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   第百五十四話 我の真の力を披露してやろう





「リム! キャス! ラファエル! 防御結界だ!」


 和斗の、その言葉に。


「うん!」

「了解」


 リムリアとキャスは、和斗とチート転生者を防御結界に閉じ込めた。

 それを目にして、ラファエルが。


「なぜカズトさんとチート転生者を一緒に?」


 一瞬、途惑いの表情を浮かべるが。


「なるほど」


 すぐに和斗が何をするのか察したらしい。

 直ぐにラファエルは、防御結界を展開した。

 その防御結界の上から。


「ならワタシも」


 ルシファーが、更に結界を追加する。


「うわ、さすが最も偉大な天使。すごい結界だね」


 驚嘆の声を上げるリムリアに、ルシファーが尋ねる。


「で、リムリアさん。カズトさんは、何をする気なのです?」

「ぶん殴るんだよ」

「それは最初にやった事では?」


 首を傾げるルシファーに、リムリアがニッと笑う。


「それは光速を超えた拳が周囲に被害を出さないようにした攻撃だよ。で、今からの攻撃は、意識的に神霊力を抑えて、神霊力を自分の防御を高める事だけに使ったモノだよ」

「え? それって、光速で物体が衝突したら原子爆発を起こすという……」


 ルシファーが何か言いかけたトコで。


「さ、コレでも復活できるか!?」


 和斗はチート転生者に拳を叩き付けた。

 その拳にはリムリアが言ったように、意図的に神霊力を纏わせていない。

 だから和斗の攻撃はチート転生者にブチ当たると同時に。


 ドッカァァァァン!!!!!!!!!!!!!


 とんでもない規模の原子爆発を引き起こした。

 そのあまりの破壊力に、防御結界がミシミシと音を立てて軋む。

 もしもルシファーが防御結界を追加していなかったら。

 ひょっとしたらインフェルノごと消滅していたかもしれない。

 それほどの爆発だった。


 が、それも不思議ではない。

 かつて説明した事だが、広島に投下された原爆の場合。

 その破壊力自体は、たった1グラムのウランが引き起こしたモノだ。

 そしてチート転生者の体重は、どう見積もっても100キロを超えている。

 つまりチート転生者は。

 広島に投下された原爆の10万倍の爆発を起こした計算になる。


 この破壊力の前には、いくら不死でも、何らかのダメージがある筈だ。

 いや、これで滅んでも不思議ではない。

 なにしろ体そのものが、この威力で爆発したのだから。


「さあ、どうなったかな?」


 和斗はそう呟いて、鋭い目で周囲を探る。

 もしも倒せていなかった場合、どこかに突然現れるだろうから。

 が、10秒経過しても、チート転生者が出現する気配がない。


「ホントに倒せた……のかな?」


 和斗が小さく漏らすが、その言葉に。


「まだです!」


 ルシファーが鋭く叫んだ。

 と同時に。


『うぁ~~』


 全員の背後に、ゾンビが出現した。

 リムリア、キャス、ラファエルにルシファーはもちろん。

 インフェルノ連合の幹部の背中から、ゾンビは襲いかかった。

 それと共に。


「我の勝ちだ! 天使軍特殊部隊すら壊滅したゾンビによる奇襲攻撃で、キサマ等も全滅するが良い! ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!」


 いつの間にか出現していたチート転生者が馬鹿笑いを上げた。

 が。


「こんなモンでボクを倒そうなんてナメてる?」


 リムリアがノンビリした声を上げ、全てのゾンビを瞬殺した。

 インフェルノ連合の幹部7人はナニが起きたのか分からなかったみたいだ。

 が、直ぐに状況を理解すると、7人そろってリムリアに頭を下げる。


「リムリア殿、まことに忝い。本来ならば拙者達がリムリア殿の盾になるべきでござったのに……」


 代表して礼を口にするトツカに、リムリアが首を横に振る。


「マローダー改のレベルアップで、ボクのステータスがどれくらいアップしてるかを確認したダケだよ。それにトツカ達なら、ボクが手を出さなくても対応できただろうしね」


 アッサリと言ってのけるリムリアに。


「この突然のゾンビアタックで、天使軍の特殊部隊は壊滅したのですけどね」


 そう口にして、ルシファーが苦笑を浮かべた。

 そんなルシファーに、リムリアが屈託のない笑みで答える。


「だってゾンビが突然背後に出現するのは、ラファエルから聞いてたもん。わかってれば、対処するコトは簡単だよ」

「いいえ、知らなくてもリムリアさんなら、楽々とゾンビを倒したでしょう。なにしろ光速を超えた速度で動けるのですから」


 そう。

 今のリムリアの最高速度は秒速35万キロメートル。

 噛み付かれても、その歯が皮膚に食い込む前にゾンビを倒せる。

 まあ、それ以前に、リムリアの防御力は鋼鉄4兆キロメートル相当。

 ゾンビごときに食まれても、痛くも痒くもない。


 が、そんなコトをチート転生者が知っている筈もない。

 だから。


「バ、バカな……」


 チート転生者は、目を見開いたまま固まった。


「そのゾンビは、最強クラスの土地神のゾンビなんだぞ……そのゾンビの瞬間転移による奇襲なんだぞ……わざと攻撃を食らって油断させて、その隙をついて奇襲をかけたのに……」


 呆然自失。

 まさに、そんな状態のチート転生者だったが。


「ブヒヒヒヒヒヒヒ!」


 いきなり笑いだした。

 ブタそっくりのチート転生者は、ブタみたいな笑い方をしばらくした後。


「仕方ない。我の真の力を披露してやろう」


 チート転生者は、偉そうな態度を取り戻した。

 そして両手を天に掲げると。


「ヘカトンケイルの力、とくと味わうが良い!」


 高らかに声を上げた。

 自分では神々しい姿だと思っているのだろう。

 しかし、どうカッコつけてもブタはブタ。

 滑稽を通り越して、哀れにさえ見える。

 しかしそんなコトに気付くような繊細さなど、持ってないようだ。


「我が100の手によって滅びの道を歩むはいい!」


 チート転生者は見苦しいポーズを決めると、大声で叫んだ。

 そして、100の手首がチート転生者を取り囲むように現れた。

 その100の手首を見て、リムリアが首を傾げる。


「あれ? なんか全部、ゴッドハンドみたいに見えるけど?」


 このリムリアの疑問に。


「はい、間違いなくゴッドハンドですね」


 ラファエルが即答した。

 いつもながら、どんな疑問にも応えてくれる。

 さすが情報部というトコか。

 このいつも通りのラファエルに、リムリアが更に尋ねる。


「やっぱそうなんだ。でもナンで? 確かチート転生者の手首は、カズトが全部やっつけたんじゃなかったの?」

「チート転生者が不死なのは、リムリアさんも見ましたよね? その力で手首も再生したのでしょう」

「じゃあ、全部ゴッドハンドになってるのは?」

「チート転生者は時獄に封印されていた永い時間、眷属を使役して力を集めていましたよね? その力を時獄の封印が解かれると同時に吸収し、戦闘力を強化したのだと思われます」


 このラファエルの言葉が聞こえたのだろう。

 チート転生者がニヤリと笑う。


「ほう、我の力を正確に理解しているようだな。では、100のゴッドハンドがもたらす破壊力も理解できよう。ならば、抵抗しても惨たらしい死が待ち受けている事も分かるであろう? 大人しくゾンビ化して、我に更なる力をもたらす贄となるが良い!」


 自分の勝利を微塵も疑っていないのだろう。

 チート転生者は自信満々で声を張り上げたのだが。


 ピウッ。


 和斗は装鎧にレーザー砲を装備し、ゴッドハンドを薙ぎ払った。

 そして、その一閃は。


 ボシュッ!


 たった一薙ぎで100のゴッドハンドを蒸発させた。

 このオーバーキル過ぎる攻撃を目にして。


「な……」


 チート転生者は、呆けた顔で固まったのだった。

 のだが、チート転生者は直ぐに我に返ると。


「我は夢を見ているのか? 最強の我がヘカトンケイルの力が通用しない? いやそんな筈はない! 今のは何かの間違いだ! 我の力は最強なのだ!!」


 現実逃避の屁理屈を叫び。


「出でよ!」


 またしても両手を天に掲げ、ゴッドハンド100を出現させる。

 それに対し、再び和斗は。


 ピウッ。


 レーザー砲で一閃。


 ボシュッ!


 ゴッドハンドを消滅させた。

 そして和斗は。


「ゴッドハンドなんか何の役にもたたんぞ。理解できたか?」


 両手を天に掲げたまま固まっているチート転生者に、静かに告げた。

 この和斗の言葉にチート転生者は。


「むぐ……」


 言葉を失い、唇を噛んだ。


 ゴッドハンドは、直径17キロメートルの隕石を撃ち出す。

 これは惑星に激突したらマグニチュード11の地震を引き起こし。

 高さ300~1500メートルの津波を発生させる。

 激突のエネルギーは広島型原爆の10億倍だ。


 ちなみに、この規模の隕石は過去、地球にも激突している。

 恐竜が絶滅する原因とも言われる、チクシュルーブ隕石だ。

 つまりゴッドハンドが撃ち出す隕石は、生物を雑滅させる程の威力を持つ。

 この攻撃力の前に、敵はいない。


 チート転生者は、先程までは、そう確信していた。

 しかし、その隕石攻撃を行う前にゴッドハンドを壊滅させられてしまった。

 だからチート転生者は。


「くそ! 隕石攻撃さえ繰り出す事ができれば! 隕石さえ命中したら、戦況を一気にひっくり返せるのに!」


 血走った目で絶叫した。

 その言葉に。


「へえ、そう思うのか?」


 和斗は呆れた声を上げると。


「なら攻撃させてやるから、好きなだけ撃ち込んで来い」


 両手をダラリと下げた。


「な?」


 言葉を失うチート転生者に、和斗は更に続ける。


「どうした? 俺は抵抗しない。さっさと自慢の隕石攻撃を仕掛けて来い」


 ニヤリと笑う和斗に、チート転生者は。


「ぶひゃひゃひゃ! 思い上がったな、愚か者め! よかろう! 望み通り、最強にして必殺の隕石攻撃をくれてやるわ!」


 そう叫ぶと共に、100のゴッドハンドを召喚。

 直後。


「死ねェえええええ!!」


 絶叫と共に、100の巨大隕石を撃ち込んで来た。

 もしもこの隕石攻撃が、同時に撃ち込まれたものなら。

 隕石は互いに激突し、その威力の殆どは無駄になっただろう。


 しかしチート転生者も、そこまでバカではなかったらしい。

 撃ち出す隕石に時間差を設定。

 そして和斗を挟み潰すように2個セットで撃ち込んできた。

 前後から、あるいは左右から撃ち込まれる超巨大隕石。

 チート転生者が言ったように、確かに最強にして必殺の攻撃だったろう。

 ……標的が和斗でなければ。


 現在のマローダー改の防御力は、鋼鉄40兆キロメートル相当。

 つまり地球を1億個並べた厚さの鋼鉄に匹敵する。

 この防御力に対して。

 たった17キロ程度の石がダメージを与える事などあるハズが無い。

 だから、100の隕石が激突し、その噴煙が収まった後には。

 当然、無傷の和斗の姿があった。


「そんなバカなぁああああああああ!!」


 チート転生者が、血を吐くような絶叫を上げた。


 なぜだ?

 生物を滅亡させる程の攻撃が、なぜ効いていない?

 ひょっとして、隕石攻撃の威力が落ちているのか?

 それとも。

 我は、自分で思ってたほど強くなかったのか!?


 混乱するチート転生者に。


「これで納得したか?」


 和斗は冷たい声をかけた。

 この言葉に、チート転生者の体がピクンと跳ねた。

 だが、そこで。


「口惜しいが認めよう。我の攻撃ではキサマを傷つける事は出来ないようだ。しかしキサマも我を殺す事は出来ぬ! つまりキサマにはワレを邪魔する事は出来ないという事だ! ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!」


 チート転生者は、狂気に染まった笑い声を上げたのだった。








2022 オオネ サクヤⒸ

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