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   第百九十九話  総長になって頂けないでしょうか?





「9尾の狐を倒したら10以上にレベルが上がるだろうと思ってたけど、レベル18にまで上がってしまったか。こりゃあ、この世界の至高神に俺の存在を知られてしまっただろうな」


 この和斗の呟きに。


――いいえ。マスターの存在は、まだ至高神に認識されていません。


 サポートシステムが即座に答えた。


「え? レベル10になったら、一気に神霊力を得るからバレるんじゃなかったのか?」


――現状は、マスターの神霊力の器が銀河群2個級になっただけです。マスターが神霊力を吸収しよう   と 思った時、その量の神霊力を、この世界から吸収する事になります。


「つまり、俺が神霊力を吸収しようと思わない限り、この世界から神霊力を奪う事は無い、と?」


――その通りです。


「へえ、今までとは違うんだな」


――はい。レベル1から始めるにあたり、そのように設定されたみたいです。


 このサポートシステムの返事に。


「そうか、よかった。これでこの世界の至高神と揉める心配は、取り敢えず回避できたってコトだな」


 和斗はちょっとだけ安心する。

 が、他にも気になる事が。


「ところでサポートシステム。神霊力が銀河群2個級になったって表示されてるけど、銀河群ってどういう意味なんだ?」


――神の基準で、銀河が100、集まったものが銀河群です。つまり今のマスターの神霊力は銀河20 

  0個が内包するエネルギー量と同等という事です。


「銀河200個!? それって物凄いコトだよな?」


――はい。銀河団級破壊神でも瞬殺できる戦闘力です。


 また分からない言葉が出てきた。


「銀河団って?」


――銀河が数千個、集まったものです。


「つまり俺の力は、数千の銀河を管理している破壊神でも消滅させるコトが出来るレベルなのかな?」


――はい、その認識で、間違いありません。


「しかし想像を絶するステータスになってるな。っていうかナンだよ速度が光速の4万倍で、防御力が厚さ3000光年の鋼鉄に相当するって。光年って光が1年かかって進む距離だろ?」


――今のマスターは銀河200個級の破壊神と同等か、それ以上です。だから防御力が鋼鉄3000光   年相当程度なのは、むしろ当然です。ついでに速度について説明しますと。光速の4万倍程度の速   度では、銀河系の端から端まで2年半もかかってしまいますので、かっして速いとは言えません。   むしろ銀河群級の破壊神なら、もっと速くても良いくらいです。


「じゃ、じゃあ他の銀河群級の破壊神は、俺よりずっと速いってコトか?」


 ゴクリの喉を鳴らす和斗にサポートシステムがアッサリと言ってのける。


――いえ。破壊神はテレポートによって移動します。

  マスターほどの光速で移動できる破壊神など滅多にいません。

  と、データベースに情報が書き込まれています。


「データベースに?」


――はい。前の世界の至高神によって。


「そうなんだ。って、そんなコトより! 他の破壊神って俺より遅いのかよ。じゃあナンで俺だけ、こんなに速いんだ?」


――そういう初期設定だったからです。

  おそらく設定主である至高神も、ここまでになるとは考えていなかったと思われます。


「それって色々マズいんじゃないのか?」


――そうかもしれませんが、ここまでステータスがアップした以上、何の心配もありません。文句を言   ってくるモノは、神であろうと悪魔であろうとなぎ倒せば良いのですから。


「そ、そんなモンなのか? ま、ずっとステータスは理解不能なレベルだったんだから、今更心配しても仕方ないか。じゃあサポートシステム。マローダー改の武器とドローンも強化可能になったのなら、強化してくれるかな?」


――どのように強化しましょう?


「F15は限界まで。アパッチは今のままでイイや。マローダー改の武装は10億倍強化だった武器だけ100億倍にしてくれるかな?」


――了解です。


  強化、完了しました。

  ステータスを確認しますか?


「ああ、頼む」


マローダー改の搭載武器


  3連装戦車砲           100倍強化

                   10万倍強化

                  100億倍強化


  3連装チェーンガン        100倍強化

                   10万倍強化

                  100億倍強化


  3連装バルカン砲対空システム    10倍強化

                   10万倍強化

                  100億倍強化


  3連装M2重機関銃          ノーマル

                     5倍強化

                    20倍強化


  20万倍速電磁波砲 

  最大焦点温度 20該℃(威力は可変式)


            F15(第30段階強化)

質量      最高速度     強度(鋼鉄相当)   航続距離  

100億トン  光速の5000倍   100光年     80時間 




「へえ。第30段階まで強化しただけあって、F15のステータスもとんでもないコトになってるな。でも航続距離が80時間ってコトは……」


――はい。光速の5000倍の速度で80時間、飛行できます。


「それって滑空させてたら、ほぼ無限に飛んでいられるのでは?」


――そう理解しても、問題ないかと。


「分かった。心強いな」


 と、和斗がF15のステータスを確認し終えたところで。


「あ、あのう……」

「そ、そのぉ……」

「すんません……」


 オズオズとした声が上がった。


「ん?」


 和斗が、声がした方向に目をやると。

 声の主は、刺青の拘束から解放された妖狐達だった。


「ラシャダッキを倒したから、刺青の効果が消滅したってコトなのかな? まあイイや。で、お前らどうするんだ? ラシャダッキの仇を討つ為に、俺と戦うのか?」


 犯罪組織というものは面子にこだわる。

 ムンジェコフがオバサンの店を焼いたのも、一家に逆らったからだ。

 そして和斗は、コイツ等は一家の総長であるラシャダッキを倒した。

 その和斗を倒さないと、ラシャダッキ一家の面子が立たなくなる。

 ま、早い話し、子分である妖狐達との戦いは避けられないだろう。


 だから、この問いに妖狐達が頷いた瞬間。

 和斗は破軍の太刀を放ち、全員を斬るつもりだった。

 のだが、意外にも。


「いえ、ラシャダッキ様……いやラシャダッキはオレ達を、自分が力を得る為の贄にする気だった事が分かりました。そんなラシャダッキの仇を討つ為に貴方と戦う気なんて、これっぽっちもありません」


 1匹の妖狐がそう言って、和斗の前に膝をついた。

 見た目は普通の人間。

 いや一般的な男性より、ズットひ弱に見える男だ。

 が、身に纏う魔力が飛びぬけている。

 おそらくココにいる妖狐の中で1番立場が上なのだろう。


 とはいえ。

 和斗にとって、この程度の力の持ち主など路傍の石以下の存在でしかない。

 だから和斗は。


「そうか、そりゃよかった」


 それだけ口にして考え込む。

 元々ムンジェコフに地獄を見せる事が目標だった。

 そのムンジェコフが非業の最後を迎えたのだ。

 もうここには何の用も無い。

 和斗はそう結論を出すと。


「じゃあ俺は引き上げさせてもらうぞ。ミンナ、オバサンの店に戻ろう」


 リムリア、奈津、花奈を引き連れて立ち去ろうとする。


 が、そこで。


「待ってください!」


 和斗の前で膝をついている妖狐が、頭を地面に擦り付けた。


「オレ達を騙していたとはいえ、ラシャダッキの強さは本物! そのラシャダッキを失った今、ラシャダッキ一家は他の組に潰されてしまうでしょう!」

「犯罪組織の事は良く知らないが、ま、そうなっても不思議じゃないだろうな」


 完全に他人事の和斗に、妖狐が叫ぶ。


「ですのでラシャダッキを倒した貴方に、ラシャダッキ一家の総長になって頂けないでしょうか!?」

「はぁ?」


 何を言い出すんだ、コイツ?


 という目を向ける和斗に、妖狐は土下座したまま続ける。


「ラシャダッキ一家の総長はラシャダッキでした。貴方はそのラシャダッキを倒したのです! 貴方ほど新たな総長に相応しい方はいません!」

「いやだ。犯罪組織と関わる気なんて無い。俺がここに来たのは、オバサンの店に火をつけたバカを懲らしめる為だ。って、そういやそうだ。おいお前ら。オバサンの店を弁償しろ」

「はい、ムンジェコフが何をしでかしたかは聞き及んでおりますので、その店には十分な補償をさせてもらいます。でも貴方がラシャダッキ一家の総長になってくれないのならば、その保証金も無駄になってしまいますよ」

「どういう意味だ?」


 ピクンと眉を跳ね上げた和斗を、妖狐が見上げる。


「その店があるのは、いくつもの組織が狙っている場所なんです。今まではラシャダッキが睨みを利かせていたので、他の組織は指をくわえて眺めるコトしか出来ませんでしたが……そのラシャダッキが倒された今。幾つもの組織が縄張り争いを始めるでしょう。その争いに巻き込まれて1番被害を受けるのは一般市民です」

「む」


 顔をしかめる和斗に、妖狐がたたみかける。


「それを防げるのは貴方だけです。ラシャダッキを簡単に倒したという噂は一瞬で知れ渡るでしょう。その貴方がラシャダッキ一家の総長を引き継いだなら、どんな組織も縄張り争いを諦める筈です。負けると分かっている抗争を仕掛けるバカなんていませんから」


 確かにそういう考え方もあるだろう。

 しかし縄張り争いを防ぐなら全ての犯罪組織を壊滅させる、という手もある。

 だがそれは物凄く面倒くさそうだ。

 ラシャダッキ一家を利用する方がマシかもしれない。

 和斗はそう考えると、仲間に聞いてみる。


「リム、奈津、花奈、どう思う?」


 この問いに1番に反応したのはリムリアだ。


「カズトが総長になるのが1番簡単だろうけど、いつまでも犯罪組織の総長なんかやってられないよ」

「そりゃそうだな」


 頷く和斗に、慌てて妖狐が提案する。


「なら他の組織を傘下に収めましょう! 貴方が総長になってくれたら簡単に出来る筈です! そしてこの地域の組織を統一したら、次期総長を指名して引退したら良いのです。これで組織同士の争いに一般市民が巻き込まれる事は防げます!」

「なるほど。島根の国を攻めたのがラシャダッキ一家と判明した今、やらなければならない事も無いし、総長ってヤツになってみるか。ミンナはどう思う?」

「うん。それでイイんじゃないかな」


 即答したリムリアに奈津と花奈が頷く。


「そうね。カズトさんなら犯罪組織統一くらいアッという間だろうし、ワタシも問題ないと思うわ」

「はい。それが1番、手っ取り早いと思います」

「よし。ならラシャダッキ一家の総長になってみるか」


 和斗がそう口にすると同時に。


「ありがとうございます!」


 妖狐が再び、頭を地面に擦り付けた。


「オレの名はイミョシェンコ。ラシャダッキ一家の若頭を務めております。で新たな総長様。なんと及びしたら良いでしょうか?」

「皆には和斗と呼ばれている」

「分かりました。では一家の名前もカズト一家と変えます」

「いや、ちょっと待て」


 イミョシェンコの言葉に、和斗は焦った。


「他の組を傘下に収めたらオレは総長を誰かに譲るんだろ? なら一家の名前は俺の名前じゃない方がいい。一家の名前って、そんなにコロコロ変えてイイもんじゃないだろ?」

「それはそうですが……」


 口ごもるイミョシェンコに和斗は提案する。


「今までラシャダッキ一家で通してきたんだから、俺が総長になってもラシャダッキ一家でいいだろ。で、俺が総長を譲ったヤツが、そこで自分の名前を一家にしたらイイ」

「そ、そうですね。ラシャダッキ一家の名は轟渡っていますからね。その方が都合が良いかもしれませんが……本当に新しい一家の名をカズト一家にしなくて良いのですか?」

「ああ、かまわない。ってかソレで頼む」

「わかりました」


 イミョシェンコは、もう1度頭を地面に擦り付けるとスッと立ち上がり。


「それじゃあ、お前達! 新しい総長に、ご挨拶申し上げねぇか!」


 妖狐達に向かって荒々しい声を上げた。

 その直後。


『新総長! 宜しくお願い致しやす!!!!』


 ラシャダッキ一家の妖狐1500匹が、一斉に頭を下げ。

 和斗はラシャダッキ一家の総長になったのだった。








 銀河群とは銀河が数個から数十個集まったものを言いますが、この小説では『銀河群=銀河100個』という設定にしてあります。






2023 オオネ サクヤⒸ

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