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第十八話  危険な賭けになりますが、よろしいですか?


   



 経験値を獲得してステータスがアップしたのは、あくまでマローダー改だ。

 今までとんでもない化け物にも楽々と勝利してこられたのも、マローダー改の戦闘力があったから。

 そのくらい分かっている。


 そのマローダー改から降りたら、和斗は貧弱な人間でしかない。

 このままダンジョンに入っていったら、瞬殺されるコト間違いなしだ。


「くそ、どうしたらいい?」


 和斗はナビをスクロールして、オプションポイントで何か役に立つモノを購入できないか必死に探す。


「レベルがアップしたんだから、購入できるモノも増えてると思うんだけど……」


 その考えは間違ってなかった。



  ボディーアーマー      10

  タクティカルグローブ     1

  エルボー&ニーパッド     2

  アームプロテクター      1

  タクティカルブーツ      2

  タクティカルベスト      1

  アーミージャケット&パンツ  1

  アリスパック         1


「って、これ全部、日本で買ってきたから持ってる、っつーの!」


 そう大声で叫んでから、和斗は重要なコトに気付く。


「ちょっと待てよ……ひょっとして、他の武器みたいに強化できるかも?」


 結論から言うと、強化は出来なかった。


 しかし既に強化されたモノを購入できるようだ。



  1000倍強化 シリーズ

 ボディーアーマー     10000

 タクティカルグローブ    1000

 エルボー&ニーパッド    2000

 アームプロテクター     1000

 タクティカルブーツ     2000

 タクティカルベスト     1000

 アーミージャケット&パンツ 1000

 アリスパック        1000


「1000倍に強化された装備を購入できるのか。これなら何とか戦えるかもしれない!」


 飛び上がって喜ぶ和斗に、リムリアがオズオズと尋ねる。


「もしかしてカズト、ボクと一緒にヴラドのダンジョンに入ってくれるの?」

「当たり前だ。リムをたった1人で戦わせるワケないだろ。俺も戦う」

「ありがと、カズト」


 和斗が答えると同時に、リムリアがキュッと抱き付いてきた。

 そんなリムリアを抱き締め返してから、和斗はオプションポイント16000ポイントで購入した、各種防具を身に付ける。


「さて、と。今度は武器だな」


 メインの武器な何を選ぶべきか。

 答えは決まっている。

 軍隊が建物に突入する時に、実際に使用している武器=Ⅿ16だ。


 そしてⅯ16は、様々なオプションを、銃身の下に装備できる。

 頑丈で強力な懐中電灯であるタクティカルライト。

 精密射撃用の二脚。

 白兵戦の為の銃剣。

 榴弾を発射するグレネードランチャー。

 など、オプションの種類は多い。

 そんな多種多様なオプションの中から和斗が選んだのは、5連発のショットガンであるⅯ26だ。


「Ⅿ26をⅯ16に装着したらメイン武器の完成、と。後は限界まで強化すれば完成だ」


 Ⅿ26を装備したⅯ16を強化してみると、必要なスキルポイントは銃1丁分だけだった。


「こりゃラッキー! 後は拳銃だな……どうせなら、最強の拳銃にするか」


 和斗が金で買える最強の拳銃、ツェリスカを購入して1000倍に強化すると。


《リボルバーを1000倍強化した特典としてスピードローダーと、スピードローダー4個を収容できる小型バッグをお渡しします》


 サポートシステムが思いもしないサービスをしてくれた。


 リボルバーは本来、レンコン型の弾倉に弾丸を1発ずつ装填するので、弾込めには時間がかかる。

 だがスピードローダーは、1度のアクションで全弾丸を装填できる、便利なアイテムだ。


「さてと」


 和斗は一000倍強化シリーズを身に付けると、タクティカルベストのポケットにⅯ16とⅯ26の予備弾倉を詰め込み、ベストに収納しきれない弾倉を、軍用の丈夫なリュックサック=アリスパックに放り込む。

 そして腰のベルトにツェリスカを収納したホルスターと、スピードローダーを収納した小型バッグを装着したら戦闘準備完了だ。

 ちなみにリムリアも強化シリーズを装備させている。


「ボクのサイズにピッタリだね」

「ああ。サポートシステムが気を利かせてくれたみたいだ」

「どんどん優秀になっていくね」

「ああ。マローダー改のレベルが上がった分、サポートシステムの能力もアップしたみたいだ」

「じゃあ、ダンジョンに入る前に、いい作戦がないか聞いてみたら?」

「なるほど。今のサポートシステムなら、何か良い作戦を考えてくれるかもな。なあサポートシステム! ひ弱な人間の俺がワーウルフロードや正ドラクルに勝つ方法はあるか?」

《ありません》

「即答かよ! って、それは間違いなく殺されてしまうって事か?」

《はい。今のままなら、そうなります》

「今のまま? って事は、今のままじゃなかったら勝てるって事か?」

《その通りです》

「じゃあ、どうやったらいいんだ?」

《かなり危険な賭けになりますが、よろしいですか?》

「このままじゃ間違いなく殺されてしまうんだろ? なら他に選択肢はないじゃないか」

《そうですね。では……》


 サポートシステムの提案を聞いて、和斗は青い顔になりながらも覚悟を決める。


「わかった、その作戦でいく」

「ホントに大丈夫?」


心配そうな顔のリムリアに、和斗は真剣な表情で頷く。


「ああ、やり遂げてみせる。さあ行くぞ、リム」

「うん行こう、カズト!」


 こうして和斗とリムリアは、拳をコツンと合わせてからダンジョンに突入したのだった。



 マローダー改が入れるサイズではないが、ダンジョンの入り口は縦横四メートルもあるので楽々と侵入できた。

 しかし先に進んでみると道は曲がりくねっている上、枝分かれしていた。まさに迷路だ。


「ち。これじゃあ、いつになったらヴラドの所に辿り着けるのか分からないな」


 舌打ちする和斗にリムリアが胸を張る。


「大丈夫。ボクのサーチ魔法で道は分かるから」

「そりゃあイイ! じゃあナビはリムに任せるぞ」

「うん!」


 和斗が前を進み、その和斗を少し離れた所からリムリアが援護しながら正しい道順を教える。

 そしてリムリアはサーチの魔法で敵を発見すると、小さく囁く。


「カズト、その先の曲がり角で、ハイ・ワーウルフが3人、待ち構えてるよ」

「了解」


 和斗はⅯ16を構えて曲がり角に突入していくと、Ⅿ16の銃身の下に装備したⅯ26ショットガンをぶっ放す。


 バゴン! バゴン! バゴン!


「ぐは!」

「ぎゃ!」

「うげ!」


 Ⅿ16だったら命中しなかっただろう。

 しかしショットガンとは、1度に小さな弾丸を幾つも発射する銃だ。

 その幾つもの弾丸の数発を食らってハイ・ワーウルフが地面に転がった。

 そこを狙って。

 

 タン! タン! タン!

 

 和斗はⅯ16で止めを刺す。


「不意打ちを食らったらアウトだっただろな。リム、助かったよ」


 振り向いて笑う和斗に、リムリアが胸を張る。


「ボクのサーチなら、1キロ先だって正確に察知できるから安心して」

「ああ、頼りにしてる」

「うん!」


 こうして常に敵に先制攻撃を仕掛ける事により、和斗とリムリアは順調にダンジョンを進んでいったのだが。


「カズト、マズイよ。そこの先を曲がると広い洞窟になってて、沢山の敵が待ち構えてる」

「そうか……じゃあ、打ち合わせ通りでいくぞ」

「分かった」


 リムリアと一緒に和斗が曲がり角に飛び込んでみると、10メートルほど進んだところで洞窟は一気に広くなっていた。

 天井まで100メートルはあるだろう。

 その天井に向かって何本もの石の柱が伸びている。

 これでは、どこに敵が隠れているか分からない。


 つまり石の柱を通り過ぎる瞬間を狙って不意打ちを仕掛けられたら、Ⅿ16の引き金を引く前に殺されてしまう可能性が高い。

 だから和斗は、改めてリムリアに確認する。


「リム、サーチの魔法で、敵の正確な位置は分かるんだよな?」

「もちろん」

「なら指示を頼むぞ」

「任して」


 こうしてジリジリと洞窟を進んでいくと。


「カズト、右前方!」


 リムリアが鋭い声を上げた瞬間。

 10メートルほど離れた石柱の後ろからワーウルフが飛び出してきた。


「うお!」


 バゴン!


 和斗は慌ててⅯ16を構えてⅯ26ショットガンをぶっ放してハイ・ワーウルフを射ち落とし。


 タン!


 Ⅿ16で止めを刺すが、そんな和斗の背後をリムリアが指差す。


「まだ来るよ! 数は3!」


 バゴン! バゴン! バゴン!

 タン! タン! タン!


 更に3匹のハイ・ワーウルフを撃ち倒した和斗が、小さく呟く。


「ワーウルフを殺せるのは銀の弾丸だけじゃないんだな」

「そんなワケないでしょ。身体能力がアップしただけの、只の人間なんだから」

「いや、人間には見えないけど……」


 そこまで和斗が口にしたところで、石の柱の影から5人のハイ・ワーウルフが襲いかかってきた。


 バゴン! バゴン! バゴン! バゴン! バゴン!


 4発が命中したものの、1発外してしまった。

 Ⅿ26ショットガンの装弾数は5発しかないから、これで弾切れだ。

 もちろんⅯ16の弾倉には、まだ弾丸が残っている。

 しかし和斗の腕では、素早く動き回るハイ・ワーウルフをⅯ16で仕留める事は出来ない。


「ち!」

「もらったぞ!」


 舌打ちする和斗に、勝利を確信したハイ・ワーウルフが襲いかかるが。


「ファイヤーボール!」

「ぐはぁぁぁ!」


 ハイ・ワーウルフはリムリアが放った火球に直撃され、黒焦げになって地面に転がったのだった。


「リム、助かった」

 

 返事の代わりにグイっと親指を立てるリムリアに、和斗は囁く。


「これで合計、ハイ・ワーウルフ12人を仕留めたな」

「ここまではサポートシステムの予想通りだね」

「ああ。後は何とかワーウルフロードを……」

「そう上手くいけばイイんだけどね」


 リムリアが地下空間の先を指差す。

 その方向に視線を向けてみると、500メートルほど進んだ先に、ポエナリ城は築かれていた。






2020 オオネ サクヤⒸ

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