16 僕は君のもの 君は僕のもの
「ちょーだい、ちょーだいっ、ちょーおーだいっ」
女の子はぐずり続ける
「俺は清美ちゃんのものだよ
だから、服を持ってくるよ」
清美ちゃんの、もの?
だから服を持ってくるってどういう事?
「ほんとお?服持ってきてくれる?」
「うん」
「じゃあ待ってる」
そう言って、少女は消えた
けど、それより驚いた事は
「清美ちゃんのものって…どういう意味ですか」
……聞いてしまった
「そのままかなの意味かな」
まっすぐこっちを見てそう言ミツキさん
「いやいやいやいや、なんでですか?」
「昔からそうなんだよ、何故かと言われてもね」
まったくよくわからない
「まぁそれはいいとして服の事どうする?」
え、そんなあっさりと良しとしちゃうの?
めっちゃ気になるんですが!!
「あー、あの子ミツキさんのファンなんですかね ミツキさんの服が欲しかったのかな?」
冗談ではなくわりと本気で言っている
ミツキさん、あんな小さい子まで落としてしまうなんて…
天然たらし…
ミツキさんはニコニコ微笑んでいる
うわ、かわいい
「ねぇ、あの子は俺の服が欲しいわけじゃないよ」
ミツキは微笑んだまま…いや、少し悲しそう
「え?」
「知りたい?」
その声は優しい
「え、知ってる人ですか?知りたいですけど」
「本当に?」
あれ、なんでだろう、優しい声なのに怖い
「清美、何も知らなくて良いんだよ
気づかなくて良いんだ
その方が幸せだ」
呼び捨て⁉︎ にも驚くけど 内容にそれ以上に驚く
「知らなくて幸せ?
どうしてそんなに私のために」
「教えられないんだ」
少し怯えた目で見てしまう
「俺が怖い?」
「…は、いいえ」
はいと言おうとしてやめた
「嘘 ちょっと怖いと思ってる」
簡単にバレた
「でもね、君が大切な事だけはわかって欲しい」
その目は真剣だった
「でも、ここにずっと居ても元の世界に戻れないのでは?」
ミツキさん、前に思い出せば帰れるって言ってたけど…
「外に出たい?」
「はい」
ミツキさんがわからない
でも 元の世界に帰りたい
「じゃあ、明日アパートからでよう
服を探しに行こうか」
「アパートから出てですか?」
「清美は忘れているんだ
服を手に入れると辛いことを思い出してしまうよ
結局、服を渡しても解決しないんだ」
理解が追い付かない
ミツキさんってこんなわけわからないことを言う人だっけ?
「今日はもう遅いから、明日探そう」
「いえ、じゃあ明日」




