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   第百五十三話 時獄の封印を解きますよ

誤字報告、ありがとうございます。

助かっております。







「では、時獄の封印を解きますよ」


 ケーコの毅然とした声が響いた。

 それを耳にすると同時に、和斗は。


「装鎧」


 マローダー改を身に纏う。

 そんな和斗の目の前で。

 ポウ……ポウ……ポウ……。

 魔法陣が1つずつ輝きを失い、消え去っていく。


 ちなみに辺獄の林業師や天使が、この戦いに参加してないのは。

 単純に、戦闘力が足りないからだ。

 そしてこの場にいるのは、チート転生者との戦いに役に立つ。

 ケーコがそう判断した者達だ。


 逆に言えば、たった13人しか戦える戦闘力の持ち主はいない、という事。

 それほどの戦闘力を、チート転生者が持つからだろうか。

 封印の魔法陣が、残り20ほどになって時点で。


 パキィン!


 残った魔法陣が、一斉に砕け散った。

 と同時に、ケーコの姿が消え失る。

 その直後。


「はぁッ!」


 時獄の中心から、気合いの籠ったケーコの声が響き。


 ドガッ!


 ケーコが、首に噛みついたチート転生者に拳を叩き付け、引き剥がした。

 どうやら封印が解けると同時に、ケーコは元の肉体に戻ったらしい。

 いや、元の姿に戻ったのだ。

 今後はルシファーと呼ぶコトにしよう。

 そのルシファーは。


 シュン!


 瞬時に和斗の後ろへと移動すると。


「カズトさん! 宜しくお願いします!」


 そう声を張り上げた。

 が、その首からは大量の血が噴き出ている。

 チート転生者に、肉をかじり取られたからだ。


 しかし、それを想定していたのだろう。

 ラファエルが即座に治癒魔法を発動させ、ルシファーの出血を止めた。

 それを確認すると同時に、和斗は。


「まかせろ!」


 そう怒鳴って、チート転生者の前に立ち塞がった。

 と同時に。


「せい!」


 チート転生者の顔面に、正拳突きを叩き込んだ。


 ところで。

 空手の戦いで、最初から全力で攻撃する事は、まずない。

 全力の攻撃はモーションが大きいので、反撃される危険があるからだ。

 だからよほどの実力差がない限り、初撃は牽制であり、様子見だ。

 まあ、速度はマックスの場合が殆どだが。


 そして、その攻撃に対する相手の反応により戦法をくみ上げていく。

 もしも相手が、自分の速度に対応できないなら。

 スピードで翻弄しながら、トドメの1撃を叩き込むチャンス狙う。


 しかし相手が最高速度に対応した場合、様々な戦法を試す事となる。

 相手の動きを読む事を優先したり。

 或いは、相手の動きを誘導して隙を作る戦い方をする事もある。

 様々な戦い方があるが、最終目標は同じ。

 隙を作り出し、致命の1撃を叩き込む事だ。


 そして和斗の正拳突きも、様子見の攻撃だった。

 つまり渾身の1撃とは程遠いものだったのだが、その1撃で。


 ビシャ!


 チート転生者の頭は、ミンチと化して飛び散ったのだった。

 そんな思いもしない光景に和斗は。


「へ?」


 間の抜けた声を上げた。


 そりゃあそうだろう。

 最も偉大な天使が、その身を犠牲にして封印しなければならない程の強敵。

 それがチート転生者だった筈。

 その強敵が、まさか様子見の攻撃で倒れるなんて思いもしなかった。


 しかし良く考えてみたら、それも当然かもしれない。

 現在のマローダー改の最高速度は秒速350万キロメートル。

 光速の11倍という、地球の科学ではあり得ない速度だ。

 その有り得ない速度での攻撃なら。

 チート転生者を瞬殺できても不思議ではない。

 と、和斗が納得していると。


「カズト!」

「カズトさん!」


 リムリアとルシファーが同時に鋭い声を上げた。

 が、既に和斗も気付いている。


「ち!」


 和斗は舌打ちしながら、身を躱す。

 その和斗の首が、今まであった空間で。


 カチン!


 チート転生者の歯が噛み合わされ、硬い音を立てた。


「どうなってんだ? 確かに消し飛ばしたと思ったが……倒したのは影武者だったとかいうオチか? それとも幻覚を見せられたのか? あるいは分身を生み出せるとか? まさか変わり身の術じゃないよな?」


 和斗は、様々な可能性を口にする。

 荒唐無稽なモノもあるが、有り得ないと考えるのは危険だ。

 なにしろこの世界は、地球の科学の常識の外にあるのだから。

 などと考えを巡らせる和斗に、ルシファーが叫ぶ。


「カズトさん! ソイツは何をしても死なないのです! 正確に言えば、どんな殺し方をしても、元の姿で蘇えるのです!」

「どんな殺し方をしても、元の姿で蘇える?」


 和斗はルシファーの言葉を繰り返すと。


「しぃッ!」


 チート転生者の顔面に、再び正拳突きを叩き込んだ。

 その攻撃は。


 ビシャッ!


 先程と動揺、チート転生者の頭をミンチに変えた。

 完全に頭部が消失したチート転生者。

 どう考えても生きている筈がない状態だ。

 だからさっきはチート転生者から目を話してしまった。

 しかし今回は、転生者から目を離さない

 そんな和斗の目の前で。


 ウニウニウニウニウニ!


 チート転生者の首から凄い速さで肉が盛り上がり。


 ニヤリ。


 チート転生者は、元通りになったブタ顔に、下品な笑みを浮かべたのだった。

 その信じられない光景に。


「うーわー。ホントに元通りに戻るんだ」


 リムリアが呆れたような声を漏らした。

 が、直ぐに可愛らしい顔で微笑む。


「でも頭が再生する位じゃ和斗に勝てるワケないよ」


 そう口にしたリムリアを、チート転生者が嘲笑う。


「愚かな。我は不老不死を手に入れた。我を倒す方法など存在せぬぞ」


 というチート転生者の言葉が終る前に、和斗は。


 ガッシャァン!


 戦車砲を腕に出現させた。

 そして。


「なら試してやる」


 そう口にし。


 ドッカァァァァン!


 チート転生者に向かって戦車砲を発射した。


 ちなみに使用した戦車砲は10万倍に強化したモノ。

 マローダー改の武装からすると、かなり手加減した攻撃だ。

 が、チート転生者にはちょうど良い破壊力だったらしい。


 ドパッ!


 10万倍強化戦車砲は、チート転生者の胸に拳が入る程の穴を開けた。


(チート転生者は自分の事を不死と言ってたけど、体のどこかに急所があるかもしれない。なら、その急所を捜してみるか)


 和斗はそう考え、様々な場所に戦車砲を撃ち込んでいく。

 胸の中心、右胸、左胸、腹、脇腹、股間。

 念の為、肩や腕や手首、足や膝や足首まで狙い撃ちにしたが。


「効かぬなぁ」


 ウニウニウニウニウニウニウニウニ。


 チート転生者が口にしたように、穴は数秒で塞がってしまった。

 どうやら体のどこかに急所を隠しているワケじゃないようだ。


「じゃあ、こういうのはどうだ?」


 ガシャン!


 和斗は10万倍強化バルカン砲に武装を変えると。


 ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 チート転生者の頭から股間までをバルカン砲で掃射した。

 戦車砲が開けた穴は、僅か数秒で元通りになった。

 しかしバルカン砲の発射速度は毎秒100発。

 その速度で薙ぎ払う攻撃は、砲弾の剣と化して。


「ブヒッ」


 チート転生者の体を、縦に両断した。

 そして和斗は、中心線で綺麗に切断されたチート転生者の足を掴むと。


「そら!」


 それぞれを反対の方向に放り投げた。


 ちなみに。

 和斗は、着地点が遠くになり過ぎないように力を加減している。

 遠くに投げると、どうなるか観察できないからだ。


「今度はどうだ?」


 和斗はチート転生者に鋭い目を向ける。

 その和斗の目の前で。


 ピョン!


 2つに分かれたチート転生者の体が宙を飛び。


 ぐにょん。


 空中で衝突、そのまま元通りに引っ付く。

 そしてチート転生者は。


「ブヒヒ」


 ブタそっくりの笑い声を漏らした。

 が、直ぐにカズトは思いついた事を実行する。


 ブォオオオオオオオオオオオオオオ!


 もう1度、バルカン砲でチート転生者を両断し。


「リム! これを凍らしてくれ!」


 和斗はリムリアに頼んだ。


 以前、ノルマンド復興の為にモンスター狩りをした事があった。(第六十話 参照)

 その時。

 素材を保存する為に、リムリアはフロストコフィンという魔法を使った。

 対象を300メートルもの氷に閉じ込める魔法だ。

 そのフロストコフィンでチート転生者の体の片方を凍らせたら、どうなるのか。

 という実験だ。

 そんな和斗の意図を一瞬で理解したリムリアは。


「アイスコフィン!」


 チート転生者の体の1つを氷山に閉じ込めた。


「さて、どうなる? このまま動かなくなってくれたら、それが1番なんだけど」


 和斗は呟くが、そう上手くいく筈がないとカンが告げている。


「でもチート転生者の体の反応を観察したら、対応策が判明するかも」


 と期待する和斗だったが。


 ブシューー。


 凍りついたチート転生者の体が煙に包まれ、そして消滅した。

 と同時に。


 ずりゅ。


 残ったチート転生者の体から、半身が飛び出して元の姿となった。


「片方だけ凍らせてもダメか。なら」


 和斗はチート転生者が姿を取り戻した瞬間。


 ブォオオオオオオオオオオオオオオ!


 もう1度、バルカン砲でチート転生者を両断し。


「リム! 両方を凍らせてくれ」


 チート転生者の体を、2つとも氷に閉じ込めた。


「体を2つに引き千切られ、しかも別々に動きを封じたら、どうなるのかな?」


 さて、今度はどんな反応するのか。

 科学の実験をしている気分の和斗だったが。


 ブシュ―― × 2


 氷の中のチート転生者の体が、同時に消滅し。


 ポン。


 チート転生者が、和斗の目の前に出現した。

 まるで冗談のような光景だったが。


「なら次はコレだ!」


 和斗は武装を既に、レーザー砲に交換していた。

 そして。


「体を蒸発させられても復活できるか?」


 そう口にしながらレーザー砲を発射した。

 1兆℃のレーザーは、太陽系を簡単に消滅させる。

 そして現在のレーザー砲の焦点温度は7京℃。

 この想像を絶する威力の攻撃は、チート転生者を一瞬で消滅させた。

 のだが。


「残念だったな」


 チート転生者は、傷一つない姿で、いきなり空中に出現すると。


「すさまじい攻撃だ。ひょっとしたら星雲すら消滅させる事が出来るかもしれない威力だな。たしかに我では足元にも及ばぬ程の攻撃力だが、それでも我を殺す事は出来ぬ。ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!」


 弛んで突き出た腹をゆすりながら、下品な笑みをブタ顔に浮かべた。

 が、和斗は動じない。


「リム! キャス! ラファエル! 防御結界だ!」


 そう怒鳴ると。


「じゃあコレならどうだ?」


 和斗は不敵な笑みを浮かべたのだった。








2022 オオネ サクヤⒸ

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