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第十七話  マジかよ……


  



 デビルゾンビを全滅させた後。街を徘徊するゾンビを全員眠らせると。


《デビルゾンビ 127匹

 ゾンビ   3246匹

 を倒しました。

 経験値257246

 スキルポイント257246

 オプションポイント257246

 を獲得しました。

 累計経験値が112万を超えました》

 

 そうサポートシステムの声が響き、そして。


 パラパパッパッパパ――! パラパパッパッ……。


 何度もファンファーレが響き、マローダー改は36にレベルアップした。


「ふう、一気にレベルが上がったな。やっぱデビルゾンビのポイントが2000もあったからだなァ。でも人間が変化したゾンビなのにポイントがワーウルフの2倍もあるのは、空を飛べる分だけ手強いからかな?」


 和斗に呟きを聞きつけ、リムリアが頷く。


「うん、ハイ・ワーウルフの動体視力と反射神経ならデビルゾンビの攻撃を躱して反撃できるけど、ワーウルフじゃ無理だから、そんなモンだと思うよ」

「大量にポイントを稼げたのは嬉しいケド……」


 和斗は無人の廃墟と化した街を振り返る。


「やっぱ、こんなコトを続けさせるワケにはいかないよな」

「うん。だから何としてもヴラドを倒さなきゃ」

「ああ、そうだな」


 和斗は決意を込めた目でハンドルを握ると、ポエナリ城を目指して出発したのだった。





 ポエナリ城へ出発してすぐ、九つ首ヒドラゾンビと遭遇した。

 が、マローダー改をぶつけただけで九つ首ヒドラゾンビは潰れて飛び散った。

 なにしろ現在のマローダー改の最高時速は1160キロもある。

 つまり車重920トンもあるマローダー改が、音速に近いスピードで激突する訳だ。

 いくら九つ首ヒドラゾンビでも耐えられる破壊力ではない。


 しかしゾンビはゾンビ。

 頭を潰さないかぎり死なない。

 そして死ななければ経験値もゲットできないので、和斗は九つの首をマローダー改で轢き潰して止めを刺していく。


「何かめんどくさいね、カズト」

「いや、これで7500ポイントなんだから、文句は言えないだろ」


 ここまでマローダー改が強化されている以上、九つ首ヒドラゾンビ程度の敵など鼻歌まじりで倒せる。

 レベルが上がると、最初は手ごわかった中ボスがザコキャラ並みに簡単に倒せるというのは、ロールプレイングゲームと同じだ。


 でも、ここで油断したりしない。

 ゲーム感覚でいたために、ゾンビマンティコアの毒攻撃で死にかけた事を忘れないようにしないと。

 強いのはあくまでマローダー改であって、自分が強くなった訳ではないのだ。

 そう和斗が自分を戒めた次の瞬間。

 

 キシャァァァァァ!

 

 全長200メートルもあるドラゴンゾンビが、ビリビリと大気を震わせる咆哮を上げながら襲いかかってきた。


 きっと人間の軍隊なら何千人いても、なすすべなく全滅する。

 そう確信するほどの強敵だ。

 というか、人間の手に負える相手とは思えない。


「やっぱ、ドラクルの聖地に向かうよりハードだな!」


 叫ぶ和斗に、リムリアが叫び返す。


「そうでもないよ!」


 ドドドドドドドドド!


 リムリアが200倍に強化したⅯ2重機関銃を撃ちまくると、ドラゴンゾンビはハチの巣になって地面に崩れ落ち、のたうち回る。


「トドメだい!」


 そしてリムリアが頭に弾丸を撃ち込むと、ドラゴンゾンビは動かなくなった。


《ドラゴンゾンビ1匹を倒しました。

 経験値15000。

 スキルポイント15000。

 オプションポイント15000。 

 を獲得しました》


 サポートシステムの声を耳にして、リムリアがニッと笑う。


「この調子で、ドンドン経験値を稼ご!」


 ドラゴンゾンビは間違いなく強かったと思う。

 しかし200倍に強化したⅯ2重機関銃は、もっと強力だった。

 その上、チェーンガンに対空バルカン砲システムに戦車砲、そしてヘルファイアまで200倍に強化してある。

 このとんでもない火力の前では、どんな強敵であろうとポイントを大量ゲットできるアイテムみたいなものだ。

 そして強敵を倒す度に、マローダー改は更に強力になっていく。


「これならヴラドってヤツだって、楽勝で倒せるかもしれないな」


 もちろん、そんなに甘いワケがない。

 しかし、そんなジョークを口にできるくらい余裕の旅を続け、そして廃墟と化した街を出発してから4日後。

 合計31匹のドラゴンゾンビを倒した和斗とリムリアは、ポエナリ城を見下ろせる小高い丘の上にいたのだった。





「あれがポエナリ城か」


 30キロも手前から、戦車砲塔のズーム機能を使用してポエナリ城を観察しながら、和斗が呟く。


「富士山クラスの岩山を背後にした城の周囲を、取り囲むようにして要塞が築かれている。守りは完璧だな。で、リム。兵力はどのくらいだ?」

「索敵の魔法で分かったのは、ワーウルフが1000人くらいで、ハイ・ワーウルフが……200人くらい」


 そしてリムリアは表情を硬くする。


「ハイ・ワーウルフよりも遥かに強いワーウルフロードが約50人いる。これって100万人の人間が攻めて来ても返り討ちに出来る戦力だよ」


 攻めるには絶望的な戦力だね、と付け加えてからリムリアが笑う。


「でも、このマローダー改なら負けたりしない。そうだよね、カズト」

「ああ。200倍に強化したマローダー改の武器ならワーウルフロードだって簡単に倒せる筈だ。いや、サポートシステムが倒してくれる。そうだろ、サポートシステム?」


《お任せ下さい。データ解析によると、バルカン砲対空システムを使用してワーウルフロード50匹を排除するのに必要な時間は、75秒です》


 サポートシステムの答えを伝えると、リムリアが目を輝かす。


「頼もしいね。ならボクは、ヴラドを倒すだけに集中したらイイってことだね」

「そういうコトだ。じゃあ戦いを始めるか。最後の闘いを」

「うん!」


 リムリアが搭載武器のコントローラーを握る。

 戦車砲塔とヘルファイア、チェーンガンとⅯ2重機関銃の全てを、ボタンを使い分ける事によって操れるようにしたものだ。

 もちろんボタンの数が増えた分、操作は複雑になっている。

 しかしドラゴンゾンビとの戦いを通して、リムリアは同時操作コントローラーを使いこなせるようになっているので、攻撃はリムリアに任せておけば安心だ。

 だから和斗は、マローダー改の操作にだけ集中すればいい。


「よし、突撃するぞ!」


 和斗は気合を入れると、マローダー改を発車させた。


 走行速度は60キロ程度に抑えているから、30分ほどでポエナリ城に辿り着く筈。

 その30分でリムリアが可能な限りダメージを与える計画だ。

 

 ドッカァァァン!

 

 まずは戦車砲塔による攻撃で、城壁に大穴を開ける……予定だった。

 しかし200倍に強化された砲弾は、想像以上の被害をポエナリ城にもたらす。


「うわ! 要塞を撃ち抜いた砲弾が、背後の岩山に命中したよ! 何てデタラメな破壊力なんだろ!」


 驚きを通り越して呆れながらも、リムリアは和斗に笑顔を向ける。


「でもカズト。これなら計画より簡単に勝てそうだね」

「ああ、どんどん撃ちまくれ!」

「うん! ほらほら、要塞に隠れてても全滅するダケだよ!」


 ポエナリ城にも遠距離から敵を撃退する武器は装備されていると思われる。

 しかし、ポエナリ城からの反撃はない。

 30キロとは、どんな武器や魔法も届かない距離なのだろう。

 まあ、攻城兵器でも射程は数百メートルが普通なのだから、200倍に強化された戦車砲と比べる方が間違っている。

 

 ただ確実なのは、このまま戦車砲で砲撃しているだけでポエナリ城は瓦礫の山に変わる、という事だ。

 それを誰よりも感じているのは、ポエナリ城を守っているワーウルフ達に違いない。

 こうなると残された手段は、決死の突撃しかないだろう。

 そんな予想通り。


『おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』


 ポエナリ城の城門が開き、ワーウルフとハイ・ワーウルフの大軍がマローダー改へと攻め寄せてきた。


「やっぱりか。これ程の大軍が不規則な動きで突進してくるんだから、俺やリムじゃ狙い撃ちなんて出来るワケないけど、サポートシステムなら大丈夫だよな?」

《はい。バルカン砲対空システムを作動させれば数分で迎撃できます》

「よし、頼む」

《了解。バルカン砲対空システムを作動させ、ワーウルフ及びハイ・ワーウルフを殲滅します》


 ブォオオオオオオ! ブォオオオオ! ブォオオオオオオオオオオオオ!


 バルカン砲対空システムは、毎秒一00発という驚異的な速度で二00倍に強化された弾丸を吐き出す。


「さすが戦闘機を射ち落とせるだけあって、ハイ・ワーウルフのスピードをものともせず弾丸を命中させているな」


 そう和斗が呟いた時にはもう、生き残っているハイ・ワーウルフは数人しかいなかった。

 その数人も5秒後には撃ち倒され、僅か1分ほどでワーウルフとハイ・ワーウルフの大軍は全滅したのだった。

 その結果。


――ワーウルフ950匹

 ハイ・ワーウルフ210匹

 を倒しました。

 経験値325万

 スキルポイント305万

 オプションポイント305万

 を獲得しました。

 累計経験値が435万を超えました。

 

 と、今までの戦闘とは比べ物にならないほどのポイントがカーナビのモニターに表示され。

 

 パラパパッパッパパ――! パラパパッパッパパ――……

 

 レベルアップのファンファーレが何度も鳴り響き。


――装甲車レベルが50になりました。

  最高速度が22200キロになりましました。

  加速力が20%、衝撃緩和力が50%アップしました。

  登坂性能が128度、牽引力が2590トンになりましました。

  装甲レベルが鋼鉄3527メートル級になりました。

  セキュリティーがレベル14になりました。

  侵入者排除レベルを1万倍に強化します。

  ⅯPが2400になりました。

  武器強化がレベル16まで可能になりました。元の1000倍まで強化できます。


 と、マローダー改のステータスは、とんでもない事になったのだった。


「は、は、はは。もうヴラドが気の毒になるほどの強さだな」


 渇いた笑いを浮かべる和斗に、リムリアも魂がぬけたような声を漏らす。


「ボク、何の為に正ドラクルになったんだろ? マローダー改が1台あれば十分じゃん……」

「いや、まあ、それはそれとして。こうなったら、マローダー改を徹底的に強化しようぜ。といっても、全部の武器を1000倍に強化したら、さすがにスキルポイントが足りないだろうから……」


 和斗はとりあえず、戦車砲塔とバルカン砲対空システムをもう一つずつ購入して一000倍に強化する事にする。

 しかし戦車砲塔とバルカン砲対空システムを増設する場所がなかったので、戦車砲塔もバルカン砲対空システムも、今まで使用していたものと一体化させて2連装にした。


「よし。とりあえずコレでイイか。じゃあリム、ヴラドを倒しに行こうぜ」


 その一言で顔を引き締めるリムリアの頭にポンと手を置くと、和斗はポエナリ城へとマローダー改を走らせる。

 ここまでステータスがアップしたマローダー改なら、ヴラドがどれほど強くても瞬殺できるだろう。

 油断は禁物だが、マローダー改に乗っている限り負ける気がしない。

 これならホントにゲーム感覚で戦ったとしても、何の危険もないのではないだろうか。

 などと余裕の和斗だったが、現実は常に斜め上をいく。

 ポエナリ城と思っていた建物は岩山へと続く道を護る砦で、道の先は岩壁に口を開けた洞窟につながっていた。


「多分、万が一に備えてヴラドが作り上げたダンジョンだよ。要塞が攻め落とされても、自分の所に辿り着くまでに敵を全滅させる為の」

「マジかよ……」


 和斗はヴラドのダンジョンの入り口を見つめて呟く。

 入り口の広さは縦横4メートルほどなので、マローダー改では絶対に入る事が出来ない。


「つまりヴラドを倒そうと思ったらマローダー改から出て、生身でダンジョンに入るしかないってコトか……」


 さっきまでの余裕は消え失せ、和斗は目の前が真っ暗になったのだった。








2020 オオネ サクヤⒸ

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[気になる点] 最高速度が22200キロになりましました。 [一言] 上がりすぎ
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