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第二十二話  メディカル!


            



「ワーウルフには魔法が仕えなかったんじゃなかったのか!?」


 驚く和斗に、白銀ワーウルフがニヤリと笑う。


「魔法? 違うね。音速を超えるスピードで振るった爪が発生させた、カマイタチさ」

「規格外にもほどがあるだろ!」


 和斗は叫びながらリムリアを鍾乳石の影に引っ張り込む。


「俺がⅯ16でヤツを撃つから、リムは隙をついて出来るだけ強力な攻撃魔法をブチかませ」

「うん!」


 リムリアが頷いた時には既に、和斗は鍾乳石の影から飛び出していた。


「食らえ!」


 バァン!

 タタタン! タタタン! タタタン!


 Ⅿ26ショットガンをぶっ放し、動きが止まったトコロにⅯ16を撃ち込む。

 なにしろ相手は、あのワーウルフロードを配下に持つスペシャルウルフなのだから、この攻撃で倒す事はできないだろう。

 しかし倒せなくてもリムリアが攻撃魔法を叩き込んでくれれば、勝負に勝てる。

 そう和斗は計算したのだが。


「効かないね」


 Ⅿ26ショットガンとⅯ16の弾丸をまともに受けたというのに、白銀ワーウルフは薄ら笑いを浮かべたままだった。


「ならツェリスカならどうだ!」


 ドカン! ドカン! ドカン! ドカン! ドカン!


 和斗は全弾を叩き込むが。


「……で?」


 ツェリスカでさえ白銀ワーウルフにダメージを与える事は出来なかった。


「防御力、高すぎだろ!」


 和斗は、思わず叫んでしまった。

 まさか1000倍に強化したツェリスカですら役に立たないとは、何と言う化け物なのだろう。


「くそ、俺にはコイツを倒す手段はないってコトか」


 唇を噛む和斗に見せつけるようにして、白銀ワーウルフがユックリと爪を振り上げる。


「力の差を理解したかい? じゃあ、絶望しながら死ぬといい」

「ヤだね!」


 和斗は叫びながら、思いっ切り横に飛び退く。


「悪あがきを……ここまで来ると醜いね」


 ヤレヤレ、と肩をすくめる白銀ワーウルフだったが、そこで。


「ボクが使える最強の魔法だよ! プラズマランス!」


 リムリアが叫び、眩しくて直視できないほどの輝きを放つ槍を白銀ワーウルフへと発射した。

 焔とは、燃焼中の気体のことをいう。

 そして焔の温度は数千℃くらいのものであり、それよりも温度を高くしていくと、最終的には原子の周りの電子が弾き飛ばされて高エネルギーの状態になる。

 これがプラズマだ。

 

 その数万度もの高熱を放つプラズマの槍は、山脈をも撃ち抜くほどの威力を持っている。

 もはや生物が対抗できるレベルの攻撃ではない。

 ……筈だったのだが。


「ぬぅん!」


 白銀ワーウルフが右手を叩き付けると、プラズマランスはバチィン! と弾けて消滅したのだった。


「ええ、そんなバカな! まさか都市1つを消滅させた伝説の攻撃魔法を、片手で防ぎ切るなんて……」


 絶対の自信を持って放ったプラズマランスでも倒せなかった。

 その事に言葉を失うリムリアに、白銀ワーウルフが平然と答える。


「いやいや、凄い攻撃魔法だったよ。大ダメージを受けてしまった」


 黒焦げになった右腕をポンポンと叩く白銀ワーウルフに、リムリアは何度も深呼吸をしてから、口を開く。


「大ダメージ? 良く言うよ。プラズマランスを受けておきながら、腕1本を失っただけだなんて。まさか都市1つを消滅させた伝説の攻撃魔法を、片腕で防ぎ切るとは思わなかったよ」


 そこでもう1度、大きく深呼吸をしてからリムリアは鉄のような声で告げる。


「でも、ボクはまだまだプラズマランスを撃てる。右腕を失った以上、もう勝ち目はないだろ? 降伏した方がいい」


 1発目のプラズマランスを防ぐ為に右腕を失った。

 左腕を犠牲にしたら、2発目のプラズマランスを防げるかもしれない。

 だが、そこまでだ。

 両腕を失っては、戦闘など出来る筈がない。

 そう考えてのリムリアの降伏勧告だったのだが、白銀ワーウルフは余裕の態度を崩さない。


「あれ? オレを追い詰めたとでも思ってる?」 


 その言葉が終らないうちに、白銀ワーウルフの黒焦げだった腕が、見る見るうちに元通りになっていく。


「ええ、再生能力!? で、でも、そんなに早く再生するなんて、ありえない……」


 呆然としているリムリアに、白銀ワーウルフがニヤリと笑う。


「それに、腕で撃ち落せる程度の魔法を、躱せない筈ないだろ?」

「え!?」


 プラズマランスを食らっておきながら右腕1本で耐えきった事には驚いた。

 が、逆に言えば、生き残るには右腕を犠牲にする以外、方法はなかった。


 そうリムリアは考えていた。

 だから降伏を勧告したのだ。

 しかしそれは、自分の再生能力と防御力に絶対の自信があったから。

 あるいは自分の防御力と再生能力を、リムリアに見せつける為だとしたら?

 

 その事に気が付いたリムリアの顔から血の気が引く。


「ま、まさか?」


 声を震わせるリムリアに、白銀ワーウルフの笑みが獰猛なものに変わる。


「信じられない? じゃあ」


 その言葉と同時に白銀ワーウルフの姿が消え。


 ぼとん。


 ツェリスカを握った和斗の右腕が地面に落下し、一拍遅れて切断面からブシュっと血が噴き出した。


「ぐぉおおおおお! メディカル!」


 慌ててメディカルを発動させて腕を治療した和斗に、白銀ワーウルフが目を丸くする。


「へえ……切り落とした右手が再生したよ。ヴラドよりも優れた治療魔法が使えるなんて驚いたな」


 そして白銀ワーウルフの目に残忍な火が灯った。


「これなら楽しめそうだね。せっかく手に入れたポエナリ城をダメにしてくれたんだ、楽には殺さないからね」


 その瞬間、和斗の左腕が宙を舞う。


「ぐ! メディカル!」


 慌てて治療する和斗に、白銀ワーウルフが残虐な笑みを浮かべる。


「そうそう、そのチョーシだよ。さあ、どこまで切り刻んだら死ぬのかな? 実に楽しみだよ」


 こうして白銀ワーウルフによる、和斗への拷問が始まった。


「じゃあ、まずは両手両足を切り落としてみよう」


 ぼとん、ぼとん、どちゃ、どちゃ。


 言葉通り、白銀ワーウルフは、和斗の両手と両足を切り飛ばした。


「ぐ! メ、メディカル!」


 和斗は悲鳴をかみ殺して両手両足を再生させるが、白銀ワーウルフの攻撃は終わらない。


「なら、腹を引き裂いてみよう」


 ぶしゅぅうううう!

 ずるるるるるる……。


 白銀ワーウルフは和斗の腹を引き裂くだけでなく、その無残な傷口から内臓を引きずり出したのだった。


「カズトぉ!」

「来るな!」


 駆け寄ろうとするリムリアを手で制しながら、和斗は回復魔法を唱える。


「メディカル!」


 気が遠くなるような痛みが一瞬で消え失せ、傷口は瞬時に元通りになった。


「くそ」


 和斗は唇を噛む。

 怪我を回復させるコトはできても、白銀ワーウルフの攻撃には手も足も出ない。

 何しろ攻撃が見えないくらい速いのだ。


「どうしたらイイんだよ!?」


 ヤケクソ気味に吐き捨てた和斗に、まるで挨拶をするかのような気楽な声で、白銀ワーウルフが話しかける。


「さすがだね、普通なら致命傷なんだけどな。でも、心臓を抉り出しても回復できるのかな?」


 ぐちゃ!


 白銀ワーウルフがそう口にすると同時に、その手にドクンドクンと脈打つ心臓が現れる。


「え?」


 まさか? 


 と思いながらも視線を落としてみると、胸の真ん中に大穴が開いていた。


 心臓を抉り取られた!


 そう理解すると同時に和斗は叫ぶ。


「メディカル!」


 瞬時に胸の傷が完治する。

 おそらくだが、心臓も元通りになった筈だ。

 猛獣は心臓を撃ち抜かれても、絶命するまで3秒くらい暴れ回る。

 つまり心臓を失っても3秒くらいは活動できる、という事だ。


 その3秒がメディカルを唱える時間を作ってくれたおかげで死なずに済んだ、というワケだ。


「だけど今のはヤバかったぜ」


 冷や汗を流す和斗に、白銀ワーウルフが顔をしかめる。


「心臓を失っても即死はしないとは驚いたよ。どうやら即死させないと、ちゃんと殺せないみたいだね。う~~ん、そろそろ面倒になってきたな」


 白銀ワーウルフはそう口にしてからポンと手を打つ。


「そうだ、今度は、そっちのお嬢ちゃんを痛めつけよう。その方が楽しそうだ」






2020 オオネ サクヤⒸ

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