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第十一話  オートサポートシステムが作動するようになりました


    



 何度もマローダー改をぶつけて動きを鈍らせてからチェーンガンで頭を攻撃して倒す。

 この戦法で順調にレベル16になった。

 そして八つ首ヒドラまでは苦戦しながらも倒せたのだが……。

 和斗とリムリアは、現実は想像より遥かに厳しいコトを、嫌と言うほど思い知らさることになる。

 

 ガガガガガガガガガガガガ!

 

 チェーンガンが毎分650発もの形成炸裂弾を発射した。

 が、その全ては九つ首ヒドラの鱗に跳ね返されてしまう。

 とんでもない防御力だ。


「何て防御力してんだよ! この!」


 更にチェーンガンを撃ちまくろうとするリムリアを、和斗は慌てて止める。


「リム、撃つのを止めろ! 弾の無駄だ!」

「じゃあどうするの! あ、突っ込んで来たよ!」

「うお!」


 リムリアが叫んだ直後、マローダー改が大きく揺れた。

 九つ首ヒドラが体当たりを仕掛けてきたのだろう。


 全長60メートル、太さ3メートルもの巨体の激突だったが、マローダー改は何とか耐えてくれたようだ。

 ちなみにレベル16になったマローダー改の装甲は鋼鉄7メートル級になっている。

 どんな要塞よりも堅牢な防御力を持っているワケだ。

 しかし。


 マローダー改の搭載武器は、Ⅿ2重機関銃とチェーンガンしかない。

 つまり攻撃力は、50ミリの装甲を撃ち抜くのが精一杯。

 防御力の高さに比べて攻撃力が余りに低い。


「こうなったら我慢比べだ!」


 今のマローダー改の最高時速は360キロ。

 そして加速力はオリジナルの4・6倍に、車重は200tにアップしている。

 そのパワーとスピードで何度もぶつけたら、幾ら九つ首ヒドラでも耐えられない筈だ。


 そう考えた和斗は、フル加速でマローダー改を、九つ首ヒドラにぶつける。


 ドシィン!

 

 1回、2回、3回、4回、5回……。


 マローダー改をぶつける度に、九つ頸ヒドラが唸り声を上げる。

 どうやら、ダメージは与えているみたいだ。

 

 が、致命傷には程遠い。

 そしてぶつける度に、九つ首ヒドラは口から焔を吐いて反撃してきた。 


「ふう、耐熱温度50000度をゲットしておいて良かったぜ」


 九つ首ヒドラが吐き出した焔に直撃された岩が、ドロッドロに溶けるのを目にして、和斗は胸をなで下ろす。

 属性防御をアップさせてなかったら、一発で終わるところだった。

 

 しかし耐熱温度五0000度でも完璧ではないらしい。

 マローダー改のアチコチが、少しずつだが溶けている。


「ち! マジで我慢比べになってきやがった」


 和斗はマローダー改をフル加速で九つ首ヒドラにぶつけ続けた。

 そして。

 

 ドシィン!


 ごきん。


「グガァアアアア!」


 30回以上もぶつけたところで骨が砕ける音が響き、そして骨が砕けた場所から下の部分が動かなくなった。

 どうやら背骨を砕けば、それより下の部分は動かなくなるようだ。


「よし、動きが鈍った! 次はもっと頭に近い所にぶつけてやる!」


 和斗は枝分かれした首の根本あたりに目標を変える。

 そして体当たりを34回繰り返したところで、また骨の砕ける音が響いた。


「ふう。これでもう動けなくなったな。後は身動きできなくなった九つの首に止めを刺すだけだ。リム、頼む」

「任して!」


 リムリアがヒドラの眉間を狙ってチェーンガンを発射した。

 しかし。

 

 ギキキキキィン!


 全ての弾丸は跳ね返されてしまった。


「ち! 眉間も硬いのか。でも今なら、個人装備で攻撃できるな」

「どうするの?」

「カールグスタフで攻撃する」


 和斗は狙撃スペースに駆け込むと、モニターを操作する。


 カールグスタフⅯ3無反動砲

  口径            84ミリ

  全長          1130ミリ

  重量           8・5ミリ

  有効射程         700メートル(HEAT751対戦車榴弾)

              1000メートル(HE441榴弾)

  装甲貫通力        500ミリ

  砲弾一0発付。オプションで441榴弾、フレシェット弾も購入可能。


 オプションポイント1000を消費して購入しますか? イエス/ノー



「もちろんイエス、と」


 和斗はイエスをクリックし、そして空中に出現したカールグスタフの砲弾を棚に並べてからカールグスタフに手を伸ばす。

 そして対戦車榴弾を装填すると、肩に担いでから狙撃スペースを上昇させる。


 ちなみに狙撃スペースには、1ヶ所だけ直径10センチ程の穴が開いている。

 このカールグスタフの為だろう。


「さてと。装甲貫通力500ミリの対戦車榴弾を食らっても平気かどうか、試してやるぜ!」


 和斗は首の1つにカールグスタフの照準を合わせると、引き金を引いた。


 バシュ!


 発射された対戦車榴弾は、狙い通り九つ首ヒドラの頭に命中し。


 ズッガァン!


 見事に頭を撃ち砕いた。


 さすが装甲貫通力500ミリ。

 装甲貫通力50ミリのチェーンガンとは、まさに桁違いの威力だ。


「やったぜ、ザマーミロ!」


 和斗は歓声を上げると、カールグスタフを構え直す。


「よし、この調子で残った頭も破壊してやるぜ」


 そんな和斗に反撃しようと、1つの首が焔を吐く為に口を開ける。


 ヤバい!


 九つ首ヒドラの、想像以上に素早い反撃に、和斗は顔をひきつらせるが。


「させないよ!」


 ガガガガガガガ!


 焔を吐こうと大きく開けた九つ首ヒドラの口に、リムリアがチェーンガンを撃ち込んだ。


「ギャバ!」


 口を撃ち抜かれたヒドラの首が、悲鳴とともに力を失って地面に崩れ落ちた。


 いくら九つ首ヒドラゾンビといえども、さすがに口の中まで防御力が高い訳ではなかったらしい。


「ナイスだ、リム!」

「援護はボクに任せて!」


 和斗はカールグスタフをぶっ放し、反撃しようと口を開けた首にはリムリアがチェーンガンを撃ち込む。

 これを繰り返すコトにより、和斗とリムリアは九つ首ヒドラを倒す事に成功したのだった。


「ふう、ヤバかったな」


 九つ首ヒドラを倒し、和斗はレストアでマローダー改を修理した。

 そしてリロードでチェーンガンの弾薬を補充した直後。


――ゾンビ九つ首ヒドラ1匹を倒しました。

  経験値       75000

  スキルポイント   75000

  オプションポイント 75000

  を獲得しました。

  累計経験値が    40000を超えました。


  とモニターに戦果が表示され。


 パラパパッパッパパ――!


 いつ聞いてもワクワクする、レベルアップのファンファーレが鳴り響いた。


――装甲車レベルが17になりました。

  最高速度が390キロになりましました。

  加速力が10%、衝撃緩和力が25%アップしました。

  登坂性能が82度、車重が230トンになりましました。

  装甲レベルが鋼鉄8・5メートル級になりました。

  ⅯPが230になりました。

  スキル 武器強化を習得しました。

  オートサポートシステムが追加されました。


「ん? 今、いつもと違うナレーションが入ったような?」


 そう和斗が呟くと。


《はい、オートサポートシステムが作動するようになりました》


 機械的な声が響いた。


「オートサポートシステム? ってどんな働きをするんだ?」

《マスターにアドバイスしたり、非常事態には最適と思われる策を提案します》

「じゃあ、この武器強化ってのは?」


《装甲車レベルが17になった事により、スキルポイントを消費して武器を強化できるようになったのです。現在のマローダー改は攻撃力に乏しいので、武器の強化を推奨します》


 そこまで聞いてから、和斗は確認してみる。


「……ところで今喋ってるキミが、オートサポートシステムなのかな?」

《その通りです》

「そりゃ助かる」


 そう呟いた和斗を、リムリアがツンツンとつつく。


「ねえカズト。この声って、ひょっとして?」

「ん? ああ、どうやらカーナビと会話できるようになったみたいなんだ」

「ホント!? それって凄く便利だよね」

「ああ、いろいろ助けてくれるみたいだ」

「それってボクも助けてくれるの!?」


 目を輝かすリムリアに、サポートシステムが答える。


《私がサポートするのはオーナーだけです》

「え~~? つまんない」


 リムリアが唇を尖らせた。

 こんな表情も実に可愛らしいが、とにかく今は、新しい能力について聞いておくことにする。


「なあサポートシステム。武器強化ってどうやったらいいのかな?」

《武器は現在のところ第7段階、つまり30倍まで強化が可能です》

「30倍も!? そりゃスゲェ!」


 飛び上がって喜ぶ和斗にサポートシステムが機械的に告げる。


《ただしスキルポイントが必要となりますが》

「まあ、そうだろな。で、どのくらい必要なんだ?」

《30倍に強化するのに必要なスキルポイントを表示しましょうか?》

「ああ、頼む」



  ハンドガン(現在ベレッタ、Ⅿ500所有)     5900

  ライフル (現在Ⅿ16、バレットⅯ82所有)  11800

  カールグスタフ                 11800

  Ⅿ2重機関銃                  11800

  チェーンガン                  29500


「へえ? Ⅿ2重機関銃とⅯ16と消費スキルポイントは同じなんだ」

《個人装備武器であるバレットと同じ弾丸を使用しているので、サービスです》

「サービスなんてあるのか!? ま、まあ得だからイイか。じゃあ……チェーンガンとⅯ2重機関銃を30倍に強化してくれ」

《スキルポイント42300を消費しますが、宜しいですか?》

「ここで42300を消費してしまったら、スキルポイントは1624しか残らないな。でも九つ首ヒドラにここまで苦戦した以上、カールグスタフ並みの攻撃力は必要だよなぁ」


 そう呟く和斗に、カーナビが提案してくる。


《破壊力重視なら、ヘルファイア対戦車ミサイルを購入しても良いでしょう。カールグスタフが600ミリの装甲を撃ち抜くのに対して、ヘルファイア対戦車ミサイルは1350ミリの装甲を撃ち抜きますので》

「ミサイルの威力って、凄いんだな」


 感心する和斗にサポートシステムが付け足す。


《ただしヘルファイアが発射できるのは4基のみです。再び使用するにはⅯP5を消費してリロードを発動させる必要があります》


 なるほど。

 1メートル35センチもの装甲を撃ち抜くほど強力なヘルファイアの購入ポイントがチェーンガンの半分しかないのは、4発撃つ度にⅯPを5、消費する事になるからなのだろう。

 ちなみに強化に必要なスキルポイントは、チェーンガンと同じらしい。


《戦車砲塔を購入するのも一つの手です。戦車砲塔に搭載されている120ミリ滑空砲の装甲貫通力は600ミリですが、装弾数は300発ですので》


 なるほど。

 300発も撃てるから戦車砲塔の購入ポイントは20000も必要なのか。

 しかしどうするのがベストだろう?

 

Ⅿ2重機関銃やチェーンガンを強化するべきか。

 ヘルファイア4基を購入すべきか。

 あるいは戦車砲塔を購入すべきか。

 一発の威力を考えるならヘルファイアや戦車砲だ。

 しかしⅯ2重機関銃やチェーンガンの連射力も捨てがたい。


 いろいろ考えた結果、和斗はチェーンガンとⅯ2重機関銃を限界まで強化する事に決めた。

 今はチェーンガンとⅯ2重機関銃を強化しておき、そして先に進まず経験値を稼ぐ。

 そうやってレベルアップを重ねながら、他の武器を強化したり新しい武器を購入するのに必要なスキルポイントを貯めるのだ。


「いいの? それだとスキルポイント、1624しか残らないよ?」


 心配そうな顔をするリムリアに、和斗は笑ってみせる。


「いいのさ。これなら九つ首ヒドラでも苦労せずに倒せる。そうしたら1匹倒す度に7500もスキルポイントが稼げる。あっという間に元が取れるさ」


 その和斗の言葉通り。


 ドドドドドドドド!


 30倍に強化されたⅯ2重機関銃は、あれほど手こずった九つ首ヒドラの体を易々と貫いて動けなくし。


 ガガガガガガガガガ!


 30倍に強化したチェーンガンは九つ首ヒドラの頭を簡単に消失させたのだった。






2020 オオネ サクヤⒸ

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― 新着の感想 ―
九つ首ヒドラの経験値に対してリアクションなし!?7万5千だぞ!?って思ってたらその後7500って言ってたわ、なんだ誤字か。
[一言] 11話まで読みましたが所々に出てくる『ギム(レット)』って誰ですか?
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