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   第百七話   ようこそ地獄へ

 ここから第5章になります。


132話まで毎日投稿する予定です。




 チャレンジ・シティー総出の酒盛りが終わった翌日。


「そういやクーロンの所為で遅れてしまったってたけど、神霊力の使い方を教えてもらいにいこうと思うんだ」


 和斗はリムリアに提案した。


「サポートシステムも『きっと役に立つ』みたいなコト言ってたし、これからブラックタワーの最上階に行ってみないか?」

「そうだね。善は急げっていうし、さっそく今から行ってみようか」


 そう答えたリムリアの後ろで。


「ヒヨも行くですぅ!」

「ワタシも同行する」


 即座にヒヨとキャスが声を上げた。


「え~~と、ヒヨも神霊力の修行をしたいの?」


 そう尋ねるリムリアに、ヒヨがコクンと頷く。


「ご主人様がやるんならヒヨもするですぅ!」


 パァッと笑顔を咲かせるヒヨに、リムリアが和斗に耳打ちする。


「ねえカズト。何しに行くのか分かってると思う?」

「……多分、分かってないだろな」


 溜め息交じりに答える和斗だったが。


「行くですぅ!」


 自分が置いて行かれるなんて考えてもいないヒヨの笑顔に負け。


「じゃあ一緒に行くか」


 つい、そう言ってしまった。

 もちろんヒヨは。


「ハイですぅ!」


 満面の笑顔でそう答えるが、キャスがそのヒヨを肩車すると。


「準備できました」


 こちらも一緒に行くのが当然という顔を、和斗に向けた。

 こんなキャスとヒヨに、やっぱり残ってくれ、なんて言えるワケがない。

 なので和斗とリムリアは。

 ヒヨを肩車したキャスと共に、ブラックタワーの最上階へと向かったのだった。





 1度到達した階層なら、魔法陣で行ける。

 そのシステムによって、直接ブラックタワーの最上階に行くと。


「ケーコ! 神霊力の修行に来たよ!」


 リムリアは、元気な声を張り上げた。

 そんなリムリアを、ケーコが笑顔で出向かえる。


「よく来たわね、もちろん大歓迎よ。この修行は特にアナタ達にとって重要な意味を持つのですから」

「あれ? この前は、無理に修行する必要はない、みたいな感じだったような気がしたけど?」


 首を傾げるリムリアに、ケーコが微笑む。


「神霊力の修行だけに限ればそうなのですけど、ついでだから色々な事を伝えておきたいと思って」

「え? それってどういう……」


 リムリアが質問するより早く、周囲の光景がグニャリと歪む。


「ではしっかりね」


 というケーコの言葉が消えるなり。


「どこ、ここ?」


 リムリアと和斗、ヒヨにキャスは、見知らぬ場所に立っていたのだった。





「ふえぇぇぇ。紫色の空ですぅ!」

「わぁ、空に島が浮かんでるですぅ!」

「ご主人様、ここ凄いですぅ!」


 などと大騒ぎしているヒヨを肩車しながら、キャスが分析を開始する。


「異相空間に転送された模様。この星以外、いかなる天体も確認できません。霊的閉鎖空間の可能性99・996%。生命体と思われる高エネルギー反応多数。敵意を持つ存在は、現在のところ皆無」


 敵意?

 そんなコトまで分かるんだろうか?


 と、和斗が感心していると。


「やあ、こんにちは」


 快活な声と共に、1人の青年が現れた。

 その気さくな雰囲気のせいだろうか。

 リムリアが遠慮のない声を上げる。


「……ダレ?」


 なかなか失礼なリムリアの言葉を気にもせず、青年が続ける。


「あ、私、ラファエルといいます。ルシ……ケーコ様から連絡を受けたのですけれど、アナタ達ですよね? 神霊力の修行を希望する方というのは」

「うん」


 コクリと頷くリムリアにラファエルが、芝居がかった声をあげる。


「では、あらためて。ようこそインフェルノへ」

「インフェルノ?」


 首を傾げるリムリアに、ラファエルが微笑む。


「そうインフェルノです。あ、アナタ達には、こっちの言い方の方が分かり易いでしょうか。ようこそ地獄に」

「あ、なぁんだ、地獄か……ええええええええ!? 地獄ぅぅぅ!!?」


 絶叫するリムリアに、ラファエルがにこやかに付け加える。


「あ、最初に行っておきますけど、インフェルノは死んだ罪人に罰を与える八大地獄じゃありませんよ。よく誤解されるのですけど。ついでに言えば、悪魔の住処である地獄はヘルです」

「え? インフェルノって罪人を罰する場所じゃないの?」


 リムリアは昔読んだ書物を思いだす。

 その書物によると。



 第1圏 辺獄


 第2圏 罪人は、荒れ狂う暴風に拭き流される罰を受ける。


 第3圏 罪人は、ケルベロスに食い殺される罰を受ける。


 第4圏 金貨の詰まった重い袋を転がす罰を受ける。


 第5圏 赤い沼で亡者が互いに責めあう。


 第6圏 火炎の墓穴に葬られる。


 第7圏 第1の輪 煮えたぎる川に漬けられる。

    第2の輪 樹木と化した者にハーピーが襲いかかる。

    第3の輪 火の雨が降りかかる。


 第8圏 第1の壺 角ある悪魔に鞭打たれる。

    第2の壺 糞尿の海に沈められる。

    第3の壺 岩穴に詰められ焔に包まれる。

    第4の壺 首を反対側まで捻じ曲げられる。

    第5の壺 煮えたぎる液の中で悪魔に爪で抉られる。

    第6の壺 重い外套を着て歩く。

    第7の壺 蛇にかまれて燃え上がる、が繰り返される。

    第8の壺 火炎に包まれる。

    第9の壺 体を裂かれ内臓を引きずり出される。

    第10  疫病に苦しむ。

 

 そして第9コキュートスでは、裏切り者が凍漬けになっている。


 第1の円はカイーナ。

    第2の円はアンテノーラ。

    第3の円はトロメーア。

    第4の円、ジュデッカの更に中心にはルシファーが氷漬けになっている。


 というような場所だった筈。

 それをリムリアがラファエルに告げると。


「それはインフェルノのほんの1部だけしか見ていない人間の誤解です。インフェルノというは、訓練場所なのです。神霊力の」

「ええ!? そ、そうなの?」

「というより、コキュートスで行われている林業作業に必要とされる、神霊力の使い方を訓練する場所がインフェルノなのですよ」

「はぁ!? 林業作業!!?」


 もう何が何だか分からないリムリアだった。








2021 オオネ サクヤⒸ

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