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   第二百九話  俺も楽しくなってきた





「まさかあれほどの高速で斬撃を繰り出しながら、魔力破壊の斬撃を飛ばしてくるとは想像もしませんでした。これは本当に楽しくなってきました」


 ラスプーチンはそう言って、心の底からの笑みを浮かべた。


 しかし実のところ。

 和斗も楽しくなってきたところだった。


 万斬猛進流の里での修行で習得した剣技。

 これを思いっきり試す事など無いと思っていた。

 万斬猛進流を振るえば、本気を出す前に勝負がついてしまう。

 そのくらい圧倒的な戦闘力を持つ剣技だった。


 しかし今。

 本気で万斬猛進流を振るわないと切り抜けられない状況だ。


 もちろん自主規制のスキルを解除すれば勝負は一瞬だ。

 しかし自主規制のスキルを展開したまま戦いたい。

 人のステータスで、どこまで戦えるのだろうか?

 万斬猛進流が、どれほどの威力を発揮するのだろうか?


 それを考えると、和斗はワクワクする自分を押さえられなかった。

 だから和斗は。


「ああ。俺も楽しくなってきた」


 ラスプーチンに、心の底からの笑みを返した。

 そんな和斗に、ラスプーチンは体を歓喜で震わせると。


「ええ、そうですね。思いっきり楽しみましょう。では次の魔法です」


 更なる魔法を発動させる。


「バキューム」


 どうやら先程と同じ順番で魔法を使うつもりらしい。

 発動させたのは広域真空魔法だった。


「今回の真空は成層圏を突き抜け、宇宙空間まで達しています。だから温度は絶対零度です。さあ、これ以上の低温は存在しない究極の超低温に対して、貴方はどんな剣技を見せてくれるのですか?」


 興味津々のラスプーチンに、和斗は。


「風切り」


 簡単に真空を切り裂いて、フンと鼻を鳴らしてみせる。


「風切りは大気を切る剣技だが、逆に真空を切り裂く事も出来る。この程度の魔法じゃ、万斬猛進流の技が泣いてるぞ」


 この和斗の挑発にラスプーチンが苦笑する。


「国すら亡ぼす災害級の攻撃魔法をこの程度呼ばわりですか。流石です。ならコレならどうでしょう? 重力1000倍」


 ラスプーチンが口にした魔法は、順番通り重力操作の魔法だった。

 しかし倍率は、まさかの1000倍。

 動く事が出来なくなるどころではない。

 原形が分からないくらいに潰れてしまう重力だ。


「さすがに今度は、刀ではどうしようもないでしょう? 万斬猛進流とやらもここまででしょうか」


 そうラスプーチンが口にしたところで。


「次元斬」


 和斗が剣撃を放ち。


 パァン!


 重力1000倍の空間が、切断されて消え失せた。


「次元ごと斬れば重力も斬れると思ったけど、正解だったみたいだな」


 ふ~~、と息を吐く和斗にラスプーチンがキュッと拳を握る。


「認めましょう。万斬猛進流、確かに恐るべき剣技です。まさか刀1本で重力操作の魔法を何とかするとは思いもしませんでした」


 が、そこでラスプーチンの表情が吹っ切れたものに変わった。


「いえ、私は心のどこかで期待していたようですね。身を削る思いで習得してきた様々な魔法を、思いっきり使ってギリギリの戦いがしたい、と。まさに今の状況がそれです。さあ全身全霊で、戦いを楽しみましょう!」


 ラスプーチンは、顔を喜色に染めると。


「ウォータージェット! レーザーソード! テンペストカッター!」


 切断魔法を発動させた。


「私の切断魔法と貴方の万斬猛進流! どちらが上か勝負です!」


 ウォータージェットにレーザーソードにテンペストカッター。


 魔法の名称は同じだが、そこに込められた魔力は桁違い。

 ウォータージェットとレーザーは山脈を一刀両断する威力。

 そしてテンペストカッターは、城を切断する威力の刃を100万も放つ。

 これらのラスプーチン渾身の切断魔法し対し。


「音速剣!!」


 今度は和斗も本気で迎え撃った。

 万斬猛進流の里での稽古によって身に付けた全力の音速剣。

 その威力は。


 バヒュン!!!!!


 超高圧水流の刃、極超高温の光の刃も、100万のカマイタチを吹き散らした。


「ふう。さすがに全力での音速剣じゃなかったら負けてただろうな」


 大きく息を吐く和斗に、ラスプーチンがガックリと肩を落とす。


「私の負けですか。やはり斬る、という事だけを追求した剣技には、どれほど魔力を込めた切断魔法も敵わないようですね」


 が、その目はまだ生きている。


「切断魔法では勝負にならない事は分かりました。それでは、この魔法はどうでしょう。直撃されて無事だったものなど存在しない、究極の打撃魔法です」


 ラスプーチンはそう言うと。


「まずは単発でいきます。メテオ」


 隕石を召喚した。


「私に出来る最高速度、マッハ60で隕石を召喚しました。大きさは直径30センチ程度ですが、極々超音速が生み出す破壊力は膨大です。いえ、それより回避不可能な速度が、この極々超音速攻撃の恐ろしさでしょう。さあ、どうしますか?」


 ラスプーチンが、そう口にすると同時に。


 キン!


 メテオが和斗へと撃ち込まれる。


 マッハ60。

 迎撃どころか反応する事すら不可能な超超高速メテオが。


 ヅゴォン!!!!


 地面に深いクレーターを穿った。

 速度といい、破壊力といい、奈津や花奈だったら瞬殺されてしまう攻撃だったが。


「縮地」


 和斗は表情一つ変えずに身を躱していた。

 その神業を目にしてラスプーチンが目を見開く。


「躱した!? マッハ60を只の人間が躱したというのですか!? まさかこれ程の動きが可能とは……万斬猛進流とは本当に恐ろしい剣技ですね。いや、何て出鱈目な、と言うべきでしょうか」


 ラスプーチンはそう言うと。


「なら30連メテオならどうでしょう?」


 隕石を30個、召喚した。


「1つなら躱せても、30の隕石は躱せないのではないですか? しかも時間差で召喚してあげましょう。先程の縮地で避けても、次の瞬間、その避難した場所にメテオを落下させます。楽しい時間でしたけど、これでお別れですね」


 ラスプーチンの言葉通り、最初の1つが和斗に撃ち込まれた。

 和斗は、その初撃を。


「縮地」


 一瞬で躱すが、そこに。


「終わりです」


 狙いすました次弾が撃ち込まれた。

 しかし、これも。


「縮地」


 和斗は瞬間移動なみの速度で身を躱す。


「2度も避けましたか。でも3回は無理でしょう!」

「縮地」

「でも4回目は……」

「しかし……」

「縮地」


 …………そして。

 30のメテオを余裕で躱し切った和斗に。


「まさか全てを躱しきるとは。貴方のこと、ちょっと怖くなってきました」


 ラスプーチンが冷や汗を流しながら、そう口にした。

 そこで和斗は質問してみる。


「でもメテオが命中さえすれば、と思ってるだろ」

「まあ、そうですね。今のはメテオから逃げただけ、と言えなくもないですから」


 少し悔しそうなラスプーチンに、和斗はニッと笑う。


「じゃあ今度はここから一歩も動かないから、もう1度30連メテオを召喚してくれないか?」

「本気で言ってるんですか?」


 ラスプーチンが疑いの目を和斗に向けるが。

 和斗は、その場から一歩も動かない。

 それは30連メテオを正面から迎え撃つという宣言だ。


 マッハ60のメテオ30個を迎撃する。

 そんな事が可能なのだろうか?


 ラスプーチンは、自分が震えている事に気付く。

 この震えは期待からか?

 恐怖からか?

 それとも思いもしなかった展開に興奮している?


 答えは自分でも分からない。

 しかし、こうなったらやる事は1つ。


「30連メテオ!」


 ラスプーチンは召喚できる最大数=30個の極々超音速隕石を召喚した。

 その超絶破壊力を発揮する流星は一瞬で和斗へと落下するが。


「百矢払い!!」


 和斗の気合に満ちた声と共に剣閃が閃き。


 ズパッ! × 30


 30のメテオは一刀両断された。


 それだけではない。

 切断した時の剣圧が凄まじ過ぎたのだろう。

 和斗の斬撃が、綺麗に切断された隕石を再び宇宙へと吹き飛ばした。


「ふう。音速剣に続いて、百矢払いまでも本気で振るわされたか。ホントに凄い魔法だったな」


 それは和斗にとって最大級の称賛だった。

 しかしラスプーチンには。

 まるで地獄に引きずり込まれるような錯覚をもたらす言葉だった。


「これが恐ろしいという感覚ですか。私が本気で魔法を使えば無敵だと思っていたのですが、その自信は粉々に砕かれてしまいました。しかしこうなった以上、何が何でも貴方を倒して自信を取り戻してみせましょう。という事で、最後まで付き合ってもらいますよ」


 ラスプーチンは覚悟を決めた表情になると。


「雷雲! 轟雷嵐!!」


 無限との思える落雷を引き起こした。


 1つ1つの威力はメテオの方が上だろう。

 しかし速度が違う。

 そして数も違う。

 30連メテオを遥かに上回る速度で、和斗が倒れるまで稲妻を浴びせる。

 ラスプーチンは、そんな覚悟で轟雷嵐を発動させた。


 和斗はそれを。


「うおおおおおお!」


 百矢払いで迎え撃った。


 普通の百矢払いだったら押し負けていただろう。

 しかし百矢払いの1太刀1太刀には、全力の破軍の太刀を上乗せし。

 加えて、その破軍の太刀に雷断の太刀まで上乗せする。

 つまり和斗は、一瞬で雷断の太刀を数万単位で放ったワケだ。

 その無数の斬撃は、一瞬雷撃と押し合うが。


 ビカァン!


 直ぐに雷撃を跳ね返して雷雲を直撃。

 そのまま雷雲を、跡形もなく吹き飛ばし。

 後に残ったのは、澄み渡った青空だけだった。


「まさか雷雲すら跡形もなく吹き飛ばすなんて、なんて無茶苦茶な……」


 ラスプーチンは、晴れ渡った空を暫く眺めていたが。


「こうなったら最後の魔法を使うしかありませんね。これ以上の破壊力を持つ魔法を私は使えません。最後の勝負です」


 そう呟くと、転がっていた石を拾い上げる。

 いや石の直径は30センチ近いので、抱え上げたと言うべきか。


「重さは30キロくらいでしょうか。この質量で全てを核爆発に転化します。この破壊力を刀1本で打ち破る事が出来るかどうか。見せてもらいますよ」


 ラスプーチンは今までで1番真面目な顔になると。


「浮遊」


 大石を和斗に向けて飛ばした。

 メテオを避けた和斗にとって、余裕で躱せる速度だ。


 しかし逃げる気などない。

 万斬猛進流の技がどれ程のモノなのか?

 和斗にとってこの戦いは、それを試すものになっていたから。


 ところでラスプーチンが使う『核爆発』は。

 質量を全て破壊力に転換できる攻撃魔法らしい。


 ちなみに。

 地球で最大の破壊力をもつ核爆弾はツァーリ・ボンバという。

 旧ソビエト社会主義共和国連邦が完成させた水爆だ。

 広島に投下された原爆の3300倍の破壊力を持つ。

 その威力は関東地方を絶滅させるほど。

 歴史上、人類が手にした最強の破壊力と言える。


 そして。

 飛来する石の重さは30キロほど。

 この質量が破壊力に転換されたら、威力はツァーリ・ボンバの10倍にも及ぶ。

 そんな爆発に刀1本で挑む。

 どう考えても不可能な事だが、それは人間の常識。

 神である不動明王が作りあげた万斬猛進流なら勝てる筈だ。


 なら最高の斬撃を繰り出してやる。

 と、和斗が集中力を高める中。


「最後の勝負です! 核爆発!」


 ラスプーチンが叫ぶと同時に。


 ビカァッツ!!!!!!


 石が閃光を放ち。


 ズッドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!!!!!!!!


 特大の核爆発が発生。

 あらゆる物を蒸発させる灼熱時地獄を出現させた。

 そしてその超超高温は。


 ドパァッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 大陸すら砕くほどの衝撃波となり。


 ドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカンドカン!!!!!!!!!!!!!


 周囲に破壊をまき散らした








2023 オオネ サクヤⒸ

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