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   第百八十六話  奈津達を1から鍛えなおさないといけないね」

  ここからが第8章になります。

 211話まで毎日投稿する予定です





「ねえカズト。この世界に来た理由はレベルアップして、ステータスをもっとアップさせる為だよね?」

「ああ」


 リムリアの質問に、和斗は頷く。


「なにしろ次にレベルアップする為に必要な経験値がとんでもない数字になってたからな。だからステータスそのままで、レベルだけ1になれるって条件で、異世界お気楽旅行を楽しもうと思ったんだ」

「じゃあ何でさっさとレベルアップしないの?」


 さらに尋ねるリムリアに、和斗は楽しそうな、でも悩ましそう顔になる。


「そうだな。早くレベルアップしたいような、でも直ぐにレベルアップしたらもったいないような、複雑な気持ちだから、かな」

「どゆコト?」


 首を傾げるリムリアに、和斗は考えを整理しながら説明を始める。


「俺達はレベル1になったケド、ステータスはそのまま。ってコトは、この世界には俺達に勝てるヤツはいない筈なんだよな」

「そうだね。ってか、この宇宙でも最強、みたいなコト、至高神が言ってたような気がする」

「しかも万斬猛進流の技と、4柱阿修羅に新・千手観音斬を使えば、自主規制のスキルで力と速度を人間並みにしてても、この星じゃ最強らしい」

「イイことじゃん」

「そうなんだけど、それなら急いでレベルアップする必要もないかな、とも思うんだ。楽しみは取っておきたい、というか、いつでもレベルアップできる今を、もう少し楽しみたい、というか……」


 今の気持ちを上手く言い表せない和斗に、今度はリムリアが頷く。


「あ、なんとなく分かるかも」

「それに覚えてるか? レベルが10になった時、その10になるまでに得られる筈だった神霊力が、一気に手に入る事を」

「そういやそんなコトも言ってたね」

「そうなった時、この世界の至高神が俺達を放置しておくと思うか? 戦闘力じゃ俺達の方が上らしいけど、なにしろ相手はこの世界の至高神。何か手を打ってくるんじゃないかと俺は思うんだ」


 和斗の言葉にリムリアは考え込む。


「う~~ん、その可能性は……高いかも」


 大量の神霊力を奪われても、この世界の至高神は何もしてこない。

 元の世界の至高神は、そう言っていた。

 なにしろ和斗達の方が、戦闘力が上だから。


 しかし本当にそうだろうか。

 もしリムリアが、この世界の至高神だったら。

 絶対に何か仕掛ける。


 少なくとも、放置する事は無いだろう。

 それは和斗も同感だった。


「たとえ戦闘力が俺達より下でも、腐っても至高神だ。考えもしなかった方法で攻めて来るかもしれないだろ? そうなった時、どうするか。ハッキリ言って、俺はこの世界の至高神に何の恨みもない。そんな相手と戦うのは気が進まない。それもあって、レベルアップを急ぐ必要ないかな、と思ってるんだ」

「でも至高神と戦う事になるって決まったワケじゃないし、レベルアップする為にこの世界に来たんだから、それはしょうがないんじゃない?」


 確かにリムリアの言う通り。

 次のレベルアップに必要な経験値を稼ぐのは困難になっていた。

 だからレベル1になって、この世界に来る事を選んだのだ。


「まあ、リムの言う通りなんだけど、今のトコ急いでレベルアップする必要は無いんじゃないか、って思うワケなんだ」

「そうだね。今のステータスで困ったコトがあるわけじゃないし、ま、流れに身を任せる感じでイイんじゃないかな?」


 気楽に言うリムリアに、和斗は今後の方針を確認する。


「なら積極的にレベルアップは目指さないけど、相手を倒さないといけない場面になったら即戦闘、って方向でイイかな?」

「うん、それでイイと思う」

「じゃあ当面は奈津達がチャナビエトと戦うのをバックアップする。そして奈津達だけじゃどうしようもなくなった時は、俺達が敵を潰す。これでいいかな?」

「了解。となると、奈津達を1から鍛えなおさないといけないね」


 顔を引き締めるリムリアに、和斗の顔も厳しくなる。


「ああ。チャナビエトが攻めて来るまで、あまり時間は無いだろう。かなりハードな訓練になるな」


 という事で、魔法使い1000人を壊滅させた翌日。

 和斗とリムリアは抵抗軍238名を前に立っていた。


 改めて感じる事だが、若者ばかりだ。

 彩華によると、1番年上の者で17歳。

 1番年下の者は13歳らしい。


 まあ、この世界では13歳で元服する地域もあるという。

 だから全員、成人している、と言えなくもない。

 そして全員が、命懸けで戦う覚悟をしている。


 しかしだからこそ、1人の命も失いたくない。

 その為に和斗が出来る事は只1つ。

 近代兵器の使い方と戦法を教え込む事だ。

 もちろん和斗に、本当の軍事知識などない。

 でも軍事関係の本を読むのは大好きだった。


 そして神の能力を持つようになったからだと思うが。

 1度でも目にした事柄なら、鮮明に思い出せるようになっている。

 だから、以前読んだ本の知識を奈津達に叩き込もうと思う。

 完全ではないにしろ、この世界では画期的な戦術だろうから。


 と決意を固める和斗の前に、奈津が進み出る。

 キリリと整った顔と、細身ながら鍛え上げられた体つきが印象的な少女だ。


「抵抗軍238名! 整列しました!」


 魔法使いとの戦闘を経て、奈津は抵抗軍の侍大将に任命されていた。

 ちなみに彩華は総合司令官で、雫は参謀。

 雷心は秘密兵器扱いだ。

 そんな238プラス3名を前に、和斗は声を張り上げる。


「残った魔法使いの数は2000名。厳しい戦いになると思うが、絶対に勝たしてやる! 1人も失う事なく! だから俺が教える事を死ぬ気で習得しろ!」

『は!!』


 凛とした声を揃える少年少女を、和斗は見回す。

 全員、覚悟を決めた侍の顔で整列している。

 悲壮にも見えるが、この上なく美しくも見える。


 この子達を絶対に死なせない。

 勝たしてみせる。

 そんな決意と共に和斗は口を開く。


「では新しい武器の説明をする」


 和斗はそう言うと、全員を寺の本堂へと連れていく。

 その広い本堂には、サポートシステムから購入しておいた武器がズラリと並んでいた。


「なに?」

「これが新しい武器?」

「Ⅿ16と、どう違うのかな?」

「思ってたより大きい」


 見慣れない引きに少年少女達がざわつくが。


「まず俺が使ってみせる。そして戦い方を教えた後。実戦練習だ」


 和斗の言葉にピタリと黙り。

 そして新しい武器へと熱い視線を向けたのだった。











2022 オオネ サクヤⒸ

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