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   第百三十三話 お帰りなさいませ

 ここから第6章です。


第百五十九話まで、毎日投稿します。





『お帰りなさいませ!!』


 第3圏でチート転生者の手首100と頭50を倒した後。

 辺獄に戻った和斗達を出迎えたのはウェポンタイガー一家だった。

 いや、正確に言うと。


「カズト殿! 邪悪なるモノの討伐、お疲れ様でござる! 我らウェポンタイガー一家一同、お待ちしていたでござる!」


 ウェポンタイガー一家を引き連れたトツカだった。

 鍛え上げられたアスリートのような美しいスタイルは以前のまま。

 いや、気のせいか、以前より美しくなっているような気がする。


 シマシマ模様の毛皮に隠された、形の良い胸。

 同じくシマシマ模様の毛皮の短パンの覆われた、引き締まったお尻。

 キレイに割れた腹筋。

 ウェポンタイガーの美しさを保った、整った顔。

 そのどれもが、輝いて見える。


 が、それが逆に面白くない人物が。


「何でトツカがココにいるの?」


 トゲのある声を上げた美少女、リムリアだ。


「確かウェポンタイガー一家を立て直して、鍛え直す、みたいなコト言ってなかったっけ?」


 明らかに不機嫌なリムリアだったが、その言葉など耳に入ってないらしい。

 トツカがキラキラした目で和斗の前に進み出る。


「カズト殿、ウェポンタイガー一家総出で、お祝いの席を設けたでござる。お受け頂けるでござろうか?」

「聞いてないし」


 不満気にそう漏らすと、リムリアは改めて話に割り込む。


「あのね、ボクたち今から宿舎に戻って、お風呂に入って、ご飯食べて、ユックリ寝る予定なの。だから、また今度ね」


 リムリアはしかめっ面でそう告げるが、トツカは逆に顔を輝かす。


「それは好都合! 席を用意したのは、ウェポンタイガー一家が営む最高級の宿でござる。風呂も酒も料理も寝床も、辺獄でも最高のモノと断言できるでござる。ぜひ我等が宿に!」

「え? 最高の料理? ホント?」


 食いつくリムリアに、トツカが満面の笑みを浮かべて頷く。


「肉、魚、鳥、野菜に果物。どれをとっても辺獄で、我らほど上等の素材を使っている宿はござらぬ。甘味、いや貴殿らの言葉で言うならスイーツだって、種類でも味でも引けを取らぬでござる」

「スイーツも!」


 どうやらリムリアの心は、スイーツの一言で討ち取られてしまったらしい。


「カズト! これは断る方が失礼だよ!」


 和斗は、そんなリムリアに苦笑すると、仲間へと視線を向けた。


「トツカの好意に甘えようと思うけど、イイかな?」

「はいですぅ!」

「ん」


 ヒヨとキャスの返事は思った通り。


「ウェポンタイガー一家が営む最高級の宿というコトは『皆美』ですか。確かに料理も酒も風呂も最高級の宿ですね。いいでしょう、みんなで行きましょう」


 ラファエルに聞いたつもりはなかったんだけど……まあイイか。

 というコトで、和斗はトツカへと視線を戻す。


「じゃあ、好意に甘えさせてもらうよ」

「光栄でござる!」





 こうして招かれた宿屋『皆美』は。

 その名前通り、和風の高級旅館だった。


「では風呂に案内いたすでござる」


 まず風呂に入りたいという和斗のリクエストで、トツカが案内したのは。


「岩風呂に檜風呂に露天風呂か。しかも温泉とは驚いたが、確かにトツカの言った通り、最高の風呂だぜ」


 和斗が呟いたように、幾つも湯船がある温泉だった。


「チャレンジ・シティーの大風呂も、辺獄の宿舎の風呂もサイコーだと思ってたけど、温泉はまた格別だなぁ」


 やっぱり日本人は温泉だよな。

 思わずそう口にした和斗だったが、そこに。


「カズト、一緒に入ろ!」


 突然、リムリアが乱入してきた。

 ……素っ裸で。


 当然ながら、リムリアの全てが見えてしまう。

 発展途上の胸も、可愛らしいお尻も、キュッと引き締まったウエストも。

 いつまでも見つめていたいほど美しい光景だったが。


「おおい! ココは男湯だぞ!」


 和斗は心の中で血の涙を流しながら、必死に目を逸らした。

 そんな和斗にリムリアが首を傾げる。


「なにソレ? イイじゃん、こんなに広いんだから」

「いや、男湯ってのは、男が入る風呂! つまり俺以外の男だって入るんだ! いいのか、知らない男に裸を見られても!」

「へ? トツカが言ってたじゃん、今日は貸し切りだって。だから他の男なんか入ってこないよ」


 それはそれでマズい!

 和斗だって男だ。

 リムリアの、綺麗で華奢な体を抱きたいと思った事など星の数だ。

 しかし正式にパートナーとなるまでは、と自分を律してきた。

 相思相愛なんだから、リムリアを抱いても何の問題もないのかもしれない。


 しかしこれは、和斗のケジメみたいなモンだ。

 いい加減な気持ちでリムリアを自分のモノにしたくない、という。

 だから今まで、必死に我慢してきた。

 しかし!

 このままでは理性が飛びそうだ。

 が、そこに。


「ヒヨも一緒に入るですぅ!」

「ワタシだって」


 ヒヨとキャスまで乱入してきた。

 当然ながら全裸で。


「いや、ちょっと待て……」


 和斗はロリコンではない。

 だからヒヨの幼児体型を目にしても何も感じないが……。


 なによりマズいのは、キャスだ。

 初めて彼女の全裸を目にしたのだが……。

 異常に発達した科学によって造られた所為だろうか。

 今まで目にした、どんな女性よりも美しいスタイルをしている。

 綺麗、セクシー、可憐、可愛い……。

 どれほど言葉を並べても、キャスの美しさを表現しきれない。


「……」


 絶句する和斗だったが、そこに。


「ワタシには性欲処理機能も搭載されています」


 キャスが突然の爆弾発言。


「最高の快感を得る事が可能だと説明書に記入されていますが、カズト様。使用されますか?」


 あまりも突然の事に。


(性欲処理機能!? 最高の快感!? これってひょっとしなくても、アノコトだよな? つまりキャスも、そういった行為が出来るってコトか? とんでもない科学力だな。いや、別に凄いコトじゃないかも。それだけの為の玩具なら、日本でも販売されてたし。いや、そうじゃなくて!)


 もう何が何だか分からない和斗だったが、そこに。


「そんなのダメに決まってるだろ!」


 リムリアが、顔を真っ赤にしながら大声を上げた。

 が、真の問題は、ここからだった。


「カズトはボクのパートナーなんだから!」


 そう口にするなり、リムリアは湯船に飛び込むと、和斗に抱き付いてきた。

 当然ながら、色々なトコロが触れてしまってる。

 直接触れるのは初めてのコトだが……夢のような感触だ。

 もしココで死んだとしても、笑って死ねそうだ。


 などと頭の中がスパーク気味の和斗だったが、問題はまだ終わらない。


「リムリアがパートナーなのとは別の問題」


 そう口にして、キャスまで抱き付いてきたのだ。

 こちらもスゴい。

 押し付けられる胸に腰に足。

 卓越した科学によって最高の快感をもたらすように造られているのだろうか?

 全ての感覚がシェイクされてるみたいだ。


「なんでキャスまでカズトに抱き付いてんだよ!」

「ワタシが、そうしたいから」

「そうじゃなくて!」


 和斗を挟んで言い合うリムリアとキャスだったが、そこで更に問題発生。


「カズト殿! 失礼いたすでござる!」


 なんとトツカまでもが、男湯に押しかけてきた。

 何故か全裸で。


 というか、胸をお尻周りの毛皮は自前の筈。

 なのに何で今、胸もお尻もむき出しになってるのだろう?

 毛皮は自分の意思で操れるのだろうか?

 謎だ。


 などと現実逃避を始める和斗の前に、トツカが進み出る。


「下の者が上の者の背中を流すのがウェポンタイガー一家のシキタリ。よってウェポンタイガー一家の忠義の証として、組長である拙者がカズト殿のお背中をお流しするでござる」


 和斗は湯船の中なので、全裸のトツカを見上げる事に。

 つまり、隠しておくべきトコが否応なしに目に入ってしまう。


「!」


 和斗は慌てて目を逸らすが。


「ささカズト殿、コチラへ」


 トツカは気にも留めていない。

 が、気にする人物が2人。


「そんなのダメに決まってるだろ!」

「ワタシがする」

「キャスもダメ!」

「いや、ウェポンタイガー一家を代表して拙者が!」

「どっちもダメだい!」

「リム横暴」

「ウェポンタイガー一家のシキタリでござる!」

「カズトはボクだけのモンだい!」

「カズト様はミンナのもの」

「なら拙者も!」


 声を上げるトツカに。


「それはダメ」

「却下」


 リムリアとキャスが、声を揃えた。


「なんでそんなトコだけ呼吸が合っているのでござる?」


 などと3人の美少女が言い合うが、そこで。


「ぶくぶくぶくぶく……」


 湯あたりしてしまったのだろう。

 真っ赤な顔をしたヒヨが湯船に沈んでしまった。


「ああ、ヒヨ!」


 和斗は急いでヒヨを救い上げると、湯船を飛び出す。


「え~~と、どうしたらイイんだ? 湯あたりだから涼しいトコに連れていったらイイのか? それとも水をかけた方がイイのか? それとも……」


 慌てて混乱する和斗だったが、直ぐに自分を取り戻す。


「あ、メディカルでイイんじゃないかな?」


 というワケでメディカルを発動させると。


「あ、ご主人様~~、ヒヨも背中を流すですぅ!」


 ヒヨは和斗を座らせ、背中を流し始めた。


(はぁ~~、ヒヨのおかげで助かったぜ……もう少しで理性を失うトコだった)


 理性崩壊の危機を逃れ、和斗がホッとする横では。


「……なにコレ?」

「ヒヨに負けた」


 リムリアとキャスがガッカリした顔をしていた。

 が、そこでいきなり。


「カズト殿! 拙者に親子盃を降ろして頂けないでござろうか!」


 トツカが切羽詰まった顔で大声を上げたのだった。






2022 オオネ サクヤⒸ

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