第百話 チャレンジ・シティー視点
チャレンジ・シティーの防衛は、警備隊が担当する。
隊長はロンメイル。
その右手には7つの紫の星が浮かんでいる。
つまりセブンパープル=7万人相当の戦闘力を持つメイルファイターだ。
チャレンジ・シティーは城壁に囲まれている。
その城壁の上は広い通路となっており、見張りが巡回している。
その見張り兵の。
「クーロン軍の襲撃だ!」
その言葉に、ロンメイルは飛び起きた。
「ち! またクーロンのクソどもか!」
ロンメイルはそう吐き捨てながら城壁へと駆け上がる。
「愚か者め! まだチャレンジ・シティーを攻めても無駄だと分からないのか。なら何度でも思い知らせてやろう。ドラクル最強都市と呼ばれるチャレンジ・シティーの戦闘力を」
忌々し気に吐き捨てるロンメイルだったが。
「な!?」
チャレンジ・シティーを取り囲む鉄の箱の群れを目にして息を呑んだ。
とんでもない数だ。
10万近いのではないだろうか。
いや、それ以上かも。
その鉄の箱が津波のように、チャレンジ・シティーへと向かってきている。
クーロンの旗が翻っているから、クーロン軍である事は間違いない。
しかし、これ程の大軍に、どうして今まで気が付かなかったのだろう。
不思議でしょうがないが、今はそれどころではない。
「警備兵! 戦闘準備!」
ロンメイルの一声に、警備兵1万人が即座に行動を起こす。
日頃からの訓練通り、90秒でファイターメイルを身に着け整列した。
警備隊の隊員は、全員がリトルブルー以上。
つまり数こそ1万人だが、その戦闘力は1000万人にも引けを取らない。
今攻めてきているクーロン軍にも十分対応できる戦闘力を持っている。
しかし、鉄の箱は要注意だとロンメイルのカンが告げていた。
和斗というSSS超級冒険者の乗り物=マローダー改に似ているからだ。
なにしろロンメイルは警備隊。
チャレンジ・シティーを訪れた、強い冒険者くらいチェックしている。
当然ながら和斗のマローダー改の戦闘力もチェック済みだ。
もちろんクーロン軍が、マローダー改ほどの戦闘力を持っているとは考えにくい。
なにしろ和斗は、世界に2人しかいないSSS超級なのだから。
だが、どれほどの戦闘力をクーロンが有しているかも、同様に分からない。
迂闊な判断を下せば、大きな被害を出してしまう恐れがある。
だからロンメイルは油断する事なく、ギルド本部に応援を要請。
5万の兵を呼び寄せた。
冒険者と軍隊の混成軍だ。
そしてロンメイルは。
「バイエル!」
冒険者の代表であるバイエルを呼び寄せた。
大柄のメイルファイターで、身長は2メートルを遥かに超える。
警備隊所属の冒険者の中でも飛び抜けた戦闘力の持ち主だ。
「バイエル。キミ達冒険者は遊撃隊として、先陣を切ってもらいたい。冒険者のフットワークの軽さを活かして敵陣を掻き回してくれ」
冒険者は普段、ソロか数人のパーティーで活動している。
つまり大人数で連携をとって戦うのに慣れていない。
ソロやパーティーで、その戦闘力を1番発揮する。
だからバイエル達の立場は、警備兵ではなく警備隊所属の冒険者なのだ。
それを十分に理解した上での指示だ。
「そして敵陣が崩れたら、そこに警備隊の本隊が攻め込む。キミ達は最前線を離脱し、本隊が撃ち漏らした敵を始末してくれ」
「了解だ」
ロンメイルにそれだけ返すと、バイエルは冒険者達に声を張り上げる。
「野郎ども! いつの通りだ! やれるだけやって、後は本隊に任せるぞ!」
聞きようによっては、とんでもない言いぐさだ。
しかし、その言葉通りに受け取る冒険者など1人もいない。
いつも先頭を切って戦い、最後の冒険者が撤退するまで敵のヘイトを集める。
それがバイエルの戦い方だ。
だから冒険者達は、そんなバイエルの為に限界まで力を尽くす。
これが警備隊所属の冒険者の戦い方だ。
バイエルのいい加減な言葉は、そんな仲間を信頼している証のようなもの。
だから冒険者達は。
『おう!!』
それだけを口にすると、チャレンジ・シティーの城門を飛び出した。
冒険者は、警備兵と違い、隊列を組んで戦ったりしない。
各自が自分の判断で戦う。
それゆえその動きは速く、敵の意表を突いた攻撃を得意とする。
今回も、その素早い動きで、クーロン軍に先制攻撃を叩き込む……筈だったが。
タタン! タン! タタタタタタタアタ! タタタン!
聞き慣れない破裂音が響き渡り。
「ぐわ!」
「うぎゃ!」
「ナンだ!?」
「ひぃ!」
冒険者はバタバタと倒れていった。
「何だ、こりゃ!?」
想定外の事態に一瞬戸惑ったものの、バイエルはそのまま突進する。
「敵の攻撃で負傷したヤツは前線を離脱しろ! 敵の攻撃にも無傷だった者を中心に突撃を再開だ!」
今までも、敵の攻撃が強力で仲間が傷つく事があった。
しかし、どんな時もバイエルのファイターメイルは敵の攻撃を跳ね返した。
今回も、自分のファイターメイルで仲間を護ってみせる。
その決意で敵に立ち向かうバイエルに。
「おう!」
「俺のファイターメイルは、防御力特化型だ、任せろ!」
「アタシのファイターメイルだって頑丈さがウリだよ!」
「この程度の攻撃じゃ、ボクのファイターメイルを撃ち抜く事は出来ないさ」
高レベルのメイルファイターが続く。
彼らもファイターメイルの防御力で、仲間を守ってきた冒険者達だ。
しかし、そこに。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
ガガガガガガガガガガガガガガガガガ!
12・7mm重機関銃が撃ち込まれ。
『ぎゃぁあああああああああああああああああああああああああ!!』
バイエルと彼の仲間は、身体中をハチの巣にされて地面に倒れたのだった。
その光景に、ロンメイルは我が目を疑った。
バイエル達の先制攻撃を無傷で撃退された事など1度もないからだ。
しかし同時に、ロンメイルは敵の武器も、しっかりと観察していた。
和斗という冒険者が使っていた武器にソックリだ。
しかしその威力は、ずっと下。
パープルクラスが装備するファイターメイルなら耐えられる。
そう分析したロンメイルは、パープル中隊を招集した。
「パープル中隊、いつでもいけます!」
ビシッと敬礼したのは、パープル中隊の隊長=ドンナ―。
敬礼の動きだけで、体の芯まで鍛え上げられているのが分かる。
そのドンナ―に、ロンメイルは命令する。
「ドンナ―。パープル中隊が装備するファイターメイルなら、バイエルを倒した武器にも耐えられるだろう。パープル中隊で、クーロンのクソ共を蹴散せ。キミ達の後に本隊が続く。今度こそクーロンのクソ共を返り討ちにしてやるのだ」
「は!」
気合い迸る声と共に、ドンナ―はパープル中隊を率いて打って出た。
「まずはオレが敵の攻撃を受けてみる。もしオレが倒れたら、直ぐに引き返せ。そしてオレのファイターメイルが敵の攻撃を跳ね返せたら、そのまま突撃だ!」
「中隊長、危険過ぎます! その役目は私が!」
血相を変える副中隊長に、ドンナ―は首を横に振る。
「オレが将軍なら、そうしたと思うぞ。でもオレは最前線で戦うコトが役目の中隊の隊長だ。その前線部隊の隊長であるオレが先頭に立って戦わずに、どうして部下に命を懸けろと言える?」
「中隊長……」
声を詰まらせてから敬礼する副中隊長に敬礼を返すと。
「オレのファイターメイルの防御力と、キサマ等の武器の威力と、どっちが上か勝負だクーロン!」
ドンナ―は12・7mm重機関銃の前に飛び出した。
当然ながらドンナ―に12・7mm重機関銃が次々と撃ち込まれるが。
ガキガキガキガキガキガキガキガキン!
ドンナ―のメイルファイターは、12・7mm重機関銃を見事に跳ね返した。
それを確認したドンナ―が命令を下す。
「よし! 全員、このまま進軍! クーロン軍の武器を潰して、後発軍の進路を確保するぞ!」
そしてパープル中隊は進軍を始めた。
訓練を受けた軍らしく、一糸乱れぬ隊形を維持しながら。
そんなパープル中隊に、クーロン軍が12・7mm重機関銃を連射する。
が、やはりパープル中隊はビクともしない。
ビクともしなかったから……。
パープル中隊は、そのまま歩調を崩さず進んでしまった。
そこに。
『91式携帯地対空誘導弾を使え!』
クーロン軍の全車両の無線機から福田の声が響き。
シュパァ!
シュパァ!
シュパァ!
シュパァ!
シュパァ!
最前列を走る7tトラックから91式携帯地対空誘導弾が発射され。
ドカドカドカドカドカドカドカドカァン!!!
ドンナ―率いるパープル中隊200名は、消滅したのだった。
2021 オオネ サクヤⒸ




