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   第百五十八話 トツカの提案

誤字報告、ありがとうございます。








 最初に出現した邪神すら倒せなかったのに。

 コキュートスに降臨した邪神は、これで11柱となった。


「こりゃ、マジでヤバいかも」


 流石に和斗が焦りを感じ始めた、その時。


「ふう。ここまでみたいですね」


 ルシファーは深い溜め息を吐くと、キャスに申し訳なさそうな目を向けた。


「キャス。あなたには、kys・00としてではなく、キャスとして生きて欲しかった。本当に、心の底から、そう思っています。ですが、こうなってしまったら仕方ありません。kys・00。アナタのメモリーのプロテクトを解除し、封印した記憶を解放します」

「へ? な、なに? ケーコ、ナニを……」


 ルシファーの突然の発言に、リムリアが質問しようとするが。


「理解しました」


 それよりも早く、キャスが頷いた。


「これよりkys・00としての任務を果たします」

「キャスもナニ言ってんの!?」


 騒ぎ出すリムリアに、キャスが説明を始める。


「以前、ペルトコ星雲軍所属の対宙域戦闘艦ナナホシにトラブルが発生。その戦艦を守る星間戦争対応型惑星制圧兵器がワタシだと説明しました。ですがそれは偽装情報でした。最も偉大なる天使の鎧が、ワタシである事を隠ぺいする為の」

「え? それって……」


 言葉を失うリムリアに、キャスが淡々と告げる。


「天使軍最強の同化型生体兵器kys・00。それがワタシです」

「じゃあ……」


 リムリアの視線を受けて、ルシファーが悲し気に微笑む。


「はい。最終戦争に備えて造られた最強の生体鎧。それがキャスです。使用される事なく永遠に封印される事を望んでいましたが……kys・00を身に纏って戦わなければならない時が来たようです。ではkys・00」


 ルシファーが眼で促すと。


「了解」


 キャスはそれだけ口にすると、肩車しているヒヨをそっと床に降ろした。

 そしてルシファーの背中に抱き付き。


「キャス……」


 リムリアが掠れた声を上げたときには。

 キャスはルシファーを覆う、光り輝く鎧へと姿を変えていた。


 が、これで終わりではなかった。

 ルシファーはインフェルノ連合の7人にも目を向ける。


「アナタ方も装着してください」


 その言葉と同時に、7人の背後にも少女が出現した。

 キャスそっくりの、でもどこか違う少女達だ。


「こ、これってひょっとして?」


 口をパクパクさせているリムリアにルシファーが頷く。


「はい。kys・00と共に宇宙戦闘艦ナナホシを守っていた、kys・00の量産型生体鎧です」


 ルシファーが語り終わると共に。

 少女達は7人の鎧へと姿を変えていた。


「む! 急に楽になったでござる!」


 トツカの歓声に、他の6人が頷き。


「ご迷惑をお掛けしたでござるが、これでお役に立てるでござる。カズト殿、どうかご命令を」

「「「「「「ご命令を!」」」」」」


 トツカと共に、一斉に床に膝を着いた。

 どうやら邪神の振動攻撃を、この鎧が無効化せたくれたらしい。

 ただ。


「キャス、どこ行ったですぅ?」


 ヒヨだけは事態を理解してなかった。

 と思ったが。


「ヒヨ、アレ倒せるですぅ!」


 ヒヨが思いもしなかった事を言いだした。


「そんなコト、出来るの!?」


 思わずヒヨに駆け寄るリムリアに、ヒヨが二パッと笑う。


「倒せるですぅ! でも1つだけですぅ!」

「できるんだ……でもナンで1つダケなの?」


 このリムリアの疑問に。


「神すら滅する最終兵器、積層圧縮重力共鳴砲を起動するのですが、さっきヒヨが食べたチート転生者のエネルギーでは、1度起動させるのが精一杯だからです」


 いつの間にか鎧を纏ったラファエルが答えた。


「でも確実に邪神を1柱、消滅させる事ができます。で、そこで重要なのは、邪神を消滅させた瞬間、どういった行動を起こすか、です」


 マローダー改への攻撃は、まだ続いていた。

 11柱の邪神は、土星の輪のようにマローダー改を空中で取り囲み。

 吹き飛ばした先でマローダー改を待ち構えて攻撃している。

 絶対にマローダー改を地面に降ろさないつもりらしい。

 しかも1撃1撃に、神の力を込めて。


 その上、ルシファーによると。

 天使の力を無効化する結界まで発動させているらしい。

 だからルシファー達に期待はできないみたいだ。


 でも、1柱だけでもヒヨが倒してくれたなら。

 一瞬、反撃のチャンスが訪れるはず。

 その一瞬で何をするか。

 これが問題だ。


 レーザーなら邪神を滅ぼす事が出来るだろう。

 ただし命中したなら、だ。

 邪神は光速よりも早く動けるようだ。

 レーザー砲を発射したとしても、躱される可能性が高い。

 実際、光速で飛行するF15は躱されてしまっている。


 当然ながら他の武装も躱されてしまうだろう。

 今考えてみれば、戦車砲などの攻撃は、ワザと受けたのだろう。

 マローダー改の攻撃力を確認する為に。


「つまりレーザー砲は当たらない。他の武器なんか当たる筈がない。しかも当たってもレーザー砲以外じゃダメージを与えられない、か。くそ、どうしたらイイ?」


 小さく呟く和斗に、トツカが覚悟を決めた顔で口を開く。


「カズト殿。拙者に考えがあるのでござるが……」


 トツカの提案を聞いた後。


「ムチャなコト考えるな」


 和斗は思わず唸った。


「鎧の装備したトツカ達は何とかなるかもしれないけど、ヘタしたらトツカ達以外のインフェルノ連合の組員、全員が死ぬぞ。っていうか、もし死ななくても、いきなりそんなコトしたら恨まれるんじゃないか?」


 和斗の問いにトツカは首を横に振る。


「もうルシファー殿に力を借りて、念話で確認したでござる。念話くらいなら力を発揮できるという事でござったので。そしてこの作戦は、インフェルノ連合所属の組員、全員の総意でござる」

「……そうか」


 和斗は、それだけ口にした。

 これ以上質問するのは彼らの覚悟を疑うコトになってしまうからだ。

 だから。


「よし、やろう」


 和斗は覚悟を決め。


「インフェルノ連合全員の命、預かった。全力を尽くす」


 鋼鉄のような意思を込めて、そう口にした。

 この言葉に、インフェルノ連合の幹部7人は。


『は!』


 気合の入った顔で、声を揃える。

 そんな7人に和斗は頷いてみせてから、ルシファーに視線を向け。


「宜しく頼む」


 様々な思いを込めた言葉を口にした。

 邪神を1柱倒して直後。

 ルシファーの力が、戦いの鍵となるからだ。

 これにルシファーも。


「まかせてください」


 気合いの入った顔で答えた。

 そんなルシファーにも頷いてみせると、和斗はヒヨの目を覗き込む。


「じゃあヒヨ。俺の合図で邪神を倒してくれるか?」

「はいですぅ!」


 これで準備は整った。

 和斗は全員を見回してから、大きく深呼吸すると、ヒヨの頭に手を置き。


「テェ!」


 鋭い声を上げた。

 それを合図に1柱の邪神が爆発的な勢いで収縮して消滅。

 と同時に、仲間が瞬殺されるとは思いもしなかったのだろう。

 邪神たちの動きが一瞬止まる。

 その一瞬、ルシファーが持てる全ての力を振り絞って。


「はッ!!!」


 邪神たちを結ぶ軌道にインフェルノ連合の組員を転移させた。

 これにより邪神と組員たちは、綺麗な円を描く形となる。

 そして組員たちが円形に転移した、その時には。


「ポジショニング!」


 マローダー改も、転移していた。

 トツカ達7人が位置するポイントに。


 つまりトツカが提案したのは。

 マローダー改が空中を走れないのなら。

 自分達が『マローダー改が走る道になる』というものだった。

 もちろん普通なら、道となった組員は一瞬でミンチになってしまう。


 しかし和斗は神霊力で、物を保護する訓練も受けている。

 だから組員たちを神霊力で保護し、その上にマローダー改を走らせればいい。

 それにマローダー改は元々、神霊力で周囲を保護するようになっている。

 だから理屈上は、組員たちの安全は確実だ。


 しかし、理屈と現実は違う。

 もしも何か1つでも歯車が狂ったら、道となった組員達は命を落とすだろう。

 トツカ達を含めて。

 インフェルノ連合の組員たちは、そんな危険な作戦に賛同するだろうか。


 和斗は、そう心配したが。

 トツカは、この作戦は組員の総意だと言い切った。

 だから和斗は、この作戦通り。


「行けぇ!」


 マローダー改を全速で発車させた。

 そしてマローダー改は、トツカ達を踏み付けて、秒速350キロで疾走する。

 1柱目の邪神に向かって。

 そして邪神と激突。


 パァン!!


 1柱目の邪神は粉々になって消滅した。


 和斗は知らなかったが、邪神の最高速度は光速の2倍だ。

 だからレーザーによる攻撃は。

 時速40キロで走れる人間に、時速20キロのボールをぶつけるようなモノ。

 簡単に躱せて当然だ。


 対してマローダー改の攻撃は。

 最高速度40キロの人間に、時速200キロで突進するようなもの。

 しかも驚きで動きが止まった瞬間を狙った攻撃だ。


 このマローダー改の突進により。

 残った邪神10柱も、一瞬で跡形もなく粉砕されたのだった。

 そして和斗は、邪神の全滅を確認すると。


「ポジショニング」


 マローダー改をコキュートスの地面に降ろし、そして大きく息を吐いた。


「ふう。少し苦労したけど、最後は呆気なかったな」

「そうだね。マローダー改と、カズトとボクはノーダメージだし、結果だけみたら楽勝って言ってもイイくらいだね」

「まあ、結果だけ見たら、な」


 などと和斗とリムリアが笑みを交わした、その時。


――異世界の邪神11柱を倒しました。

  経験値       1100兆

  スキルポイント   1100兆

  オプションポイント 1100兆

  を手に入れました。


 戦いの後の恒例、獲得経験値をサポートシステムが告げた。

 この経験値の数字に、リムリアが騒ぎ出す。


「1100兆!? 獲得経験値1100兆!? ねえカズト! サポートシステムが、なんかとんでもないコトを言ってるよ!」

「確かにとんでもないな……でも邪神とはいえ神なんだから、多いのか少ないのか微妙なトコだな」


 冷静というか、もう理解する事を放棄する和斗の耳に。


――パラパパッパッパパーー!

  パラパパッパッパパーー!

  パラパパッパッパパーー!


 レベルアップのファンファーレが飛び込んできた。

 そしてサポートシステムが告げる。


  累計経験値が1500兆になりました。

  装甲車レベルが139になりました。

  最高速度が秒速1100万キロになりました。

  質量が3000兆トンになりました。

  装甲レベルが鋼鉄110兆キロメートル級になりました。

  ⅯPが1億2千万になりました。

  装鎧のⅯP消費効率がアップしました。

  1ⅯPで26分間、装鎧状態を維持できます。

  サポートシステムが操作できるバトルドローン数が7000になりました。

  ドローンのレベルアップが第23段階まで可能となりました。

  神霊力が恒星4000億個級になりました。

  耐熱温度     40該 ℃

  耐雷性能   4000該 ボルト

  になりました。

  武器強化が5億倍まで可能になりました。

  レーザー砲焦点温度が100京℃までアップが可能になりました。



「これって宇宙を支配できる強さなんじゃない?」


 リムリアの呟きに。


「は、は、は。そうかもな」


 和斗は渇いた笑いで答えたのだった。








2022 オオネ サクヤⒸ

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