 つまり、体当たりしても車内には何の衝撃も伝わらない。


――では、登坂性能について説明します。

  登坂性能が180度になったので、天井に張り付く事が可能となりました。

  つまり、どんな場所であっても走行が可能です。

  これ以上の性能アップはあり得ません。

  なので登坂性能の表示は省略されます。

 


 ここまでは分かった。

 そしてシンクロ率が20パーセント。

 これも理解できる。

 

 しかし。


「質量調整が可能って、どういうコトなんだ?」


――神霊力により、マローダー改もマスターの、その質量通りの重量を、この星に与えていません。それにより、マスターが敵を踏み付け攻撃してもダメージを与える事が出来ませんでした。

  ですがレベルが90になったので、マスターがそう望めば、攻撃時に本来の質量を発揮できるように  なりました。


「つまり、俺が全体重をかけて敵を踏み付けたら、2000tの重さで踏み付ける

事になるって事か?」


――そうです。


「じゃあ、バトルドローンのレベルアップって、どういう事なんだ?」


――今まで強化できたのは、ドローンに搭載した武器の威力だけです。

  しかし今後は、ドローン本体のステータスレベルを上げる事により強化が可能となりました。


「つまり?」


――例えばF15タイプのバトルドローンなら、スキルポイントを消費する事により最高速度、装甲強度、質量、航続距離をアップできます。


「F15タイプ?」


 確認してみると、購入可能な武器に新しく追加されていた。


「マジかよ。戦闘機まで購入できるようになってやがる」


 そう呟いたものの、ここまでは理解できる。

 

 しかし。

 ステルス性能とは何の事だろう?

 そして神霊力が惑星級になった。

 これも意味不明だ。

 

 だから和斗が、ステルス性能について尋ねてみると。


――ステルス性能とは、隠密行動能力です。サーチの魔法でも感知できません。 

  同時に、武器と認識させない、驚異と感じさせない能力でもあります。

  つまりマローダー改を目にしても、異常と思わせない能力です。


 それを聞いて和斗は納得する。

 今まで、マローダー改が人々から危険視される事はなかった。

 しかし馬もいないのに動く鋼鉄の巨大な箱に恐怖を感じない筈がない。

 なのに誰も騒がないから不思議に思っていたのだが。

 どうやらステルス能力が、マローダー改を危険と認識させなかった為らしい。


「じゃあ、神霊力が惑星級ってどういう意味なんだ?」


――マローダー改の質量が、この星に害をなさないのは神霊力の働きです。

  同時に神霊力とは、霊体を破壊できる力でもあります。

  その神霊力が、惑星を統治する神に匹敵するレベルだという事です。


「惑星を統治する神!?」


 和斗は思わず叫んでしまった。

 神霊力が何なのか、和斗には完全に理解できない。

 

 そもそも、惑星を統治する神といわれても、ナンのコトやら。

 日本の神話に出て来る神を想定したらいいのか。

 ギリシャ神話に出て来る神のレベルなのか。

 それとも北欧神話を思い浮かべればいいのか。

 まあ、人間に神の力を理解するなどムリな事かもしれない。

 

 ただ。

 とんでもない事になっているのは間違いなさそうだ。


「とにかく神に匹敵するってのなら、リッチが1発で消滅したのも当然かもな」


 和斗はそう呟いてから、ミナが馬車の手綱を握って待っているコトに気付く。


「って考え込んでいる場合じゃないな。ごめん、ミナ。待たせちゃったね。余計な時間をくってしまった。じゃあ旅を再開しようか」

「は、はい、では出発しましょう」


 ミナは、和斗とリムリアが馬車に戻ったところで手綱を操った。


 ブルルルル!


 馬がいななき、馬車は再びユックリと動き出す。


「でも、この護衛の依頼の難度はEだったのに、あんなに強いモンスターが出るなんてビックリだね」


 ほう、とため息を漏らすリムリアに、ミナが頷く。


「はい。街道沿いに、あんなに強力なモンスターが現れるなんて初めてです。そもそもリッチなんてSS級のモンスターは、出現と同時に国が討伐に出るレベルのモンスターです。そんな化け物がいきなり、しかも人々が往来する街道に出現するなんて前代未聞の事です」

「つまり普通じゃありえない事が起きたって事か?」


 顔を曇らせる和斗に、ミナがコクコクと何度も頷く。


「そうなんです。確かに魔の谷は危険な場所ですが、E難度の危険しかない筈なんです。というより街道にリッチが出るなんて事がしょっちゅうあったら、とても行商人なんて、やってられません」

「そうなの?」


 聞き返すリムリアに、ミナが続ける。


「そりゃそうですよ。SS級モンスターっていったら兵士5万人に匹敵する戦闘力を持っているんです。そんなリッチを倒せる冒険者はめったにいません。それにいたとしても、護衛を依頼するには高額の報酬を用意しなければなりません。とても普通の商人に払える額じゃないですよ」


 リッチの討伐ランクはSS級らしい。

 それはつまり兵士5万人の戦闘力が必要となるレベル。

 なら報酬も単純計算で5万人分という事になる。

 当然ながら、普通の商人に支払える額ではない。

 まあ実際、そこまで高額ではないらしいが。


 そしてミナは、更に顔を曇らせた。


「でもこうなると、街道の宿場が心配です」


 大きな街を結ぶ街道には、旅する者の為、宿場町が作られている。

 1日で歩ける距離、つまり25キロほど離れている事が普通だ。

 もしも出現したリッチが1匹だけではなかった場合。

 次の宿場町が消滅していても不思議ではない。


「とはいえ、今の私に出来る事は何もありません。宿場町の無事を祈りつつ、先を急ぎます」


 そんなミナの祈りが天に届いたのか。

 ミナの馬車は、日が沈む前に宿場町に到着したのだった。


「ああ、よかった、この宿場町が無事で。初日からリッチなんて化け物に遭遇した時は、もう人生終わりかと思いましたけど、カズトさんとリムリアさんのおかげで無事、最初の宿場町に辿り着く事ができました」


 ミナがペコリと頭を下げる。


「ああ、リッチが出現してなくて良かったな」

「はい。良かったです」 


 ミナは微笑むと、宿屋へと馬車を進める。


「これから向かう宿は、旅の商人が宿泊する施設です。簡素な宿ですが、我慢してください」


 確かにミナの言った通り、簡素な宿屋だった。

 まあ、観光じゃなくて仕事で旅する者の為の宿だから、こんなモノだろう。

 

 しかし嬉しい事に。

 宿場町の中央には、広い公衆浴場が設置されていた。

 これも旅の商人の為に用意されたものだろう。


「こりゃあいい!」

「うん、広い風呂ってサイコー!」


 和斗とリムリアは、大きな湯船に浸かる快感を十分に楽しんだ後。

 ミナの案内で、今度は大きな食堂に向かう。


「ここも旅商人の為の施設です。安くて美味いのがウリなんです」


 そんなミナの説明通り、料理は実に美味しかった。


 そして簡素だが清潔なベッドで眠った翌日。


「さあ、今日もよろしくお願いしますね」


 ミナの元気な声と共に、宿を出発した。


「今日も良い天気ですね」


 ノンビリとした声を上げるミナの横には、Ⅿ16を手にした和斗。

 その和斗の横にはリムリアが座っている。

 ちなみにマローダー改は今、馬車の後ろを無人で走っている。

 レベルが上がった事により自動運転が可能になったからだ。


「初日にリッチが出現して驚きましたけど、さすがにもう、そんな大事件は起こらないよね」


 そう口にしたリムリアに、和斗が呑気な声を上げる。


「まあリッチくらいなら、簡単に倒せるみたいだから、別に何体リッチが出現したって平気だけどな」


 それを耳にしたミナが、溜め息をつく。


「はぁ~~。そんなとんでもない発言、生まれて初めて聞きました。リッチと遭遇するという事は死と同義語だというのに……これがSSS超級の冒険者っていうモンなんですね」

「ま、どっちにしても、リッチなんて何度も出ないと思うよ」


 ノホホンと言ってのけるリムリアに、ミナが全力で頷く。


「そ、そうですよね! もう出ないですよね!」


 必死に自分に言い聞かせているミナに、リムリアが意地の悪い笑みを浮かべる。


「そうそう。ま、せいぜい盗賊くらいじゃないかな?」

「お願いですから勘弁してください……」


 などとミナをからかっているリムリアに、和斗はボソリと漏らす。


「俺の故郷には、噂をすれば影が差す、という諺があってな。悪い事を口にすると本当に悪いコトが起きたりするモンなんだ」

「そんなコト、迷信だよ」


 リムリアがケラケラと笑った、その直後。


「馬車を止めろ!」


 いきなり人相の悪い男達が、馬車の前に飛び出して来た。

 剣やナイフ、斧で武装している。

 身に付けているのは、質の悪い軽装鎧やチェーンメイル。

 そして品のない、凶暴そうな顔。

 どう見ても盗賊だ。


「な?」


 チロリと視線を送る和斗に、リムリアがブンブンと首を横に振る。


「ち、違うモン! ボクのせいじゃ無いモン!」

「どうかな~~?」

「うう、カズトのいじわる~~」


 などと和斗とリムリアがじゃれ合っていると。


「おい、お前等、自分達が置かれた状況が分かってるのか? お前達は俺達25人に取り囲まれてるんだぞ!」


 そう怒鳴りながら、1人の男が前に出てきた。

 身長は2メートル近いだろう。

 体は分厚く、腕も丸太のように太い。

 まるで熊のような大男だ。

 そして。


「大人しく積み荷を置いていきな。そうしたら命だけは勘弁してやる」


 大男はそう口にすると、凶暴な笑みを浮かべたのだった。








2021 オオネ サクヤⒸ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ