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   第百三十一話  やっぱり装甲車が最強






「な!?」


 目を見開く和斗に、ゴッドヘッドが楽し気な声を上げる。


「さっきの攻防で分かった。キサマの最高速は、稲妻よりも遅い、とな」


 言い終わると同時に、またしても。


 カァン!


 数ミリ=砂粒サイズの隕石が撃ち込まれた。


『稲妻は躱せない』という言葉通り。

 隕石の速度は、稲妻と同じく秒速10万キロメートルくらいだ。


「なるほど、たしかに躱すのは難しそうだ。でも対処できない、という程のスピードじゃないぞ」


 和斗は、そう口にすると。


 パキィン!


 飛来した隕石を、正拳突きで打ち砕いた。


「マローダー改の速度は秒速8万を超えてる。なら秒速10万程度の隕石を打ち砕くのは不可能じゃないぞ。いや、秒速30万メートルだって、対処不可能とは思わないけどな」


 野球を例にとろう。

 人間が全力疾走しても、時速40キロに届かない。

 そんな人間でも時速160キロの球を打つ事は出来る。


 ならば。 

 秒速8万のマローダー改で、秒速30万の隕石を撃ち落す事も出来る筈だ。

 という和斗が考える事もゴッドヘッドの想定内だったらしい。


「って事はキサマ、光速の隕石にも対処できると思ってるんだろ? ならやってみるとイイ。じゃあ行くぞ!」


 ゴッドハヘッドはニィッと笑うと光速で隕石を撃ち出した。


 いや、撃ち出したのはアークハンドだ。

 が、撃ち出された隕石の数は1。

 これくらいなら、充分に迎え討てる。


「おら!」


 和斗は見事、光速の隕石に正拳突きを叩き込んだ。

 が、その瞬間。


 ピカァ!


 普通の人間だったら失明しても不思議ではないレベルの光が放たれ。


 チュドォォン!


 火の玉が発生して、空に登っていきながら急激に膨れ上がった。

 と同時に。


 バァアアアアアアアアアン!!


 高熱の爆風が周囲を焼き払う。

 そして。


 ゴォオオオオオオオオオオ!!


 爆風によって生じた真空空間に周囲から空気が流入し。


 ドドドドドドドドド!


 キノコの形をした雲が立ち昇った。

 もちろん爆心地にいた和斗には、何が起こったか分からない。

 しかし直ぐにアパッチからの映像を確認し、何か起こったか理解した。


「キノコ雲!? って事は、まさかこれは核爆弾?」


 声を震わせる和斗に、ゴッドヘッドが嬉し気な声を上げる。


「ちょっと違うな。これは核爆発だ! ナンの為に真空状態にしたと思ってたんだ? まさか窒息させる為なんて考えてたんじゃないよなぁ!?」


 ゴッドヘッドが語った事によると、地上で物体が光速で発射された場合。

 その物体は、空気分子と衝突して核融合反応を起こして大爆発する。

 だから空気分子と激突しないように真空空間を作り出した。

 光速で隕石を撃ち出しても核爆発を起こさないように。


 そして光速で撃ち出された隕石は、ゴッドヘッドの計算通り。

 和斗の拳と激突したトコで、核爆発をおこしたらしい。


「どうだ! 躱す事はできない! 迎撃できても、迎え討てば核爆発! これでオマエは手も足も出せない状況になったな!」


 勝ち誇るゴッドヘッドに、和斗はフンと鼻を鳴らす。


「なにを喜んでるのか分からないが、オマエの光速隕石なんかじゃマローダー改はダメージなんか受けてないぞ」


 が、ゴッドヘッドは余裕の態度を崩さない。


「そうだな。さっき打ち込んだ砂粒の重さは1グラムしかなかったが、1グラムの隕石によって発生するエネルギーは広島型原爆と同じくらい。その程度じゃ、キサマはダメージなんか受けないよな。でも1キロならどうだ? いや1トンならどうなる? 1万トンならどうだ? さっきと同じサイズの隕石を光速で撃ち出す事はできないが、1億トンまでなら撃ち出せるぞ」


 そこで1度、言葉を切ってからゴッドヘッドはニチャリと笑う。


「さて、どこまで耐えられるかな、楽しみだ。それじゃあ1グラムの隕石には耐えたんだから、今度は1キロでいってみるか」


 そしてゴッドヘッドは1キロの隕石を光速で撃ち込んできた。


「なんの!」


 さっきと同じく和斗は正拳突きで1キロ隕石を撃ち砕く。

 と同時に、またしても核爆発が発生。

 質量が1000倍にアップしているので、破壊力も1000倍だ。

 が、この規模の核爆発でもマローダー改はダメージを受けない。

 いや、この程度でダメージを受ける筈などなかった。


「凄いね。じゃあ1トン、いってみよう」


 さらに1000倍の核爆発発生。

 しかし当然ながらマローダー改はノーダメージ。

 なにしろ防御力は鋼鉄700億キロメートル相当なのだから。

 だが。


「なら今度は一気にアップして100万トン、いってみよう」


 ゴッドヘッドがそう告げた直後。


(カズトぉ)


 リムリアの消え入りそうな声が頭の中で響いた。


(ボクの防御力なら次の爆発も耐えられると思う。でも防護フィールドは維持できそうもないんだ。ボクの神霊力の技術で構築した防護フィールドは多分、次の爆発で消滅しちゃう)


 その瞬間。


 ドキィン!


 和斗は本当に、心臓が飛び跳ねたと思った。


 マローダー改ならゴッドヘッドの攻撃にも耐えられる。

 その確信があったから、余裕で隕石攻撃を迎え討った。

 しかしヒヨやキャスの事までは考えなかった自分に腹が立つ。


 もしも防護フィールドが消滅した場合。

 確実にヒヨの命はないだろう。

 キャスだって無事かどうか分からない。


(俺の失策だ)


 後悔する和斗に、ゴッドヘッドが追い打ちをかける。


「キサマの防御力なら100万トンでも耐える事は分かってる。でもキサマ、神霊力を完全に使いこなせてないだろ?」

「ナニが言いたい」


 ジトリと嫌な汗を流す和斗を、ゴッドヘッドが嘲笑う。


「分からないかなぁ? キサマの神霊力の操作技術では、100万トンの核爆発に耐える事は出来ても、その場に踏みとどまる事は出来ないってコトだ。つまりキサマは吹き飛ばされて、後ろの仲間に激突するんだよ。その凄まじい質量と、とんでもない防御力でな」


 しかも防護フィールドが消滅した仲間に。


 そう付け加えてからゴッドヘッドは狂ったように笑いだす。


「ギャハハハハハハハハ! キサマじゃ仲間を守れない! 力及ばず仲間を失うんだ! ギャハハハハハハハハ!」

「俺の仲間を殺して、オマエに何の得がある! 俺との勝負じゃなかったのか!?」


 怒りに顔を歪める和斗に、ゴッドヘッドが口元を歪める。


「ちゃんとオレにも利があるんだよ」

「どんな利があるってんだよ!」


 怒鳴る和斗に、ゴッドヘッドが目を細めた。


「オレ様の誘いを蹴ったキサマに、死ぬほどの悔しさを与える事ができる。それだけで十分と思わないか?」

「とことんクズだな」


 殺気を込めた目で睨む和斗に。


「じゃあな。地獄を味わえ」


 そう吐き捨て、ゴッドヘッドは隕石を撃ち出した。

 いや、撃ち出そうとした。


 なにしろ100万トンの隕石だ。

 力を溜めてからでないと、発射できないのだろう。

 とはいえ、それは僅かな溜めでしかない。

 が、その僅かな時間で。


「装鎧解除!」


 和斗はマローダー改を脱ぎ捨てると。


「防護フィールドを解除しろ!」


 リムリア達の元に駆け寄り、合流。

 同時に。


「ポジショニング!」


 全員が乗車する形でマローダー改を転移させた。

 その瞬間。


 カコォン!


 カン高い音と共に、100万トン隕石が、マローダー改に光速で命中した。


「あぶないトコだった……」


 和斗は生まれて初めて神に感謝した。


 マローダー改がレベル130になってなかったら。

 つまり和斗がマローダー改の30パーセントの速度を得てなかったら。

 リムリアはともかく、キャスやヒヨを失っていた事だろう。


「私の心配はしてくれないのですか?」

「テレパスか、オマエは」


 和斗は不満気な声を漏らすラファエルに、そうツッコんでから。


「さてと。ふざけたマネしやがって」


 ゴッドヘッドを睨んで、怒りの声を上げた。

 が、その間にゴッドヘッドは、次の攻撃の準備を終えたらしい。


「仲間を殺して悔しがらせる計画は失敗したみたいだな。なら全員まとめて殺してやるよ! これがオレの最強の攻撃、1億トンの光速隕石だ! 星ごと消滅させてやるぜ!」

「ち! 撃ち落してやるぜ!」


 慌ててコントローラーに手を伸ばす和斗だったが、そこに。


――落ち着いてください、マスター。


 サポートシステムの落ち着いた声が響いた。


――マローダー改に乗車した以上、心配は無用です。


「でも……」


 和斗は何かを言い返そうした、その時。


 ガン!


 呆気ない音が響いた。


「え~~と、今のは1億トン隕石が光速で命中した音なのかな?」


 リムリアの自信なさそうな声に、サポートシステムの冷静な声が響く。


――はい。

  最初からマローダー改は、完璧に神霊力を使いこなせています。

  だから今の攻撃も、完全に防御しました。

  余裕で。


 そういえば、マローダー改は最初から神霊力を纏っていた。

 だからマローダー改の常識外れのステータスでも自然を破壊せずに済んだ。


「つまり神霊力を完璧に使いこなしたかったら、装鎧じゃなくてマローダー改に乗車したら良かった、ってコト?」


 リムリアの呟きにサポートシステムが当然とばかりに答える。


――マスターが神霊力の扱い方を習得する事は必要な事でした。

  その意味では、装鎧状態で敵と戦う事は武だではありません。

  しかし敵との戦いでは、マスターが神霊力を使いこなす事に執着する必要は無い筈です。

  マローダー改に乗車して戦う事も、考えから外すべきではありません。


「はい、その通りですね」


 まさか最初からマローダー改に乗って戦ってたら苦戦などしなかったとは。

 また失敗したのか……。


 その後悔に項垂れる和斗に、サポートシステムが告げる。


――反省は次に生かすとして、マスター。

  戦闘はまだ終わってません。


 サポートシステムに言われて、改めて気付く。


 マローダー改の装甲に、何度も1億トン隕石が激突している事に。


「隕石による攻撃が効かない、と分かった時点で『逃げる』という選択肢を選ばないかな、普通?」


 あきれた声を上げるリムリアに、ラファエルが冷めた笑みを浮かべる。


「勝てると思い込んでたのに効果が無かった時点でパニックを起こしてるんでしょうね。前も言った通り、力に溺れた小心者ですから」


 そしてラファエルは、和斗に真剣な顔を向けた。


「しかしマローダー改の戦闘力には驚きました。これほど圧倒的だとは思いもしませんでしたから。

 ……ではカズトさん。あの愚かな小心者に、思い知らせてやってください」

「そうだな。卑怯なクズには思い知らせてやらないな」


 和斗はそう呟くと、改めてコントローラーを手に取り。


「まずは4000万倍強化バルカン砲を試してみるか」


 レッサーセットに狙いを定めて発射した。

 そのバルカン砲は。


 ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 レッサーセットを簡単にミンチに変え。


 ブォオオオオオオオオオオオオ!


 ついでに薙ぎ払ったアークセットも易々と撃ち落す。

 が、ロードセットへと弾幕を向けたところ。


 バババババババババババババババババ。

 

 15キロメートル級隕石によって防がれてしまった。


「ち、またゴッドハンドか」


 和斗は舌打ちするが、その時は既にアパッチに命令を下した後だった。

 4000万倍に強化したヘルファイアの発射を。


 そしてヘルファイアを、頭上から撃ち込まれ。 


 ボッカァァァァァァァン!! 


 ロードセットは跡形もなく吹き飛んだ。

 そのヘルファイアはカイザーセットとゴッドセットにも命中したのだが。


「おのれェ、この程度では倒れぬぞ!」


 カイザーセットは仕留めたが、ゴッドセットが生き残ってしまった。

 そのゴッドセットが。


「このままでは死なぬ! せめて……!!」


 血塗れになりながらも、凄い速さで突撃してきた。

 和斗は、そんなゴッドセットの突撃を眺めながら。


「う~~ん、4000万倍強化戦車砲でもイイかもしれないけど、ココは最強兵器で迎え撃つか」


 そう呟くと。


「じゃあな、カス野郎」


 ゴッドセットをレーザー砲で薙ぎ払った。


 1兆℃レーザーでさえ、一瞬で太陽系を消滅させる。

 ましてや今のレーザー砲の焦点温度は5000兆℃。

 その想像を絶する破壊力は。


「!!」


 声を上げる時間すら与える事なく、ゴッドセットを瞬殺したのだった。







Ⓒオオネ サクヤ 2022

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