表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/211

   第百五話  ああ、ホンットにもったいない




 ドシュシュシュシュシュシュシュシュ!

 シュパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!


 2回目のヘルファイアとハイドラ発射で。


 ドォッカァアアアアアアン!!!!!

 ズッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!


 軽装甲戦闘車両と7tトラック、合わせて1万台を吹き飛ばし。


 ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!


 チェーンガンで、さらに2万台を破壊してから。


「リロード」


 和斗は再びアパッチの弾薬を補充した。


 クーロン軍の軽装甲戦闘車両と7tトラックの数は、合計で8万台。

 今3万台を破壊したから、残るは5万台。

 後2回リロードすれば全滅させる事が出来るだろう。

 と考えた和斗の頭上を。

 

 ドシュゥゥゥ――。


 MLRSが発射した227mmロケット弾が飛び越えた。

 と思ったら。


 ギュォオオオオオン!

 ドカァン!


 チャレンジ・シティーに到達する前に、F15がミサイルを破壊した。

 と、そこで和斗はミサイル攻撃の事を思い出す。


「そういやミサイルで攻撃されているのを忘れてた。よし、先にそっちから片付けるか」


 和斗は、そう呟くと同時に。


 ドシュシュシュシュシュシュシュシュ!

 シュパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!


 アパッチを操り、MLRSにヘルファイアとハイドラを撃ち込んだ。

 10式戦車でも耐えられなかった、この攻撃は。


 ドォッカァアアアアアアン!!!!!

 ズッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!


 一瞬で、全てのMLRSを一瞬でスクラップに変えた。


「よし、これでF15を戦闘に投入できるな」


 そう呟いてから、和斗は改めて大和に目を向ける。

 もちろん煙幕で、直接見る事は出来ない。

 だから和斗の目に映っているのは、アパッチのものだ。


 大和に1番近いアパッチの位置は、400メートルほど。

 つまり僅か400メートルの距離から、263メートルの大和を眺めたワケだ。

 これほどの近距離から眺めると、改めて大和の大きさが実感できる。

 何度見ても、感動してしまう。


「これが世界最大・最強の戦艦、大和か。大きいってコトは、それだけで人を感動させるモンかもしれないな」


 などと和斗が呟く間にも。


 ガコォン!


 またもや46センチ砲が、マローダー改に命中した。

 が、その砲撃にすら目を奪われてしまう。

 戦いの為だけに作られた筈なのに、その姿は美しい。


 そういえば。

 父親が作った戦艦大和の模型が、居間に飾ってあった。

 200分の1スケールなのに、1メートルを超える模型だ。

 実に精密な模型で、博物館に飾られても不思議ではないレベルだったと思う。

 初めて見た時、和斗は大和の精密モデルから目を離せなかった。

 大和に心を奪われたと言っても良いだろう。

 だから和斗にとって、大和は特別なモノだった。


「しかしこの目で本物の大和を見られるとは想像もしなかったな。このままズット見ていたいケド、そうは言ってられないか」


 10式戦車、16式機動戦闘車両、MLRSは全滅させた。

 残るのは、軽装甲戦闘車両と7tトラックのみ。

 その戦闘力は、アパッチにとって脅威でも何でもない。

 

 しかし油断は禁物。

 なにしろ敵はクーロン軍だ。

 どんな汚い手を使ってくるか分からない。


「さっさと軽装甲戦闘車両と7tトラックを全滅させるか」


 という事で、和斗はアパッチを操作する事にした。




 今のアパッチは、1キロの装甲を持つ要塞のようなもの。

 しかも、その破壊力は。

 800発のヘルファイア対戦車ミサイル。

 3800発のハイドラロケット弾。

 100丁のチェーンガン。

 を搭載しているのに等しい。

 和斗は、その空飛ぶ要塞10機を同時に操ると。


 ドシュシュシュシュシュシュシュシュ!


 8発のヘルファイアを、1番効果的な場所に撃ち込んだ。

 10のゲームを同時進行するようなものだが、もう慣れてきたらしい。


 ドォッカァアアアアアアン!!!!!


 今回のヘルファイア発射で破壊した車両は、約12000台だった。


 シュパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!


 ハイドラ38発も、より効果的に数を減らしていく。

 もちろんチェーンガンも、より効率的に撃ち込むコトができた。

 そして和斗は。


「リロード」


 もう1度、弾薬を補給すると。


 ドシュシュシュシュシュシュシュシュ!

 シュパパパパパパパパパパパパパパパパパパパ!

 ズガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!


 ヘルファイアとハイドラ、チェーンガンを発射した。

 そしてクーロン軍はスクラップへと、その姿を変えたのだった。


「100倍強化された武器の爆発に巻き込まれたんだ。生き残った兵は、いないだろうな」


 戦車に装甲車にミサイル戦車。

 そしてアサルトライフルに重機関銃にロケット弾。

 使用した武器は凄まじい破壊力をもたらすものだったが、兵士は普通に人間。

 100倍強化された武器に攻撃されて生き残る事は不可能だろう。


 事実。

 アパッチ視点から見回しても、動くモノは皆無だった。

 そして和斗は、鉄クズの山と化したクーロン軍から大和へと視線を移した。


「さてと。残るのは、大和だけになったな」


 そう呟く和斗に、アパッチの視点を共有するリムリアが囁く。


「なんてゆうか、惚れ惚れするような姿だね。見てて感動する。出来るなら、このまま保存しておきたいな。きっと観光の目玉になるよ」


 和斗も同感だった。

 大和を目にした者の殆どは、その雄姿に感動するだろう。

 きっと多くの人々が、大和を見る為にジャーマニアを訪れるに違いない。

 もちろん和斗も、このまま大和を後世に残せたら、と心の底から思う。

 しかしこの世界に、これほどの破壊兵器を残しておくワケにはいかないのだ。

 だから。


「……ああ、ホンットにもったいない……」


 和斗は残念そうな声を漏らすと、アパッチで大和を取り囲んだ。

 そしてアパッチ10機による全方位からの大和の雄姿を、目と心に刻み込むと。


「さよなら、大和」


 10機のアパッチから、一斉にチェーンガンを発射した。





 クーロンがどうやって、大和が出現させたのか分からない。

 もちろん戦車や装甲車などの兵器の事も。

 しかし、ここで全てを叩き潰しておかねばならない。

 とはいえ、憧れの大和を破壊した後味の悪さを忘れる事はないだろう。


「ごめんな大和」


 和斗は、そう呟くが。


 ドッカァァァァン!!


 10のチェーンガンの連射による爆発に包まれた大和から砲撃が。


「なんだ?」


 100倍強化チェーンガンは、厚さ5メートルの装甲を撃ち抜く。

 たとえ大和の装甲でも、易々と撃ち抜く筈。

 なのになぜ反撃できるのだろう?

 と、アパッチの攻撃を止めると、そこには傷一つない大和の姿があった。






 一方、大和の第一艦橋では。


「くくくくく、驚いたか? 符術により、大和の防御力は30倍に強化されているんだよ! まあ1万人ほど生け贄が必要だったがな」


 福田が、ほくそ笑んでいた。


「そして符術によって、攻撃力も30倍に強化できるのだ!」


 そう口にした福田の目には、狂気が浮かんでいた。

 それもその筈。

 武器を30倍に強化する手段。

 それは武器を使用する度に人間を生け贄に捧げるのだから。


 大和には、乗務員の為の船室がある。

 そこに詰め込めるだけの人間を積み込み、その命を武器強化に使う。

 それが武器を30倍に強化できるカラクリだ。


「搭載できる人間にも限りがあるから、武器を強化できるのは1時間が限界だから今まで温存してたが、今こそ大和の本当の力を見せてやるぜ!」


 そして福田はマローダー改に血走った目を向けると。


「主砲、発射!」


 命令を下した。

 その直後。


「ぐはぁッ!」


 船室に詰め込まれた人間の1人が血を吐いて絶命し。


 ドッカァァァァン!!


 30倍に強化された46センチ砲が轟音を上げた。


「どうだ! 史上最強の戦艦の手法を30倍に強化したんだ! さすがに耐えられないだろ!」


 と、勝利を疑わない福田だったが、その砲弾は。


 ガキィン!


 マローダー改の装甲によって、アッサリと簡単に弾き返されてしまった。


「ば、馬鹿な! 世界最強の戦艦の主砲を30倍に強化したんだぞ! 何で平気なんだよ、おかしいだろ! ありえないだろ! ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう!」


 床をガンガン蹴りつける福田に、トウコツが焦った声を上げる。


「おい、どうするんだ!?」

「ふう、ふう……なら、一か八か一斉攻撃だ! 全兵装、攻撃を開始!」


 福田がヤケクソ気味の叫びと共に。


 ドッカァァァァン!!

 ドカァァァン!

 ドカン! ドカン! ドカン!

 ドガドガドガドガドガドガドガドガ!


 46センチ3連装主砲塔。

 15・5センチ3連副砲塔。

 12・7センチ連装高角砲。

 25ミリ3連装機銃が一斉に火を吐く。

 それと同時に。


『ぎゃぁああああああああああああ!』


 3000人を超える命が失われた。


 しかしマローダー改の防御力は鋼鉄220万km相当。

 この程度の攻撃など紙ふぶきと変わらない。

 3000人もの人間が、無駄な死を迎えたのだった。


 が、そんな事など、福田は気にも留めない。

 その頭の中は、切り札が通用しない事への苛立ちだけだった。


「くっそぉ! 切り札の大和が、こんな……」


 福田が、ギリッと歯を噛み鳴らした、その頃。






「リム、アパッチの操作を頼めるか?」

「へ? う、うん、イイけど」


 和斗はリムリアにアパッチの操作を譲っていた。


「ボクがアパッチの操作をするのはイイけど、ヘルファイアを撃ち込んだらイイのかな?」


 大和はチェーンガンに耐えた。

 なら今度はアパッチの武器で最強の威力を持つヘルファイアを使用したらいい。

 そう考えるのは当然の事。

 だが、和斗は首を横に振る。


「いや、どうやったのか分からないけど、間違いなくあの大和は、防御力が強化されている。だからヘルファイアでも破壊できるかもしれないけど、破壊出来ないかもしれない。そこでここは、第13段階まで強化したF15の破壊力を確かめてみようと思うんだ」


 リムリアは和斗の言葉に考え込んでからコクリと頷く。


「う~~ん、そう言われてみたら、そうかも? クーロン軍との戦闘でアパッチの戦闘力はだいたい把握できたコトだし、ここはF15の力を確認しておいた方がイイかもね」

「よし。じゃあF15を操作するぞ」


 和斗はリムリアに頷き返すと、5機のF15を操作した。

 と同時に、和斗の視界に5つの映像が現れる。

 上空を旋回している、F15のコックピットからの映像だ。

 その5つの映像に、和斗はボソリと呟く。


「……分かってたつもりだけど、やっぱりとんでもないスピードだな」


 第13段階に強化したF15の最高速度は時速13万km。

 これはマッハでいうと、106超。

 大和の46センチ砲の、50倍の速度だ。

 普通の人間が操れる速度ではない。


 しかし和斗自身のステータスもアップしている。

 加えてドローンを操る事も出来る……らしい。

 と、ちょっと気弱な和斗だったが。


「う~~ん、何とかなるかも?」


 1分ほどで、F15の超絶スピードにも慣れてきた。


「よし! これならコントロール出来る」


 和斗は自信に満ちた声を上げると。


「さて、やるか」


 F15の機首を大和に向けた。

 隊形は、縦に5機。

 そして僅かな時間差で、大和に到達するように調整すると。


「いっけぇ!」


 和斗は1機目を第一艦橋に叩き付けた。


 ボ!


 これにより第一艦橋と煙突の半分が消滅。

 その直後。


 ボッ!


 2機目が第二艦橋に激突。

 残った艦橋と煙突の全てが吹き飛ばす。

 そこに。


 ギュポ!


 3機目が甲板を薙ぎ払う。

 この1撃により主砲、副砲を含めた全ての兵装が砕け散り。


 ドパッ!


 大和の艦首から艦尾までを、4機目が貫通した。

 この時点で世界最強の戦艦は鉄クズの塊だ。

 そして残った喫水線から下の部分が沈む前に。


 ズパァン!


 5機目が、その残った部分を撃ち抜いた。

 そこに。


 ドォォォォォン!!!


 マッハ106が生み出す衝撃波が直撃。

 ここに大和は、跡形もなく消滅したのだった。





2021 オオネ サクヤⒸ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ