ある一幕
前話の解決編の直前の話です。盛大なるネタバレを含みますので最初から読むことを推奨します
……すみませーん。
おれは天使に指示されて、警察に通報した女の子を呼びに教室を訪れていた。
1-4はもちろん警察に封鎖されていた。おれは他の教室をのぞいていく。
チラッとのぞいては去っていくおれへ疑惑の視線が刺さるのをひしひしと感じる。
おれだって好きでやってるんじゃないわ。
すぐにあの女の子は見つかった。今はマスクつけてるから一瞬判断に迷ったけど。
女の子もこちらに気づいたようで、警戒心を露わにしながら話しかけてきた。
「あなた警察に逮捕されたんじゃないんですか!?」
されないよ。犯人じゃないからね。
「見えすいた嘘を! あんな趣味の悪い写真を撮るなんて猟奇趣味に違いないわ!」
女の子はヒステリックにおれを糾弾した。
おれを犯人扱いするのはどうかやめて欲しいな……周りの視線が痛いんだよ。銛ぐらい尖ってる。グサグサ効果音が聞こえるまである。
おれの高校生活大丈夫かなあ。誤解が解けても学校に溶け込める気がしないぞ。
ひとまず、案内するから談話室まで来てほしいんだよね。
天使から、事件の犯人分かったから関係者集めろって命令されてるんだよ。
「誰よ天使って」
ホームズみたいな帽子被って、死体調べてた男。見たでしょ?
あいつが探偵で、事件の犯人が分かったらしいんだよね。
「あいつなの? 到底信用できるとは思えないのだけど。あなた、うまく丸めこめられてそうだわ」
ええい焦ったい。さっさとついてこい!
女の子は案外素直に着いてきた。カバンも一緒だ。そりゃあ教室に放置したままは不安だもんな。
無言が気まずかったのか、女の子は冗談を言ってきた。
「実は私が犯人なの」
さっきまでおれや天使を犯人扱いしてたってのに、冗談きついぜ。笑えねえ。
もし犯人だってなら、どうやって殺したとか、云ってみろよ。
「殺し方はその天使くんがすぐに解説してくれるから云う必要はないわ。人殺しの私にもっと他に聞きたいことはないのかしら?」
聞きたいことねえ。じゃあどうして殺したんだ?
「スーパーで万引きの現場を見られたのよ。そしたら写真を撮られてて、あの男が脅迫してきたのよ。金銭や体の関係とか」
女の子はおよよと泣いたフリをしてみせた。
はあ。またけったいな話で。人に自分の創ったストーリーを信じさせたいなら細部作り込むべきじゃないか。もうちょいマシな嘘つけよ。
女の子は澄まし顔だ。
「あらよく分かったわね。嘘よ。本当は思いついたトリックを使ってみたかったの。相手は誰でもよかったのよ。ちょうどいいのがいたから試してみただけ」
それはまた狂気的なことで。そういう人の事、サイコパスって云うんだっけ。
「あっ、その顔は信じてないわね。本当のことなのに」
だとしても、犯人が何でおれに自供してるのさ。意味わからんぞ。
「私が天使くんに犯人として指摘されたら、あなたの云うサイコパスな面は隠さなきゃだもの。警察への印象が悪くなるわ」
おれは女の子の自分に酔ったような発言の数々にうんざりしていた。面倒くさい。ハイハイと無難に返答しつつ彼女の発言は馬が念仏を聞くように適当に聞き流した。
「天使くんが本当に名探偵なら私の犯行も、動機も全て言い当ててしまうのかしら」
おれも天使とは今日が初対面だからよくわかんねえや。頭は良さそうだったけどな。
やがて談話室に辿り着いた。談話室には自称名探偵が真実を明らかにせんと腕を組んで待機していた。
これにて「凶器はどこだ」は完結です。
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