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第4話 信じる力

「シーザー!」


「リッツ! 戻っていたか!」


「もしかしてシーザーのところにも出たのか?」


「ああ、ってことはそっちもおかしいことが起こったのか」


「どうやら街の周り全部がおかしいらしい、すでに詰め所とギルドには連絡が行っている」


「他の班は?」


「まだだ、俺が一番最初でココで連絡係をしている。シーザーこれがマップとポインターだ行ってくれるか?」


「ああ、当たり前だ! 全部俺の問題だからな! すまんが武器をくれ、コレがもう限界だ」


 リッツからクラスのメンバーの居場所を示す魔道具である、ポインターが設置されている周囲の地図を受け取り、同じチームのメンバーをリッツに任せて森へと引き返す。武器はショートソードだが、今の武器よりはマシだ。

 ポインターは街へと戻っている物もあるが、停滞している物がある。

 今すぐにそこに向かわなければいけない。

 魔力を体に巡らせて肉体を強化して森を駆ける。

 

 しばらく疾走ると激しく物がぶつかりあう音が森に響きわったっている。

 その音がどんどん大きくなり、衝撃さえも感じられる状態になって初めて人影を捉える。

 

「キーラ!! 無事か!?」


「平気……じゃねぇな、どう考えても役者不足でヒーヒー言ってるよ……」


「元気そうじゃねぇかよ! 助太刀するぞ!」


「すまん、他のメンツは右後方5mだ、そっちには向かわせるなよ」


「了解」


 敵は3体、まったくキーラには驚かされる。

 確かに特待生になれるぐらいの身体能力に魔法能力はあるが、眼の前の敵、サーベルウルフの相手、ましてや3体を相手に立ち回れるはずは普通に考えればありえない。

 キーラは、頭の回転とそれを全くブレることなく行うということだけでその状況を維持させていたんだ。俺の考えていることと少し違うが、理論で考えたことをきちっと実行している。

 本当に尊敬できる仲間だ。


「かかってこい!!」


 サーベルウルフたちを挑発する。すでにキーラの思考能力と身体能力は極限に達している。

 そうでなければ、すまん、なんて言葉をキーラが発する訳がない。

 巨大な犬歯がまるで鋭い剣のように獲物を狙うために、一太刀でも受ければそく致命傷になる。

 加えて狼系魔物は森の木々を利用して四方八方から襲いかかってくる。

 必死に3匹の攻撃を受けるほどにキーラの行った神業に尊敬の念が深くなる。


「ショートソードだったのは好都合だったな、こういう相手には少し楽になる!」


 全ての出来事は意味がある。

 剣が駄目になってしまったことで武器が変わって戦いやすくなった。いいね!

 すべての事柄は、自分の気持の持ちようでいい出来事にも悪い出来事にもなる。

 だったら、全ての出来事をいい出来事だったと思ったほうが、人生楽しいに決まっている!


「だから! この戦いも! 全てが! 素晴らしい! 経験に! なるんだ!!」


 だんだん敵の攻撃が見えてきた、法則性のなさそうな攻撃の中にあるルールを見出す。

 そんな事ができたのはキーラのおかげだ、アイツがたった一人で持ちこたえたということは、何らかの知識知恵で乗り越えられるポイントが有るはずだと、信じたんだ。

 その結果、考えたとおりに、決めたとおりにそのパターンを見つけた。

 こちらの体勢が崩れたときなどの止め、つまり自信のある決め技としてのコンビネーションが同じ攻撃パターンになっている。

 つまり、わざとピンチを作れば、完全に理解している攻撃が来る。

 そうすれば全部倒せる。俺は決めた。


「ぐわっ!」


 わかりやすく体勢を崩してみた。

 目ん玉真っ赤にしてギラギラしている魔獣はそんなバレバレの演技にもガッツリと食いついてくる。

 しかし、すぐに対応してはいけない、3体が、全て回避不可能な状態になってから攻撃に移らなければいけない、その点は、一頭目がその牙で俺の首を切り裂こうとしたポイントだ。つまり今だ!


「うおりゃ!」


 今まさに切り裂かれそうになっていた首筋を上半身の筋肉を最大限に酷使してのけぞる。

 広背筋から腹直筋、そして腰が、足が、悲鳴をあげる無理な動きだ。

 だができる。やったこと? ない、でもできる! だって、できる未来が見えたから。

 その状態で目の前に広がる光景は、無防備な敵の腹だ。

 剣を突き立て相手の力も利用して切り裂く。

 よしうまく行った。

 しかし、安心している暇はない、すでに二匹目の敵が俺の腸を食いちぎらんと牙を突き立てようとする。空いた手で地面を掴み牙と牙の間を思いっきり蹴り上げながら片手倒立へと移行する。

 できる、絶対できる。脳内でその動きをイメージしたからだ。

 結果、敵は顎を蹴り上げられ高々と打ち上げられる、その先には三体目、最後の敵が飛び込んできている。突然蹴り上げられた二体目の敵に反応できるはずはない、そういうタイミングで蹴り上げた。

 自らの牙で、仲間を貫くことになり、すでに一回転して体勢を整えた俺に首を落とされる。


 ドサドサドサ……


 三体のウルフたちが地面に墜落していく。


「……はぁ、何だ今の動きは……相変わらずバカげた戦い方だ……」


 理解が出来ないと頭を抱えながらキーラが立ち上がる。


「でも、そのおかげで助かった。ありがとう」


「何言ってるんだ、キーラがここまで耐えたからだろ? ありがとう、生きていてくれて!」


「おまっ、そういうことまっすぐ言うのやめろ、恥ずかしい」


「いくらでも言うぞ、ただ今はだめだ、他の場所にも行かないと」


「ああ、そうだ。俺もメンバーを連れて帰ったらすぐに向かう」


「頼んだ!」


 俺は再び地図に目を落とす。

 あと一人。細かく円を描くように動く点が残っている。

 急がないと、その動きが段々とゆるくなっている。


 俺は再び森を駆ける。

 



 

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