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   第三十九話  霊体との戦い


 



「とりあえず、馬車を取り囲んでいるレイスを始末するか」


 和斗は手当たり次第にレイスを殴りつけた。

 いや、和斗だけではない。

 リムリアも拳でレイスを消滅させている。


「凄い! ホントにボク、レイスを素手で倒してる!」


 さっきまでの、泣きそうな顔が嘘みたいなリムリア。

 そして凄まじい勢いでレイスを消滅させていく和斗。

 この2人の活躍にミナが歓声を上げる。


「レイスを素手で倒すなんて、今まで聞いた事ありません! さすがSSS超級の冒険者! やっぱりとんでもないです!」


 ミナが言い終わった時には、和斗とリムリアはレイスを全滅させていた。

 なにしろ一部とはいえマローダー改のステータスを得ている。

 100体のレイスなど瞬殺だ


「よし、残りもさっさと片付けちゃお!」


 完全に調子に乗っているリムリアに、リッチが絶叫する。


「なぜだ! 聖属性の魔法攻撃ならともかく、なぜ素手でレイスを倒せる!?」 


 が、直ぐにリッチは落ち着きを取り戻す。


「確かにレイスを素手で倒した事には驚いた。しかしスペクターはレイスの10倍強いぞ。さあ、スペクターも素手で倒せるかな?」


 リッチが言い終わると同時に、スペクターが襲いかかってきた。

 確かに、レイスなど比べ物にならない圧力を感じる。

 本当にレイスの10倍の戦闘力を持っているのだろう。

 しかし。


「そら」


 ブン。


 パァン!


 和斗の軽いパンチを食らって、スペクターが破裂した。

 破裂した後には黒い霧が漂うが、それも直ぐに消滅する。


「やっぱり大した事ないな」


 顔色も変えずに呟く和斗に、リッチが叫ぶ。


「極大召喚!」


 と同時に、凄まじい数のスペクターとスピリットが出現した。


「どうだ! 最強の霊体スピリット7000体と、スピリットに次ぐ戦闘力を持つスペクター10000体だ! この数には、さすがに攻撃も間に合うまい! さあ我が僕どもよ、一斉にかかるのだ!」


 リッチの命令に。


『おおおおおおおおおおおおおおおおお……』


 スペクターとスピリットが津波のように襲いかかってきた。


「国すら滅ぼせる戦力で、たった3人を攻撃するなど、我ながら大人げないと思うが、獅子はウサギを狩るにも全力を尽くすと言う。悪いが、全力で攻撃させてもらうぞ! わははははは!」


 リッチが哄笑する。

 が、それは直ぐに。


「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」


 悲鳴に変わった。

 和斗の拳が凄まじい速度で、スペクターとスピリットに撃ち込まれたからだ。

 しかも一撃ではない。

 マシンガンのように途切れる事無く撃ち込まれる。

 そして殴られるどころか拳が掠っただけで。

 

 ボシュ! ボシュ! ボシュ! ボシュ!

 

 スペクターもスピリットも消し飛んでいく。


 ちなみに和斗の現在の最高速度は780キロ。

 対してボクサーのパンチは、40キロ程度。

 つまり理屈上は、20倍近い速度でパンチを出せる事になる。


 そしてリムリアの最高速度は78キロ。

 和斗の10分の1しかないが、それでもボクサーの2倍ほどの速度だ。

 だから2人の高速攻撃は。

 スピリットとスペクターを10分程で全滅させたのだった。


 17000体もの霊体が消え去った後。

 リッチはピクリとも動かず立ち尽くしていた。


「あれ? ショックのあまり昇天しちゃったのかな?」


 リムリアが首を傾げた、その時。


「ひゃひゃひゃひゃひゃ!」


 リッチが突然、笑い出した。


「な、なに? 正気を失った?」


 ビクッと飛び上がるリムリアを、リッチがギロリと睨む。


「なるほど、スピリットを瞬殺できるモノがいるとは驚いたぞ。しかし霊体召喚など、ほんの遊び。我が真価はアンデッド化によって増大した魔力と、永遠に近い時を費やして編み出した攻撃魔法にある。このようにな!」


 リッチが叫ぶと同時に。


 ピッシャァアアアン!


 和斗とリムリアに、稲妻が降り注いだ。


「どうだ、無詠唱による雷魔法攻撃だ! しかも威力は、自然に発生する雷の10倍に高めている! ドラゴンすら撃ち倒せる雷魔法攻撃を食らっては、さすがに生きてはいまい。まあ、生ある者など、しょせんこんなものよ」


 勝利を確信したのか、リッチがシミジミと呟く。


 しかし。


「そうだな、こんなモンだ」


 和斗は平然と言ってのけた。


「ば、馬鹿な!」


 驚愕に目を見開くリッチだったが、直ぐに雰囲気が一変する。

 先程までは、どこか余裕のある態度だった。

 しかし今は、狂気をはらんだ危険な臭いを放っている。

 そしてリッチは血走った目を和斗に向けると。


「ならば、我の限界まで魔力を振り絞った一撃を食らわせてやろう。轟雷!!」


 またしても稲妻が和斗を直撃する。

『轟雷』と口にしただけあって、先程の雷よりも遥かに強力な攻撃だったが。


「効かんな」


 和斗は、またしても無傷でそう口にしたのだった。


「何だとぉぉぉ! 今のは300倍にも強化した落雷だったのだぞ! これに耐えられる生物など存在する訳が無い! なのに何故だぁぁぁ!」


 リッチが絶叫しているが、和斗にしてみると当然の事でしかない。

 なにしろマローダー改の耐雷性能は300兆ボルト。

 その耐雷性能の10パーセントを得ている和斗は30兆ボルトに耐えられる。


 一方、雷は1億ボルト程度。

 300倍に強化しても300億ボルト。

 30兆ボルトに耐えられる和斗が、ダメージを受ける筈がない。


 まあ、リッチがそんなコトを知っているワケがないから仕方ないコトではあるが。

 などと和斗が考えている間に。

 リッチは冷静さを取り戻す。


「おのれぇ、雷無効のスキルを撃ち抜く為に開発した轟雷が通用しないとは驚いたぞ。しかし我が魔法は他にもある。食らうがよい。断空!」


 リッチの体から凄まじい魔力が迸った。

 が、和斗には何も起こらない。


「?」


 首を傾げる和斗にリッチが勝ち誇る。


「どうだ、キサマの周囲だけ真空にした。完全な真空のトンネルは宇宙にまで続いている。これが何を意味するか分かるか? キサマは極限の低温にさらされるという事だ。ふははははは! 窒息死するのが早いか、凍結死するのが早いか。実に楽しみだ!」


 そう言われても、和斗を絶対零度に耐えられる。

 そしてマローダー改は、BC兵器無効によって完全密閉状態と同じだ。 

 くわえて自動空気浄化機能も持っている。

 だから今の和斗は真空状態でも呼吸困難になる事はない。

 

 もちろんその事は、リムリアも理解している。

 サポートシステムが直ぐに説明してくれたから。

 だからリムリアがリッチに言ってのける。

 真空なので声が届かない和斗に変わって。


「そんな魔法、カズトは平気だよ。ほら、ボクに向かって手を振ってる」

「なんだと!?」


 リムリアの言葉に、リッチは目をむく。

 確かに和斗はにこやかな表情で手を振っている。

 真空状態にさらされて死にかけている者に出来る事ではない。


「何故だ! どんな生物も呼吸が出来なければ死に至るしかない筈! なのに何故キサマはまだ生きている!?」


 が、そこでリッチは無理やり自分に言い聞かせる。


「まあ真空などゾンビでも耐えられる。驚く程ではない」


 そしてリッチは真空状態を保つ事を止めると。


「ならば、これならどうだ! 超深海水召喚!」


 今度は和斗を水が包み込む。


「どうだ! 深さ1万5千メートルの海水を召喚した。もちろん、その凄まじい水圧のままだ。城すら簡単に潰す水圧でキサマのペチャンコになるがいい!」


 なるほど。

 1万5千メートルの水圧なら城くらい潰れるだろう。

 しかし鋼鉄433キロメートルに匹敵する強度の和斗を潰せる訳がない。

 顔色一つ変えない和斗に、リッチがついに絶叫する。


「一体キサマは何者なのだ! 呼吸を奪われても平気で、しかもスピリットすら消滅させる事ができる超水圧攻撃にも顔色一つ変えない! キサマの体はどうなっているのだぁぁぁ!」


 思いっ切りキレているリッチに、リムリアが告げる。


「どうって、マローダー改のステータスの1割を得ただけだよ」

「ま、まろーだーかい?」


 目を白黒させるリッチに向かって、和斗はユックリと歩を進める。


「分からなくていい。だが、これからオマエがどうなるか、くらい分かるだろ?」

「ひ!」


 超高圧の海水を纏ったまま歩く和斗に恐怖を覚えたのだろう。

 リッチは海水召喚を中止すると、防御障壁を作り出した。


「どうだ! 最大級の攻城バリスタの矢すら跳ね返す防御障壁を5枚重ねた! これを破壊する事は不可能だぞ!」


 和斗を傷つける事はできない。

 しかし和斗も自分を傷つける事は出来ない。

 リッチはそう考えたのだろう。


 ちなみに。

 最大級の攻城バリスタとは、言わばとてつもなく大きなボーガンだ。

 長さ30メートルもある巨大な矢を撃ち出す。

 リッチの防御障壁は、その巨大矢を跳ね返す強度を持つらしい。


 しかし。

 今の和斗の質量は1380t。

 つまり和斗の正拳突きには1380tを超える破壊力を持つ。

 たかが30メートルの矢を跳ね返す程度で耐えられる衝撃ではない。


 もちろん、それは和斗も分かっている。

 だから和斗は余裕で拳を構えると。


「せいッ!」


 正拳突きを放った。


 ところで。

 全身に力を込めて殴った方が、強力だと思っている人が多い。

 だが力が入った殴り方は、腕の力だけしか使っていない事が殆どだ。

 しかし本当に強力なパンチとは、肩の力を抜き下半身のバネで撃ち出す。

 だから和斗が放った、その本物のパンチ=正拳突きは。


 パリン!


 5枚の魔法障壁を、薄い氷よりも簡単に撃ち砕き。


 ドパ!


 リッチも同時に消滅させたのだった。


 そんな和斗を見つめながら、ミナが興奮した声を上げる。


「スゴイ! SS級モンスターのリッチを一撃で消滅させるなんて! これがSSS超級の冒険者なんですね! よかった、皆さんが護衛にててくれて。これが他の冒険者だったら、ここで命を失っていたとこでした。幸運と皆さんに感謝しないといけませんね! それに……」


 7000体のスピリットに10000体のスペクター。

 それらを操るSS級モンスターのリッチ。

 この絶体絶命の状況で助かった事で、言葉が止まらなくなっているらしい。

 と、そこにサポートシステムの声が響き渡る。


――ゾンビ        8体

 ゴースト     100体    

 ファントム    100体   

 レイス      100体

 スペクター  10000体

 スピリット   7000体

 リッチ        1体


 を倒しました。


 経験値       82530308

 スキルポイント   82530308

 オプションポイント 82530308

 を獲得しました。


 累計経験値が622135674になりました。


 そして。


 パラパパッパッパパ――! 


 ファンファーレが鳴り響き。


――累計経験値が5億5000万を超えました。

 装甲車レベルが90になりました。

 最高速度が8100キロになりました。

 加速力が20%、衝撃緩和力が50%アップしました。

 登坂性能が168度、車重が14400トンになりました。

 装甲レベルが5184540メートル級になりました。

 ⅯPが11700になりました。

 装鎧のⅯP消費効率がアップしました。

 1ⅯPで3秒間、装鎧状態を維持できます。

 セキュリティーがレベル18になりました。

 不法侵入者を100万倍バルカン砲対空システムレベルで排除します。

 サポートシステムが操作できるバトルドローンが40になりました。


 マローダー改は、レベルアップしたのだった。






2021 オオネ サクヤⒸ

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