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   第百四十五話 結界樹の実ですね!!!





――パラパパッパッパパーー!


 今まで何度も耳にしたファンファーレが鳴り響き。


  累計経験値が470兆になりました。

  装甲車レベルが134になりました。

  最高速度が秒速100万キロになりました。

  質量が10兆トンになりました。

  装甲レベルが鋼鉄13兆キロメートル級になりました。

  ⅯPが2500万になりました。

  装鎧のⅯP消費効率がアップしました。

  1ⅯPで18分間、装鎧状態を維持できます。

  サポートシステムが操作できるバトルドローン数が4600になりました。

  ドローンのレベルアップが第21段階まで可能となりました。

  神霊力が恒星600億個級になりました。

  耐熱温度      8該 ℃

  耐雷性能    800該 ボルト

  になりました。


 サポートシステムが、そう告げた。


「な、なんで?」


 訳が分からない和斗の横で。


「あ――――――!! 今のは結界樹の実ですね!!!!」


 ラファエルが大声を上げた。

 そして。


「大失敗でしたぁ……実物を見たコト無かったから、気が付くのが遅れてしまいましたぁ……」


 暫くの間、ブツブツと呟いていたが。


「ステンノさん! この果物、どこで手に入れたのですか!?」


 顔色を変えてステンノに詰め寄った。


「え? 完熟したら勝手に枝から落ちてくるのよ。まあ10年に1度、あるかないかって話だけど、つい先日のコトさ。たまたま見つけた林業師がいたって耳にしてたのは。もちろん10年に1度だから凄い高価なモンだけど、親分と姉御の為に奮発して手に入れたのさ」

「知らなかった……」


 ガックリと膝を着くラファエルに、リムリアがキョトンとした顔で尋ねる。


「いったいどゆコト?」

「結界樹の素材を勝手に売買するのは厳罰なんですけど、果実のコトまで頭が回らなくて、実に関する決まりは無いのです。しかし結界樹の果実が収穫できるようになるのは、もっと先の筈でしたが……想定が甘かったですね」

「ふ~~ん。でもそれ、そんなに大騒ぎするコト?」


 リムリアの言葉に、ラファエルがガバッと顔を上げる。


「もちろん大事ですよ! いいですか、結界樹の完熟果実は神の雫の素材の1つなんですから」

「へ――。って神の雫!?」


 神の雫。

 無条件にレベルを1つアップさせるアイテムだ。

 そのとんでもない力を秘めるアイテムを耳にしてリムリアも大声を上げた。


「じゃあカズトが結界樹の実を食べる度にマローダー改がレベルアップするってコトなの!?」

「そうなんです」


 ちなみにレベルアップするのはマローダー改だけ。

 辺獄の住人が口にしても、美味しいだけらしい。


「でもナニが困るのか、まだわかんない」


 首を傾げるリムリアに、ラファエルが力なく答える。


「いいですか? 完熟結界樹の実を使えば、神の雫を5個作れるんです」

「えええ!? じゃあ、そのまま食べたら勿体ないじゃん!」

「だからガッカリしてるんです」


 肩を落とすラファエルだったが、そこで。


「申し訳ありませんでした!」


 ステンノが土下座した。


「まさか、こんな事態を招くとは考えもしませんでした!」


 何度も頭を地面にこすり付けるステンノだったが。


「謝るコトなんてないぞ。ステンノは何も知らなかったんだろ?」


 和斗はステンノの手を取って立ち上がらせた。


「ステンノはリムリアを悦ばせる為に、手に入る最高のモノを用意してくれたんだろ? それに感謝するコトはあっても、怒るコトなんて、ある筈ないさ」

「カズト親分……」


 涙ぐむステンノに、和斗はニッと笑いかける。


「凄く美味しい果実だった。それだけ素晴しいのにレベルアップまで出来た。ありがとな、ステンノ」


 続いて和斗はラファエルに声をかける。


「それにラファエル。ステンノのお蔭で結界樹の実のコトに気付けたワケだ。これってステンノの御手柄なんじゃないか?」

「ま、まあ。そう言われてみれば、そうですね」

「だろ? だからステンノは失敗したんじゃない。俺はステンノのおかげでレベルアップできたし、ラファエルは重要なコトに気付けた。ステンノの御手柄さ」


 ポンと肩を叩かれ、ステンノは和斗を潤んだ目で見つめた。


「ああ、命を捧げるに相応しい親分に巡り会えたわ……」


 が、それを目にするなり。


「あ、マズ」


 リムリアが顔をしかめ。


「カズト様に対する恋の感情を確認」


 キャスが不機嫌な声を漏らし、トツカに至っては。


「これは……コッソリ斬り捨てた方が良さそうでござるな」


 物騒なコトを呟いていた。

 が、そこでラファエルが大声を上げる。


「それよりもカズトさん! よく考えたらカズトさん、光速で動けるようになってしまいましたよね!?」


 そう言われてみたら。

 レベル134になったマローダー改の最高時速は秒速100万キロ。

 和斗のステータスは、その30パーセントだから最高時速は秒速30万キロ。

 すなわち和斗は光速で動けるようになったワケだ。

 完璧に神霊力を纏えるようになる前に。

 だから。


「カズトさん。休憩は無しです。完璧に神霊力を纏えるようになるまで、訓練を続けますよ」


 ラファエルは、厳しい顔で言い切った。


「え~~?」


 もちろんリムリアが嫌そうな声を上げるが。


「いいですか? 例えばカズトさんが、ウッカリ最高速度でケーキに手を伸ばしたら、カズトさんの手が触れた瞬間、ケーキは原子爆発を起こして辺獄は消滅してしまうんですよ」

「そんなに!?」


 ええ!? と声を上げるリムリアに、ラファエルが難しい顔で頷く。


「はい、辺獄消滅の危機なんです。だからカズトさんには一刻も早く神霊力を完璧に纏ってもらう必要があるんです」

「そ、それなら仕方ないかな」


 シュンとなるリムリアだったが。


「いや、別にリムリア達は、ココで休憩してたらイイぞ。これは俺の問題なんだからな」


 と和斗が口にするなり、フンスと鼻を鳴らす。


「カズトが頑張ってるのに、ボクは呑気に休憩! なんてコト、出来るワケないじゃん」

「もちろん私も同行する」

「ヒヨも行くですぅ!」


 リムリア、キャス、ヒヨがそう口にすると。


「我らも当然、お供するでござる」


 トツカの言葉と共に、7人の組長が一斉に膝を着いた。


「そうか? ミンナがそれでイイなら、俺に文句なんかないけど」


 ポリポリと頬を掻く和斗にトツカが即答する。


「カズト殿に付き従うのは、我らが喜びでござる。そして万が一の事態に備えてそばを離れないのは、我らが義務でござる。故に、是非ともご一緒させてほしいでござる」

「そこまで言ってくれるなら……一緒に行くか」

「「「「「「「は!」」」」」」」


 声を揃える組長7人だったが、そこにラファエルが口を挟む。


「まあ、それ以前にステンノさんには同行してもらう必要がありますよ。なにしろカズトさんには今から第8圏で、搬出の訓練を受けてもらうのですから」

「アタシが?」


 反射的に聞き返したステンノに、ラファエルが頷く。


「はい。伐採した結界樹を素材として利用する為、神霊力でコーティングして傷つかないようにして運ぶ。これが搬出という作業です。その訓練として、結界樹に見立てた陶器を神霊力で守れるようになる。これが搬出の訓練ですよね」


 その言葉の直後。

 和斗達は、第8圏に転移していた。

 やはり荒野が広がる場所だったが、1番の違いは。

 目の前に、大きな街がある事。

 そして、その街の周囲を、幾つもの円形闘技場が取り囲んでいる事だ。


「ここが搬出の訓練場所か?」


 和斗の呟きに、ステンノが1番に反応する。


「はい親分! 闘技場の中心で粘土を焼いて、結界樹の替わりを作り、それをゴーゴン族の攻撃から守るのが搬出の訓練なんです」

「ゴーゴン族の攻撃?」


 再び呟く和斗に、いつものようにラファエルが一覧表を差し出す。


              ゴーゴン種


 ナイフクラス                     4000万

 アロークラス                     1億

 ランスクラス                     2億3千万 

 キャノンクラス                    6億

 レールガンクラス(グレートゴーゴン)        11億


 その一覧表を、横から覗き込んだリムリアが疑問を口にする。


「これってどういうクラス?」

「それはですね……」


 ラファエルによると。


 コーゴンは髪の毛である蛇の口から、煉獄力を圧縮して発射できるらしい。

 その撃ち出す煉獄力の威力がナイフ並みならナイフクラス。

 槍ランクならランスクラス、という事らしい。


 しかし、疑問が。

 この世界にも大砲はあるから、キャノンクラスは分かる。

 だがレールガンを、どうやって知ったのだろう?

 この世界の科学力では、作り出す事など不可能な筈なのに。

 というか、レールガンという発想に辿り着く事すら不可能だと思うが。

 などと和斗が考え込んでいると。


「あ、ひょっとしてレールガンって言葉が引っかかってます? それはチート転生者が魔法で再現して使っていたからです」


 ラファエルが朗らかな顔で告げた。


「おいラファエル。やっぱり俺の考えが読めるんだろ?」


 ジトリとした目を向ける和斗に、ラファエルが首を横に振る。


「いえいえ、カズトさんが不思議そうな顔をしてたから、きっとそうだろうなと思っただけです」

「ホントかよ……」


 まだ疑いの目を向けている和斗に、ラファエルが微笑む。


「本当です。天使は嘘をつきません」

「……ま、いっか」


 追及しても無駄だろうな。

 と心の中で呟くと、和斗は話題を変える。


「で? 訓練はいつから始めるんだ?」

「もちろん、今からです」


 和斗の疑問に即答すると、ラファエルは闘技場へと歩き出す。

 そして中に入ってみると、枝打ちで使った闘技場と同じ造りだった。


「闘技場の外周に、50人のゴーゴンが並びます。そして煉獄力を圧縮した刃を撃ち出します。その煉獄力の刃を防御する神霊力を、無意識でも纏えるようになってください」

「それって普通の搬出の訓練?」


 和斗の疑問にラファエルが微笑む。


「もちろん、カズトさんだけです」

「そうだろうと思った」


 小さくボヤいてから、和斗は闘技場の中心に立つ。


「ここでゴーゴンの攻撃を防御したらイイんだよな?」

「はい。でもその前に、コレを着てください」


 ラファエルが、どこからか鎧を取り出して、和斗に手渡した。


「どうして今さら鎧を?」


 首を傾げる和斗に、ラファエルが説明する。


「これはカズトさんを護る為のモノではありません。ゴーゴンの攻撃を受けたとき大きな音を立てて、身に纏う神霊力が甘くなったコトに気付けるためのアイテムなのです」

「かなり上手く神霊力を纏えるようになったと思ったけど、まだ俺の纏い方、甘いかな?」


 不思議そうな顔になる和斗に、ラファエルがまたしても微笑む。


「やってみたら分かります。では始めましょう」


 この笑顔が曲者なのだが、ここで気にしててもしょうがない。

 だから和斗は。


「分かった」


 それだけ口にすると、神霊力を纏った。

 その直後。


 シュパ!!!


 50人のゴーゴンが、頭の蛇から煉獄力の刃を吐き出した。

 ゴーゴンの髪の毛である蛇の数は数百。

 だからケンタウルスより人数は少ないが、降り注ぐ数は遥かに多い。

 それを眺めながら、リムリアがラファエルに尋ねる。


「まるで雨のようだね。でもこれで訓練になるの? この程度の攻撃なんてカズトにとって遊びみたいなモンだし」

「おやリムリアさん、まだ理解してないのですか? これは搬出の訓練じゃなくてカズトさんが無意識でも神霊力を纏えるようになる為の訓練です」


 そう口にすると、ラファエルは全員を見回す。


「というコトで皆さん。カズトさんの集中力を乱してもらえませんか? 手段は問いません。話しかけてもイイし、脅かしても構いません」

「いきなりそう言われても……難しいな」


 考え込むリムリアに変わって、ステンノが手を上げる。


「アタシがやってもイイかしら?」

「先ほど言ったでしょう? 誰でも構いません」


 ラファエルの答えに、ステンノはニッコリと笑うと。


「カズト親分! アタシ、親分に惚れました! 今夜アタシを抱いてくれませんか!?」


 このステンノの言葉に。


『は?』


 この場にいる全員の声が揃った。

 ……和斗を含めて。

 と同時に。


 カカカカカカカカカカカカァン


 金属音が響き渡った。









2022 オオネ サクヤⒸ

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