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第二十話  危険な賭けだったけど、何とかなったぜ


  第二十話  危険な賭けだったけど、何とかなったぜ



――装甲車レベルが51になりました。

  最高速度が2300キロになりましました。

  加速力が20%、衝撃緩和力が50%アップしました。

  登坂性能が120度、牽引力が2710トンになりましました。

  装甲レベルが鋼鉄4233メートル級になりました。

  ⅯPが2520になりました。

  マローダー改に搭乗していなくても魔力効果を発揮できるようになりました。


「危険な賭けだったけど、何とかなったぜ!」


 そう。ハイ・ワーウルフ数人とワーウルフロードを2人倒せばマローダー改のレベルが51に上がる。

 そしてレベルが51になればマローダー改に乗っていなくても魔力効果を発揮できるようになる。

 これが、サポートシステムが提案した危険な賭けの内容だ。

 もちろん普通の人間である和斗では、例え1000倍に強化されたⅯ16を使用しようとワーウルフロードを倒せるワケがない。

 スピードもパワーも違い過ぎるからだ。


 しかしワーウルフロードには、弱い生き物を嬲り殺しにする特性があった。

 そこで和斗は、ワーウルフロードが戦闘力を失うほど和斗の肉体を破壊してから止めを刺そうとする、その瞬間を狙う事にした。

 もちろんチェーンガンの弾丸が爆発してもワーウルフロードの頭が吹き飛ぶだけで、和斗まで爆死しない事はサポートシステムに確認している。

 

 そして和斗は分の悪い賭けに勝った。

 その結果、マローダー改は見事にレベルアップを果たし、和斗はどこでも魔力効果を発揮できるようになったのだった。


「メディカル!」


 その一言で、和斗の骨折は瞬時に治癒する。

 和斗は元通りになった手足を確認してから立ち上がると、次の言葉を口にする。


「ポジショニング!」


 その直後、マローダー改が大広間に現れた。


 ポジショニングは、元々はひっくり返った時などに、起き上がった状態するモノ。

 ただ、その場所は好きな場所に設定できる。

 だから、このように呼び寄せる事も可能だ。

 後はマローダー改に乗り込んで、圧倒的有利な戦いを繰り広げればいい。


「リム!」

「分かってる!」


 和斗とリムリアは大急ぎでマローダー改に飛び乗った。

 これで安心だ、とホッとする和斗だったが。


「残念でしたね」


 マローダー改のドアを閉める前に、4人ものワーウルフロードに乗り込まれてしまった。


「確かに正ドラクルの魔法攻撃は世界一です。ですが、こんな狭い場所で魔法を使ったら自分達までダメージを受けてしまいますよね? では、覚悟してください」

『く!』


 ワーウルフロードの言葉に、和斗とリムリアは唇を噛むが。


 ブォォォ!


『ギャイン!』


 まさに一瞬で、ワーウルフロードはハチの巣になって床に崩れ落ち。


《1000倍バルカン砲対空システムレベルで侵入者を排除しました》


 サポートシステムの声が響いた。


「そういやセキリュティーなんてモンがあったっけ。今まで作動した事がなかったから忘れてたぜ」


 和斗は胸をなで下ろすが、ワーウルフロードの死体と血塗れになった車内を見渡して溜め息をつく。


「ふう。クリーニングの魔力があって、本当に良かったぜ」

「うん。カズト、早くクリーニングを発動させてよ。車内が血の海だよ」


 魔力効果を発揮できるのは、マローダー改のオーナーである和斗だけなので、リムリアが急かした。


「分かってるって。車内にクリーニングを発動」


 そう口にすると、ワーウルフロードの死体が消え失せ、車内が元通りになる。


「凄いね、あんなにおっきなワーウルフロードが消えちゃった」

「言われてみたら、そうだな。一体ドコに消えるんだろ? ま、それを考えるのは後だ」

「うん。じゃあ今度こそヴラドを倒すよ」

「ああ。じゃあその前に、邪魔者を掃除するか。サポートシステム、バルカン砲対空システムでワーウルフロードを全滅させてくれ」

《了解しました》


 和斗が指示すると同時に、バルカン砲対空システムが射撃を開始した。


 ブォォォォ! ブォ! ブォオオ! ブォ! ブォォォ!


 次々と仲間達が撃ち倒されていくなか、ワーウルフロードの焦った声が響き渡る。


「馬鹿な!」

「なぜワーウルフロードのスピードについて来られるのだ!?」

「ワーウルフロードの鋼鉄の肉体を簡単に撃ち抜く!?」

「どうなっているんだ!?」


 思いもしなかった事態に遭遇してワーウルフロードは狼狽えるが、直ぐに冷静さを取り戻す。


「全員で行くぞ!」


 そしてワーウルフロード達は、和斗の目では捉えられないほど複雑で素早い動きでマローダー改に突撃して来た。

 が、バルカン砲対空システムによって、何もできないまま撃ち倒されていく。

 こうして最後のワーウルフロードが撃ち倒されたところで、和斗はふと思い出す。


「そういや『ワーウルフロード50匹を排除するのに必要な時間は、75秒です』なんて、サポートシステムが言ってたな」

「そういや、そんなコト言ってたね。でも、さすがサポートシステムだね」

「ああ。48人のワーウルフロードを70秒で全滅させちまった。サポートシステムの計算通り、ってワケだ」

《当然です》


 自慢そうな響きを含んだサポートシステムの声に苦笑してから、和斗はバルコニーに鋭い視線を向けた。


「さて、と。残るはヴラドだな、リム」

「うん」


 リムリアが頷くが、そこでカーナビにとんでもない数値が表示される。


――ワーウルフロード48匹を倒しました。

  経験値480万

  スキルポイント480万

  オプションポイント480万

  を獲得しました。

  累計経験値が891万を超えました。


 パラパパッパッパパ――!  パラパパッパッパパー! パラパパッ……


 そしてレベルアップのファンファーレが何度も鳴り響き。


――装甲車レベルが59になりました。

  最高速度が3050キロになりましました。

  加速力が20%、衝撃緩和力が50%アップしました。

  登坂性能が145度、牽引力が3910トンになりましました。

  装甲レベルが鋼鉄18200メートル級になりました。

  ⅯPが3560になりました。

  レベル55を超えましたので装鎧を習得しました。


 また新しい単語が表示されたのだった。


「装鎧? 何だそれ?」


 初めて見るワードを調べてみようとする和斗だったが、そこでリムリアが大声を上げる。


「ヴラド!」


 和斗はその声でバルコニーへと目を向けると、ヴラドがバルコニーの奥へと姿を消すところだった。


「今さら逃げる気?」


 リムリアがバルコニーを睨むが、その意味に気付いた和斗が顔色を変える。


「マズいぞリム、ヴラドは逃げたワケじゃない! マローダー改から攻撃する事ができない、狭い場所に身を隠したんだ!」

「つまりこのままじゃ、追いかけられない場所に逃げ込まれてしまった、ってコトだね」


 リムリアはバルコニーを悔しそうに睨み付けてから、和斗を見上げた。


「ねえカズト、どうしよう? 戦車砲を撃ち込んでみる?」

「その前に魔法で確かめてほしいんだけど、残りはヴラドだけか? ワーウルフロードが隠れてたりしないか?」

「ちょっと待って」


 和斗に聞かれてリムリアはサーチの魔法で探査を始める。

 そして数秒後、リムリアは自信満々で口を開いた。


「誰も隠れてない。ヴラドだけだよ」

「そうか、良かった。ワーウルフロードとの戦闘で一番恐ろしかったのは、銃の狙いを定める事すら出来ないスピードだった。だけどヴラドにそこまでのスピードはないんだよな?」

「まあ、ボクに限らず正ドラクルは、人間の数倍程度の力しか持ってないから」

「なら銃でも対応できるな。マローダー改を降りて、ヴラドを追おうぜ」

「うん。でも、ヴラドと戦うのは、ボクに任せてくれない? ヴラドとの魔法対決に勝つ為に、ボクは正ドラクルになったんだから」

「そうか……そうだな。その為にリムは今まで頑張ってきたんだから。でもリムのピンチだと思ったら、遠慮なくヴラドを攻撃するからな」

「うん、そうなったら……お願い」


 和斗は、悲壮な顔をするリムリアの頭にポンと手を乗せる。


「おいおい、まさか死ぬ、なんて思ってないだろな。リムがどんなダメージを負っても、今の俺ならメディカルで治せるんだぞ」

「そ、そうだったね。じゃあ、今度こそ最後の戦いにする!」

「おう。おっと、ベレッタを装備しておいた方がいい。魔法攻撃だと思い込んでいる所にぶっ放せばベレッタだけで倒せるかもしれないし」

「うん」


 和斗はリムリアが腰にレーザーポインター付きベレッタを装備するのを確認してから、マローダー改を降りた。

 そしてガルダンとの戦いで落としてしまったⅯ16とツェリスカを拾いあげる。


「ヴラドの肉体強打がワーウルフロードよりずっと低いのなら、この2丁があれば十分だな」


 和斗はツェリスカを腰のホルスターに装備し直し、Ⅿ16を構えた。そしてリムリアと共にバルコニーのある壁へと向かう。

 入り口の大きさは縦横3メートルほど。

 かなり広いが、車幅6メートルもあるマローダー改が入れるサイズではない。


「リム、ヴラドの居場所は分かるか?」


 和斗がバルコニーの真下に造られた扉に触れながら問いかけた。


「え~~と、ちょっと待って、サーチの魔法で調べるから……うん、ヴラドはこの扉から続く廊下の終点にある部屋にいるみたい。廊下は曲がりくねってるけど、トラップも何もない一本道だから、安全に辿り着けるよ」

「なら、一気に行くか」


 そう口にすると、和斗は扉を蹴り開けたのだった。






2020 オオネ サクヤⒸ

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