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第十五話  正ドラクルになったよ


  



――最高速度が950キロになりましました。

  加速力が20%、衝撃緩和力が50%アップしました。

  登坂性能が100度、車重が860トンになりました。

  装甲レベルが鋼鉄110メートル級になりました。

  セキュリティーがレベル7になりました。侵入者排除レベルを100倍に強化します。

  ⅯPが840になりました。


「もうマローダー改は、世界最強じゃないのかな」


 和斗は理解不能な数値を眺めて漏らすが、ふと最後に付け加えられたワードに目が止まる。


「レベル30を超えましたので、スキルポイントで出来る事と、オプションポイントで購入できる物が増えました? どれどれ」


 さっそく調べてみると、武器の強化レベルがアップしていた。


  武器強化  第11段階(200倍化)


 ナイフ      2540ポイント

 ハンドガン   25400ポイント

 ライフル    50800ポイント

 搭載武器   127000ポイント


「200倍!? 凄ェ!」


 更なる攻撃力アップが可能になった事を、和斗は飛び上がって喜ぶ。

 と、そこで和斗は、スキルポイントで強化される武器の中に、ナイフの文字がある事に気が付いた。


「という事は、新しく購入できるようになったモノの中にナイフがあるという事なんだろか?」


 さっそく勝人が購入できるモノをクリックしてみると。


「あ、ホントだ、個人装備にナイフが新しく追加されてる。って、まさか購入武器が増えたって、ナイフが買えるようになっただけ、ってコトないよな?」


 さっそくスクロールしてみると。


 個人装備武器

     

 ナイフ             1~~10

 クレイモア(指向性対人散弾地雷)    2

 Ⅿ26(Ⅿ16に装着するショットガン) 8

 カールグスタフ弾各種         80


 搭載武器


 ハイドラ(19連ロケット弾ポッド)  1万

 バトルドローン           20万

 バルカン砲対空システム        3万

 指向性散弾地雷            50


 となっていた。


「何だ、このバトルドローンって?」


 和斗がバトルドローンの詳細をクリックすると、そこに表示されたのは。


  バトルドローン


機体   アパッチ・ロングボウAH―64D


  全長          17・7  メートル

  全幅           5・2  メートル

  全高           4・66 メートル

  ローター直径      14・6  メートル

  

  最大速度

      水平   時速  293  キロメートル

      急降下  時速  365  キロメートル

      横・後進 時速   81  キロメートル


  垂直上昇率        663  メートル/分


  航続距離         611  キロメートル


  武装

        Ⅿ230 30㎜チェーンガン   1200発

        ヘルファイア対戦車ミサイル    4基 ×2

        ハイドラ70㎜ロケットランチャー 19発×2


 だった。


「おいおい、アパッチ・ロングボウAH64Dって、世界最強って言われるアメリカ軍の戦闘ヘリだったよな? けど……こんな大きなモンを収納するスペースなんて、あるワケないよなァ」


 現在のマローダー改の本体サイズは全長12メートル、車幅4メートル、車高は3メートルだ。

 これは大型バスよりも大きなサイズではある

 が、全長17・7メートルもあるアパッチ・ロングボウを収納できるスペースなどあるワケが無い。

 まあ、スキルポイントは山ほどあるので、マローダー改をもっと大きくして収納スペースを確保しても良いかもしれない。

 しかし、アパッチを搭載できるサイズの装甲車が通れる道があるとは思えない。


「ま、これは後から考えるとして……とにかくリム。まずは正ドラクルの魔法陣に向かうぞ」

「う、うん」


 緊張した顔で頷くリムリアの肩をポンと叩くと、和斗はマローダー改をユックリと発車させた。

 メインストリートを間直ぐに抜け、そして街の中央に作られた広場に到着したところで、和斗はマローダー改のエンジンを止める。


「やっとたどり着いたな」


 和斗は正ドラクルの魔法陣を眺めながら呟く。


 広場の大きさはサッカー場2つ分くらいだ。

 その真ん中に、直径50メートルほどの魔法陣が描かれていた。

 遠くから見た時は分からなかったが、小さな文字がびっしりと彫り込まれた石が規則正しく並べられて、魔法陣を形作っている事が分かる。


「さ、リム」


 和斗が促すと、リムリアは大きく深呼吸してから、マローダー改のドアに手をかけた。


「じゃ、じゃあ、正ドラクル化の魔法陣を作動させるね」


 リムリアは硬い表情でそう呟くと、マローダー改を降りて正ドラクル化の魔法陣の中心に立って目を閉じた。

 これから何が起こるのか興味津々ではあるが、生き残った敵が襲いかかって来るかもしれない。

 

 だから和斗はチェーンガンや戦車砲塔とリンクしたヘルメットを被って、警戒に全神経を注ぐ。

 バイザーは全方位360度を映し出すので死角はないから、不意打ちを受ける事はない筈だ。

 そんな和斗の前に。


「仲間の仇だ!」

「魔法陣だけは使わせない!」

「死ね!」


 建物の影から12人のハイ・ワーウルフが飛び出してきた。

 が、すかさずチェーンガンで薙ぎ払って撃ち倒す。


「ふう。不意打ちに備えてなかったら撃ち漏らしたかもしれないな。でもリムリアは絶対に護ってみせる」


 大きく息を吐きながらも、油断なく警戒を続ける和斗だったが、そこに。


「カズト。ボク、正ドラクルになったよ」


 リムリアの声が聞こえてきた。


「そうか、やったな!」


 グッと親指を立てる和斗に向かってリムリアは微笑むと、そのままスゥッと手の平を空へと向ける。


「見てて、これがボクの力だよ……ファイヤーボール!」


 その言葉と同時に、リムリアは手の平から焔の玉を撃ち出した。


「こ、これがリムの魔力か……」


 和斗が驚くのも無理はない。

 リムリアが放ったファイヤーボールは、バーニーの10倍以上の大きさがあっただけでなく、20発も発射されたのだから。


「この力があれば、ヴラドにだって負けない!」


 ギュッと手を握り締めるリムリアに、和斗は叫ぶ。


「とにかく正ドラクルになれたんならマローダー改に戻れ! いつ、どこから攻撃されるか心配でしょうがない!」


 今のリムリアなら、バーニーと同等の魔法障壁を展開できるだろう。

 いや、バーニーより遥かに防御力の高い魔力障壁を展開できるに違いない。


 しかし、それでもマローダー改の中のほうが安全な筈だ。


 そう考えて、早く避難させようと焦る和斗に向かって嬉しそうに笑うと、リムリアはマローダー改に駆け込んでキュッと抱き付く。


「心配してくれて、ありがと」

「おう。ひょっとしたら必要ないかもしれないけどな」

「そんなコトない! カズトが心配してくれて嬉しいよ」


 可愛らしいコトを言ってくれるリムリアに微笑み返した後。


「なあリム。正ドラクルになれた以上、これからヴラドってヤツとの戦いに向かうつもりなんだよな?」


 和斗はリムリアに尋ねてみた。


「うん、きっと生きるか死ぬか、の戦いになると思う」


 真剣な顔でそう口にすると、リムリアは笑顔を浮かべた。

 無理やり作っている事が一目で分かる、痛々しい笑顔だ。


「だからその前に、カズトを元の世界に送り返すね。カズト、今までホントにありがと。ここでサヨナラだよ」


 リムリアは涙を浮かべながら、震える声で言葉を絞り出した。


 確かに最初の約束は、ドラクルの聖地までリムリアを送り届ける、というものだった。

 そして、その約束を果たした以上、こんな危険な世界からオサラバして、さっさと平和な日本に戻るのが正解だろう。


 しかし。

 そんな危険な世界にリムリア一人残して元の世界に帰るなんて事、出来る筈もない。

 というより、もうとっくに和斗は、リムリアと共に最後の最後まで戦う決意を固めていた。

 そこで和斗は、一番大事な事をリムリアに確認する。


「リム、正直に答えてくれ。ヴラドの本拠地を護っている敵が、ハイ・ワーウルフやバーニーよりも弱い訳がないよな? そんな強敵を相手にして勝つ自信があるのか?」

「え!? そ、それは……」


 やっぱり勝ち目はないらしい。


「勝ち目がないと分かってて、何でヴラドと戦おうとするんだ?」

「だってヴラドを止めないと、悲しむ人が増えるから! 酷い目に遭わされる人が増えるから! これ以上、不幸になる人を増やすワケにはいかないから……」


 俯いてしまうリムリアに、和斗は盛大に溜め息をつく。


「はぁ~~~~~。負けると分かってて戦いを挑むなんて、お前は馬鹿か」

「だって……だってぇ……」


 和斗は、えぐえぐと泣き出すリムリアの頭にポンと手を置く。


「マローダー改をもっとパワーアップさせたら、勝てると思うか?」

「え!?」


 涙で濡れた目で見上げて来るリムリアの顔を、和斗は両手で包み込む。


「俺が一緒でも勝ち目はないか?」

「……一緒に行ってくれるの?」

「リムを見捨てて、帰れるワケないだろ」

「カズト!」

「わ!」


 リムリアに思いっ切り抱き付かれて、和斗はひっくり返ったのだった。







2020 オオネ サクヤⒸ

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