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   第三十話  登録試験 その1


 




「ここが攻撃力を観る為の施設です」


 受付嬢に案内されたのは、古代ローマの闘技場みたいなトコだった。

 中心の広場は、直径50メートルほど。

 観客席の数は300というトコだろう。

 まあ、観客席なのかは知らないが。


「防御結界魔法を作動させますので、思いっ切りやってください」


 受付嬢がそう言うと、闘技場は薄い光のドームに包まれた。

 これが防御結界なのだろう。


「そして標的はアレです」


 受付嬢が、広場の端に並べられた、8本の棒を指差す。

 高さ2メートルほど。

 太さは50センチくらい。

 だが、それぞれ材質が違うようだ。


「それぞれ丸太、石、鉄、ミスリル、アダマンタイト、オリハルコン、ヒヒイロカネ、究極鋼で出来ています。順番に攻撃してみて下さい。剣でも魔法でも、好きな方法でどうぞ。1番強力な攻撃を当ててください」


 なるほど。


 まず最大攻撃力を計る。

 そして、その攻撃力をどのくらい使いこなせるかで『級』が決まるのだろう。

 

 例えば。

 1000倍強化Ⅿ16の威力は凄まじい。

 しかし。


 1000倍強化Ⅿ16を持った3歳児。

      対

 ノーマルのⅯ16を持った特殊部隊の兵士。


 どちらが勝つか、といえば特殊部隊の兵士に決まっている。

 つまり、持っている武器の強さと、それを使いこなす技術。

 その両方を総合的に判断して『級』を決めるのだろう。


 そんなギルドの考えに、リムリアも気が付いているようだ。


「じゃあ、私からやっていい?」


 自信満々でそう口にするリムリアに、受付嬢が頷く。


「どうぞ」


 とそこに。


「お、嬢ちゃんから始めるのか!?」

「ナニする気だぁ!?」

「素手だから魔法か?」

「木に火を点けるくらい出来るよな?」

「不合格でもガッカリすんなよ!」

「落ちたら、オレが荷物運びに雇ってやろうか?」

『ぎゃははははは!』


 いつの間にか観客席に、ギルドにいた冒険者達がいた。


「ここって誰でも入れるの?」


 リムリアが聞くと、受付嬢が苦笑いを浮かべる。


「ギルドに所属する冒険者なら、誰でも入れるようになっているのです」

「そんな必要あるの?」


 リムリアの素朴な疑問に、受付嬢は観客席の後ろに視線を向けた。

 そこにいたのは、重厚な空気を纏う冒険者らしき者だ。


「彼らは古参の冒険者です。もしも新人の実力に不安を感じた場合、あの人達がコッソリと後を付けて助けてくれるのです。まあ、命の危険がある場合に限られていますけど」

「それって秘密なんじゃないの?」


 リムリアの質問に、受付嬢はニコリと笑う。


「アナタ方には、その必要なさそうですから。ついでに言うと、今日はギルドマスターと副ギルドマスターも見に来ています。ひょっとしたら、ドラクル最強と言われるワラキア領の姫の実力が気になったのかもしれません」


 ちなみに。

 ギルドマスターはゴリアテ、副ギルドマスターはジェノスという名らしい。


「え!? 知ってたの!?」


 ビックリするリムリアに、受付嬢がピッと人差し指を立てる。


「リムリア・トエル・ワラキア・ドラクル。この名を聞いて、貴方が何者か分からないギルド職員などいません。なにしろ冒険者ギルドを運営しているのは、我々ドラクルの一族なのですから」

「そ、そうなの!?」


 驚くリムリアに、受付嬢が牙を伸ばして見せた。


「人間に獣人に魔族。様々な人々が、様々な理由で冒険者となります。そして中にはトラブルを起こす者も。そんな者を統率する事が出来るのは、世界一の攻撃魔法を操り、物理攻撃に秀でたワーウルフと共に生きている、我々ドラクルの一族しかいないと思いませんか?」

「そう言われてみれば、そうかも」


 と、そこでリムリアは複雑な表情になる。


「じゃあゾンビが大量発生した時、冒険者の力で事件を解決する事も出来たんじゃないの?」


 そんなリムリアの疑問に、受付嬢が複雑な表情を浮かべた。


「もちろん依頼を出しました。でも、その依頼を受けるかどうかは冒険者が決める事です。そして冒険者達は判断しました。この依頼を受けたら、間違いなく死んでしまうと。どれほど高額の依頼料を用意しても、死ぬと分かっている依頼を受ける者など、いる訳がありません」

「それもそっか」


 リムリアは苦笑する。


 あの戦いは、和斗の助けなしでは生き残る事は出来なかった。

 正ドラクルとなったリムリアでも、だ。

 そんな戦いに参加しても、皆殺しにされただろう。


「断って当たり前だよね」


 そう呟いてから、リムリアは真顔になる。


「じゃあ、本当に本気でやってイイのね? 全力攻撃をブチかますよ?」

「はい。思いっ切りやってください」


 受付嬢の言葉に、レムリアの目がギラリと光った。


「実を言うと、私の攻撃魔法がどれくらいのレベルなのか、ズット気になってたんだ。じゃあ、しっかり計ってね」


 そしてリムリアは、右手をスウッと標的に向けると。


「プラズマランス!」


 超高熱の槍を撃ち出した。


 その温度は、白銀ワーウルフと戦った時より遥かに高い。

 おそらく30万度を超えている。

 もし防御結界がなかったら、観客席にいる全員、瞬時に炭化していただろう。


 その攻撃魔法により。

 アダマンタイト、オリハルコン、そしてヒヒイロカネすら一瞬で蒸発した。


 それどころではない。

 究極鋼までもが、溶けかけている。

 ヒヒイロカネの100倍の強度を持つ究極鋼が、だ。

 その想像を絶する威力に。


『なんじゃ、ありゃぁあああああああ!』


 見物していた冒険者達が絶叫していた。


「おいおいおい、マジかよ!」

「どうすんだよ、あんな化け物をバカにして!」

「ひょっとして、怒らせちまったとか?」

「もし今の魔法で攻撃されたら生きてた痕跡すら残らないぞ!」

「ナンの痕跡も残らないって、それって……」

「ひょっとして、完全犯罪が可能ってコトか!?」

『ヒィィィィィィ!』

「はぁ……」


 受付嬢は、青い顔をして逃げ出す冒険者達に目もくれず。


「さすがですね。攻城兵器すら跳ね返す防御結界が軋みました」


 リムリアに真剣な目を向けた。


「ドラクルの一族最強。その言葉は本当でした。リムリアさん、アナタが一族最強である事は間違いありません。攻撃力だけなら、間違いなくSSS級です」

「ホントに!? ホントにボクの力は一流なの!?」

「本当ですよ。アナタが最強である事を、冒険者ギルドの名に置いて保証します」

「やった――!」


 受付嬢はピョンと飛び跳ねるリムリアに微笑んでから。


「では、カズトさん、貴方の力を見せてください」


 和斗に視線を向けた。


「え~~と、ひょっとして俺のコトも知ってます?」

「勿論です。たった1人でクーロン帝国を退けたカズトさんの事を知らないワケがありません」

「いや、俺が凄いんじゃなくて、マローダー改が凄いんですけどね」


 苦笑する和斗に、受付嬢が真顔になる。


「優れた武力を所持する。それも間違いなく貴方の戦闘力です。ですから、その優れた武力を、ぜひ披露して下さい」

「つまり、マローダー改の力を見せたらいいんですね?」

「はい」

「分かりました」


 和斗は受付嬢に頷くと。


「装鎧!」


 マローダー改を纏った。

 装鎧状態の和斗の身長は、2メートル30センチ。

 この世界の鎧と比べて角ばったシルエットをしている。

 元々が装甲車だからだろう。


「突然、全身鎧を身に纏った? これはギルドも知らない能力ですね」


 そう呟く受付嬢を、リムリアがつつく。


「カズトが本気を出したら防御結界が壊れるかもしれないけど、イイの?」

「はい。冒険者ギルドというより、ドラクルの一族としてカズトさんの戦闘力を把握しておくよう、命令を受けていますので」

「そう。なら平気だね」


 リムリアはニッと笑うと大声を上げる。


「カズト、思いっ切りだって!」


 その声に、和斗は考え込む。


「思いっ切りか。じゃあ戦車砲だな。戦車砲!」


 和斗が叫ぶと同時に、装鎧の右前腕に戦車砲が装着される。

 戦車砲塔ではない。

 戦車砲塔など装着したら動きにくくてしょうがないから、単独の戦車砲だ。

 それでもかなりの長さがある。

 和斗は、その長い砲身を究極鋼へと向けた。


 ちなみに、車砲とチェーンガンは25000倍に強化してある。

 つまり戦車砲は今現在、最強の武器という事になる。


「さて。リムの魔法にも耐えた標的に、どこまで通用するかな」


 和斗はそう呟くと。


 ドッカァン!


 戦車砲を発射した。

 その衝撃だけで木と石の柱は砕け散り。


 ドパン!


 究極鋼に大穴が開いた。

 と同時に究極は砕け散り、その直後。

 

 パキィン!


 防御結界にも大穴が開く。

 そして防御結界を撃ち抜いた砲弾は。


 ガッコォォォォォン!


 彼方に見える、山を吹き飛ばした。


「こ、これ程とは……」


 受付嬢に、和斗は視線を向ける。


「何という攻撃力でしょう……想定を遥かに超えるものでした。まさか防御結界を簡単に貫くとは……」


 震える声で呟く受付嬢に、和斗が声をかける。


「今のが戦車砲です。けど、連射力ならバルカン砲の方が上だし、広範囲攻撃ならチェーンガンだし、破壊力だけならヘルファイアだし、あ、それより体当たりの方が上かな? どうします、全部見ますか?」

「え? え~~と、その……」


 受付嬢に、和斗が言っている事は理解出来なかった。

 しかし、今の戦車砲を超える攻撃力を持っている事だけは分かる。

 そして、それをここで披露されたら街が消滅する事も。

 だから受付嬢は。


「いえ、もう十分に攻撃力は見せて貰いました。攻撃力だけならSSS級、というより、それ以上なのは間違いなさそうですね」


 そう口にして苦笑したのだった。

 そんな受付嬢に、リムリアが張り切った声を上げる。


「なら今度は、実戦の試験だね!」

「そ、そうですね。でも困りましたね、アナタ達と戦って無事にいられる試験官など、いる筈がありませんから……それ以前に、消滅しても構わない場所から探さす必要がありそうですね」


 困り果てる受付嬢に、観客席から声が飛ぶ。


「ダンジョンを攻略させたらどうでしょう? それなら彼らの後を歩くだけでいいでしょう?」


 見た目は爽やかな青年だ。

 が、ドラクルの一族らしいので、本当の年齢は見当もつかない。


「副ギルドマスター!?」


 驚く受付嬢に副ギルドマスター=ジェノスが続ける。


「幸いな事に、この街の近くには世界最大と言われているダンジョンがある事ですし、そこで試験をしたらいかがでしょう」

「そんな試験法、前代未聞ですが?」


 困惑気味の受付嬢に、ジェノスがニコリと笑う。


「彼らの攻撃力も前代未聞ですから、構わないんじゃないでしょうか」


 その言葉に受付嬢は暫く考え込んだ後。


「リムリアさん、カズトさん、それでよろしいでしょうか? 聞いての通り前代未聞の試験法ですので拒否なさってもかまいませんが」


 そう尋ねてきた。

 そんな受付嬢に。


「いいよ!」


 リムリアが弾んだ声を上げる。


「ボク、前からダンジョンに挑戦してみたかったんだ!」


 そして和斗も。


「来た来た来た! 冒険者ギルドの試験! ダンジョン挑戦! これこそ異世界冒険の醍醐味だよな!」


 ワクワクする自分を抑え切れなかった。

 そしてリムリアと和斗は、頷き合うと。


「「やります!」」

 と、声を揃えたのだった。






2020 オオネ サクヤⒸ

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